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第34話 教会監察部、夜に動く

 その夜、ギルドは眠らなかった。


 王都冒険者ギルドは、もともと夜でも完全に静かになる場所ではない。

 夜間依頼から戻る冒険者もいるし、急患が運び込まれることもある。食堂の隅では、酒を飲みながら朝を待つ連中もいる。


 だが、その日の空気はいつもと違っていた。


 笑い声がないわけではない。

 食器の音も、受付の声も、職員の足音もある。


 けれど、その全部がどこか低い。


 ギルド全体が、剣の柄に手をかけたまま息を潜めているようだった。


 理由は一つ。


 マルクス・グレイが動く。


 俺のスキルが、そう告げたからだ。


マルクス・グレイ

状態:証拠露見を察知

次行動:切り捨て、反撃準備

注意:リリア奪還計画を前倒し


 リリア奪還計画。


 奪還、という言葉が気に入らなかった。


 まるで彼女が教会の所有物で、逃げ出したものを取り戻すだけだと言わんばかりだ。


 リリアは人間だ。

 自分の意思でギルドにいる。

 教会へ戻らないと、自分の口で言った。


 それでも、マルクスたちは動くのだろう。


 正しさの名で。

 救済の名で。

 秩序の名で。


 俺はギルド二階の控室で、窓の外を見ていた。


 王都の夜は暗い。

 通りの灯りはあるが、路地の奥までは届かない。

 教会の尖塔だけが、月明かりを受けて白く浮かび上がっている。


 綺麗なのに、不気味だった。


「レン」


 後ろから声をかけられて振り向く。


 リリアが立っていた。


 白いケープではなく、いつもの外套を羽織っている。

 フードは下ろしていた。


 隠れるためではなく、自分で必要だと思った時にだけかぶる。

 それが、彼女なりの変化なのかもしれない。


「眠れませんか」


 俺が聞くと、リリアは小さく頷いた。


「はい。眠ろうとはしたのですが」


「まあ、無理ですよね」


「レンも眠っていません」


「俺は見張り役みたいなものなので」


「ギルド長に休めと言われていました」


「……少しだけ休みました」


「目を閉じただけでは?」


 ばれている。


 俺は視線を逸らした。


 リリアは少しだけ笑った。


「セリカさんが怒りますよ」


「もう怒られました」


「でしょうね」


 彼女の声は穏やかだった。


 でも、その指先は少し震えている。


 俺はそれを見ないふりはできなかった。


「怖いですか」


 聞いてから、少し直球すぎたかと思った。


 だが、リリアは怒らなかった。


「怖いです」


 正直に答える。


「教会の人たちが来ると思うと、胸が冷たくなります。捕まったら、またあの場所へ戻されるのではないかと考えてしまいます」


「戻させません」


 俺はすぐに言った。


 リリアは、俺を見る。


「はい。分かっています」


「分かっているなら」


「それでも、怖いものは怖いのです」


 その言葉に、俺は黙った。


 リリアは続ける。


「でも、怖いと言えるようになっただけ、前よりはいいと思います」


「……」


「教会にいた時は、怖いと思うことも罪のようでした。苦しいと思うことも、逃げたいと思うことも、私の信仰が足りないからだと」


 リリアは自分の胸元に手を当てた。


「今は、怖いです。でも、戻りたくないと言えます。助けてほしいとも言えます」


 彼女は、少しだけ照れたように笑った。


「だから、レン。助けてください」


 その言葉は、重かった。


 けれど、嫌な重さではなかった。


 信頼されている重さだ。


 俺は頷く。


「はい。必ず」


「一人で無茶をするという意味ではありませんよ」


「先に釘を刺された」


「大事なので」


