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41日目:ご紹介しましょう。

 夜に来るのは2度目の「カフェ&バー シーサイド」。

 このお店では、テトがフェアリーさんたちに囲まれてめちゃめちゃちやほやされたのを覚えているらしく、途中からご機嫌でスキップしだしたテトである。

「テト前回美味しかったのなに?」

 ぱんけーき! むらさきいろのやつー!

「はちみつとブルーベリーのパンケーキだっけ? じゃあそれ頼もうね」

 わーい♪ このおみせねー、ねこのおさらなんだよー。すてきー。

 喜ぶテトの頭の上で、シャルもなんかわかんないけどうれしー! って感じの顔をしている。かわいい。そしてお店に近づいたら、店員さんがテトのことを覚えていたようで、

「今の時間だと1階は酔っ払いが多いので、外階段登って2階が良いですよ」

 と教えてくれました。ありがとうございます。


「外階段なんてあったんだ」

「2階のバルコニー席につながってるな。外で食べるか?」

「広い席あるところで!」

 というわけで、今日はバルコニーの6人がけ席を確保した。いつも通り片方を僕とテトがもらって、向かい側に残りの3人が座る。

「注文はディープディッシュピザでいいか? ナツ何か食べたいものがあったら言え」

「前回美味しかったトマトリゾットお願いしたい! あとテトにはちみつとブルーベリーのパンケーキ」

「俺、注文一緒に行きます。プリンさん、メニューのこっち側が夜用ですよ」

「へえ、ランチもやってるのね。夜用のメニューがこっちで……じゃあ、このシーフードグラタンパイをお願いするわ」

「了解です!」

 もはや手慣れているイオくんと如月くんがさくっと1階に注文しに行ってくれる。まあ、あの2人なら酔っぱらいに絡まれても上手くあしらえるでしょう。僕だと……陽気なおっさんとかだったらめっちゃ会話しちゃうかもなあ。


 プリンさん目当てのナンパとかはあるかも、と思って周囲を一応警戒してみたけど、特別こっちに注目していそうな人はいなかった。ほっと一安心である。

「プリンさん、弓の強化とかした?」

「弓はあくまでサブ武器だもの、強化できるほど良い武器は買ってないわ。ナツくんは杖の強化したの?」

「ゴーラで良い杖作成師さんを紹介してもらったんだー」

 プリンさんと如月くんはレスポンスが早いから、フレンドメッセージのやり取りは頻繁にしてて、プリンさんの近況は結構知ってる感じだったんだけど。それでも細かいことは直接会話するほうが早いので、案外話題は尽きないのである。

「……なのよ。ハサくんは、兄気質っていうのかしら? ガンちゃんを何かと気遣ってくれてすごく助かってるの」

「へー、やっぱり個性がでるねえ。テトは甘えん坊なほうだけど、シャルが来たから先輩としてしっかりするかも?」

 せんぱいだからがんばるのー。

「きゅ!」

「この通りやる気に満ちています」

「えらいわね!」


  向かい側からプリンさんが撫でてくれたので、テトはテーブルの上に伸びをして頭を寄せている。撫でられのプロなのでこういうの上手いのだ。シャルは如月くんの席のところにいて、そわそわと如月くんの帰りを待っている。

 それほど待たずに、トレイを持ったイオくんたちが戻ってきた。

「ピザとパンケーキは後で店員が持ってくるって」

「焼きたてだね!」

 パンケーキは後と聞いて、テトはしょぼーんとした。表情豊かでとても良いと思います、慰めつつ撫でましょう。

「これナツのトマトリゾット。あと全員分のレモン水な」

「ありがとう! イオくん何にした?」

「プリンと同じシーフードグラタンパイ」

「いいねえ!」

 グラタンも良いものです。熱々のまま食べるのが良い……と思うけど、イオくんの前でそれをやるとやけどするぞって怒られるのでやらないぞ。

「シャルは何食べるの?」

「テト先輩と同じのが良いそうなので、パンケーキ頼んできました。こっちがシーフードグラタンパイ、俺はクリームチーズリゾットで」

 というわけで、ひとまず全員でいただきます。



 結論として、シャルは甘いものよりも普通の食事の方が好きらしいことが発覚。

「ディープディッシュピザってカロリーの暴力みたいな食べ物ね、リアルではとても食べられそうにないわ……!」

「シャルがめちゃくちゃ気に入って半分食べたんですけど、大丈夫なんですかねこれ」

「契約獣にとって食べ物は嗜好品だから、全部食べて大丈夫って聞いてるよ!」

 そう、シャルがチーズをめちゃくちゃ気に入りましてね。

 色々食べさせてみた結果、どうやら乳製品が特に好きらしかった。これはイオくんの作った美味しいシチューを食べさせたくなる……! 明日にでも是非。

「その小さい体によくあれだけ入ったな……?」

 イオくんはなんか見てはいけないものを見たような顔をしている……けど、嗜好品だからなあ。胃袋で消化してるわけじゃなさそうなんだよね。どうやって吸収してるのかについては、考えないようにしよう。


「じゃあ、みんなは明日領主様に面会ね。私は教会へ行って、ルーアのドレスに刺繍をさせてもらってるから。何かあったらそちらで会いましょう」

「わかりました。マメにフレンドメッセージ入れますね」

「プリンさん、今日作ったネックレス渡してもらっても?」

「だめよ、それはちゃんとナツくんから渡して頂戴。私じゃ説明できないわ」

「ぐぬぬ……! それは確かにそう」

 あの効果文だからなあ、流石にプリンさんに丸投げは良くない。うーん、ダナルさんは初めて見たって言ってたけど、もしかして教会関係者さんにとっては馴染みのある効果だったりしない? 一縷の望みをかけてさらっと渡そう。

「頑張って渡します……!」

「それが良いと思うわ」


 プリンさんは、なんと黄昏通りに下宿をしているということで。

 ギルド前通りと南北通りが交差する大きな交差点で、プリンさんとは一度お別れだ。明日また会えたらって感じだね。ばいばーいと大きく手を振ってから、僕たちはギルドへと向かう。今日も生産してから寝る……というのは建前で、果たさなければならないミッションがあるのだ。


 ズバリ!

