17 少女
「ていう感じでこの学園に来ることになったんだよね。」
ヒューとアランは2人以外の全てが退場し、がらんとした広間で会話を続ける。もちろんヒューはアランに先生のことについては話していない。しかし、ここに至るまでの経緯についてはほとんど話した。その話を聞いて、アランは何とも言い難い顔をして頷き、口を開く。
「なるほどなあ、お前もいろいろあったんだな。だとしても、今日初めて会ったばかりの人間にそこまで話していいのか?俺がなんか企んでたらお前マジやばかったぜ?爵位の件もだけどさ。」
その言葉を聞いてヒューは頼りなさげに緩く笑う。
「いやあ、アランを見てるとなんかさ。先生を思い出しちゃって。」
「先生?本部の?ふうん、俺みたいに口調が砕けた先生なんているんだな。」
途端にヒューが少し慌てた表情で取り繕うように喋りだす。
「い、いや、あ、うん。そうなんだよね。本部の先生。あはは・・・。」
その顔はどこか悲しんでいるようにも見えた。ヒューはもしかしたら先生がヒューのそばを見守っていてその人間の姿として現れたのがアランだと思ったのだ。普通なら考えもつかないような夢物語だが、ヒューもなれない場所、人、多くの変化がヒューの身を襲い、だいぶ応えているのだろう。そのヒューの悲しみには気づかず、慌てようのみに気が付いたアランは商人の卵としては出来の悪い方なのかもしれない。しかし、そのアランの呑気さはヒューの大根役者ぶりを覆い隠すものとなった。
「あ、そうだよな。本部については守秘義務もあるだろうし、無理に話さなくていいぜ。気使わせて悪かったな。」
「いや、こっちこそごめん。先生については君が言ったようにいろいろ話せないんだ。」
アランは目を輝かす。
「やっぱりか?!謎に包まれてこその<黒箱>!いいよなあ、あの<黒箱>に入れるなんで、同盟中のみんなが憧れるぜ。」
ヒューは驚いたような表情をアランに見せる。
「え?結構人いたけど誰でも入れるわけじゃないの?」
「何言ってんだよ、この宇宙にどのくらいの人がいると思ってんだ。あそこにいるのはエリート中のエリートだぜ?この学園でもとびぬけたやつ以外が同盟に就職したいって言ったらここの教師にずいぶん夢見てるやつだなて思われる。」
「え。そんなすごいんだ。」
アランは今までの会話を断ち切る勢いで太ももをたたく。
「まあ!それより爵位持ちはもっとやべえけどな。今の同盟はあの貴族の惑星が同盟内ですごい力を持ってるからなおさらな。」
それを聞いて、ヒューは事の重大さがわかったかのように少し青ざめた。
「そうなんだ。ちょっと緊張してきた。」
アランはヒューの背中を思いっきりたたく。
「大丈夫だって。どうせお前は同盟の終了宣言が間違ってたことをごまかすために使われるだけなんだから。多少の失敗は許容範囲さ。どうせ授与式までまだあるだろ?それまでは学校生活を楽しもうぜ。」
「そっか!そうだよね。よかった。ここで今日君と色々話せて。」
アランは照れたように頭をかく。
「そんなはっきりと言われるとなんか照れるな。こっちこそ、お前の話は面白かったぜ。ありがとな。
そう言い切るとアランは立ち上がった。
「そろそろ教室に行かないと広間の片づけが始まるし、移動しようぜ。教室まで学園列車で結構かかるから中で授業が何か見ればいいだろ。」
アランに続けてヒューは慌てて席を立った。広間から出て芝が美しい庭に出るとゆっくりと列車が近づいてきた。扉が開くとそこにいたのは仁王立ちしたオレンジ色の髪が鮮やかな少し勝気そうな少女だった。
「ねえ、遅かったね?」
アランの目がうろたえ、声が裏返る。
「いや、あの、えと、ほら!この隣の!噂の編入生だよ!お前も会いたがってただろ!ヒューっていうんだ。」
それを聞いて少女の目線がゆっくりとヒューのほうへ移る。
「あなたが?噂の?」
ヒューは困ったように少し微笑む。
「噂かどうかわからないけど。僕は編入生、新惑星アペイロン出身のヒューだよ。よろしくね。」
少女の頬がみるみる紅潮し、ヒューを見つめる。
「あの新惑星の?今日はなんて幸せな日!」
文章力向上、物語の詳細の詰め、誤字脱字確認などのために2日間ほど更新をお休みします。
ここまで読んでくださっている方、今後もよろしくお願いいたします。




