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第45話 好感度限界突破、学園女子たちの距離が近すぎる

 表彰式の翌日、俺は王立学園の廊下で、人生最大級に逃げ場のない状況に立たされていた。


 敵に囲まれているわけではない。


 魔物が出たわけでもない。


 教会監察部が襲ってきたわけでもない。


 もっと平和で、もっと困る状況だった。


「あ、あの、レン様。少しだけ魔力感応のことで相談が……」


「私も、聖具の適性について不安があって」


「危険察知って、試験前の緊張にも使えますか?」


「レン様って、好感度が見えるって本当ですか?」


「恋愛相談もできますか?」


「待って。最後の人、何の相談ですか」


 思わず声が出た。


 廊下に集まっていた女子生徒たちが、きょとんとする。


 こちらもきょとんとしたい。


 昨日の表彰式以降、俺たちの周囲は明らかに変わった。


 特に俺への距離感が、変わった。


 以前は遠巻きに見られるだけだった。


 外れスキルだとか、ギルド推薦だとか、王女殿下と関わっているとか、そういう警戒混じりの視線が多かった。


 だが今は違う。


 相談される。


 ものすごく相談される。


 しかも、なぜか距離が近い。


 魔術科の女子生徒が一歩近づく。


「恋愛相談というか……その、好きな人の好感度が分かったら便利かなって」


「便利かもしれませんが、俺が見るのは駄目です」


「どうしてですか?」


「人の気持ちを勝手に見るのはよくないので」


 俺がそう答えると、彼女は少し驚いた顔をした。


「レン様って、そういうところ真面目なんですね」


「真面目というか、怖いので」


「怖い?」


「はい。便利だからといって、何でも見ていいわけではないと思っています」


 言いながら、自分にも言い聞かせていた。


 俺の力は、見えてしまう。


 好感度。

 状態。

 才能。

 危険。

 隠された意図。


 便利だ。


 でも、便利だからこそ怖い。


 マルクスは、管理という言葉で人を縛ろうとした。

 俺も、見えることに慣れすぎれば、同じように誰かの意思を軽く扱ってしまうかもしれない。


 だから、線引きは必要だ。


 そう思っているのに、周囲の女子生徒たちはなぜか少し感心したようにこちらを見る。


女子生徒A

状態:感心

好感度:21 → 26

備考:レンの倫理観に好印象を抱いています


 上がった。


 なぜだ。


 真面目に断っただけなのに。


 俺が内心で頭を抱えていると、横からセリカさんの声が飛んだ。


「はい、距離を取って。レンに近づきすぎ」


 セリカさんは廊下の真ん中で、完全に交通整理役になっていた。


 赤い髪を揺らし、腕を組み、女子生徒たちを順番に並ばせている。


 剣は抜いていない。


 だが、妙な迫力がある。


「相談は一人ずつ。先生に通していない内容はその場で答えない。恋愛相談は禁止。好感度確認も禁止。聖具や魔道具の危険確認は、担当教師かリアを通して」


「セリカさん、仕切りが完璧ですね」


 俺が言うと、セリカさんはじとっとこちらを見る。


「あなたが放っておくと全部受けるからでしょ」


「否定しづらいです」


「否定できないことをしない」


「はい」


 リリアは少し離れたところで、治癒術科の学生たちと話していた。


 表彰式以降、リリアにも相談が増えている。


 ただし、彼女の相談内容は真面目なものが多い。


