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オンリープラネッツ  作者: 星塚もぐら
第2章 学園
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11 初恋


「ていう感じでこの学園に来ることになったんだよね。」


ヒューとアランは2人以外の全てが退場し、がらんとした広間で会話を続ける。もちろんヒューはアランに先生のことについては話していない。しかし、ここに至るまでの経緯についてはほとんど話した。その話を聞いて、アランは何とも言い難い顔をして頷き、口を開く。


「なるほどなあ、お前もいろいろあったんだな。だとしても、今日初めて会ったばかりの人間にそこまで話していいのか?俺がなんか企んでたらお前マジやばかったぜ?爵位の件もだけどさ。」


その言葉を聞いてヒューは頼りなさげに緩く笑う。


「いやあ、アランを見てるとなんかさ。先生を思い出しちゃって。」

「先生?本部の?ふうん、俺みたいに口調が砕けた先生なんているんだな。」


途端にヒューが少し慌てた表情で取り繕うように喋りだす。


「い、いや、あ、うん。そうなんだよね。本部の先生。あはは・・・。」


その顔はどこか悲しんでいるようにも見えた。ヒューはもしかしたら先生がヒューのそばを見守っていてその人間の姿として現れたのがアランだと思ったのだ。普通なら考えもつかないような夢物語だが、ヒューもなれない場所、人、多くの変化がヒューの身を襲い、だいぶ応えているのだろう。そのヒューの悲しみには気づかず、慌てようのみに気が付いたアランは商人の卵としては出来の悪い方なのかもしれない。しかし、そのアランの呑気さはヒューの大根役者ぶりを覆い隠すものとなった。


「あ、そうだよな。本部については守秘義務もあるだろうし、無理に話さなくていいぜ。気使わせて悪かったな。」

「いや、こっちこそごめん。先生については君が言ったようにいろいろ話せないんだ。」


アランは目を輝かす。


「やっぱりか?!謎に包まれてこその<黒箱>!いいよなあ、あの<黒箱>に入れるなんで、同盟中のみんなが憧れるぜ。」


ヒューは驚いたような表情をアランに見せる。


「え?結構人いたけど誰でも入れるわけじゃないの?」

「何言ってんだよ、この宇宙にどのくらいの人がいると思ってんだ。あそこにいるのはエリート中のエリートだぜ?この学園でもとびぬけたやつ以外が同盟に就職したいって言ったらここの教師にずいぶん夢見てるやつだなて思われる。」

「え。そんなすごいんだ。」


アランは今までの会話を断ち切る勢いで太ももをたたく。


「まあ!それより爵位持ちはもっとやべえけどな。今の同盟はあの貴族の惑星が同盟内ですごい力を持ってるからなおさらな。」


それを聞いて、ヒューは事の重大さがわかったかのように少し青ざめた。


「そうなんだ。ちょっと緊張してきた。」


アランはヒューの背中を思いっきりたたく。


「大丈夫だって。どうせお前は同盟の終了宣言が間違ってたことをごまかすために使われるだけなんだから。多少の失敗は許容範囲さ。どうせ授与式までまだあるだろ?それまでは学校生活を楽しもうぜ。」

「そっか!そうだよね。よかった。ここで今日君と色々話せて。」


アランは照れたように頭をかく。


「そんなはっきりと言われるとなんか照れるな。こっちこそ、お前の話は面白かったぜ。ありがとな。


そう言い切るとアランは立ち上がった。


「そろそろ教室に行かないと広間の片づけが始まるし、移動しようぜ。教室まで学園列車で結構かかるから中で授業が何か見ればいいだろ。」


アランに続けてヒューは慌てて席を立った。広間から出て芝が美しい庭に出るとゆっくりと列車が近づいてきた。扉が開くとそこにいたのは仁王立ちしたオレンジ色の髪が鮮やかな少し勝気そうな少女だった。


「ねえ、遅かったね?」


アランの目がうろたえ、声が裏返る。


「いや、あの、えと、ほら!この隣の!噂の編入生だよ!お前も会いたがってただろ!ヒューっていうんだ。」


それを聞いて少女の目線がゆっくりとヒューのほうへ移る。


「あなたが?噂の?」


ヒューは困ったように少し微笑む。


「噂かどうかわからないけど。僕は編入生、新惑星アペイロン出身のヒューだよ。よろしくね。」


少女の頬がみるみる紅潮し、ヒューを見つめる。


「あの新惑星の?今日はなんて幸せな日!」


少女は頬を紅潮させたまま、ヒューに近い距離まで顔を近づける。その距離は思わずヒューが少し顔を引くほどであった。


「ねえ!あなた!あの新惑星アぺイロンから来たんでしょ?どんな惑星なの?はあ!同盟の終了宣言を覆すなんてことがあるなんて!ねえ、名前なんていうの?私はエマ・イーグル。そこのアランとはいとこなの。よろしくね!」

