15 テオーラ
「なんで、そんな<テオーラ>の成り立ちとかいう重要そうなことを知ってるの?」
エマが答える。
「同盟ができてから<マザー14>が唐突に言ってきたのよ。明らかに科学大国についても詳しかったし、科学大国は否定してはいるけど公然の秘密って感じかしらね。」
アリスが情報を処理し終わったような顔でエマを見て、つぶやく。
「なるほどな・・・。もはや、そこまで来ているのか。」
「はい、ここ10年の勢力の拡大は著しいです。5大国以外の惑星を数多く掌握し、学園入学許可までもぎ取った手腕は正直お見事としか言いようがありません。とはいえ、この出来事から同盟は多数決で物事を決めることが少なくなりましたし、このときの会議の主催であり、<テオーラ>の住民に学園入学を許可するか否かの方法を決めた<アパテイア>はさらに国際的な地位を落とすこととなりました。元から国内のごたごたでだいぶ落ち目でしたがこれが決定打といえると思います。」
エマははっきりと言い切る。
「ふむ・・・。そうか。ありがとう、エマ。だいぶこれで合点が行ったよ。」
「いえ!こちらこそ。宇宙の英雄と名高いアリスさんと話せてうれしかったです!」
エマが恋する乙女のような目でアリスを見つめる。アリスは気恥ずかしそうにエマを見つめ返す。
「ああ、それか・・・。軍のやつらに聞いたよ。いない間に有名な物語になっていたようで、気づいたら英雄になっていたようだな。嘘とまではいわないが、あそこまでかっこよくないんだ。事実は期待外れかもしれないぞ。」
「私、この物語を書いた人と直接会ったことあるんです。あの事件でアリスさんに助けられた1人だって。詳細を聞きました。確かに物語と違うことは多少あれど、アリスさんの活躍が本当にかっこよくてずっと憧れていたんです!」
アランも横目でちらりとアリスを見ている。ヒューは正面からアリスを見て口をはさむ。
「その物語聞いてもいい?アリスさんは何をしたの?」
エマがちらっとアリスに目線を向ける。アリスはそれを横目でみながら苦笑して口を開いた。
「エマは話したそうだが・・・いや、それじゃ面白くないな。エマから教えてもらうのはだめだ。調べるのも。紙の本でなら読んでいいぞ。ただし、2人に借りたり取り寄せてもらうのはだめだ。」
ヒューはワクワクと期待に満ちていた顔を途端に一変させて、悲しげな表情をする。
「えー!それじゃ制限が多すぎるよ!しかも、紙の本?ここ数日学園の売店にも行ったけど見たことないよ!」
「ははっ、そうか。まあ、意図して探せばすぐに見つかるさ。物語を呼んでから実際の状況をエマに聞いてくれ。」
ヒューはぶすくれた顔ををしていたがしぶしぶといった様子で頷いた。
「わかったよ・・・。あとなんか聞こうと思ってたけどなんだっけ。」
黙ってだらけながら3人を見ていたアランが背筋を急にまっすぐさせる。
「衣装だろ?衣装。爵位もらうときの。」
「あ、そうだった。爵位もらうときの衣装決まってる?この2人に頼もうかと思ってるんだけど。」
アリスがしばし考え込む。
「いいんじゃないか?あとで2人に詳細を確認して送っておくよ。2人とも頼んでいいか?」
2人がベンチからさっと立ち上がる。
「もちろんです。私たち鳥の一族が誠心誠意ご用意いたします。」
「逆にこっちが頼みたいぐらいだぜ。」
「ありがとう。もっと話していたいんだが私はこれから用事が入ってるから行かなければならない。3人とも何か困ったことがあれば言ってくれ。それでは。」
アリスは本当に用事があったようですたすたと去っていった。アランとエマはベンチに再び座ると、それを3人はぼーっと眺める。
「はあ、かっこよかった・・・。」
「俺、緊張して全然喋れなかったぜ。」
「何よ、あんたはいつものようにおいしいとこだけ持って行ったじゃない。」
アランは調子よさそうに笑う。エマはそんなアランを小突く。
「僕はアランがアリスさんに余計なこと言わないかひやひやしたのに。」
アランはそれを聞いてにんまりと笑う。
「余計なことって。ヒューがさっき恋に落ちたこと?」
「いや、まだ、恋とは・・・。てか、分かってるなら具体的に言わないでよ。」
「あーあ。悲しいな。俺がそんな口が軽い奴と思われてるなんて。」
「事実でしょ。」
エマがすかさずアランの頭にチョップする。
「衣装についてはアリスさんから詳細が来たらこっちでいろいろやっておくわね。楽しみにしておいて!」
「ありがとう。2人とも。楽しみにしておくよ。」
アランがベンチから立つ。
「はあ、じゃあ行くか。」
ヒューはそんなアランを見上げて不思議そうに首をかしげる。
「どこに?」
「決まってるだろ、うまい飯屋にだよ。」