 リリアは少しだけ真面目な顔をした。


「一緒に、です」


「はい。一緒に」


 そう答えると、彼女はようやく少しだけ安心したように息を吐いた。


 その時、扉が開いた。


 セリカさんが入ってくる。


「二人とも、やっぱりここにいた」


「見回りですか?」


「あなたたちが寝てないだろうと思って見に来たの」


 完全に読まれている。


 セリカさんは俺を見て、眉を上げた。


「レン。顔色が悪い」


「それ、今日何回目ですかね」


「治るまで言うわ」


「はい」


 次にリリアを見る。


「リアも。怖いなら怖いって言いなさい。黙って耐えない」


「はい。今、レンに言いました」


「ならよし」


 セリカさんは腕を組む。


 その姿が、とても頼もしかった。


「誰が来ても、ここはギルドよ。教会の聖堂じゃない。勝手に連れていかせたりしない」


 リリアは小さく頷いた。


「ありがとうございます」


「礼は無事に朝を迎えてから」


 セリカさんらしい言い方だった。


 そこで、頭の奥にミュレアの声が響いた。


『ふむ。良い決意じゃ』


「聞いていたんですか」


『妾は退屈しておるからな』


「退屈で盗み聞きしないでください」


『盗み聞きではない。監視者の危機管理じゃ』


 また便利な言い訳だ。


 ミュレアの声はいつもより少し硬かった。


『白き娘よ』


 リリアが顔を上げる。


「はい」


『教会が来ても、己を責めるでないぞ。あやつらは、そなたの罪悪感に鎖をかける』


「……はい」


『そなたは逃げたのではない。鎖を外したのじゃ』


 リリアの目が、少しだけ揺れた。


 それは、ミュレア自身にも向けた言葉のように聞こえた。


 リリアは静かに答える。


「ありがとうございます、ミュレアさん」


『礼は甘いものでよい』


「そこに戻るんですね」


 俺が言うと、ミュレアは少しだけ得意げに笑った。


『大事じゃからな』


 重い空気が、少しだけ緩んだ。


 その直後だった。


 視界に赤い表示が走る。


警告

ギルド東側路地:侵入者反応

数:六

所属:教会監察部系隠密部隊

目的:リリア・セレスティア捕縛

装備:対聖女用拘束具、沈黙結界符


 来た。


「東側路地です。六人。対聖女用拘束具あり」


 俺が言うと、セリカさんの表情が一瞬で変わった。


「来たわね」


 リリアも息を吸う。


 でも、後ろへは下がらなかった。


「行きましょう」


 俺たちは部屋を出た。


     ◇


 ギルド長ダリウスさんは、すでに一階にいた。


 俺が伝えるより早く、職員たちに指示を飛ばしている。


「東口を閉じろ。裏路地側にガルムとニルを回せ。正面は通常通り開けておけ。相手に気づかせるな」


 対応が早い。


 俺が階段を下りると、ダリウスさんがこちらを見た。


「見えたか」


「六人です。沈黙結界符を持っています。たぶん騒ぎを外に漏らさず、リリアを捕まえるつもりです」


「狙いはリアか」


「はい」


 ダリウスさんの顔が険しくなる。


「教会のやり方にしては雑だな」


「焦っているんだと思います。ラゼル教授からマルクスへ繋がる証拠が出たので」


「だろうな」


 ダリウスさんは短く息を吐く。


「なら、ここで尻尾を掴む」


 ギルド一階の灯りは、いつも通りに見えるよう調整されていた。


 食堂には何人かの冒険者が残っている。

 だが、そのほとんどが武器に手を伸ばしやすい位置に座っていた。


 知らない者が見れば、ただ夜更かしの冒険者が飲んでいるだけに見えるだろう。


 実際は、全員待ち構えている。


 エマさんは受付にいた。


 顔は少し強張っているが、落ち着いている。


「レンさん、リアさん、セリカさん。こちらへ」


 受付裏の通路へ案内される。