「あ、うん、分かった、よろしく。僕はヒュー。よろしく。あの、えと、少し距離が近い、かな?」


その言葉を聞いて、少女は慌てる。わたわたと不思議な動作を繰り返すとヒューから少し離れて恥ずかしそうにうつむいた。


「ごめんなさい。私そういう宇宙の地理とか歴史が大好きで。新しい惑星が見つかって、しかもその出身の子がこの学園に来るって聞いてずっと話してみたかったの。」


それを見てアランが呑気そうに口を開く。


「そんな距離近かったか?まあ、普段より近いけど。そこまで言うほどか?」


エマがアランに向かって怒りの表情を向ける。


「あのねえ、惑星によって多少は文化も違うんだから、距離感も違うのよ!ヒューのところの人同士の距離感も男女の距離感もあんた知らないでしょ!」


アランが怒るエマを見て呑気そうに笑う。


「ははっ、そうだった。悪い悪い。ごめんな、ヒュー。無神経だったわ。」


その言葉にヒューは目をぱちくりさせると慌てる。


「いや、違うんだ!僕の惑星、若い女性いなかったから。恥ずかしくて。ごめんね。こっちこそ。」

「え!そうなの!全然気にしないで、悪いと思うなら後で惑星についていろいろ教えて。あと私彼氏いるんだ。そこんとこよろしく!」


2人が互いに申し訳なさそうな雰囲気を出す中、また呑気にアランが喋りだす。


「へえ、ここに来るまでについては聞いたけど惑星については聞いてなかったもんな。そんな惑星あるんだな。てか、ちょっと話変わるけど、エマ。こいつ今度何か爵位もらうらしくて後見人の返答次第だけどそれにいい感じの衣装見ててくんね?制服でもいいけどどうせなら衣装来てた方がいいだろ?俺も見とくけど、何パターンか見ておきたい。」


エマは世界が止まったかのように動きを止める。そして、ブリキのおもちゃのような動きで動き出すとゆっくりとヒューの全身を見まわす。


「しゃくい?」

「あ、うん、なんか、くれるらしい。白髪でオールバックの人がくれるって。部下の人が来ていろいろ説明してくれたけどよくわかんない。アリスさん、あ、僕の後見人しか詳細理解してない。」


エマはそれを聞いてふらっとした後にヒューに喋りかけた。


「本部で?」

「うん。」


さらにエマはショック受けたようにゆらゆらと動いている。それを見て笑いながらアランがヒューに話し掛ける。


「ヒュー、それたぶん。今この宇宙で一番偉いといっても過言ではない貴族大国<アリスト>の唯一の侯爵だぜ?」

「へえ、すごい人なんだね?でも娘が学園にいるからいろいろ聞けって。」

「それはたぶん社交辞令だって。」


あたりに軽やかな鈴の音が響いた。3人があたりを見渡すと先程までの学園列車とは違う列車がやってくる。


「アラン、エマ、あれ何?そこら辺を走ってる学園列車と柄違うけど。」

「あわわわわわわ。」

「まじかよ、あれはさっき言ってた公爵の1人娘の専用列車だ。防犯目的で乗ることを許される人は少ない。しかも、間違いなくこっちに向かってきてるな。」


列車が3人の目の前に止まる。そこから現れたのは、金髪のあまりにも美しい男。男が列車から降り、手を差し出すと、銀髪を靡かせた美しい女性が現れた。2人はその少しの動作だけでも格の違いを見せつけながら、女性が先導に立ち、ゆっくりを近づいてくる。その斜め後ろに男が従い、まるで一枚の絵画のようだった。女性がヒューの目の前にたどり着くと、エマとアランはしゃがんで頭を垂れた。それを見たヒューが慌てて同じようにしようとすると女性が鈴のなるような声で話し始めた。


「そこまでの礼は不要です。はじめまして、ヒュー様。私はアナスタシア・デ・ゴルーチェ。お父様には本部で合われたようですね。この学園で何かありましたら私のところへおいでください。力になりますわ。短い間ですけど、ここで失礼いたします。用事がありますの。またお会いしましょう。」

「え、あ、はい!ありがとうございます!」


アナスタシアは優雅に列車に乗り込みこの場を去っていった。列車がゆっくり動き、先程と同じ軽やかな鈴の音を鳴らしながら見えなくなった。


「いやー、やっぱあの2人は間近で見ると迫力が違うな。」


エマが頷く。


「本当にやばいわ。あの2人がここまで来るなんて。衣装を半端にできない。」

「そこかよ!?まあ、確かに大事だけどさ。てか、ヒュー。お前何顔赤くしてんだよ。」


ヒューは顔を真っ赤にしてその場に立ち尽くしていた。それをからかうようにアランが口を開く。


「おいおい、そんな緊張したのか?まさか恋したのか?あのアナスタシア様に。」


ヒューはうんともすんとも言わない。ただ、さらに赤くなっていく頬が答えを如実に語っていた。


「え!まじかよ。お前、高根の花だぞ~、爵位持ってても。まあ、今のうちにあきらめたほうが楽だぜ。」

「アラン!そんなひどいこと言わないの!確かにくっつくのは無理だけど恋するのはヒューの勝手でしょ!」


2人がそのままグダグダと言い争いを始める。その横でヒューの胸の中では恋という言葉が反芻していて、2人の声が途中から聞こえなくなっていた。すると、アリスが叫ぶ。


「このままじゃ、遅刻しちゃう!とりあえず列車に乗るわよ!。」


こうしてそのまま3人はなし崩しにわけのわからないまま学園列車に慌てて乗り込んだ。列車に乗った後もヒューの頬は真っ赤に染まったままであった。


文章力向上、物語の詳細の詰め、誤字脱字確認などのために2日間ほど更新をお休みします。

ここまで読んでくださっている方、今後もよろしくお願いいたします。


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