28 進路
ヒューが学園に入学してから1年後。
「おーい、ヒュー。」
「あ、アラン。久しぶりだね。エマも。」
3人とも以前と比べたら少しだけ大人びえて見えた。
「そうね、休暇の間は一族の仕事があったからこっちにはほとんど来なかったもの。」
「だな。はあ、でも今日から3年か・・・。時がたつのは早いぜ。」
「そうね。・・・ところで、初恋の君とは休暇中デートくらい行ったのかしら?」
「うえ?」
「何驚いてんのよ!この1年間、文通でじわじわ仲を縮めたんでしょう?」
ヒューは相変わらず恋バナになると顔を赤らめてもじもじとする。
「うん・・・。行ったよ・・・。」
「え!?」
アランがヒューの肩をつかむ。
「まじで?まじで言ってんのか?」
「まじだよ。こんなところで嘘つかないでしょ。」
「どこに行ったんだ!噂なんて一切流れてないぞ。」
「あ、えと・・・。」
ヒューが顔をそらす。
「アナスタシア様の家のお庭・・・。」
「「は?!」」
「え?どういうこと?家?家に行ったの?」
「え?アナスタシア様の家?!」
ヒューが顔をそらしたまま答える。
「うん・・・。」
「ど、どうやって?」
「アナスタシア様が手紙で我が家の庭が美しい時期になったので来ませんか?って・・・。」
「まじか・・・。」
「も、もうこの話はやめ!恥ずかしいから。」
「えー、いいじゃん。あなたの今後にかかわるでしょ?」
ヒューはその言葉を無視して別のことを話し始める。
「アランは3年から経営科にいくんだっけ。」
「ああ、そうだぜ。まあ、目的は人脈作りかな。」
「エマは歴史科?ククルカニャンも一緒だっけ?」
「そうよ。だけど私は宇宙歴史系でククルカニャンが人類歴史系だからあんまり一緒に何かすることは少ないけどね。」
「へえ、そうなんだ。でも、エマも経営科に行くと思ってたよ。」
「まあ、それも考えたんだけど、もう経営に関わっているし、もし行くとしたらさっきアランが言ったように人脈作りが目的なのよね。アランがどこでもいいし、経営科に行くっていうから私は行きたい方に行こうかなって。」
エマは手で髪をくるくるとさせながら答えた。
「なるほど。」
「ヒューは宇宙科だっけ。」
「そうだよ。」
「いや、でもまさか宇宙科に行くとはな。」
「ほんとに。」
ヒューが笑いながら2人に問う。
「そんな意外?」
「うーん、意外っていうか宇宙科って学園設立当初は華々しかったけど今は宇宙についてほとんど分かってしまったから、宇宙について広義的に学ぶ宇宙科って今はもう全然生徒いないじゃない?」
「あー、それはそうかも。でも、宇宙について学ぶことが昔からの夢だったから。今はもう宇宙についてかなり知ってるけどもっと知りたいんだ。」
ヒューは顔を赤らめて、どこかまた恋をしているかのような表情で話した。
「まあ、その夢はここに来た当初から言ってたからな。あとはあれか?ヒューがネット音痴なのも関係してるのか?」
「そうなんだよね。なんか昔から使ってなかったせいか皆みたいにすらすら使えなくてさ。ま、でもねっと使えても宇宙科に行ったと思うよ。自分の知識として宇宙について知っておきたいから。」
「もしかしたらお前1人かもよ?」
ヒューは嬉しいのか悲しいのかよくわからない顔をした。
「それはそれで面白そうだけどちょっと寂しいな。」
「私はあまりにヒューが強いって聞いたから軍人になるために戦う系の学科に行くと思ってたわ。」
2人の会話になりかけていたところをエマが体を乗り出して話に割り込む。
「ああ、なるほど。」
「ま、俺たちはもし、2年の終わりにそっち系に行きたいって言ってたら反対してたけどな。」
「え?どうして?」
アランは周りを見渡しヒューに顔を近づけた。
「最近、同盟あたりできな臭い噂が多いんだ。」
「きな臭いって?」
ヒューもアランに顔を近づけて聞き返す。
「今度ゴルーチェ公爵がノルノワンネ公爵代理との結婚をもって大公になるのは知ってるよな。」
「もちろん。」
「その時にどこかの惑星に戦争を仕掛けるつもりじゃないかって言われてんだよ。」
ヒューは驚いた表情を見せた。
