第49話 魔王令嬢の仮学生証、学園がざわつく未来しかない
ミュレア・ノクターンを学園へ連れていく。
言葉にすると、危険な響きしかない。
魔王令嬢。
封印対象。
古代迷宮に封じられていた存在。
甘いものにやたら執着する高慢な少女。
最後の一つだけ妙に平和だが、問題の本質はそこではない。
彼女を外へ出すということは、ギルド、王宮、王立学園の安全管理を全部巻き込むということだ。
当然、簡単に許可が下りるはずもない。
まず必要なのは、制御具。
ノエルが提案したのは、仮学生証型だった。
学園の結界に登録し、王家認証とギルド認証を重ね、さらに俺とのリンク距離制限を組み込む。
見た目は学生証だが、中身は魔力制御具兼外出許可証兼緊急停止装置。
説明を聞いた時点で、俺は頭が痛くなった。
「つまり、学生証の形をした首輪みたいなものですか」
ギルド地下の作業室で、俺がそう言うと、ノエルが即座に首を横に振った。
「その言い方はよくない」
「すみません」
「首輪じゃなくて、行動範囲を保証するための制御媒体。自由を制限するためだけじゃなく、限定的に外へ出るための許可装置でもある」
ノエルは真面目だった。
こういう時の彼女は、本当に研究者なのだと分かる。
危険なものに興味はある。
けれど、危険を軽視しているわけではない。
むしろ、構造を知って安全に扱おうとしている。
オルフェさんも、隣で設計図を確認しながら頷いた。
「言葉は重要です。ミュレアさん本人にも、首輪と受け取られる形にはしたくありません」
「はい」
俺は素直に反省した。
マルクスたちが使っていた言葉と同じにはしたくない。
管理。
保護。
封印。
所有。
便利な言葉は、簡単に人の意思を隠してしまう。
だからこそ、この仮学生証は「縛る道具」ではなく、「外へ出るための条件」なのだと、ちゃんと考えなければならない。
作業室の中央には、素材が並んでいた。
ギルド保管の黒水晶。
王宮から貸与された白銀結晶の小片。
学園結界に対応した認証板。
そして、ノエルが徹夜しかけてセリカさんに止められながら書いた設計図。
ちなみにノエルは今日、ユリアナ生徒会長から「作業時間は二時間ごとに休憩」と書かれた指示書を渡されている。
ノエルはそれを見て、
「生徒会長、私の研究時間まで管理し始めた」
と不満そうだったが、セリカさんは、
「いい制度ね」
と満足そうだった。
俺としては、ノエルもユリアナも、どちらも寝てほしい。
制御具作りは、オルフェさん、ノエル、王立学園魔道具科の教師、そして王宮から派遣された結界技師が担当することになった。
俺たちは安全確認とリンク反応の確認役だ。
リリアは治癒と聖力反動の確認。
セリカさんは護衛兼、ノエルが暴走しないようにする係。
アリシア王女は王家認証の立ち会い。
そしてミュレア本人は、ギルド地下の特別封印室から作業用の投影を飛ばしている。
完全な外出ではない。
だが、作業室内の台座に小さな投影体を出し、設計図を覗き込むことはできた。
「ふむ」
ミュレアは設計図を見下ろし、腕を組んだ。
「悪くない。だが、見た目が地味じゃ」
第一声がそれだった。
ノエルが顔を上げる。
「機能優先だから」
「機能と美は両立できる」
「それは分かる」
「ならば、この仮学生証とやらに、妾の紋章も入れよ」
「魔王家の紋章?」
「うむ」
オルフェさんが即座に首を横に振った。
「駄目です。学園結界が拒否反応を起こす可能性があります」
「つまらぬ」
「つまらなくても駄目です」
オルフェさんは疲れているが、こういうところは強い。
ミュレアは少し不満げに唇を尖らせた。
「では、せめて色を黒紫にせよ」
