41日目:プロのアドバイスは有益
ところで、<細工>系のスキルで作ったアクセサリと、ダナルさんみたいな職人さんが作るアクセサリの違いってなーに?
と聞いてみたところ、簡単に言うと「スキルを使って合成する」か、「基本人の技術で作って、スキルを補助的に使う」かの違いになるそうです。
そもそも、職人さんたちも<細工>スキルや、その発展型である<石細工>とか<金属細工>とかは持っているのである。<細工>は基礎の組み合わせや色の相性なんかを覚えるために使われて、その次に専門的な<石細工>とかでは自分で配置を考えたりアクセサリの種別を指定したりする。
で、この専門的な細工スキルを1つでもレベルカンストすると、職業で「宝飾職人」が選べるようになるのだそう。本格的な手作りアクセサリへの道は、この職業になってからが本番なんだとか。
あ、これ住人さん専用ね!
トラベラーには生産職は出ないのだ。
<細工>を持ってるだけの人なら、職業が何であろうとアクセサリは作れる。でも1から手作りしても……例えば市販の指輪を革紐に通すとかで簡単なアクセサリを作っても、効果は乗らない。<細工>で合成したものにだけ何らかの効果が付くってことだ。
でも職業が「宝飾職人」であれば、全部手作りしたものにも効果が乗る。そして<細工>系スキルで使えていたアーツを補助的に使えるから、思うままのアクセサリ制作が可能であるらしい。
つまり、全部手作りかつ効果が乗るアクセサリは、住人さんにしか作れないということである。
あとまあ当然、全部手作りのほうが品質が良くなって売値も高くなります。
「ちなみに俺は美容系の効果をつけるのが得意だね」
「女性陣大歓喜だ!」
もちろん、アクセサリスロットに装備しないといけないんだろうけど、住人さんたちは戦闘をしないから美容効果っていうのは大きいだろうな。ダナルさんのお店、どうりで若い女性で溢れているわけだよ。
「魔法石はあんまり使わないから、ちょっと興味があるね。是非、作るところを見せてほしいね」
「本職の職人さんに見せる……だと……!?」
そんなめちゃくちゃプレッシャー掛かりそうなことを……! や、やれと言われたらやりますけれども……! ついでにアドバイス下さい!
ダナルさんはにっこにこで頷いてくれたので、空の魔法石を机に置いてユーグくんを構える。ちゃんと事前申告で<細工>のレベルは低いですって言っといたもん、ダナルさんだって素晴らしい出来とかは期待して無いはずである。
では、いざ!
「えーと、この空の魔法石に魔法を込めるために……使えますように、【ハッピーエフェクト】!」
戦闘中じゃないけど理由があります、どうぞよろしく!
強めに念じつつ魔法を唱えると……なんか一瞬引っかかったけど、ワンテンポ遅れてキラキラ光の渦がシュバッと魔法石に吸い込まれる。なんか今「戦闘中じゃないけど発動するの? どうしよ。うーん、まあいっか!」みたいな僅かな葛藤が感じられた……ような気がする。
許可は誰が出してるのかわからないけど、ありがとうありがとう。
空の魔法石はほんのり金色になって、しゃらしゃらっと金色のエフェクトをまとっている。
「おお、きれい!」
すてきー! きらきらエクラみたいー。
「あ、確かに」
エクラさんが羽ばたくと、金色の粉みたいなエフェクトが周囲に散るんだよね。あれすっごいきれいなんだけど、ちょっとそれに似てるかな。テトにつられてシャルまで魔法石にはしゃいで、「きゅ! きゅ!」ってテトの頭の上で飛び跳ねている。かわいい。
でもロミちゃんが呼んでるっぽいよテト。遊んでたんじゃないの? ……追いかけっこの途中で抜けちゃうのは良くないと思います、ほらみんなのところに戻りな……!
ナツがなにつくってるのかなーっておもったのー。
「ルーアさんへプレゼントするものを作るんだよ。暫く掛かるから遊んでおいで」
わかったー。ピーちゃんせんぱいにごもくならべっていうのおしえてもらうのー。
「五目並べならイオくんが強いよ!」
僕はイオくんに一度も勝てたことがございません。あとオセロも神経衰弱も弱いんだよな僕。記憶力があんまりだから神経衰弱はわかるんだけど……オセロとか五目並べは、先を見通す力が必要だからね。まあそこはイオくんにおまかせするところということで。
そんなことよりも!
魔法石ができたんだから、どんな効果になったかな? えーと、<心眼>さんお願い!
「自分の周囲に幸運を呼ぶことがある。……この効果はどうだろう?」
わずかに、とか少し、とか形容詞は無いんだけど、「ことがある」って表記だと常にってことはないよね。頻度がわからないぞ……!