 聖具が怖い。

 治癒術がうまく使えない。

 教会式以外の学び方を知りたい。

 試作聖具をつけるよう勧められて不安だった。


 そういう声を、リリアは一つずつ丁寧に聞いていた。


「怖いと思うことは、悪いことではありません」


 リリアの声が聞こえる。


「聖具を使う時は、必ず説明を受けてください。分からないまま我慢しないでください。痛みや違和感があれば、すぐに言っていいんです」


 治癒術科の女子生徒たちが、真剣に頷いている。


 リリアはもう、教会に怯えているだけの少女ではなかった。


 もちろん、傷は残っている。


 でも、その傷を誰かを守る言葉に変えている。


 俺は少し見惚れていたらしい。


 セリカさんが小声で言った。


「レン」


「はい」


「今、リアを見てた?」


「はい。立派だなと」


「……それを本人に言うと、たぶん喜ぶわ」


「あとで言います」


「そういうところは素直なのよね」


 セリカさんは少しだけ目を逸らした。


 何か言いたげだったが、すぐに前へ向き直る。


「次の相談者、どうぞ」


 完全に受付係である。


     ◇


 正式な相談窓口は、まだ準備中だった。


 アリシア王女と学園長、ギルド、各課程の教師が調整しているらしい。


 だが、学生たちの方が待てなかった。


 特別功労章を授与された直後の俺たちは、学園内で妙な相談先になってしまっていた。


 特に、「才能を見抜けるらしい」という噂が広まったのがまずかった。


 俺の能力は、厳密には才能鑑定ではない。


 状態や適性の一部が表示されることはある。

 だが、万能ではない。


 それでも噂は勝手に育つ。


 危険察知ができる。

 聖具の異常が分かる。

 封印石の反応が分かる。

 好感度も見えるらしい。

 なら才能も見えるのでは。


 そんな流れだろう。


 そして昼休み。


 ついに、具体的な相談が来た。


「あの……レン様」


 声をかけてきたのは、魔術科一年の女子生徒だった。


 淡い栗色の髪を三つ編みにした、少し気弱そうな子だ。

 制服の胸元には魔術科の徽章。


 手には、小さな魔道具を握っている。


 掌に乗るくらいの金属製の小箱だった。


「ええと、先生は?」


 俺がまず確認すると、彼女は慌てて頷いた。


「はい。グラント先生に、簡単な適性相談なら大丈夫だと許可をいただきました。危険なことはしないようにとも」


 見ると、少し離れたところに魔力感応基礎のグラント先生が立っていた。


 先生は俺と目が合うと、苦笑しながら頷いた。


 どうやら本当に許可済みらしい。


 セリカさんが確認する。


「名前は?」


「ミーナ・アルレットです」


「相談内容は?」


「私、魔術の才能がないって言われていて……」


 ミーナは小箱を両手で包み込んだ。


「火属性も水属性も、基礎魔術が安定しません。魔力を出そうとすると、すぐ散ってしまうんです。先生からは努力不足ではないと言われました。でも、周りがどんどん魔術を成功させていくのを見ると、自分だけ置いていかれている気がして」


 その言葉に、少し胸が痛んだ。


 才能がない。


 外れ。


 役に立たない。


 俺自身、そう言われたことがある。


 だから、軽く答える気にはなれなかった。


「その小箱は?」


「魔力灯の調整用具です。授業で使うものなんですが、私、攻撃魔術よりこういうものを触っている方が落ち着いて……でも、魔術科なのに魔道具ばかり触っていたら逃げてるみたいで」