「黒紫なら可能かもしれない」
ノエルが検討し始める。
「ただ、学園仮学生証の基準色は銀と青だから、黒紫を入れるなら縁取り程度」
「よい。妾の品格が出るなら」
「品格が出る縁取り、難しいね」
「そなたの研究者魂でどうにかせよ」
「研究者魂の使い道が違う」
意外と噛み合っている。
この二人、危険な方向にも噛み合いそうで怖い。
セリカさんが俺の横で小さく言った。
「ミュレアとノエル、組ませると危なくない?」
「危ないと思います」
「ちゃんと見てて」
「俺がですか」
「リンク担当でしょ」
「その肩書きが増えるの、嫌なんですが」
リリアが少し笑う。
「でも、レンがいるとミュレアさんも落ち着いているように見えます」
「それはそれで責任が重いです」
「一人で背負わないでくださいね」
「はい」
この返事を、最近何度しているだろう。
たぶん、これからも何度もする。
◇
仮学生証の条件は、かなり厳しく設定された。
一つ、使用可能区域は王立学園内のみ。
一つ、ミュレアは俺から一定距離以上離れられない。
一つ、攻撃魔法、精神干渉、封印干渉は禁止。
一つ、魔力出力は常時制限。
一つ、緊急時は王家認証またはギルド認証で停止可能。
一つ、授業参加ではなく、当面は観察外出扱い。
一つ、甘いものの買い食いは要相談。
最後の項目が読み上げられた時、ミュレアは本気で抗議した。
「待て。なぜ甘味だけ別項目になっておる」
リリアが真面目に答える。
「大事だからです」
「大事なら許可すべきではないか」
「大事だから管理します」
「白き娘、そなたは甘味に厳しすぎる」
「封印移送後の体調管理中ですから」
「妾はもう安定しておる」
「安定している状態を維持するのが大切です」
「むう……」
魔王令嬢が治癒師に完全に押されている。
セリカさんが横で面白そうに見ていた。
「リリア、強くなったわね」
「そうでしょうか」
「ええ。甘いものを巡って魔王令嬢に勝てる治癒師は、そういないわ」
リリアは困ったように笑った。
ミュレアは不満そうだったが、最後にはこう言った。
「では、要相談の基準を明確にせよ」
ノエルがすぐに紙に書く。
「一日一品まで。高魔力食材を含む菓子は禁止。初回はリリアさん確認。二回目以降は経過観察による」
「妾の甘味が研究計画のように扱われておる」
「安全管理だから」
「不満じゃ」
「でも外出に近づいた」
ノエルがそう言うと、ミュレアは黙った。
外出。
その言葉には、彼女も弱いらしい。
「……仕方あるまい」
少し不服そうに、でも本気で嫌そうではなく、ミュレアは頷いた。
アリシア王女はその様子を見て、穏やかに言った。
「ミュレア様。条件は厳しいですが、これはあなたを閉じ込めるためだけではありません」
「分かっておる。妾を外へ出すための口実であり、保証であり、鎖でもある」
「鎖と感じますか」
「感じぬと言えば嘘になる」
ミュレアは紫の瞳で王女を見た。
「だが、妾の意見を聞かずに縛る鎖ではない。そこは評価してやる」
アリシア王女は小さく頷いた。
「ありがとうございます」
「礼を言うところか?」
「評価していただけたので」
「ふふ。やはり、人間の王女にしては面白い」
二人の関係は、妙に落ち着いている。
王女と魔王令嬢。
普通ならもっと緊張してもよさそうなのに。
いや、もちろん緊張はある。
周囲の大人たちはかなり慎重だ。
でも、本人たちは相手をただの記号として見ていない。
それが大きいのだろう。
俺はその光景を見ながら、昨日のミュレアの言葉を思い出した。
妾を、ただ地下に置き忘れるでないぞ。
置き忘れない。
それは簡単な言葉だが、実際には難しい。
