12 ヤマト
「ううっ、ううっ。」
ミハイルが泣いてた。傍らには目にうっすらと涙をためたアリスがたっている。
「ミハイルさん、どうして死んじゃうんだよ!一緒に宇宙に行ってよ!どうして!」
「・・・。ヒュー、これを。」
そういってアリスはヒューに紙とネックレスを差し出した。
「これは?」
「ミハイルさんからだ。ネックレスのほうは肌身離さずもてと。すまない。私はミハイルさんが長くないことを知っていた。私を責めてもらってもかまわない。」
ミハイルはほんの少しだけアリスをにらんだかと思うとアリスから2つのものを受け取った。
「そんなことしないよ。どうせ、ミハイルさんが僕に隠したがったんでしょ。」
そういいながらヒューは四つ折りの紙を開いた。
ヒューへ
なにかあっても風が連れていく。だから、自由に進め。
ヒューはすでに泣きはらした目から再度ぼろぼろと涙を流しながら笑った。
「これだけ?ふふっ、ぐすっ。こんなにかっこつけて。知ってる?風が連れて行くってソフィアさんがミハイルさんに始めて言った言葉なんだよ。結局好きの一つも言えなかったくせに。」
「・・・。そうか。」
「こうしちゃいられない。ソフィアさんの墓の横にミハイルさんの墓を作ったし、明日の用意をしないと。」
「いいのか?もう少しここにいても。」
「いいよ!ここにいても悲しくなるだけだし、明日もう一回くれば。どうせミハイルさんは予定通りに信号を送れって言ってたんでしょ。」
「どうしてそれを!」
「ミハイルさんが言いそうだもん。」
そういって、ヒューは走って墓を後にした。
「今追いかけるのは無粋だぜ?アリス。あいつだって泣きたい時があるんだ。」
「私だってそれくらいわかっているぞ!」
次の日が来たのはあっという間であった。ミハイルの願い通りに2人とも泣きはらした目で宇宙ビーコンの前に立った。
「ヒュー、信号を送るボタンを押してくれ。」
「え?いいの?アリスさんが押さなくて?」
「お前がいなきゃ完成しなかったんだ。お前に押す権利がある。」
「じゃあ・・・。お言葉に甘えて、行くよ。」
そうしてヒューが宇宙ビーコンに触れようとしたその瞬間。
「ちょっとまったあ!!!」
「どうしたの?先生?」
「実は今の今まで秘密にしてたけど俺ちょっとやらなきゃいけないことがあるから。同盟が来る前にお別れだ。」
「え!どうして!」
「ごめんなあ、ほんとは俺だってお前と一緒に行きたいんだけどどうしてもやらないいといけないことがある。これだけは譲れないんだ。」
「どうしても?」
「ああ、どうしてもだ。」
ヒューは少しだけ黙り込んだ。その間先生の赤い光は先生の気持ちを代弁するかのように強く輝いていた。
「そっか・・・。また会える?」
「もちろん!と言いたいところだが約束はできない。」
「だめ、約束しなきゃ行かせないから。」
「・・・。善処する!善処!ここまでしかできないぜ!」
「・・・。じゃあそれでいいよ。またいつか会おうね。」
「ああ。じゃあ俺は俺が宇宙に行けるだけのエネルギーを勝手にもらっておいたから。ごめんな?」
「いいよ。それくらい。今までありがとう。」
「大したことなかったぜ?あとアリス。ヒューを頼んだ。」
「もちろん、ソフィアさんにもミハイルさんにも頼まれているんだ。お前に頼まれなくても面倒見るさ。」
「ならいいさ。じゃあな!お前ら元気でやれよ!また会う日まで!」
先生は高く飛んで行った。先生の黒が空と同化して徐々に何処にいるかわからなくなる。
「・・・。見えなくなっちゃった。」
「ああ、そうだな。最後までよくわからない奴だったな。」
「確かに、でも先生は先生だから。さっさと押しちゃお!しんみりしたくない。」
ヒューがしっかりと信号を送った。
「なんも起きないね。」
「この惑星は地図上にないし、少しだけ時間かかるんだろう。・・・。ヒューは宇宙に行ったらどうするんだ?たぶん、最初は<ステーメイ>に行くことになるだろうが。」
「どうする?そんなこと考えたことなかった!宇宙に行くことばっか考えてたから!どうしよ!」
「ふふっ、落ち着け。そういうと思っていたぞ。それなら<ステーメイ>にある学園に入らないか?」
「学園?アリスさんはそこの卒業生だっけ。前言ってたね、それもありかも。」
「まあ、いろいろ選択肢はある・・・。あの光、宇宙船の光じゃないか?随分とでかいが、あれは・・・。」
アリスの言う通り、宇宙船らしき物体が近づいてきた。
「え!あホントだ!大きい。すごい。あんなに大きい物体が宙に浮けるなんて。
「もしかして、あれは、<ヤマト>か?救助だけにどんな気合をいれているんだ・・・。」
「そんな<ヤマト>ってすごいの?」
「すごいどころじゃない。私が軍にいたときは<ヤマト>は性能を見ても大きさを見ても軍が保有する宇宙船の中で一にを争っていたぞ。」
「え、それはすごいね。」
そうこうしているうちに<ヤマト>激しい音と風を奏でながら近づいてきた。かつて、アリスが墜落した時とは違い、すぐに降りてくる人影が見えた。降りてきたのは強そうにも弱そうにも感じない中肉中背、中年の男であった。
「初めまして。新たな惑星のみなさん。信号を受け取ったのでこの惑星に参りました。」