「おや。そういう効果は見たことがないね」
「ダナルさんでも初見……だと……!?」
それは結構レアな効果みたいだね。ちょっと良い感じのアクセサリが作れそうな予感……! どうですかイオくん!
「……まあ、隠さなきゃいけないほどレアって感じでもないか? 品質も★4だし」
「ルーアさんへのプレゼント、作ってみていい?」
「素材は何にするんだい?」
おや、ダナルさんもちょっと楽しそうに問いかけてきた。やっぱり宝飾職人さんだから、宝飾品を作るとなれば興味があるんだろうね。でも、僕の<細工>スキルはまだレベル4。レベル5になれば素材が4つ使えるようになるんだけども……!
「ダナルさんが見てても面白くないかも?」
「そんなことないよ。トラベラーさんは俺達が知らない素材をたくさん知っていそうだし」
「素材かあ、確かにそれはあるかも」
フィールドで拾ったやつとか、魔物素材は住人さんたちには流通してなさそうだしねえ。うーん、それならちょっと付き合ってもらおうかな。
「ダナルさん、実は<細工>のレベルがあと1つ上がると素材が4つ使えるようになるんです」
「上げるべきだよ」
「ですよね! ちょっとレベル上げ作業してもいいですか? 素材だします!」
「なるほど。組み合わせについてなら少し助言ができると思うよ」
「ありがとうございます!」
やったー! 正直僕あんまりセンスが無いから、本職の方の助言めちゃめちゃ頼もしい。よろしくお願いします!
*
「その2つは属性が反発するからあまり良い効果にならないよ。しっかり<鑑定>するんだよ」
「むう、金属板と革紐はあんまり相性よくないんですね」
「金属の種類によるんだよ。それはいろんな金属が混ざってしまっているから、相性の悪い素材が増えているんだと思うよ。なるべく単一の金属を使うほうが良いね」
「なるほど……!」
ダナルさんの即席組み合わせ講座、めちゃめちゃ勉強になる。僕だけじゃなくてプリンさんもめっちゃ真面目に聞いてるし、如月くんも「調薬のヒントになるかも」ってメモ取り始めた。
イオくんは、料理に関係ないからテトたちの方に混ざって五目並べしてるよ。テトがさっきから「むむむー!」って唸ってるから負けたんだろうな……。まあイオくんは妥協しない男なので、頑張れ。
「じゃあこの魔法石と……この貝と金属板でどうでしょう?」
「うん、いいね。それなら良いものができると思うよ」
「やった! じゃあこれを……【アクセサリ合成】! MP200!」
スキルレベル上げのために色々な組み合わせてアクセサリを作っているんだけど、僕って今まで植物系の素材ばっかり使ってたから、今は金属とか石とかを中心にやってみてる。いろんな素材を使うほうが、少し経験値効率がいいかも? 気の所為かもだけど!
「できた! 品質は★3だけど、この組み合わせだと美容系の効果が乗るんですねー」
「そうそう。貝を使うと良いよ」
ダナルさんが使わない貝や布の端材とかを分けてくれたので、自分の持ってる素材と混ぜて色々作ってみてるんだけど、面白いなあ。僕がたくさん拾っておいた幸運のどんぐり……正式名称忘れたけど、あれを素材として提供したらすごく喜んでもらった。
幸運系の素材は、ゴーラにはそんなにないらしい。海由来の素材は美容とか外見に作用するのが多いみたいだし。
で、さっきからスキルレベルを上げるために何個かアクセサリを合成してるんだけど。今作ったのは小さな貝とさっきダナルさんが選ばなかった方の闇魔法を込めた魔法石、それから金属製の板を組み合わせたもの。
長方形の金属板を使うと、バレッタになりやすいと聞いたので、それをイメージしてみたよ。<材質加工>スキルで硬度や色味を調整してシックにまとめてみた。魔法石だけは色彩調整出来なかったけど、貝は少し加工するとイメージがかなり変わるので面白い。
「少しだけ美髪に見える効果だって。プリンさんいる?」
「ありがとう!」
出来たアクセサリは自分では使えなさそうなので、この中で唯一長髪のプリンさんへ進呈。すると、プリンさんが集めていたアクセサリ用素材を交換に差し出してくれた。
海で磨かれた色ガラスとか、珊瑚の欠片とか、面白そうなものばっかり!