危険な相手を相手として扱う。
その面倒を引き受ける覚悟が必要だからだ。
◇
昼過ぎ、試作一号が完成した。
形は、小さな銀色のカード。
学園の仮学生証に似ているが、縁に黒紫の細い線が入っている。
中央には王立学園の紋章。
裏側には王家認証、ギルド認証、そして封印安定用の黒水晶片が埋め込まれている。
ノエルが得意げに掲げた。
「仮学生証型ミュレア外出制御具、一号機」
「名前が長いです」
「仮称」
「仮称が長い」
ミュレアは興味深そうにそれを見た。
「ふむ。なかなかよいではないか」
「黒紫の縁取り、入れたよ」
「眼鏡の研究娘、そなたは分かっておる」
「機能美は大事」
「そうじゃ。美は機能を支える」
「その理屈、少し好き」
また危険な相性の良さを見せている。
オルフェさんが咳払いした。
「では、動作確認を行います。ミュレアさん、投影体を台座中央へ」
「うむ」
ミュレアが台座の中央へ移動する。
仮学生証が、紫水晶台座の上へ置かれた。
俺はその前に立つ。
「レンさん、リンク安定をお願いします」
「はい」
目を閉じる。
ミュレアの気配を感じる。
いつもより近い。
封印室での投影より、少しだけ外へ広がろうとしている。
そこへ仮学生証の制御具が重なる。
銀色の枠。
青い学園結界。
白い王家認証。
黒紫の魔王魔力。
そして、俺とのリンク。
複雑だ。
かなり複雑だが、意外と整っている。
表示が出る。
仮学生証型制御具
状態:起動準備完了
対象:ミュレア・ノクターン
制限:学園内限定、距離制限、出力制限、攻撃魔法不可
注意:レンとのリンク負荷あり
リンク負荷あり。
やはり俺への負担はある。
それを見た瞬間、リリアがこちらを見た。
「レン、負荷が出ていますか?」
「少しです」
「少し、という言葉は信用しすぎないことにしています」
「最近、俺の少しが信用されない」
セリカさんが即答する。
「日頃の行い」
「はい」
ノエルが制御具に魔力を流す。
「起動するよ」
仮学生証が淡く光った。
ミュレアの投影体が、少し濃くなる。
足元の揺らぎが減り、輪郭が安定した。
彼女は自分の腕を見て、満足そうに頷いた。
「ほう。これは面白い」
「移動してみてください」
オルフェさんが言う。
ミュレアは台座から一歩降りた。
封印室ではなく作業室内。
ほんの一歩。
それだけなのに、彼女の表情が変わった。
驚きと、喜びと、少しの怖さ。
ミュレア・ノクターン
状態:強い高揚、不安
備考:封印台座外へ自分の意思で一歩出たことに感情が揺れています
俺は、息を止める。
ミュレアはもう一歩進む。
足元に淡い紫の光が残る。
制御具は正常。
外部干渉なし。
出力も制限内。
「成功……?」
ノエルが小さく呟く。
「まだ仮ですが」
オルフェさんが慎重に言う。
だが、その顔にも安堵があった。
ミュレアは数歩進み、俺の前で立ち止まった。
「レン」
「はい」
「見よ。妾は歩いておる」
「はい」
「封印台座の外を、自分の足でな」
その声は、いつもより少しだけ震えていた。
俺は頷いた。
「見ています」
リリアがそっと微笑んだ。
「よかったですね、ミュレアさん」
「まだ外ではない」
ミュレアは言った。
でも、声は柔らかい。
「だが、悪くない」
悪くない。
彼女の高評価。
セリカさんも少しだけ表情を緩めた。
「ここからが大事よ。調子に乗らないこと」
「赤き剣姫はすぐに釘を刺す」
「必要だから」
「分かっておる」
本当に分かっているかは怪しい。
だが、今のミュレアはただ浮かれているだけではなかった。
一歩外へ出られたことの重みを、彼女自身が一番感じているようだった。
◇
