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第80話 才能名を奪われると、魔法が使えなくなる

異変は、朝の自主訓練で起きた。


 王立学園の第二訓練場。


 実技杯本戦を二日後に控え、そこには朝から多くの学生が集まっていた。


 剣を振る者。

 魔術陣を展開する者。

 治癒術の流れを確認する者。

 魔道具を調整する者。


 いつもなら、訓練場の空気はもっと雑然としている。


 けれど今日は違った。


 みんな、自分の才能を意識していた。


 昨日までに、本人才能意思確認票の試験運用が始まっている。


 自分の得意なことをどう呼ぶのか。

 周囲からどう呼ばれてきたのか。

 その才能を、どう使いたいのか。


 それを書くことで、力の方向性が少し安定する。


 エリナの「安心治癒」。

 ダンの「疾走剣」。

 ミーナの「手馴染み調整」。

 アイリスの「守護氷結」。


 どれも、本人が自分の力を取り戻すための名前だった。


 だから俺たちは、少し安心していたのかもしれない。


 名前を確認すれば、才能も守れる。


 本人意思を記録すれば、第四の系統の干渉を防げる。


 そう思いたかった。


 だが、第四の系統は、こちらが新しい守り方を見つけた途端、その守り方の隙間を探してくる。


     ◇


 最初に気づいたのは、アイリスだった。


 彼女は訓練場の端で、自分の氷を確認していた。


 淡い青銀の髪。

 涼しい紫の瞳。

 いつも通り整った立ち姿。


 昨日、相談窓口で泣いた少女と同じ人物には見えないくらい、表面上は落ち着いている。


 けれど俺は、もう少し知っている。


 アイリスは冷たいのではない。


 冷たいと言われ続けたから、そう振る舞う方が楽だっただけだ。


 その彼女が、片手を前に出した。


「守護氷結、試用展開」


 小さな声だった。


 本人もまだ少し照れがあるのだろう。


 白銀の魔術陣が足元に広がる。


 昨日見た、小さな氷の盾が出るはずだった。


 だが。


 出てきたのは、形のない冷気だった。


「……え?」


 アイリスが、珍しく間の抜けた声を出した。


 冷気は彼女の手元で広がっただけで、盾にも壁にもならない。


 霧のように散って、床を薄く白くしただけだった。


 アイリスの眉が寄る。


「もう一度」


 彼女は魔術陣を組み直した。


 今度は少し強めに。


 だが、結果は同じだった。


 冷気は出る。

 氷も作れる。


 けれど、形にならない。


 何を守る氷なのか、方向性が失われている。


 俺は嫌な予感を覚えた。


 表示を見る。


アイリス・ヴェルナー

氷属性魔術適性:高

才能名:守護氷結

状態:名称欠落

置換候補:無名の氷

関連:第四の系統

注意:才能名が薄められ、魔術の方向性が失われています


「才能名が……薄められています」


 俺が呟くと、リリアがすぐにこちらを見た。


「アイリスさんに何か?」


「守護氷結が、“無名の氷”に変わりかけています」


 その言葉に、アイリスの顔色が変わった。


「無名の氷……?」


 彼女はもう一度、手元の冷気を見る。


 そこには確かに力がある。


 強い魔力もある。

 努力の蓄積もある。

 氷属性魔術の適性も高い。


 なのに、形にならない。


 まるで、氷が自分で何になればいいのか分からなくなっているようだった。


