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逆転劇の幕開け ――誇り高き拒絶と十五歳の意地

合格発表から数日後の夜、夕食を終えて片付けをしていた時、父と母から真剣な顔で「〇〇、妹、ちょっとここに座りなさい」と呼び出された。


ちゃぶ台を挟んで向かい合った父の表情は、いつになく引き締まっており、どこか憑き物が落ちたような清々しい顔をしていた。


「二人とも、これまで本当に長い間、苦しい思いをさせて済まなかった。……実はな、先月、俺がずっと仕込んでいた大きな取引が、奇跡的に成立したんだ。来月からは、これまでとは比べ物にならないくらいの大きな収入が定期的に入ってくる。これまでの闇金や親戚への借金も、これでようやくすべて綺麗に返済できる目処が立った。来月からは、普通の、人並みの生活をさせてやれる。本当に、今までよく耐えてくれた。ありがとう」


父はそう言って、私たち子供に向かって深く頭を下げた。

あまりにも突然の、そして劇的な「我が家の逆転劇」だった。隣にいた母の目からは、安堵の涙が止めどなく溢れていた。


母はすぐに私の手を握り、弾んだ声で言った。


「〇〇! これでもうお金の心配はいらないのよ! 明日、すぐにでもデパートに行って、高校生の私服をたくさん買ってあげる。だから、もうその半袖半ズボンはやめなさい! 新聞配達も、高校はバイト禁止だし、もう辞めていいからね!」


普通の子供なら、ここで大喜びして新しい服をねだるだろう。しかし、私はなぜか、自分でも驚くほど冷静に、即座に母の言葉を拒絶していた。


「ううん、お母さん。僕、高校生になるまでの残り一ヶ月あまり、今まで通りこの半袖半ズボンで通したいし、新聞配達も最後まで続けたい」


母は呆気にとられたような顔をした。


「どうして? もう無理に我慢する必要なんてないのよ?」


「我慢してるんじゃないんだ」私は笑って言った。「これは僕が自分で決めて、ここまで戦ってきた格好だから。中学生のうちは、中学生の僕のままで終わりたいんだ。新聞販売店のおじさんにも、途中で投げ出すような真似はしたくない」


母はしばらく私の目を見ていたが、やがて諦めたように優しく微笑んだ。


「……本当に頑固な子ね。まあ、あんたがそうしたいって言うなら、お母さんは止められないわね」


こうして、二月後半から三月にかけての残りの日々も、私はへそ出しのピチピチの中学校体操服のまま、極寒の朝刊配達を続けた。服を買ってもらえばよかったと後悔した瞬間がなかったと言えば嘘になるが、自分の力でこの八年間の物語を完結させたいという、一人の男としての意地が勝っていた。


ただ、一つだけ問題が残っていた。三月上旬に迫った「中学校の卒業式」の服装である。家計の状況が良くなったとはいえ、さすがに卒業式のためだけに中学校の制服を買うのはもったいなかった。今回は囲碁・将棋部の二年生の後輩に頼んで、彼の制服の学ランを貸してもらえるよう話をつけ、準備は万端整っていた。


卒業式の数日前、予行練習のために登校した日、私は放課後に担任の先生から職員室の横の面談室へ呼び出された。実は、私自身も最後の最後で、ある大きな迷いを抱えており、先生に相談したいと思っていたのだ。


部屋に入り、パイプ椅子に座ると、私は先生が口を開くより先に、自分の胸の内を切り出した。


「先生……僕、やっぱり借りた制服じゃなくて、この半袖半ズボンの体操服のまま、卒業式に出たいです」


先生が驚いて反対するだろうと、私は身構えた。どうやって反論しようかと、頭の中で必死に言葉を探していた。しかし、先生は驚く風もなく、ただ「そうか」と短く一言だけ呟いた。そして、机の中から一枚の表彰状のような紙を取り出した。


「〇〇、ちょうど良かった。お前に一つ、大事な大役を頼みたい。今年の卒業生総代、つまり、生徒の代表として、壇上に上がって校長先生から卒業証書を受け取る役だ。お前がやってくれるな?」


「えっ……!?」


あまりにも突然の光栄な要請に、私の頭は混乱した。


「僕が、代表ですか……? でも、そんな大役、僕みたいな格好の人間が壇上に上がったら、式の雰囲気がぶち壊しに……」


「お前だから頼んでるんだ」先生は力強く私の目を見た。「五年間、雨の日も雪の日も新聞を配り、そのボロボロの体操服のまま、街で一番難しい高校に合格した。お前以上の適任者が、この学年に一人でもいると思うか? 服装なんてどうでもいい。堂々と受けて立て」


先生の熱い眼差しに、私は気おされながらも、「……はい。やらせていただきます」と答えるしかなかった。それから一時間、先生の指導のもと、何度も壇上への登り方や、証書を受け取る所作の練習を繰り返した。


別れ際、私は念を押すように聞いた。


「本当に……本当に、半袖半ズボンの体操服のままでいいんですか?」


先生はニヤリと笑って、「お前の好きな服装でいい」と言ってくれた。


それでも、私は卒業式に半袖半ズボンの体操服で出るか制服で出るか迷っていた。両親に半袖半ズボンを反対されたら止めよう。その夜、私は両親に「卒業生代表に選ばれたこと」を伝え、そして「半袖半ズボンの体操服で式に出てよいか」を聞いた。父親は一瞬だけ驚きの表情を浮かべたが、すぐに深く頷いた。


「お前はもう十五歳だ。自分の人生の節目をどう飾るかは、自分で決めなさい。お前の思う通りにしろ」


母もまた、困ったような、しかし誇らしげな顔で言った。


「あんたが一度言い出したら聞かないのは、お母さんが一番よく知ってるわ。反対なんてしないわよ。しっかりやってきなさい」


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