その日の夕方には、仮学生証型制御具の初期試験が終わった。
結果は、おおむね成功。
作業室内での移動。
俺からの距離制限。
魔力出力制限。
攻撃魔法封鎖。
王家認証による一時停止。
ギルド認証による再起動。
すべて確認できた。
ただし、長時間使用は未検証。
学園結界との接続はまだ。
外部干渉耐性もさらに強化が必要。
つまり、学園へ行くにはまだ早い。
それを聞いたミュレアは不満そうだった。
「明日では駄目か」
「駄目です」
リリアが即答した。
「では明後日」
「試験結果次第です」
「三日後」
「協議次第です」
「白き娘は手強すぎる」
「安全第一です」
このやり取りにも、だいぶ慣れてきた。
アリシア王女は王宮へ報告に戻るため、途中で退出した。
ノエルとオルフェさんは制御具の調整を続ける。
セリカさんは俺とリリアを連れて、少し休憩するように言った。
しかし、休憩に入る直前。
ミュレアが、ぽつりと言った。
「学園へ行くなら、妾も制服が要るのではないか?」
俺は足を止めた。
「はい?」
「仮学生証を持つのなら、仮学生なのであろう? ならば制服が必要じゃ」
セリカさんが嫌な予感を察した顔をする。
「ミュレア、制服にこだわる理由は?」
「白き娘も赤き剣姫も似合っておったのであろう? ならば妾も当然似合う」
堂々と言った。
リリアが少し頬を赤らめる。
「私の制服姿の話、レンがしたのですか?」
「ええと、学園の話の流れで少し」
セリカさんもこちらを見る。
「私のことも?」
「少し」
「少しね」
声が少し低い。
まずい。
ミュレアは楽しそうに笑っている。
「レン、妾の制服姿を想像したな?」
「してません」
嘘だ。
一瞬した。
魔王令嬢ミュレアが王立学園の制服を着て、偉そうに腕を組んでいる姿。
想像してしまった。
表示が出るまでもなく、セリカさんとリリアにはばれた。
「レン」
リリアの声が優しい。
優しすぎて怖い。
「想像しましたね」
「一瞬だけです」
セリカさんが腕を組む。
「正直なのはいいけど、顔に出すぎ」
「顔に出てましたか」
「出てた」
ミュレアは満足げに頷いた。
「ふふ。やはり妾の制服姿は魅力的であろう」
「まだ着てません」
「着れば分かる」
「その自信はどこから」
「魔王令嬢じゃからな」
万能すぎる。
ノエルが横から顔を出した。
「投影体用制服なら、実体服じゃなくて魔力衣装として設定できるかも」
「やらなくていいです」
「でも必要かも。学園内で目立ちすぎないためには、制服風の外見は有効」
有効なのが困る。
オルフェさんも少し考え込む。
「確かに、学園内に投影体を出すなら、外見設定は必要です。通常の魔族衣装では注目を集めすぎる」
セリカさんがため息をついた。
「結局、制服案が通りそうなのね」
リリアは少しだけ困った顔で言う。
「なら、露出の少ない、普通の制服にしましょう」
「白き娘、そなたの基準は厳しいな」
「当然です」
ミュレアが制服を着る未来。
学園がざわつく未来しか見えない。
俺は頭を抱えたくなった。
◇
その時だった。
作業室の奥に置かれていた古い黒水晶片が、突然光った。
低い振動音。
空気が、わずかに震える。
ノエルがすぐに振り返った。
「何?」
オルフェさんも警戒する。
「黒水晶が反応しています。制御具の残留魔力に……いえ、ミュレアさんの魔力に?」
ミュレアの表情も変わった。
「これは……」
俺の視界に表示が走る。
黒水晶片
反応対象:ミュレア・ノクターンの封印魔力
共鳴先:王立学園旧研究棟・地下深層
対象施設:零号資料庫
状態:封鎖解除準備
零号資料庫。
聞いたことのない名前だった。