「え!」
その衝撃で思わず声が出てしまい、すぐにしまった、といった表情をした。すかさず、エマもヒューを注意する。
「しっ!声がでかいわよ!」
「お前もな。」
しかし、エマの注意する声もヒューに負けず劣らず大きかった。
「で、ここ一年、すでにあらゆる惑星に小規模攻撃を仕掛けてるって噂だ。最近軍の補給関係の周りが激しいからまじだと思うぜ。」
「え?でも、同盟に加盟したら戦争できないんじゃないの?唯一残ってる同盟が保持してる汎用人工知能の<ゼウス>がその瞬間、その惑星を総攻撃するんじゃないの?」
エマも顔を2人に近づける。
「世間ではそういわれてるでしょ?だけど実際は違うの。」
「あれなんだよ。今までも同盟ができる前は惑星同士で小競り合いくらいならしてたから同盟が日和ってな。」
「そうそう。核兵器やその他新型兵器などのあまりに非人道的とみなしたものが使われた時だけなの。人を殺すのに人道的やらあるかとは思うけど、そのあたりはね・・・。」
エマは表情に影を落とした。ヒューも同じような表情を見せる。
「それはね・・・。でも、そうなんだ。なんで2人はそんなこと知ってるの?それ、僕に言ってよかった?」
「まあ、何で知ってるかは秘密だけど。この情報は知ってる人は知ってるからお前への信頼の証だ。」
「そうそう、この情報はこっちが勝手に知ってるだけだから他の信頼関係も気にしなくていいし。」
「ええ、この1年で思ったけどそっちの一族ってなんかいい意味でも悪い意味でも得体が知れないね。」
ヒューがあきれた顔で2人を見た。2人はその視線を受けて2人で顔を見合わせる。
「まあ、商人ってそういうもんだよ。」
「ね。」
「いや、絶対に違うと思うよ。」
ヒューが思わず突っ込みを入れた。
「それで、初恋の君は?何科に行くんだ?」
「秘密って言われた・・・。」
ヒューは悲しそうな顔を見せる。あわててアランが励ますように言葉を重ねた。
「そ、そうか。元気出せ。人は秘密があった方が楽しく生きられる生き物なんだ。」
「そうよ。あ、でも、アナスタシア様と言えばライオネルト様は戦術科に行くらしいわね。」
「え?そうなの?」
話題はライオネルトの進路の話に移る。
「そうよ。なんか2年に入ってすぐにアナスタシア様にべったりじゃなくなった後、なんか周りに軍人になるって宣言したらしいわ。」
「だよな。今考えればこれもゴルーチェ公爵の布石だったのかもな。」
「どうだろう。僕はそんな感じの人に見えなかったけど。」
「アランとヒューはライオネルト様と武術科と戦術科で一緒だったんだっけ?どんな方なの?」
エマの疑問を受けてヒューは考えるようなしぐさを見せてすぐに答えた。
「うーん、ものすごく丁寧な人って感じかな。まじめで練習もきちんとされているし。悲劇の一族だからか遠巻きに見てる人が多いけど、親切だからちょくちょくそういうたぐいのことを気にしない人に話しかけられてるかな。」
「俺も大体おんなじことを思ってるかな、まあ、俺たちはあんまり関わりがないけど。」
ヒューはあいまいに頷いた。
「あとは、戦術では宇宙艦隊の指揮でも軍隊の指揮でも群を抜いてうまくて、武術はあんまりって感じだな。だから、進路も意外かと言われるとそうじゃない。」
「ふーん、まあでも軍功でお家復興を目指しているのもあるかもしれないわね。」
「確かに。だいぶ厳しいけどな。」
「まあ、簡単にお家復興出来たら苦労しないわよ。それで、2人は今から何するの?」
「俺は町に挨拶しに行くかな。」
「僕は部屋でやりたいことあるから、寮の部屋に行くよ。」
「なんだ。2人が暇そうならどこかで遊ぼうと思ったのに。でも、私もアランについていくわ。」
「げ、また別の時に行けよ。」
「いいでしょ?一緒に行った方が早く済むじゃない。」
3人はそのまま少し話をした後、2人は町へ、ヒューは部屋に向かった。
今更なのですが、作者の1日の終わりの認識はゲームなど、そういったものと同じで25時です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。