 ミーナは自嘲気味に笑った。


 逃げている。


 その言葉が、妙に引っかかった。


「見てもいいですか?」


「はい」


 俺は小箱を受け取る前に、確認した。


「触れても大丈夫ですか」


 ミーナは少し驚いた顔をした。


「はい。お願いします」


 俺は小箱に指を触れた。


 同時に、視界に表示が浮かぶ。


ミーナ・アルレット

魔術属性適性:拡散型、直接放出不向き

魔道具調整適性:高

微細魔力制御:極めて高

備考:攻撃魔術よりも魔道具調整・回路補正・魔力灯設計に適性があります


 やはり。


 魔術の才能がないわけではない。


 出し方が違うのだ。


「ミーナさん」


「はい」


「魔術の才能がないわけではないと思います」


 ミーナの目が揺れた。


「でも、私」


「直接放出する魔術が不向きなんです。火球を飛ばすとか、水を形にするとか、そういう魔術だと魔力が散りやすい。でも、細かく流す力はかなり強いです」


「細かく、流す……」


「魔道具調整の方が向いています。たぶん、魔力灯や小型魔道具の回路補正なら、かなり上達すると思います」


 ミーナは、小箱を見つめた。


「でも、魔術科なのに」


「魔術科だからこそ、魔道具が分かる人も必要だと思います」


 俺は小箱を彼女へ返す。


「これ、少し調整してみてもらえますか?」


「え?」


「魔力を外へ出そうとしないで、中の回路に沿って薄く流す感じで。火を灯すんじゃなくて、灯る場所を整えるというか」


 言いながら、自分でも感覚的すぎると思った。


 だが、ミーナは真剣に聞いていた。


 彼女は小箱に両手を添える。


 周囲の学生たちが見守る。


 セリカさんが少し離れて、人が近づきすぎないようにしてくれた。


 リリアも治癒術科の相談を一時中断し、こちらを見ている。


 ミーナの指先から、淡い魔力が流れた。


 最初は小箱の表面で散りかける。


 だが、彼女はすぐに流れを細くした。


 小箱の内部に、糸のような魔力が入る。


 俺の表示が変わる。


魔力灯調整用具

状態:回路不均衡

補正中

推奨:右下回路へ微量追加


「右下の回路に、ほんの少しだけ」


「はい……」


 ミーナが目を閉じる。


 小箱の中で、かちりと小さな音がした。


 次の瞬間、ふわりと淡い光が灯った。


 ただの光ではない。


 安定している。

 揺れが少ない。


 周囲から小さな歓声が上がった。


「光った……!」


「今の、すごく安定してた」


「ミーナが?」


 ミーナ自身も、信じられないという顔をしていた。


「私……できた……?」


「できました」


 俺が言うと、彼女の目に涙が浮かんだ。


「私、魔術から逃げてるわけじゃなかったんですね」


「はい。向いている形が違っただけです」


 その瞬間、表示が出る。


ミーナ・アルレット

状態:安堵、感動

好感度:14 → 39

備考:レンに才能を否定されなかったことを強く感謝しています


 上がりすぎでは。


 いや、気持ちは分かる。


 自分の「できない」が「違う形でできる」に変わる瞬間は、大きい。


 ミーナは深く頭を下げた。


「ありがとうございます、レン様」


「俺だけじゃなく、ちゃんと先生にも相談してください。魔道具科や研究科への授業参加もできるかもしれません」


 グラント先生が近づいてきた。


「その通りだ。ミーナ、後で魔道具科の担当教員に話を通しておこう」


「先生……!」


「君の魔力が拡散しやすいことは分かっていたが、回路補正にここまで向くとは見抜けなかった。私も勉強不足だ」


 先生は素直にそう言った。


 ミーナは何度も頭を下げていた。


 周囲の学生たちは、ざわざわしている。


「触れただけで適性を見抜いた……」


「才能覚醒だ」


「レン様、本当に外れスキルじゃない」


「私も見てもらいたい」


 まずい。


 非常にまずい。


 表示がまた出る。


学園内噂更新

内容:レンが触れただけで才能を覚醒させた

拡散速度:急上昇

注意:相談希望者増加


「違います」


 俺は思わず言った。


 周囲が静かになる。


「才能を覚醒させたんじゃありません。元からあった適性を、少し見つけただけです。あと、触れるのも許可を取ってからです。勝手に触ったりはしません」


 なぜか女子生徒たちが、さらに感心したような顔をした。


女子生徒複数

状態:安心、好印象

備考:レンが距離感を守ることに好感を抱いています


 また上がる。


 何をしても上がる流れに入っている気がする。


 好感度限界突破というスキル名が、急に怖くなってきた。


 セリカさんが俺の横に立つ。


「今日はここまで。ミーナの件は先生に引き継ぐ。レンに勝手に詰め寄らない」


 学生たちは素直に下がった。


 セリカさんの仕切り能力が上がっている。


 リリアもそっと近づいてきた。


「レンらしいですね」


「何がですか」


「才能がないと言われた人に、ないのではなく形が違うと伝えるところです」


「自分が言われたかったのかもしれません」


 口にしてから、少しだけ胸が痛んだ。


 リリアは静かに俺を見た。


「なら、レンも覚えておいてください」


「何をですか」


「外れではなく、形が違っただけです」


 不意打ちだった。


 俺は何も言えなかった。


 セリカさんも、少しだけ優しい顔をしている。


 ノエルはその横で、完全に研究者の顔になっていた。


「レンの能力、やっぱり才能そのものを増やしてるわけじゃなくて、既存適性の観測と初期誘導だね。いや、場合によっては心理的制限解除も起きてる。才能覚醒という噂は誇張だけど、結果だけ見ればかなり近い」