「じゃあ、次はその珊瑚を使ってみようか」
「はい!」
ダナルさんに言われて組み合わせを考えて……そうするとダメ出しとかアドバイスを貰えるので、それに従って組み合わせを変えてみたりする。
素材には主に、海のもの、大地のもの、空のもの、の3種類に分かれるらしい。もちろん例外とかも色々あるけど、ざっくり分けるとその3種類。宝石と魔物素材は特に相性が悪いとか良いとかが無いから、組み合わせするならあと1つ何か欲しいってときに入れる枠。
ちなみに魔法石は、もともとが魔石だから、一応魔物素材。
海のものと空のものの一部が相性が悪くて、大地のものと海のものの一部が相性悪くて、空のものと大地のものの一部が相性悪い……一部ってなんだよ! と思うけど、<素材鑑定>を持っていれば相性は鑑定結果に出るんだって。
「今まで見たこと無いですが!?」
って驚いた僕に、ダナルさんは穏やかに答えた。
「素材同士に相性があるってことを知らないと、出てこないんだよ」
「知ることって大事……!」
宝石は……お高いヤツのほうが良い効果持ってるのが多いけど、気軽に使えるものじゃない。天然石も一応宝石カテゴリだから、そっちのほうが一般市民には人気だって。あとトラベラーにとっては魔物素材が幅広く使える枠だから、今度からドロップ品でアクセサリ用の素材が出たら頑張って集めなきゃ。
奥が深いなあ、アクセサリ。
そのへんの組み合わせについてダナルさんに聞きつつ、そしてMPポーションをのみつつ、更に2つのアクセサリを合成すると、そこでようやくスキルレベルが5に上がった。よし!
「レベル上がりました!」
嬉々として報告したら、ダナルさんは「いいね」とにっこりしてくれた。さて、それではルーアさんのためのアクセサリ、作らせていただきましょう。
「使う素材は、さっき作った魔法石、ネックレス用のチェーン。えーと、チェーンと相性が良い素材は……」
「さっきの小さい魔法石も良いよ」
「豪華になるかも! じゃあそれと……うーん、これ何のドロップだったか忘れちゃったけど確か魔物素材だったはず……」
インベントリから引っ張り出したのは、チェーンよりも細い、銀色の紐。これはスパイダー系かワーム系の敵が落とした素材で、アクセサリ用だったからとっておいたやつだった気がする。美彩銀糸っていう綺麗な名前がついてて、糸なんだけどぱっと見金属に見えるやつ。
「先に色味を調整しますね」
「うん、チェーンの色に合わせたほうがいいね」
というわけで<材質加工>してから素材を並べて……最初にしっかりイメージするのが大事。大きな魔法石を中心に、小さい魔法石は大きいのの下に吊り下げる形かな? 銀糸はチェーンと宝石に絡んで、こう、レース模様みたいになってくれるとありがたい。
チェーンの色がちょっと明るすぎるから、少しだけ彩度落として……よし! あ、忘れずMP回復!
「じゃあ行くよ。【アクセサリ合成】! MP350!」
お、結構持っていかれたぞ。
ぱあっと光り輝いた素材が、あれ、なんか紫色っぽいエフェクトがでた。
これはレア演出かもしれない。わくわくしながら見ていると、紫色の光はきらきらの銀光を含んでぐるぐると回転する。
「い、イオさーん! ナツさんが!」
なんか如月くんが即座にイオくんを呼んでるんだけど、わかってらっしゃる。僕がなんかやらかした時はイオくんがフォローしてくれるという厚い信頼が見えますね……。
「何やらかした!?」
即座に戻ってくるイオくんもなんか訓練されてるな……と思う僕です。まだ何もやらかしてません!
「なんかこれから起こりそうなところよ、これ見て頂戴」
「うわ。絶対なんか起こるやつじゃねえか……!」
「待機時間が長いから、なんか頑張ってくれてると思うんだけど……」
もしや僕が思い描いた通りの形になるように頑張ってくれてるのかもしれない。素晴らしい! 是非頑張っていただきたい。
遊んでたイオくんがこっちに来たから、契約獣のみんなも「なんだなんだ?」って感じで机の周りに集まってくる。テトは相変わらずシャルを頭の上に乗っけたままでしゅたっと僕の右側に陣取った。
できあがるのー? むらさきいろですてきー。
「もう少しでできるよ」
テトがわくわくの表情で目を輝かせる。その時、ようやく光がしゅうっと収束した。ころんと机の上に落ちた女性用のネックレス。……お、おお……! 一人で作らなくてよかった、僕一人だったらこんなきれいな感じにならなかった気がする……!
きれーい♪
「きゅう~♪」
シャルとテトがそっくりな顔で喜ぶので、僕も嬉しくなってしまう。だいたいイメージ通りのネックレスが出来たけど、問題は効果かな? なんか良い感じになってますように……いざ、<心眼>!
祝福のネックレス 統治神スペルシアの祈りを含んだ祝福されたネックレス。身につける者の伴侶に幸運を運び、身につけるものの心を穏やかに保つ。品質★4
ーーあなたの優しさを返しましょう、揃って歩んでいく未来のために。
……え、スペルシアさん!?




