20 歴史
「英雄?」
ヒューは思い当たるふしがないといわんばかりに首をかしげる。
「はあ、あんたねえ。いいわ。私が教えてあげるから。」
「でた、エマの歴史知識が火を噴くぜ!」
エマがあきれたように肩をすくめる横で相変わらずアランは笑い転げている。
「ちょっと、茶化さないでよ!はあ、まあいいわ。そんなことより、英雄アリスについて教えてあげる。いや、でも待って、本人が何も言ってないのに私が言っていいのかな。」
「確かに。じゃあアリスさんに放課後衣装の件とその件について聞いてみるから。一緒に放課後にアリスさんに会いに行こう。」
ヒューはなんてことないようにエマとアランに笑いかける。
「あの英雄に会う?やばい。やばすぎるわ。」
「いやあ、一族としては嬉しい限りだけどな。ていうか、お前は何を本部で学んできたんだよ。なんか知識が偏ってないか?英雄アリスは本にもあるだろ。」
「うーん、あんまり本部に本はおいてなかったし、僕は本に馴染みがなかったから、学園の寮に入っても読もうと思わなくて。アリスさんがいいなら今度読んでみる。本部ではなんか3人の教師が同時についてそれぞれの惑星が公平になるようにって。なにか教えようとするたびに3人がもめてあんまり教えてもらってないんだよね。僕もアリスさんに聞けばいいやって思っちゃって。」
2人は納得したような顔をする。
「なるほどなあ。今の宇宙の情勢は結構定まってないから。」
「ヒュー。そこは知っておいたほうがいいわよ。知らずにももめごと起こしても面倒だし。」
「今度こそ!エマの歴史知識が火を噴くとき!」
エマはあきれた目を再度アランに向けるが口では文句を言わず、無視してヒューに話し掛けた。
「今度こそ私が教えてげる。でも、それは放課後ね!もう教室に着いたし、データはすぐもらえるでしょ。」
3人は教室に着く。教室内にいる教員から端末に情報を映してもらうと、外に出て外のベンチに腰掛けた。
「まず、ヒューはどのくらい同盟の歴史について知ってるの?」
「うーん、アリスさんに大まかな同盟の歴史を聞いただけなんだけど。まず、<37惑星宇宙同盟>の主要国、大国と呼ばれる国が5つ。科学大国<ステーメイ>、大帝国<アパテイア>、貴族大国<アリスト>、商人大国<クレマン>、神聖大国<テオーラ>。<ステーメイ>に同銀河系である<アパテイア>が接触したのがこの同盟の始まりでそのあと、他の惑星といろいろ接触して有人惑星全て、37惑星と同盟を結んだんだよね。で、10年前から今の間に<宇宙探査終了宣言>がなされて、宇宙に関することはすべて知り尽くしたと思われている。あんまり同盟の歴史には興味なかったからそこまで知らないや。」
エマが全てを知り尽くした顔で大きくうなずく。
「なるほど、なるほど。結構知ってるじゃない!そこまで知っているなら、今日は歴史じゃなくてその国たちのパワーバランスについて教えるわ。アリスさんはまだ来ないのよね?」
「うん、来るとき連絡くれるって言ってたし。」
「わかった。じゃあ、手短に済ますわね。さっき言っていた大国5つ。この5つは10年前から今に至るまですべての面において他の惑星を圧倒しているわ。この5つのどれかに生まれればあたりだといわれるくらい。でもここ10年で<アパテイア>だけ驚くくらい劣った。それはね、」
「帝王の失踪だよ。」
横から黙って聞いていたアランが口をはさむ。
「ちょっと、なにいいとこだけとってるのよ。まあ、でもそのとおりよ。大帝国、今はこの名称は定まっていないけど、は同盟が成立する前、各地の土地をめぐって有力武将たちの争いが絶えなかった。その領土争いに割り込み、惑星統一を成し遂げたのがのちの帝王だったの。そして同盟成立してからも大きな権力を持った。でもその帝王が8年前突如失踪。自ら消えたのか、誘拐されたのか、殺害されたのか、何もわからないままで、突如大黒柱を失った帝国は大きくはないけれど後継者争いで内乱が起きた。今は民主主義の国として落ち付いてきてはいるけど同盟内の立場ではいろいろと失ったものも多いわ。」
「最近大国を名乗るのも許されなくなるって聞くしな。」
「そこって許可制なんだ・・・。」
「10年前は同盟内で権力を持つ順に科学大国<ステーメイ>、大帝国<アパテイア>、貴族大国<アリスト>、商人大国<クレマン>だった。けど今は、<アリスト>、<ステーメイ>、<クレマン>、<アパテイア>ってとこかしらね。神聖大国<テオーラ>はちょっと別物。これで間違ってないわよね。」
エマはアランに目をむける。アランは頷く。
「それで合ってると思うぞ。残り32惑星でも序列はいろいろあるどな。」
ヒューはまじめにエマの話を聞いていたがふと思うところがあったかのようにエマに話し掛ける。
「神聖大国<テオーラ>が別物ってどういうこと?なんかそれアリスさんも似たようなこと言ってたんだよね。教えてくれるって言ってたのに教えてもらうのわすれてた。なんか、人工知能がどうとか。」
「それは、」
「有人惑星かでまずもめているからだ。」
ふとベンチの後ろから声が聞こえた。そこには堂々と立っているアリスがいた。




