14 マザー14
「アリスさん!」
ヒューが嬉しそうに後ろを振り返る。
「久しぶりだな、ヒュー。いや、久しぶりというほどでもないか。今まで毎日顔を見合わせていたから、思わず言ってしまった。」
後ろにはいたずらな笑みを浮かべるアリスの姿があった。
「僕もそう思ってた。寮はやっぱりまだ慣れないや。というよりアリスさん、連絡くれるって言ってたじゃん!」
「いや、卒業生だから普通には入れたんだ。どうせなら驚かせようと思って。」
「もう!今度から連絡してからきてよね。ま、この話はいったん置いといて、有人惑星かでもめているってどういうこと?」
アリスはベンチの前のほうに回り込んでくる。
「それについては神聖大国<テオーラ>の成り立ちが関係している。そうだよな、そこの少年・少女?初めまして、私は宇宙連盟共同軍・第2軍隊所属のアリス・ステラ・オービットだ。最近軍に復帰したものだから、以前所属していた探査部がなくなって驚いたよ。名前を聞いてもいいかな?」
エマは目を輝かせて、アランは表面は何でもない風に装いつつ、少しソワソワした様子で答える。
「私は商人大国<クレマン>出身のエマです。一族で商いをしています。お会いできて光栄です。」
「同じく<クレマン>出身、アランです。エマとはいとこで家の仕事を覚えながら学校に通っています。お会いできてうれしいです。」
ヒューが横から口をはさむ。
「ついさっき2人と仲良くなったんだ。今日ちょうどアリスさんに紹介しようと思ってたんだけど、待つ間いろいろ教えてもらっててて。」
アリスが頷く。
「私も同盟の歴史を話すあたりから聞いてたぞ。やはりいろいろな人に聞いたが情勢についてはおおむね一致しているな。」
エマが赤面し、小声でアランに話し掛ける。
「ちょっと!なんで気づかないのよ!」
アランも小声で言い返す。
「相手はブランクあるとはいえ現役軍人だぞ!逆に俺が気が付いたら怖いだろ!」
アリスが2人がひそひそと話し合っているのを見てにっこりと笑いかける。
「悪かったな。盗みぎきしてしまって。気持ちのいいものではなかっただろう。学生からも忌憚ない考えが聞きたかったんだ。」
慌ててエマが首を振る。
「はい!あ、いえ!その、当然だと思います。公開情報にはなかったのですが、ヒューから10年前にアぺイロンに不時着したのはアリスさんだと聞きました。今と昔では情勢もはっきり変わっていますし、アリスさんの警戒も当然だと思います。」
「そうか、そういってもらえると助かるよ。だが、ヒュー!そんなにほいほい情報を言ってもしこの子たちが悪い子だったらどうするんだ!2人が良い子たちそうなのは幸いだが、情報には気をつけろ!」
アリスはヒュをー軽くしかる。ヒューは耳が痛いといわんばかりに肩をすくめる。
「はーい・・・。ごめんなさい。」
そして、アリスの気をそらさんと言わんばかりに言葉を続ける。
「と、いうよりさ。<テオーラ>の成り立ちについて教えてよ。」
アリスが思い出したように口を開く。
「そうだったな。私が説明してもいいが、せっかくならエマ、説明してもらってもいいか?私もここ10年間の<テオーラ>について知りたいんだ。」
エマは突然指名され、驚いた表情を見せたが、歴史好きの血が騒ぐのか意気揚々と話し始めた。
「え!あ、はい。説明しますね。神聖大国<テオーラ>は5大国の1つでありながら、全有人惑星の中で最も新しい惑星だといわれています。今のところは制限がありつつも有人惑星として扱われているので有人惑星と置きますね。科学大国<ステーメイ>、大帝国<アパテイア>と同じ銀河系に属し、<ステーメイ>が新型人工知能<マザー14>を銀河へ放逐したことが<テオーラ>誕生のきっかけです。<マザー14>は当時<ステーメイ>内で最高峰の人工知能でした。しかし、あまりの成長の結果、人間の手に負えなくなり、もはや人類と相反するもののなってしまいました。どんな手を使っても<マザー14>を排除できなかった<ステーメイ>は<マザー14>と関連する周辺機器を反対の声が多い中で銀河へと放逐し、惑星と物理的距離を置くこととしました。この政策はうまくいったかと思われましたが、」
「<マザー14>はとある惑星にたどり着いてしまったんだ。」
またもアランが口をはさむ。エマはすっかり慣れたのか言葉を引き継いで続ける。
「その惑星はなんの変哲もない惑星で人類がいない代わりに原始生命体がいました。」
ヒューがアリスを見る。
「原始生命体って?」
「簡単に言えば人間のもとではあるが、人間に進化するには膨大な時間がかかる生き物のようなものだ。」
「へえ。」
2人のやり取りを見てエマが言葉を発する。
「続けますね。<マザー14>はどんな方法を用いたのか分かりませんが原始生命体と一体化することに成功。己の肉体ともいえるコンピュータ、データ、プログラムなどをその原始生命体に移し、短期間で人類のようなものに成長させました。ここで問題なのはそれの原始生命体すべてに<マザー14>が入っていることです。ようするに1人1人に見えますが、結局元をたどれば、全て<マザー14>だということです。ですが、人類が探査を続ける中で当初はっきりと定まっていた人類の定義をどんどん緩くして言っていたせいで、はっきりと<テオーラ>を人類ではないということができませんでした。」
「そそ、だから、まあ、話すなとまではいわないが<テオーラ>のやつには少し注意しておいたほうがいいぜ。まあ、だれが<テオーラ>出身かは本人が言わない限りわかんないんだけどな。」
アランがあきれたように笑う。
「同盟はここ10年<テオーラ>を注視してきましたが、じわじわと<テオーラ>は勢力を伸ばし、10年前許されていなかった学園入学を現在は許可されています。正直昔は5大国で一番力を持っていませんでしたが、今は<ステーメイ>に並ぶほどだと思います。これが神聖大国<テオーラ>の成り立ちとかその他もろもろでした。」
エマの話を聞き終えアリスもヒューも考え込むような姿勢を見せた。




