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魔が差した放課後 ――消えない傷痕

そして、あの四年生の冬の、決して忘れられない、今でも胸が締め付けられるような事件が起きた。


ある日の放課後、私はいつものように強烈な寒さと空腹の中にいた。お腹と背中がくっつきそうなほどの飢餓感。頭の中は「何かを食べたい」という本能だけで支配されていた。


気づけば、私は近所にある小さな個人商店の前に立っていた。店先の棚には、色鮮やかなスナック菓子やチョコレートが並んでいる。店の奥からはテレビの音が聞こえ、店主の姿は見えなかった。


(一つくらい、いいや……誰も見てない。お腹がすいて、もう死にそうだもん……)


魔が差した、という言葉すら生ぬるい。私は完全に理性を失っていた。震える手で棚の菓子を一つ掴み、体操服のブカブカの胸元にねじ込んだ。


しかし、私の生存戦略の根幹であった「半袖半ズボン」という格好が、ここでは最悪の仇となった。真冬の街で、素肌に半袖半ズボンの体操服を着た小学生など、どこにいても目立つ。不審な動きは、店を出てすぐに、近所を通りかかった大人や、戻ってきた店主によってあえなく見破られた。


「おい、お前! 何を持ってるんだ!」

怒鳴り声を浴びせられた瞬間、私の頭は真っ白になった。


気づいた時には、商店の狭い奥の部屋に座らされ、連絡を受けて血相を変えて駆けつけてきた母が、私の横で床に頭を擦り付けんばかりにして謝罪していた。


「申し訳ありません! 本当に申し訳ありません! 私の育て方が悪かったのです……!」


母は涙をボロボロとこぼしながら、なけなしの財布からお菓子の代金を支払い、何度も何度も頭を下げていた。その母の小さくなった背中を見た時、私は自分の仕出かしたことの重大さと、恥ずかしさと、申し訳なさで、胸が引き裂かれそうになった。世界で一番大好きな母に、こんな惨めな姿をさせてしまった。寒さも空腹も、一瞬でどこかへ吹き飛んでいた。


家に帰ると、母は私を居間に立たせ、ボロボロと涙を流しながら、今までに聞いたこともないような激しい声で叱りつけた。

「確かにうちにはお金がないわよ! 毎日満足にご飯も食べさせてあげられない! だけどね、〇〇! 私はあなたを、人様のものを盗むような汚い泥棒に育てたつもりは絶対にない! そんなことをするくらいなら、お母さんと一緒に……!」


母の言葉は、私の胸の最も深い場所に突き刺さった。私は床にへたり込み、大声を上げて泣きながら、何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続けた。


その日は、夕食はいらないといって床についた。夕食抜きの罰を自らに課したともいえるが、そもそも、罪悪感と自己嫌悪で胸がいっぱいで、食事など喉を通るような状態ではなかった。私は這うようにして自分の布団に入り、目を閉じた。


静まり返った家の中で、台所の方から何の音もしないことに気づいた。母もまた、自分を責めるようにして、夕食を摂っていなかったのだ。私のために身を粉にして働き、裏切られ、それでも息子を愛してくれている母。その心痛を思うと、涙が止まらなかった。


その夜の空腹感は、間違いなくこれまでの人生で最大のものだった。胃が雑巾のように雑に絞られるような痛みが続いた。しかし、それ以上に、自分の犯した罪への激しい悔恨と、母を傷つけたという猛烈な罪悪感が、空腹の苦しみを完全に凌駕していた。一晩中、暗闇の中で天井を見つめながら、私は二度と、何があっても他人のものには手をつけないと、神に誓うように心に強く刻み込んだ。


翌日以降、我が家は何事もなかったかのように、いつもの貧しくも静かな生活へと戻っていった。母もそれ以上、万引きの件を蒸し返すことはなかった。だが、あの夜に私の中に生まれた「本当のプライド」は、その後の過酷な日々を生き抜くための、絶対的な心の背骨となったのである。


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