 シャルをエクラさんに紹介すること!


 生まれたら紹介するって約束したからね、大事なミッションなのだ。それに、如月くんは何かと僕たちと一緒に行動することが多いから、これからもエクラさんとは縁があるだろうしね。シャルにも聖獣さんたちの耐性が必要でしょう!

「というわけで作業場を2時間借りました!」

「はい。シャル寝るな、すごい神獣さんを紹介するから」

「きゅ?」

 テトの頭の上で船を漕いでいたシャルをつんつんしてつまみ上げ、如月くんが作業場のドアを開ける。テトがその後にたったか続いて、調理器具が揃っているテーブルのあたりでちょこんと座った。

 この猫、イオくんが美味しいもの作る時間だって思ってるな……。

 いつもなら正しいけれども。


「テト、エクラさんが来るよ」

 エクラー!

 僕がインベントリからエクラさん像を取り出して机の上に置くと、テトは目を輝かせて駆け寄ってくる。不思議そうなシャルを机の上に置いて、イオくんが最後に作業場に入って鍵をかけた。

 よし、では呼びましょう!

「おいでませエクラさん!」

 わっと魔力を流すと、エクラさん像はいつものようにキラキラと輝くエフェクトを撒き散らして、ぱあっと白光を放ってから動き出す。

 この召喚っぽいモーションにも何パターンかあるのがわかってとても良いと思います。エクラさんは今日もご機嫌な様子でぱたぱたとテトと僕の回りを飛んだ。……いつもよりきらきらしてる気がしないでもないけど、もしや神気に溢れてたりするかな?

「こんばんは、エクラさん!」

「はい、こんばんは。卵から生まれた子を紹介してもらえるのかしら?」

 エクラさんがふわふわとシャルの上に移動すると、シャルはびくっと体を硬直させる。やはり何か圧っぽいものが……! でもエクラさんめっちゃ嬉しそうにしてるから指摘しづらい。


「きゅ、きゅぅ……」

 何事か訴えつつ如月くんの手にしがみつくシャル。基本人懐っこい子だから、これは人見知りをしているという感じではない。やはり何かこう、神獣さん的雰囲気というか、そういうのに圧倒されているやつである。

「俺の契約獣のシャルです」

 しかし、頼られた如月くんはシャルをかばうどころかさっとエクラさんの前に差し出す。最も頼るべき如月くんに隠してもらえなかったシャルは涙目である。

「大丈夫、優しい神獣さんだから」

 ってしれっと言い切る如月くんだけど、シャルは「きゅうううう」とますます如月くんの手にしがみつくのであった。爪は立ててないみたいなので、気遣いができてえらいと思います。

「あらあら。怯えさせてしまってごめんなさいね。ついわくわくしてしまって」

 エクラさんは自分の状態にようやく気づいたようで、くるっと一回転するとさっきよりきらきらが抑えられた。うん、いつも呼び出す時はこれくらいのはず。


 シャル、だいじょうぶなのー。エクラとってもやさしいのー。それに、おいしいはちみつをつくってくれるとってもすてきなちょうちょさんなのー!

「きゅ。きゅー?」

 テトせんぱいにまかせるのー!

 エクラさんの神気が抑えられた結果、テトに励まされたシャルは恐る恐る如月くんの手を離す。えっへんとやる気に満ちているテトが、エクラさんに「シャルっていうのー! さんふぇねっく? っていうやつなのー!」と元気に後輩を紹介していて大変微笑ましいですね。かわいい。

 テトの紹介をにこにこしながら聞いて、エクラさんは改めてシャルに近づいた。今度は涙目で逃げるようなことにはならず、ぴっと背筋を伸ばしておすわりポーズである。

「きゅ、きゅー!」

「まあ、元気に挨拶できてえらいわね。強い子に育つのよ」

 さらさらーっとエクラさんが羽ばたいて、祝福のきらきらがシャルに吸い込まれていく。なぜかドヤーっと自慢げな顔をするテトが、「テトもしゅくふくもらったんだよー」とシャルに説明していた。そうだよ、テトはエクラさんだけじゃなく、赤炎鳥さんの祝福も、たくさんの妖精類さんたちの祝福も貰ってるからね、強い子です。


「火属性の子なのね、ゴーラでは珍しいわ」

「そうみたいですね。襟巻きになるくらいには大きくなるみたいですけど」

「その子はテトみたいに一気に大きくなったりしないから、毎日少しずつ魔力をあげると良いわ」

「あ、そうなんですね」

 如月くんはテトの成長を見てるから、またたく間に大きくなってしまうと思っていたらしい。成長速度にも種族差みたいなのがあるのかな? 大きい子ほど早く成長するのかも。テトは1日ごとにどんどん大きくなっていったから、今思うとちっちゃい頃のテトももう少し堪能しとけばよかったかも。

 まあ毎日かわいいので別に良いけどね! 

「テト、先輩としてちゃんとシャルを導いている……えらいので撫でます」

 にゃふー♪ 


 僕がテトを撫でている間に、シャルとエクラさんはあっという間に打ち解けて寄り添っている。エクラさんの優しさがシャルにも伝わったかな?

 イオくん、シャルにもあのはちみつ食べさせてあげよう! 美味しいから! 

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