17 夜会
「ヒュー。私の服装や髪でおかしいところはないだろうか。」
「ないよ!アリスさん。アリスさんが華やかな服を着るののを見るのは初めてだけど似合ってるね!」
アリスは黒く長いマーメイドドレスを着ていた。細かなレース生地が大部分を占めているが、露出は少なく、その露出の少なさとマーメイドラインがアリスの軍人らしい鍛えられた体と相まって、上品でありながら夜会が初めてであるアリスを動かしてくれるほど美しいものとなっていた。
「そこまで率直に言われると照れるな・・・。ありがとう。ヒュー。ここに来るまでにどこか崩れてないか気になったんだ。ヒューも似合ってるぞ。」
ヒューは白を基調としながら全体的にシンプルにまとめられた服装をしていた。よく見ると細かな装飾がちりばめられ、よい生地で作られている。アリスと並んでも決して見劣りせず、おそらく、上の爵位の方々に紛れても出しゃばりすぎず、しかし、見るものが見ればわかるといった具合に2人の努力がうかがえるものとなっていた。
「ありがとう!僕もこんな服着たことないからちょっと緊張するよ。」
「ふふ、そうか。私もだ。今までこういった夜会に来るときは軍服で来ていたからな。はあ、2人が私の分のことも考えてるとは思ってもいなかった。」
アリスがやれやれといった表情をし、ヒューは朗らかに笑っている。
「ヒューのおまけでお代はいらないと。ただ、これはどう頑張ってもおまけのものじゃないだろう。嬉しくないというわけではないのだが借りを作ったような気がしてならないな・・・。」
「あ、お代といえばアリスさんありがとう。この服買ってくれたでしょ?」
「ああ。気にしないでくれ。軍の任務中に行方不明になったから、その分手当が出たんだ。惑星でお世話になった分と思って受け取ってくれ。これからもどんどん頼ってくれてかまわない。」
「うん、それでもありがとう。なるべく頼らないようにするけど何かあったら全力でたのむね。」
アリスはそれに微笑みで返す。
「もうそろそろかな。」
「どうだろうな。前が多いからな。」
2人はあまり広いとは言えない小部屋にいた。しかし、そこには絵画や彫刻などの美しい美術品がいくつか飾られ、きらびやかな内装となっていた。隣の部屋からは大勢の人のざわめきが聞こえる。
「どんな順番で入るんだっけ?」
「夜会は貴族大国<アリスト>の催しだから、爵位が低い順で入場するんだ。ただし、爵位を持っていない他国の招待客がいるだろう?他国の招待客はほぼ大物しか来ないから最後からひとつ前に入場することになる。最後からひとつ前といっても主催ではない公爵とその縁者たち、そして私たちのような招待客が同時に入る。最後に主催者の公爵だな。主催は公爵しか許されておらず、普通は大きな扉から入場し、最後とそのひとつ前に入場する者たちはいくつかある小さい扉から入場する。」
「その小さい扉から入るっていうやつ聞いた!どうして?」
「大きい理由は2つだ。1つ目は入場するタイミングで力関係が関係しないようにするため。2つ目は小さい扉から入場するような高貴な方々の安全上の理由だ。大きい扉の横の控室は大勢の貴族が待つから警備しにくいんだ。」
「なるほど・・・ってここ小さい扉の前じゃないの?!僕たちが高貴かは別として、警備いるんじゃないの?」
ヒューが驚きとともにアリスにまくしたてる。しかし、アリスはそれを見てものんびりしていた。
「私とヒューは護衛がいるほど弱くないからな。あとこういった話は聞かれたくないだろう?断っておいたぞ。」
「そういわれると納得かも。あと、今回の主催はゴルーチェ公爵だよね?公爵の娘も僕たちと同じタイミング?」
ヒューがアリスをちらりと見つめる?
「おそらく一緒ではないかな?急にどうしたんだ?」
「いや!あの!あの、学園で話し掛けられたんだ。あんまりなんも返事できなくてお礼を言いたくて!」
ヒューはあわあわと答える。そんなヒューをアリスは不思議そうに見つめる。
「そうか・・・。言えるタイミングがあるといいな。私もいつヒューが爵位をもらうとか流れは知らないんだ。雰囲気で合わせるしかないから、話すときもあたりは見ておいてくれ。」
「うん、もちろんだよ。そういえば、アリスさん、アぺイロンにいる間宇宙共通語を学んでおいてよかった。この夜会に<オーラ>つけて言ったら無作法だし、学園でもつけてる人少ししかいなかったや。」
ヒューが急いで話題を変える。アリスはそんなヒューの意図に全く気付かず返事をする。
「ああ、そうだな。それについてはヒューの飲み込みも異常なくらい早かったしな。歴史は覚えないのに。覚えておかないと学園で粗相をするぞ。」
「それ言われるとなんも言えないや。ちゃんと学ぶよ。授業もとったし。あ、そういわれると今日の夜会で気を付けることはないの?」
アリスは考え込む。
「主催がそこらへんは考えてくれているだろうから今日は神聖大国からは招待されていないと聞くしな・・・。おそらくあまり話すこともないだろうし、無礼なことを言ってもお目こぼししてくれるだろうよ。何か困ったら私に言ってくれ。」
「わかった。」
2人は話すことがなくなったのか前を向く。部屋が穏やかな沈黙で満たされていたが唐突にノック音が響き渡る。扉の向こうから声が聞こえた。
「もうじき入場でございます。ご準備くださいませ。」
その声を聞いてアリスがヒューの腕に自信の腕を組んだ。
「今日は上手にエスコートしてくれよ?ヒュー。」
「そういわれると緊張してくるな・・・。頑張るよ。任せてとまでは言えない。」
その言葉に2人は笑いあった。そして、そのまま笑っていると扉がゆっくりと開くのが見えた。
投稿しない期間が予定より少し長かったですが明日よりまた毎日投稿の予定です。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
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