「ノエル、今それ言うとまた噂が育ちます」


「あ」


 遅い。


 周囲の数人がすでに聞いていた。


 俺は頭を抱えた。


     ◇


 その日の午後には、俺への相談希望者がさらに増えていた。


 ただし、セリカさんとリリア、そしてグラント先生やミリア先生の判断で、無秩序な相談は禁止になった。


 正式な相談窓口ができるまで、緊急性のある聖具不安や危険反応以外は受けない。


 俺としては非常にありがたい。


 だが、その決定が出る前に、何人かの相談は受けることになった。


 魔術科の男子が、攻撃魔術ではなく防御陣に向いていると分かった。

 治癒術科の女子が、治癒そのものより薬草調合と相性がいいと分かった。

 剣術課程の生徒が、剣よりも盾と護衛術に向いていると分かった。


 どれも劇的な覚醒ではない。


 ただ、本人が「できない」と思っていたことの横に、別の道があると見つけるだけだ。


 でも、それだけで表情が変わる。


 人は、自分に道がないと思う時が一番つらいのかもしれない。


 俺は前世で、それをよく知っている。


 だから、つい真面目に見てしまう。


 その結果、評判はさらに上がった。


学園内評価

レン・クロフォード

状態:急上昇

備考:才能相談、危険察知、聖具不安確認の相談先として認知され始めています


 ありがたい。


 ありがたいが、怖い。


 距離が近い。


 特に女子生徒たちの距離が近い。


「レン様、これも見ていただけますか?」


「順番です」


 セリカさんが止める。


「レン様、疲れていませんか?」


「疲れています。だから今日は終わりです」


 セリカさんが答える。


「レン様って、好きな食べ物は?」


「相談じゃないです」


 セリカさんがばっさり切る。


 完全に防波堤である。


 リリアも静かにフォローする。


「レンは、相手のためになることは断りにくい方です。ですから、皆さんも無理をさせないでください」


 その言葉に、女子生徒たちはなぜか頬を赤らめて頷いた。


「リアさん、優しい……」


「レン様のこと、よく分かってるんですね」


 リリアが一瞬だけ固まる。


 セリカさんも少し反応する。


 俺はどうしていいか分からず、視線を逸らした。


 その結果、別の女子生徒と目が合ってしまった。


 逃げ場がない。


 俺の視界には、嫌な表示が浮かぶ。


恋愛系トラブル発生率:上昇中

原因:レンへの相談増加、接触機会増加、周囲ヒロインの反応変化

注意:生徒会による介入可能性


 生徒会。


 来たか。


 そう思った瞬間、廊下の空気が変わった。


 ざわめきが、すっと引いていく。


 学生たちが自然に道を開けた。


 そこを、一人の女子生徒が歩いてくる。


 長い銀金色の髪。

 整った姿勢。

 濃紺の制服を完璧に着こなし、胸元には生徒会の徽章。


 冷静な青灰色の瞳。


 まるで、歩く規律みたいな人だった。


 表示が浮かぶ。


ユリアナ・フォン・グランベル

役職:王立学園生徒会長

身分:公爵令嬢

状態:警戒、責任感、過労

備考:急激に影響力を持ち始めたレンを監視対象として見ています


 生徒会長。


 強そう。


 ものすごく強そう。


 ユリアナは俺の前で立ち止まった。


 周囲の学生たちが静まり返る。


「あなたが、レン・クロフォード様ですね」


「はい」


「王立学園生徒会長、ユリアナ・フォン・グランベルです」


 声は澄んでいる。


 だが、温度は低い。


「本日、学園内であなたの周囲に多数の学生が集まり、授業前後の通行と相談対応に混乱が生じています」


「すみません」


「謝罪が欲しいわけではありません」


 即座に切られた。


 ユリアナは俺をまっすぐ見る。


「あなたの力が学生たちの助けになっていることは承知しています。旧研究棟事件への貢献も、生徒会として正式に記録を確認しました」


「ありがとうございます」


「ですが」


