41日目:夕飯どこで食べようか?
「神様のまなざしがこっち向いてた……?」
あれかなやっぱり、自分ところの教会のシスターさんが結婚だからおめでたいねって喜んでたのかな? と思ってたらイオくんがうーん、と唸る。
「遭難事故とかあったし、ゴーラを見てたのかもな……」
「あ、それもあった」
ラメラさんやメリカさんたちも動いてくれてたし、ソワソワしながらこっち見てた可能性もある。
「ナツくんたちは孤児院に差し入れしたり、お祈りしたりもしたのよね。トラベラーでそういうことをしている人って珍しいと思うわ、きっと気に入られてるんじゃないかしら」
プリンさんがそう言ってくれると、そんな気もする。でもサンガでは教会に寄らなかったし……その分湯の里でキノコご飯捧げたりしたからもしや割と好感度高いのかもしれない。
「というかスペルシア教会でナツさん、ネックレス作ってプレゼントしようとか考えませんでした?」
「めっちゃ考えてた!」
「それなのでは。たしか、スペルシア教会では思考も行動もすべてスペルシア神に伝わるんですよね。伝わるだけでそれについてリアクションしてくれるかどうかは運らしいですけど。あと寝てたら届かないらしいです。でも、そこはナツさんですし」
「え、そうなの? 如月くん物知りだね」
「掲示板情報です!」
そ、そっかあ。さすが如月くん、出会った頃から掲示板をしっかり活用している。
どれもこれもありえるな……っていうか全部複合的に合わさった結果がこのネックレスなのではないだろうか、と僕は推理するわけなんだけど。
「なるほど。つまりなんかしら好感度の高いナツが、立場的に好感度の高いルーアのために結婚祝いを作る計画がスペルシア神に伝わって、喜んだスペルシア神が祝福してくれた結果、と」
「なるほど」
「他人事かよ、なるほどじゃねえわ」
ツッコミを入れるイオくんだけど、これは怒ってない顔なので僕は許されているはず。
ま、まあいいじゃん! 良いものが出来たってことだよ!
「それにしてもフレーバーテキストがなんか意味深」
「ルーア向けの文章なのか。渡してみるしかねえな」
祝福のネックレス、スペルシアさんの祝福があるとは言え品質は★4だから、ここは僕の腕があんまりなせいだろうけど。まず伴侶に幸運を運ぶ、はロイドさんを幸せにするよってことだろうから、結婚のお祝いとしては良いと思うんだよね。身につけるものの心を穏やかに保つっていうのも、シスターさん的には良い感じなのかなあ。
とにかく、ネックレスの効果としては結構無難なんだよ。
だがしかし! そこにねじ込まれる意味深メッセージ。
「あなたの優しさを返しましょう、揃って歩んでいく未来のために。……結婚をお祝いしている言葉だと思うけど……ルーアさんがシスターさんだから、今までの働きに感謝みたいな?」
「それだけじゃなさそうな気がします。何かしらの隠しエピソードがありそうですね」
「うーん、渡してから考えよう!」
なんかクエストが生えるかもしれないしね!
僕たちがわちゃわちゃしている間に、ダナルさんはネックレスを入れる箱を何処かから探してきてくれたようだ。きれいに磨いた木製のケースは、メガネケースみたいな感じの、縦長のやつ。
「こういうのは、黄昏通りに売ってるよ」
「へえ、プレゼント感が増して良い感じ!」
ぱかっと蓋を開けると、柔らかい素材の布みたいなのが入っていて、そこの上に魔法石を乗せる。一応傷つかないようにっていう配慮だよね。チェーンは裏側に隠して、魔法石のところだけ表に出しとく感じ。
「ダナルさんありがとう、おいくらですか?」
「いいよいいよ、珍しいものを見せてもらったしね。あげるよ」
「ありがとうございます!」
わーいっと喜ぶ僕に、隣のテトもつられてわーいっと飛び跳ねるので、うちの猫かわいいなって思います。シャルもなんかつられてるのか、「きゅー!」って飛び跳ねている。かわいい。
「ナツさんたちは、教会に寄進をしているんだね。良いことだよ。ぜひ続けてほしいね」
僕たちの話が耳に入ったらしいダナルさんがにこにこしながらそう言ってくれるので、僕は元気に「はい!」と答えておいた。僕は、ナツお兄ちゃんすごいと言われ、尊敬のまなざしでみてもらえる未来を、諦めないぞ!