「私の氷が……分からない」


 アイリスの声が揺れた。


「冷血魔女ではなくなったのに。守る氷にしたいと思ったのに。なのに、何を出せばいいのか……分からない」


 リリアが駆け寄ろうとする。


 けれど、俺はその前に言った。


「アイリス」


 名前を呼ぶ。


 彼女がこちらを見る。


「見てもいいですか」


 昨日と同じ確認。


 勝手には見ない。


 今、どれほど焦っていても、それだけは守る。


 アイリスは少しだけ唇を噛んだ。


 そして、頷いた。


「見てください。お願いします」


 俺は意識を向けた。


 好感度限界突破。

 才能覚醒リンク。


 ただし、覚醒ではなく確認。


 アイリスの氷の奥にある名前を探る。


 だが、いつもなら見えるはずの才能名の輪郭が、妙にぼやけている。


 守護氷結。


 その文字はある。


 あるのに、薄い。


 紙に書いた文字が水で滲むように、意味だけが剥がれている。


才能名「守護氷結」

状態:名称欠落進行

影響:魔術の用途認識低下

結果:冷気は出るが、守護形状へ安定しない

推奨:本人意思再確認、信頼対象による才能名呼称


「才能名が消されているわけではありません。でも、意味が薄くなっています。冷気は出せるけど、“守るための形”へ安定しない」


「では、どうすれば」


 アイリスの声は落ち着いている。


 でも、指先は震えていた。


「本人意思の再確認と、信頼できる相手がその才能名を呼ぶことが必要みたいです」


「信頼できる相手……」


 アイリスは少し黙った。


 その時、第四混成班の治癒役サーヤが近づいてきた。


 昨日、アイリスが氷で足元を支えた相手だ。


「アイリス」


 サーヤが呼ぶ。


「昨日の氷、私は助かったよ」


 アイリスが目を見開いた。


「サーヤ……」


「だから、もう一回見たい。私を止める氷じゃなくて、支えてくれた氷」


 サーヤは少し照れたように笑った。


「守護氷結、だっけ。名前、ちょっとかっこよすぎるけど」


「それは……私も思っています」


「でも、嫌じゃないんでしょ?」


 アイリスは小さく頷いた。


「嫌ではありません」


「じゃあ、呼ぶよ。アイリスの守護氷結」


 その瞬間、アイリスの足元の魔術陣が少しだけ澄んだ。


 俺の表示が変わる。


信頼対象による才能名呼称:有効

守護氷結:微弱回復


「戻り始めています」


 俺が言うと、アイリスは息を吸った。


 今度は、ゆっくりと手を前へ出す。


「私は、この氷を……人を遠ざけるだけではなく、守るために使いたい」


 白銀の光が集まる。


 小さな盾。


 まだ薄い。


 だが、今度は形になった。


 サーヤの前に、透明な氷の盾が浮かぶ。


 アイリスはそれを見て、深く息を吐いた。


「……出ました」


 リリアが微笑む。


「よかったです、アイリスさん」


 セリカさんも頷く。


「今のは良かったわね」


 アイリスは少しだけ顔を赤くした。


「褒められると、どう返せばいいか分かりません」


「ありがとう、でいいのよ」


「……ありがとうございます」


 そのぎこちなさに、少しだけ笑いが生まれた。


 だが、安心するには早かった。


     ◇


 異常はアイリスだけではなかった。


 訓練場の反対側で、治癒術科のエリナが声を上げた。


「リリアさん、光が……!」


 エリナの杖先から出た白い光が、治癒対象の人形に触れる前に散っていた。


