14 アラン
「<オンリープラネッツ>。皆さんはこの言葉を何度も何度も耳にしたことがあるでしょう。この学園が創立当初から掲げる教訓でもあります。この言葉は<37惑星宇宙同盟>が発足した際に会議内で生まれ宇宙中に広まりました。宇宙にある惑星が十人十色の歴史を持っているように、皆さんも様々な思いを胸に、知識を求めここへ集まっていると思います。ですが、この学園で他の惑星の人と関わる中、<オンリープラネッツ>、この言葉通りに皆さんが生まれ育った惑星をそれぞれがかけがえのないものだと自覚できると私は信じています。さらなる宇宙の発展を目指して、この学園で己の才覚を磨き、知識を蓄えていってください。これで私からの挨拶は終わりです。」
背がかなり高い初老の男性はその言葉を終えると同時に深々と頭を下げた。ざわざわとしていた広間が一瞬静まり返り、あたりからぱちぱちとまだらな拍手が聞こえ始める。大きな広間には横の大きな窓からは柔らかな日差しが燦燦と降り注ぎ、長机に座っている多くの生徒らを照らしていた。
「・・・なあ。」
ヒューは壇上の人間の話もおざなりに窓の外を見を見ていた。短く丁寧に切り込まれた芝生の上を太陽に照らされながら列車が走っていく。人間よりも早いプログーの全力疾走よりもはるかに速いそれは少し宙に浮きながら、走っているようだった。ヒューの茶色い目が列車の動きと合わせてきょろきょろとせわしなく動いた。
「なあ・・・。聞こえてないのか?お前だよ、お前。茶色い髪のやつ。」
どうやら先程から聞こえてくる隣の小声はヒューに話し掛けているようだった。ヒューは名残惜しそうに視線を窓から戻しながら、小声の主に答えた。
「えーっと、僕?何かあったかな?」
「何かあったかな、じゃねーよ。ずっと学園列車みてるからお前の体調が悪いのか、列車になんかあったかと思ったぜ。」
赤みがある髪を学園の芝生よりも少し長く切り込んだ青年がため息をつく。声の主は全体的にしっかりとした体格をしており、口調は荒いが、どこか親しみやすい雰囲気がある男だった。ヒューはそれを聞いて悪事がばれた子供のような顔で少し申し訳なさそうに答えた。
「あ、ごめんね。学園列車が気になっちゃって。」
「?まあ、なんもなかったならいいけどさ、てか、あの学園長の話いい加減飽きたよな。」
「飽きたって?」
それを聞いて青年は信じられないといった様子でヒューを見る。
「え!?お前あれだけ何回も聞いておいてまだ飽きてないの?去年の入学式からなんか行事があるたびに聞き続けてもう4回目とかだろ?」
「へえ、そうなんだ。僕、編入生なんだよね。<オンリープラネッツ>って言葉自体初めて聞いたや。」
青年が怪訝そうな顔をしてヒューを見つめる。そして、突如何かがわかったかのように目を見開いた。
「お前!あの話題になってる<未踏の天才>か!5年ぶりに見つかった新惑星の!」
「え、僕、そんな呼び名がついてるの?天才かは知らないけど新惑星の出身ではあるよ。」
ヒューの返答を聞いて青年はにかっと笑って手を差し出した。
「まじか、噂に聞いた時から話してみたいと思ってたんだ!俺は商人大国<クレマン>出身、アラン・キー・ホークスだ。よろしくな。」
「こちらこそよろしく。僕は新惑星<アペイロン>出身、ヒュー。わかんないことだらけだからいろいろ教えてね。」
アランはヒューが握りしめた手をさらに力強く握って嬉しそうに答える。
「もちろん。俺の一族は商売でまあまあ有名な一族だから、他のやつよりいろいろと知ってると思うぜ。まあ、でも、まずはあたりのうまい飯屋からかな。」
「おお!それは心強い。じゃあさっそくなんだけど、なんか僕、貴族大国<アリスト>から爵位もらえるらしいんだけど、爵位もらうとき何着てけばいいの?」
それを聞いて、アランは急いでヒューの口をふさいだ。
「嘘だろ!お前。いくらここがうるさいとはいえ、そんな重要なことをここで話すなよ!報道に出てないってことはそれまだ言っちゃいけないことだろ!」
ヒューは男の手をはぎ取ると口を開いた。
「え?まだ言っちゃダメなの?アリスさんに言っちゃった。」
「アリスさんって誰だよ。」
「僕の後見人で軍の人。」
アランは再度ため息をついた。
「それはいいよ。そのアリスさんはなんて?」
「制服でいいんじゃないかって。ほかの人にも聞いてみるらしいけど。」
「ああ、それでいいだろ。というか俺にこのことを言ってしまったって後見人に一言言っておけよ。超極秘のことだったら後々まずいし。」
「よくわかんないけど分かった。言っておく。ごめんね、秘密にしちゃいけないって知らなくて。」
「ま、知らなかったなら次回から気を付けてくれ。他に何かあればすぐ言ってくれ。」
そういうとアランは立ち上がった。
「お前は授業なにとってんの?少しくらいかぶるでしょ?」
「えーと、宇宙がついてるの全部となんだっけ、運動系一個とったのは覚えてるんだけど。ちょっと待ってて。」
「あー、俺も少しは宇宙系とってるわ。調べるのは学園列車に乗ってからにしようぜ。何の授業でも教室ここから遠いからさ。」