「ナツさん、そんな野望が……」
「こいつ子どもと一瞬で打ち解けるせいで同格の仲間だと思われてるからな……」
「しみじみ言わないでいただけますか!」
「麦チョコくれたいとこを大事にしろ?」
「あの子は良い子だけれども!」
くっ、イオくん流石に覚えてるか。僕がイオくんを友達だよと紹介したら「ナツともだちいたんだな!」と麦チョコくれたいとこのことを……! ちなみにイオくんはその時食べた麦チョコが初めて食べた麦チョコになったらしい。
麦チョコ美味しいよね!
ダナルさんが嬉しそうに語ってくれたことには、すべての街にスペルシア教会があり、住人の信仰を集めているとのこと。うっかりうたた寝で敵の侵入を許し、戦争中も寝ちゃってたスペルシアさんだけど、それでも住人からの信仰に揺るぎはない。
なぜなら善性の神様なので。
そして戦後復興のときに、めちゃめちゃに泣きながら頑張ってくれたところを見ているので。
スペルシアさんの眷属である竜人さんたちも、命がけでみんなを守るために頑張ってくれていた。そういうのを全部ひっくるめて、スペルシア信仰というのは強固なものなのだ。
だから、スペルシア教会に寄進しましたよとか、祈りに行ってますよとか、併設の孤児院にも色々寄付してますよとかいうのは、住人さんたちにとっては相当に印象の良いお話なのである。
何なら今ダナルさんからの好感度確実に上がった感じがするもんね。
「イオくん、今度サンガに戻ったら、あそこの教会にも行こうね……」
「そうだな。サンガだと別のことで手一杯になって行けなかったし」
忘れずにメモしておこう。僕すぐ忘れるから。
色々あったけど、プリンさんのところの契約獣たちが1日の召喚限界を迎えたので、ハサくんとガンちゃんは送還になった。良いタイミングだったので、ダナルさんとロミちゃんに別れを告げて僕たちは食事へ向かうことにする。
ピーちゃんはまだまだ平気だけど、このあとは夕飯を食べに行くので、あんまり食事に興味がないピーちゃんも送還。
おいしいのたべないのー?
お食事大好き! のテトさんは不思議そうだけど、まあそこは好みだから……。シャルは一緒に色々食べようねー。
ルーアさんへのプレゼントも出来たし、もう今日のタスクはこなしたって感じだ。達成感を感じている僕である。
「黄昏通りをもっと案内する予定だったのに、なんか楽しくなってしまって、申し訳ないわね」
「いえいえ! 結婚式に着ていく服を選んでもらって助かりましたよ」
「そうそう。僕とイオくんで選んでたら真っ黒ブラザーズになってたと思う」
「黒が無難だろが」
イオくん憮然としてますが、今の僕が真っ黒スーツ着たら壊滅的に似合わないんだよ。イオくんは黒でも全然似合うだろうけど。
ナツはしろがいいのー。
「僕は黒似合わないもんねえ」
テトとおそろいだもんー。まっしろぶらざーず?
「テトの語彙学習能力すごいな!? 僕とテトで真っ白ブラザーズだね!」
にゃふふー♪
褒められて嬉しいテトは、ドヤ顔で僕にすり寄るのであった。うちの猫賢くて最高だな、撫でましょう。あ、シャルが頭の上にいるんだった。ついでにシャルも撫でとこう。
「ところで、夕飯どこで食べる? 僕たちも一応いくつかお店知ってるけど」
「あ、俺はそんなに開拓してないんで任せます」
如月くんは僕らに一任してくれる感じか。プリンさんはどうかな?