 昨日までは、柔らかく相手を包む「安心治癒」として安定し始めていたはずだ。


 だが今は、ただの白い魔力の粒になっている。


 俺はすぐに表示を見る。


エリナ・ファス

才能名:安心治癒

状態:名称欠落

置換候補:無名の治癒

影響:治癒の方向性が拡散

注意:対象者を安心させる意図が術式に乗っていません


「エリナさんもです。安心治癒が、無名の治癒に」


 リリアの表情が引き締まった。


 彼女はエリナの前に膝をつく。


「エリナさん」


「はい……」


「あなたの治癒は、何のための治癒ですか」


 エリナは杖を握りしめた。


「怖がっている人を、安心させるためです」


「はい。では、もう一度、自分で呼んでください」


「私の……安心治癒」


 リリアも続ける。


「エリナさんの安心治癒」


 その言葉に、白い光が少しずつまとまり始める。


 今度は、柔らかい。


 人形の傷部分だけでなく、全体を包むような光。


 エリナは泣きそうになりながら笑った。


「戻りました……!」


 リリアは優しく頷いた。


「はい。あなたの治癒です」


 その少し後、剣術課程のダンにも異常が出た。


 疾走剣。


 速さで押すだけではなく、相手を見て仲間の道を開く剣。


 それが突然、「無名の剣」へ薄れた。


 ダンは動けなくなった。


 速いどころか、足が前に出ない。


「俺、どう振ればいいんだっけ……」


 セリカさんがすぐに前へ出る。


「ダン!」


「はい!」


「あなたの剣は何?」


「俺の……」


「速いだけ?」


「違います!」


「じゃあ言って」


 ダンは木剣を握り直した。


「仲間の道を開く、疾走剣です!」


「よし。走れ」


「はい!」


 足が戻る。


 ダンの動きはまだ荒い。


 でも、止まったままではない。


 彼は自分の剣の名前を取り戻した。


 魔道具科のミーナも同じだった。


 手馴染み調整が、無名の調整へ薄れる。


 彼女は魔道具を前にして、どう調整すればいいのか分からなくなった。


「標準値は分かるのに、手に馴染ませる感じが分からない……」


 ノエルが隣に座る。


「ミーナさん。誰のための調整?」


「使う人のため」


「何を合わせたい?」


「手の大きさ、癖、力の入れ方、怖がるところ……」


「それが?」


「手馴染み調整」


 ノエルが頷く。


「ミーナさんの手馴染み調整」


 魔道具の光が、使用者の手元に合わせて柔らかく変わった。


 ミーナは息を吐く。


「戻った……」


     ◇


 訓練場全体が混乱し始めた。


 治癒術が散る。

 剣の型が曖昧になる。

 魔道具の調整感覚が失われる。

 魔術の用途がぼやける。


 才能そのものが消えているわけではない。


 だが、才能名が薄められることで、その力をどう使うのかが分からなくなっている。


 無名の氷。

 無名の治癒。

 無名の剣。

 無名の調整。


 名前がないだけで、力は方向を失う。


 ノエルが蒼白な顔で言った。


「才能名は、ただのラベルじゃない。本人が自分の力をどう認識するかの軸。そこを消されると、出力がばらける」


 ユリアナ先輩は即座に教師たちへ指示を出した。


「全訓練を一時停止してください! 異常を感じた生徒は、無理に魔術や技能を使わないこと。本人才能意思確認票を記入済みの者は、確認票を手元に。未記入の者は、暫定で本人の言葉を確認します」