 そこは、東口に近いが、直接は見えない位置だった。


 リリアを囮にするわけではない。

 だが、相手が近づいてきた時に、俺が表示を読み、セリカさんが動ける位置。


 リリアは小さく息を整えた。


「私が狙いなら、私がここにいた方が早く捕まえられるのですね」


「無理はしないでください」


「分かっています」


 彼女は俺を見る。


「今日は、一人で怖がりません」


「はい」


 セリカさんが剣を抜かずに構える。


「レン、動きが見えたらすぐ言って」


「分かりました」


 頭の奥でミュレアが静かに言った。


『レン。沈黙結界符とやらには気をつけよ。声を封じられると、そなたの指示が遅れる』


「対策は?」


『結界符の起動点を先に潰せ。紙ではなく、留め具の金具じゃ』


 表示も同じことを示した。


沈黙結界符

起動点:符を留める銀具

弱点:銀具破損で発動不能


「沈黙結界符は、紙じゃなく銀具を壊せば止まります」


 セリカさんが頷く。


「了解」


 その瞬間、東口側の空気が揺れた。


 足音はない。


 だが、影が動いた。


侵入者A

位置:東口外

行動:沈黙結界展開準備


「一人目、東口外。結界符を出します」


 俺が言った瞬間、天井の梁からニルさんが影のように降りた。


 いつの間にそこに。


 短剣の柄で、侵入者の手首を叩く音がした。


 小さな金属音。


 銀具が落ちる。


「一つ無効化」


 ニルさんの声がした。


 次の瞬間、東口の扉が内側から開いた。


 黒い外套の男が二人、滑り込んでくる。


 顔には白い仮面。


 古代迷宮で見た密偵たちと似ている。


 だが、装備が少し違う。


教会隠密B

装備:対聖女用拘束具

目的:リリア拘束

弱点:腰部の制御札


教会隠密C

装備:短剣、沈黙結界符

目的:レン妨害

弱点:右肩


「一人は俺狙い、もう一人はリリア狙い! 腰の札と右肩!」


 セリカさんが動いた。


 赤い髪が夜の灯りに揺れる。


 剣は抜かない。

 鞘ごと、リリア狙いの隠密の腰部へ叩き込む。


 制御札が砕け、拘束具の光が消えた。


 同時に、俺へ向かってきた隠密Cをガルムさんの盾が横から止める。


「新人に近づくなって言っただろうが!」


 盾の衝撃で、隠密Cが壁に叩きつけられる。


 容赦がない。


 だが助かる。


 残りの侵入者が裏口から回り込もうとする。


 表示が出る。


侵入者D・E

行動:裏通路から受付裏へ

目的:リリア確保、撤退経路確保


「裏通路から二人!」


 俺が叫ぶと、受付横の扉からエマさんが素早く下がった。


 代わりに、待機していた冒険者二人が前へ出る。


 彼らは酔っていたように見えて、完全に素面だった。


「こっちは任せろ!」


「教会さんよ、夜のギルドを甘く見たな!」


 剣と棍棒が、裏通路でぶつかる音が響く。


 侵入者たちは完全に包囲されつつあった。


 だが、最後の一人が厄介だった。


侵入者F

役割:指揮

所持:強制転移札

目的:リリアのみ転移搬出

起動条件:対象への聖力標識付与


「指揮役が強制転移札を持っています! リリアに聖力標識をつけて飛ばすつもりです!」


 リリアの顔が強張る。


 その時、床に淡い白い線が走った。


 リリアの足元へ向かっている。


 聖力標識。


 目に見えにくい。


 だが、俺には表示されている。


「足元、白い線!」


 リリアがすぐに反応した。


 白い光を下へ流す。


 だが、その線はリリアの光に絡みつこうとする。


「っ……!」


「リリア!」


 俺は反射的に彼女の手を取った。


 好感度リンクが起動する。


好感度リンク:起動

目的:聖力標識の逆流防止

対象:リリア


 白い線が、リリアへ入り込む前に止まる。