 来る。


「好意を集める者は、意図せず派閥を作ります」


 レオンも似たようなことを言っていた。


 やはり、これは学園内での重大な問題らしい。


「俺は、派閥を作るつもりはありません」


「つもりがなくても、人は集まります」


 やっぱり言われた。


 ユリアナの視線は鋭いが、敵意ではない。


 表示にもそう出ている。


ユリアナ・フォン・グランベル

状態:警戒、責任感

備考:レン個人を嫌っているわけではなく、学園秩序への影響を懸念しています


 嫌ってはいない。


 でも、完全に警戒されている。


「生徒会として、あなたを監視します」


 堂々と言われた。


 隣でセリカさんが眉を上げる。


 リリアも少しだけ目を瞬かせた。


 ノエルは面白そうに見ている。


「監視、ですか」


 俺が聞き返すと、ユリアナは頷いた。


「はい。あなたの能力、相談対応、学生との接触状況が、学園の秩序を乱さないか確認します」


「俺、そんなに危ないですか」


「危ないかどうかを確認するための監視です」


「なるほど」


 論理が冷たい。


 でも間違ってはいない。


 ユリアナはさらに続けた。


「本日放課後、生徒会室へ来てください。あなたには、学園内の不審な好感度上昇現象について説明していただきます」


「不審な好感度上昇現象」


 言葉が強い。


 俺のスキル名を知らないはずなのに、かなり核心を突いている。


 セリカさんが小声で言う。


「また増えたわね」


「監視役がですか」


「ええ」


 リリアも静かに言う。


「監視、ですか……」


 ノエルが真面目な顔でまとめた。


「監視対象レン、研究対象レン、保護対象レン。分類が増えた」


「増やさないでください」


 ユリアナはノエルを一瞥する。


「ノエル・アシュフォード様。あなたにも後ほど確認事項があります」


「私も?」


「あなたは研究目的でレン様への接触が多すぎます」


「研究だから」


「理由になりません」


 ノエルが珍しく黙った。


 強い。


 この生徒会長、かなり強い。


 ユリアナは最後に、俺へ視線を戻した。


「逃げないように」


「逃げません」


「表示では?」


 思わず口にしたのだろうか。


 ユリアナは少しだけ眉を動かした。


「表示?」


「あ、いえ」


 俺は自分の状態を見る。


レン・クロフォード

状態:緊張、逃避願望微弱

備考:生徒会室への出頭を回避したいが、周囲の圧により逃亡可能性は低い


 正直すぎる。


「逃亡可能性は低いです」


 俺が言うと、ユリアナは少しだけ目を細めた。


「興味深い言い方ですね。ますます説明が必要です」


 墓穴を掘った。


 セリカさんが呆れた顔をしている。


 リリアは小さくため息をついた。


 ノエルは楽しそうだ。


 ユリアナは一礼し、踵を返す。


「放課後、生徒会室でお待ちしています」


 そう言って、彼女は去っていった。


 学生たちのざわめきが戻る。


 俺はその場に立ち尽くした。


 表彰され、相談が増え、才能を見抜いたと噂され、女子生徒たちとの距離が近くなり、今度は生徒会長に監視対象にされた。


 好感度限界突破。


 本当に、面倒な方向へ限界を突破している。


 セリカさんが俺の肩を軽く叩いた。


「行くしかないわね」


「はい」


 リリアも微笑む。


「一緒に行きますか?」


「来てくれると助かります」


「では、行きます」


 ノエルも手を上げる。


「私も行く。研究対象として」


「ユリアナ先輩に怒られたばかりですよね」


「だから正式に同行する」


「強い」


 俺は深く息を吐いた。


 静かな学園生活は、もはや遠いどころではない。


 完全に別大陸へ旅立った。


 そして放課後、生徒会室で、また新しい面倒が待っている。

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