 さすがだった。


 声に迷いがない。


 訓練場の教師たちも動き出す。


 生徒たちは不安そうにしているが、パニックにはなっていない。


 これまで名前の異常を何度も経験し、そのたびに対策を積み重ねてきたからだ。


 リリアが俺の方へ来る。


「レン、負荷は?」


「まだ大丈夫です」


「嘘ではありませんか?」


「今は本当です」


 リリアは少しだけ俺の顔を見て、頷いた。


「では、無理をしない範囲でお願いします」


 セリカさんも横から言う。


「一人で全部見ないこと」


「はい」


 ノエルが続ける。


「表示確認は最低限。本人の言葉を優先」


「分かっています」


 ユリアナ先輩が最後に言った。


「原因と責任は別です。レン様、今は自責禁止です」


 先に釘を刺された。


「……はい」


 俺は正直、少し責任を感じていた。


 才能覚醒リンクが強くなったから、第四の系統が才能名へ手を伸ばしたのではないか。


 俺の力が、みんなの才能を危険にさらしたのではないか。


 そう思いかけていた。


 だが、セリカさんがすぐに言った。


「レン」


「はい」


「原因と責任は別」


「はい」


「言って」


「原因と責任は別です」


「よし」


 子ども扱いに近い。


 でも、効いた。


     ◇


 臨時の才能確認会が、その場で始まった。


 訓練場の端に机を並べ、本人才能意思確認票を配る。


 ただし、全員に詳細記入を求める時間はない。


 実技杯本戦まで、あと二日。


 今は応急処置が必要だった。


 ユリアナ先輩が簡易版を作る。


 一、本人名。

 二、得意なこと。

 三、その力をどう使いたいか。

 四、嫌な才能名。

 五、暫定才能名または未定。


 これだけなら、すぐに確認できる。


 リリアは治癒術科の生徒たちを集め、順番に聞いていく。


「あなたの治癒は、どう届いてほしいですか?」


 セリカさんは剣術課程の生徒たちへ言う。


「強い名前じゃなくていい。自分がどう振りたいかを言って」


 ノエルは魔道具科の生徒たちと向き合う。


「便利な係になりたいのか、道具と使う人を繋ぎたいのか。違うなら違うって書いて」


 ユリアナ先輩は全体を整理し、教師たちへ分担を振る。


 アイリスも、いつの間にか手伝っていた。


 彼女は魔術科の生徒の前で、少しぎこちなく言う。


「周囲がつけた名前と、自分が受け入れられる名前は違います。分からないなら未定でいいです」


 それを彼女が言うのは、とても意味があった。


 冷血魔女と呼ばれた氷の天才が、自分の言葉で「未定でいい」と伝えている。


 魔術科の生徒たちは、真剣に聞いていた。


 俺はその様子を見て、少しだけ胸が熱くなった。


 みんなが動いている。


 俺一人ではない。


 好感度限界突破は、俺だけの力ではない。


 名前を呼び合い、才能を確認し合い、本人の言葉を支える。


 その積み重ねが力になっている。


 それでも、表示確認が必要な場面はあった。


 治癒術が完全に散ってしまった生徒。

 剣の型が思い出せなくなった生徒。

 魔道具が怖くなった生徒。


 俺は一人ずつ、許可を取ってから確認した。


「見てもいいですか」


「はい」


「嫌なら止めます」


「大丈夫です」


 そして、才能名の欠落を確認し、本人の言葉へ戻す手伝いをする。


 繰り返すうちに、胸の奥に重さが溜まっていく。


 感情過負荷。


 少しずつ上がっているのが分かる。


 けれど、止まれない。


 そう思った瞬間、リリアが俺の前に立った。


「レン、休憩です」


「でも」


「休憩です」


 声が優しいのに、逃げ場がない。


 セリカさんも来る。


「座る」


「はい」


 ノエルが水を出す。


「糖分も必要」


 ユリアナ先輩が記録板を閉じる。


「ここから十分钟、レン様は能力使用禁止です」


「十分钟も」


「十五分にしますか?」


「十分钟でお願いします」


「では十分钟」


 完全に管理されている。


 通信水晶の向こうでミュレアが笑った。


『レン、よいではないか。才能確認会の中心でありながら、休憩まで管理される主人公。なかなか美味しい立場じゃ』


「本人は胃が痛いです」


『慣れよ』


「慣れたくないです」


『無理じゃな。そなたの周りには、すでに面倒を見る女たちが多すぎる』


 リリアとセリカさんが同時に反応した。


 ノエルは真面目に頷く。


「多い」


「ノエル、そこは頷かないでください」


 ユリアナ先輩は咳払いした。


「今は才能名対応が優先です」


「はい」


 助かった。


 たぶん。


     ◇


 夕方までに、訓練場の混乱はひとまず収まった。


 完全解決ではない。