 俺はその流れを逆に辿った。


 指揮役の位置が見える。


「二階吹き抜けの柱裏!」


 セリカさんが即座に上を見る。


 その瞬間、指揮役が飛び降りた。


 黒い外套が広がる。


 手には転移札。


「聖女を返してもらう」


 その声は、古代迷宮の密偵よりも冷たかった。


 リリアの指が俺の手を握る。


 怖いのだ。


 でも、彼女は言った。


「私は、あなたたちのものではありません」


 指揮役の動きが一瞬止まる。


「教会はあなたを保護する」


「保護ではありません。拘束です」


「逃亡者に選択権はない」


「あります」


 リリアは、はっきり言った。


「私の行き先は、私が決めます」


 その言葉と同時に、彼女の聖力が広がった。


 柔らかいが、強い白い光。


 標識の線が弾かれる。


 指揮役が舌打ちした。


 転移札を起動しようとする。


 だが、その手元へ一本の矢が飛んだ。


 シェラさんだ。


 いつの間にか食堂の奥から狙っていたらしい。


 矢は転移札を貫き、壁に縫い止めた。


 セリカさんが踏み込む。


「終わりよ」


 剣の柄が、指揮役の腹へ入った。


 男が膝をつく。


 ガルムさんがすぐに押さえ込み、魔法封じの縄をかける。


 沈黙。


 ほんの数十秒だった。


 だが、体感ではずっと長かった。


 ギルド一階には、六人の教会隠密が拘束されて転がっている。


 冒険者たちが武器を収める。


 エマさんが深く息を吐いた。


 ダリウスさんが階段の上から下りてくる。


「全員生きているな」


 ガルムさんが答える。


「ああ。ちょっと痛い目は見せたがな」


「十分だ」


 ダリウスさんは拘束された指揮役の前に立った。


「所属と命令者を言え」


 指揮役は黙った。


 だが、俺の表示は黙らない。


指揮役

所属:教会監察部特務班

命令者:マルクス・グレイ

目的:リリア・セレスティアの極秘回収

補足:作戦失敗時、白灯商会残党の犯行に偽装予定


「教会監察部特務班。命令者はマルクス・グレイ。失敗したら白灯商会残党の犯行に偽装する予定です」


 俺が言うと、指揮役の仮面の奥で目が動いた。


 当たりだ。


 ダリウスさんの顔がさらに冷たくなる。


「なるほど。いい証人が増えたな」


 指揮役は初めて声を荒げた。


「異能者の戯言を証拠にするつもりか!」


「戯言かどうかは、これから調べる」


 ダリウスさんは職員に命じる。


「全員地下へ。装備を押収しろ。転移札、拘束具、結界符は封印箱に入れる。記録水晶も回せ」


「はい!」


 ギルド職員たちが動く。


 完全な手際だった。


 マルクスが前倒しで動いたことは、失敗した。


 それどころか、証拠が増えた。


 だが、俺は安心しきれなかった。


 マルクスは、これで終わらない。


 むしろ追い詰められた。


 追い詰められた相手は、何をするか分からない。


     ◇


 騒ぎが収まった後、俺たちは二階の会議室へ戻った。


 リリアは少し疲れた顔をしていた。


 だが、崩れてはいない。


 セリカさんが椅子を引く。


「座って」


「ありがとうございます」


 リリアは素直に座った。


 俺も隣に座ろうとして、足元が少しふらついた。


 さっき好感度リンクを使った反動が来ている。


 セリカさんがすぐに睨む。


「レン」


「はい」


「座る」


「座ります」


 俺は大人しく座った。


 リリアが心配そうに見る。


「私のせいで」


「違います」


 俺は即答した。


「リリアのせいじゃありません。悪いのはあの人たちです」


 リリアは黙る。


 それから、小さく頷いた。


「……はい」


 その返事だけで、少し安心した。


 以前なら、自分のせいだと言い続けていたかもしれない。