「旧研究棟の地下深層に、零号資料庫という施設が反応しています」
俺が言うと、ノエルの目が見開かれた。
「零号資料庫……? 待って、それ、学園最古層の噂に出てくる名前だよ。実在したの?」
オルフェさんも険しい顔になる。
「旧研究棟には、地下魔力炉以外にも隠し区画があるということですか」
「表示では、地下深層です。ミュレアの封印魔力に反応しています」
ミュレアは、黒水晶片を見つめていた。
いつもの余裕が薄れている。
「妾の魔力に反応した、か」
「心当たりが?」
「遠い昔の匂いがする」
彼女はそう言った。
匂い。
比喩だろう。
でも、その声は本気だった。
「妾を封じた術式に近い。だが、それだけではない。白き娘や王女の力にも近い気配じゃ」
リリアが息を呑む。
「私と、殿下の?」
俺の視界に、一瞬だけ別の表示が浮かぶ。
古代三系統共鳴
聖女
王家結界
魔王封印
零号資料庫:反応開始
前にも見た。
聖女。
王家結界。
魔王封印。
三つの力。
それが、旧研究棟のさらに奥で反応している。
ノエルは完全に研究者の顔になっていた。
「これは……行くしかないやつだね」
「今日は行きません」
セリカさんが即座に止める。
「でも」
「今日は行きません」
強い。
ノエルが少ししょんぼりする。
しかし、セリカさんの判断は正しかった。
ミュレアの制御具試験をしたばかりで、俺もリリアも疲れている。
しかも旧研究棟地下深層となれば、危険がないはずがない。
オルフェさんも頷いた。
「調査は学園長、王宮、ギルドへ報告してからです。旧研究棟はまだ封鎖中ですし、零号資料庫が本当に存在するなら、単独調査は危険すぎます」
ミュレアは少し不満そうに、けれど真剣に言った。
「妾も行く」
「制御具の試験段階です」
リリアが即座に言う。
「ですが、ミュレアさんの魔力に反応したなら、ミュレアさんが必要になる可能性はあります」
「白き娘、分かっておるではないか」
「必要になるかもしれない、です。無条件に行くという意味ではありません」
「手強い」
ミュレアはまたそう言った。
でも、その目は黒水晶片から離れない。
俺も、表示を見続ける。
零号資料庫
状態:微弱起動
開放条件:古代三系統共鳴
注意:内部記録に聖女再現計画以前の情報あり
聖女再現計画以前の情報。
嫌な予感がする。
聖女再現計画は、マルクスや白銀枢機卿の思想だけではないのかもしれない。
もっと古い何か。
聖女、王家、魔王封印。
それらが同じ古代術式につながっているとしたら。
俺は小さく息を吐いた。
「また話が大きくなりましたね」
セリカさんが俺の横に立つ。
「あなたの周りで小さく終わる話、もう期待しない方がいいわ」
「その言い方、何度目でしょう」
「何度でも言うわ」
リリアも静かに言った。
「でも、今回は私たちにも関わることのようです」
「はい」
ノエルが目を輝かせる。
「零号資料庫……古代三系統……聖女再現計画以前の記録……これはすごい」
「ノエル、落ち着いて」
「落ち着いてる」
「目が落ち着いてない」
オルフェさんが黒水晶片を封印箱に入れる。
「今日はここまでです。記録を保全し、関係者へ報告します」
ミュレアは、少しだけ残念そうに頷いた。
「よかろう。だが、妾を置いていくなよ」
「置いていきません」
俺が答えると、ミュレアは満足そうに笑った。
「約束じゃ」
仮学生証は完成に近づいた。
ミュレアの制服問題も発生した。
そして、旧研究棟のさらに奥にある零号資料庫が反応した。
魔王令嬢の学園外出計画は、ただの外出では終わらない。
そんな予感だけが、黒水晶の残光のように、作業室に残っていた。