 だが、多くの生徒が自分の才能名を暫定的に取り戻した。


 安心治癒。

 疾走剣。

 手馴染み調整。

 守護氷結。


 他にも、いくつもの才能名が生まれた。


 柔光治癒。

 静観射撃。

 支援風術。

 即席結界。

 未定の魔術。


 未定のまま保護された才能もある。


 それでいい。


 無理に名前をつける必要はない。


 才能名がないから悪いのではない。


 勝手に「無名」とされ、本人の方向性まで奪われることが危ないのだ。


 ノエルは疲れた顔で言った。


「才能名を奪われると、魔法や技術は消えない。でも、使い道が分からなくなる」


 ユリアナ先輩が頷く。


「本人の言葉による才能意思確認が必要です。全学生へ正式導入するには時間が足りませんが、実技杯本戦参加者には優先して行います」


「本戦まであと二日」


 リリアが少し不安そうに言う。


「全員分、間に合うでしょうか」


 ユリアナ先輩は少しだけ考えた。


「詳細版は無理です。簡易版で一次確認を行い、異常がある者だけ詳細版へ。教師と生徒会で分担します」


「俺も手伝います」


 俺が言うと、全員に見られた。


 リリア。

 セリカさん。

 ノエル。

 ユリアナ先輩。

 アイリスまで。


 そして通信水晶からミュレア。


『レン』


「はい」


『手伝うなとは言わぬ。だが、自分を燃やして灯りにするな』


 その言葉は、妙に静かに刺さった。


 リリアも頷く。


「レンが倒れたら、皆が困ります」


 セリカさんが言う。


「あなたは便利な確認道具じゃない」


 ノエルも。


「能力使用は制限する。必要」


 ユリアナ先輩も。


「あなた自身の本人才能意思確認票も、明日正式に作成します」


「俺のも?」


「当然です」


 逃げ場がない。


 アイリスが静かに言った。


「レン・クロフォード。あなたの力も、名前を奪われる危険があります」


「はい」


「なら、他人ばかり見ている場合ではありません」


 正論だった。


 冷たいけれど、優しい正論。


 俺は頷いた。


「分かりました。自分の確認もします」


 リリアがほっとしたように微笑む。


「はい。約束です」


「はい」


     ◇


 その日の最後に、ユリアナ先輩は実技杯本戦参加者向けの緊急告知を出した。


 才能名の揺らぎに関する注意。

 本人才能意思確認票の簡易版提出。

 才能名が未定でもよいこと。

 嫌な才能名を拒否してよいこと。

 能力や適性を役割名だけで呼ばないこと。


 訓練場の掲示板に貼られたその告知を、学生たちは真剣に読んでいた。


 以前なら、こんな書類は面倒だと思われたかもしれない。


 だが今日、自分の魔法や剣が急に分からなくなる恐怖を見た者たちは、もう軽く見なかった。


 アイリスは掲示を読んだ後、自分の確認票を胸元にしまった。


「守護氷結」


 小さく呟く。


 氷の盾が、ほんの少しだけ彼女の手元に浮かんだ。


 まだ完全ではない。


 でも、そこにある。


 俺はそれを見て、少しだけ安心した。


 そして同時に、胸の奥に別の表示が浮かんだ。


第四の系統

才能名欠落干渉:継続

対象拡大の可能性あり

注意:レン・クロフォード自身の才能名未定欄が不安定です


 俺自身の才能名。


 未定。


 仮称、好感度限界突破。

 候補、才能覚醒リンク。


 そして、俺が拒否したい名前。


 人を惚れさせるだけの力。

 危険な洗脳能力。


 胸の奥が冷えた。


 次は、俺かもしれない。


 いや、きっと来る。


 第四の系統は、俺の力の名前にも手を伸ばす。


 リリアが俺を呼んだ。


「レン?」


 俺は振り返る。


「大丈夫ですか?」


 大丈夫。


 そう言いかけて、やめた。


「少し、不安です」


 正直に言った。


 リリアは驚かなかった。


 ただ、優しく頷いた。


「では、明日はレンの才能名も一緒に確認しましょう」


 セリカさんが横から言う。


「逃げないこと」


「はい」


 ノエルが続ける。


「データ取る。でも負荷低め」


 ユリアナ先輩が締める。


「正式手順で行います」


 ミュレアが通信越しに言った。


『よい。そなたの才の名も、そなたが握れ。誰かに勝手につけさせるな』


 俺は頷いた。


「はい」


 才能名を奪われると、魔法が使えなくなる。


 今日、それを知った。


 なら、俺自身の力も守らなければならない。


 外れスキル扱いされた好感度限界突破。


 仲間の才能を引き出す才能覚醒リンク。


 その名前が、誰かに歪められる前に。


 俺自身が、この力をどう使いたいのか。


 それを言葉にしなければならない。

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