「お昼はパスタ屋さんを紹介したし、夕飯だと……ちらし寿司を出してくれるお店とか、鯛の塩焼きを出してくれるお店なら紹介できるわよ」
「ちらし寿司!」
めっちゃ惹かれるやつだ! 僕たちが紹介できるお店だと……海鮮丼の「海の夢亭」、フォーのお店「米道」、ピザの「カフェ&バー シーサイド」、隠れビストロ「白雲亭」……リゲルさんと一緒にいったところはやめとこう、一応ショップカードはあるけどレアだし。
色々提案してみたところ、プリンさんが希望したのはシーサイドだった。
「南門方向の飲食店って全然ショップカードが揃ってないのよ。よかったら紹介してほしいわ」
「じゃあ、ちらし寿司のお店とショップカード交換出来る?」
「もちろんよ!」
というわけで、僕たちはちらし寿司のお店のショップカードを受け取り、プリンさんをシーサイドへとご案内するのであった。
ディープディッシュピザ! 前回食べた時もめっちゃチーズが伸びて美味しかったやつ! なんだかんだ行って僕たちがゴーラで一番通ってるのって、シーサイドかもしれないなあ。一応、ここでの定番のお店になってる。
「あそこなら俺も知ってるので、案内しますね」
と言ってくれる如月くんに道案内をお任せして、プリンさんと如月くんの後をついていくことにした僕たち。シャルは如月くんの肩に移動して、きゅうきゅう鳴いている。遊んだことの報告でもしてるのかな?
プリンさんと如月くんは、サンガでも結構一緒に行動してたみたいだし、仲良しなんだよね。如月くんの相方さん、本気で忘れ去られちゃうんじゃないだろうか。頑張ってほしい。
「ナツ、そういや孤児院に寄付するって言って絵本買ってなかったか? 渡したか?」
「あっ」
「……メモしとけ?」
呆れたようなイオくんの眼差しに、素直に「はーい……」と返事する僕である。そうだよ絵本! せっかく買ったのに忘れてたよ。うーん、僕もう少し記憶力良くなりたい……。でもネックレスをルーアさんに届けるために教会へはまた行くつもりだから、そのときには忘れないようにしないと。
「それと、明日領主のところへ行くだろ?」
「エルフさんって言ってたね」
「その時、船借りれないか聞いてみるか。カパルには聞いたんだが、港の船は貸せないから、どこかから購入するか個人所有の船を借りるしかないらしいんだ」
「いつの間にそういうの聞き出してるのイオくん、まさか諜報機関の構成員では……?」
「普通に褒めろ」
「さすが話術が優れているイオくん! 頼れる!」
「よし」
こういうのイオくん本気で上手いからな、僕は尊敬のまなざしを向けるしかないのである。
「でも、船? なんか必要だったっけ」
「ナムーノにボーンパールの取り方習っただろうが」
「それか!」
リィフィさんのお土産にするために狙ってたボーンパールか! あ、忘れてない、忘れてないよ流石に! えっと、南の砂浜から南東へ行った小島の入江……に、いっぱいいるんだったよね。そっかー、流石に泳ぎでは行かないか。距離を確認して近くだったら、今度こそ忍者走りで水面を行こうと思ってたんだけど。
「ナツがへばる程度には距離があるぞ」
「地図にマーク付いてた? うーん、確かにこの距離を歩いては無理かも」
忍者のロマン、僕には難しいなあ。
「領主は小型船から大型船までいくつか船を所有してるというからな、小型船を借りて小島まで行けたらありがたい。水上走りを試したいなら、その小島の周辺でやればいいんじゃないか」
「じゃあ、如月くんも誘わなきゃね」
お守り使いたそうにしてたもんね、一緒に水上を走るのだ。ボーンパールの品質とか効果については、僕の幸運さんを信頼してるのでなんとかなる気がするし。
イオくんに交渉をおまかせすれば問題ないでしょう!
明日会う予定の領主様、気さくな人だといいなあ。




