20 アぺイロン子爵
「そろそろ本題に入ろうか。皆、待たせてすまなかったな。」
公爵が声を出す。先程のもてなす側の態度はなりをひそめ、公爵らしく振舞う。
「ヒュー殿、こちらに。」
「は、はい!」
ふたりが会場の中央のカーペットのさらに中央に立つ。同じカーペットにいた面々はさりげなくカーペットの横に寄る。あたりの人々も静まり返り中央を見る。
「知っているとは思うがヒュー殿に今から爵位を与える。・・・。そんなに身構えないでくれ。もう少し気楽にいこうじゃないか。」
「え、あ、はい!それで、僕は今から何をすればいいでしょうか。」
「ああ、爵位をもらうといっても、この場ではほぼ私が宣伝するだけだ。あとからいろんなものがついてくるがな。」
「なるほど。ありがとうございます。」
公爵はあまり表情を崩さなかったが本部で出会った時よりかはほんのわずかではあるが親しみを感じさせた。それを見てヒューは少し安心する。
「宣言する。<アリスト>三大公爵が1人、アレクサンドル・デ・ゴルーチェ公爵は新惑星<アぺイロン>のヒューに子爵位を与える。そして、今後はアぺイロンを苗字として名乗るがいい。苗字がないと何か不便だろう?」
「ありがとうございます。ゴルーチェ公爵。これからはヒュー・アぺイロンと名乗らせていただきます。」
その言葉に公爵は満足そうにうなずく。
「うむ。そして、現在同盟の管理下にある新惑星<アぺイロン>。さすがにそれを全てとは言わないがヒュー殿が住んでいた土地の一帯、惑星の4分の1を与える。」
「嬉しいです!ありがとうございます。」
ヒューは爵位と苗字をもらった時よりもはるかに嬉しそうだった。
「そして、これは私からではないが同盟から。学園に通うにあたってかかる費用を全部出すとのことだ。」
「それは前に伺いました。友と呼べる存在もでき、充実した生活を送れています。ありがとうございます。」
「それは何よりだ。これからも未踏の惑星から<宇宙の英雄>アリス・ステラ・オービットを連れ帰ったその頭脳を生かして宇宙の発展に貢献してくれ。」
あたりから拍手が巻き起こる。ヒューもアリスのほうを見て笑いかける。アリスもヒューに笑いかける。しかし、和やかな空気でいるのはアリスとヒューの2人とゴルーチェ公爵、そしてノルノワンネ公爵代理だけであった。それもそのはず、公爵と公爵代理に何か動きがあればそれは一国が動くだけでなく宇宙全体の大きな動きとなる。その後の公爵の動きを全員が見つめる。が、公爵はその視線をものともせずに公爵代理を連れて元の道を戻ろうとする。
「ヒュー殿。もっと話をしてみたいところではあるが、我々は外せない用事があってもうこの夜会を抜けさせてもらう。ヒュー殿も明日は学園があるだろう?初めてでなれない夜会だろうから早めに上がるといい。そして、アナスタシア。アナスタシアは夜会も慣れているし残りのこの場を任せてもいいだろうか?お前も明日は学校だからいいところで切り上げて構わない。」
「わかりました。お父様。」
「はい!今日はありがとうございました。」
アナスタシアはしずしずと答えヒューがあわててそれに続く。公爵はその様子にうなずく。
「うむ。それでは。来客の方々も何もできなくて申し訳ない。それでは。」
「じゃあね。アナスタシア。ヒュー。アリス。」
そうして会場の視線すべてを奪いながら2人は行きと同じように大きな扉のほうから出て行った。皆にまたざわめきが戻る。
「なんか、すぐ終わっちゃった。」
「そうだな。まあこの後が大変なんだろう。話しかけてくるやつが増えるだろうから気をつけろ。」
「うん、何が起こるかわからないし気を付けるよ・・・。」
そう話すヒューとアリスのよこにアナスタシアがやってくる。
「お2方。」
「あ、アナスタシア様。今日はありがとうございました。」
「ふふっ、礼には及びませんし、お父様にあれだけ感謝を伝えた後なのですから私には必要ありませんわ。お2方に提案なのですけれど、もう退場されてはいかがですか?父もああいっておりましたし、今日は全体的に進行が遅れておりますからもう夜も遅いでしょう。」
「確かに。そうしようかな。アリスさん。いい?」
アリスは頷く。
「もちろんだ。私もなれない夜会でだいぶ疲れた。こんなに早く上がらせてくれるなら願ったり叶ったりだ。」
「それはようございました。夜会で歓談の時間を楽しむのは陰謀渦巻く輩との会話に慣れた後で。先程入場したドアに向かえばあとは何も言わずに帰れますわ。」
「わかった。何から何までありがとうございました!アナスタシアさん。」
「同じ学園の同級生ですもの。また困ったことがあったらいつでも。」
「はい!それでは。また学園で!」
「助かった。アナスタシア様。またどこかで。」
「はい。また、本日はありがとうございました。」
そうしてヒューとアリスが出ていく。
「アナスタシア様。これ以降はどうなさいますか。」
アナスタシアの連れ、美貌の男、ライオネルトがアナスタシアにひっそりと尋ねる。
「そうね。私も来客の皆様に声をかけた後に早めに帰ろうと思います。今日中にお父様に聞きたいこともありますし。」
「わかりました。」
そうしてアナスタシアもライオネルトを連れて来客に話し掛けに行く。全員ある程度顔は知っているようで自己紹介も抜きに親し気に話す。どちらのペアも公爵代理について聞きたがったがそれについては言葉を逃がせば、ここに呼ばれるほどの人である。それ以上は何も聞いてこなかった。来客への挨拶を終え、2人は女王と従者の関係からエスコートをする、されるパートナーへと戻り入場して歩いてきたカーペットの道を戻っていく。その最中、あたりから様々な声が聞こえた。