 今は違う。


 ちゃんと受け止めて、ちゃんと否定できる。


 ミュレアの声が響いた。


『白き娘、よく言った』


「ミュレアさん」


『鎖をかけに来た者へ、自分は物ではないと言えた。大したものじゃ』


 リリアは少しだけ目を伏せた。


「怖かったです」


『怖くてよい。怖いまま言えたなら、それは強さじゃ』


 ミュレアの声は、珍しく優しかった。


 セリカさんが小さく言う。


「魔王令嬢がまともなことを言ってる」


『聞こえておるぞ、赤き剣姫』


「聞こえるように言ったわ」


『ふふ。そなたも今日は良い剣であった』


「……褒めても何も出ないわよ」


『では甘いものを出せ』


「台無しね」


 少しだけ笑いが起きた。


 その笑いが消える前に、ダリウスさんが会議室へ入ってきた。


 手には、押収された転移札の写しがある。


「マルクスの署名に近い魔力印が出た」


 部屋の空気が変わる。


「本人ですか?」


 俺が聞くと、ダリウスさんは首を横に振る。


「本人の直接署名ではない。だが、監察部内で使われる承認印だ。ラゼル教授の記録にあったものと一致する」


「つまり」


「状況証拠は固まった。白灯商会、ラゼル教授、教会監察部特務班。全部マルクスへ伸びている」


 リリアが静かに息を吸った。


 セリカさんが言う。


「なら、捕まえられるんですか」


「簡単ではない」


 ダリウスさんの声は重かった。


「相手は教会聖務監察官だ。表の権限もある。証拠を持って王国へ訴える必要がある」


「王女殿下の件もあります」


「ああ。アリシア殿下が対象候補にされていた。これは王宮も黙っていない」


 ダリウスさんは俺たちを見る。


「明日、王宮への正式報告が行われる。学園長、アリシア殿下、ギルド代表。そして、おそらくお前たちにも証言が求められる」


「俺たちもですか」


「当事者だからな」


 また大きな場所へ行く流れだ。


 王立学園の次は王宮。


 俺の静かな生活は、どんどん遠くなっていく。


 だが、今回は逃げたいとは言いづらかった。


 リリアが狙われた。

 アリシア王女も狙われていた。

 学生たちも実験対象にされていた。


 見てしまった以上、証言しないわけにはいかない。


 俺は頷いた。


「分かりました」


 リリアも言う。


「私も、話します」


 セリカさんも頷く。


「私も行くわ」


 ダリウスさんは短く頷いた。


「今夜はギルド内で休め。警戒は最大にする。マルクスがさらに何か仕掛ける可能性もある」


「はい」


 その時、俺の視界に新しい表示が浮かんだ。


マルクス・グレイ

状態:作戦失敗を把握

次行動:王宮報告前の最終反撃

手段:世論操作、リリア異端告発、レン危険異能者指定

注意:明朝、教会が正式声明を出します


 明朝。


 教会が声明を出す。


 俺はそのまま読み上げた。


 会議室が、また静まり返る。


 ダリウスさんは目を細めた。


「先に世論を取りに来るか」


「リリアを異端として、俺を危険異能者として告発するつもりみたいです」


 リリアの顔が少し白くなる。


 だが、彼女は俯かなかった。


「……分かりました」


 声は震えていた。


 でも、折れてはいなかった。


「なら、私も話します」


 セリカさんが隣に立つ。


「一緒にね」


 俺も頷いた。


「一緒に」


 頭の奥で、ミュレアが静かに笑った。


『ならば、言葉の戦じゃな』


「そうみたいです」


『レン。そなたは剣より言葉の方が危ういが、今日は悪くなかったぞ』


「褒めてます?」


『褒めておる。少しだけな』


 少しだけ。


 それでも、不思議と力になった。


 明朝、教会が動く。


 マルクス・グレイは、リリアを異端にし、俺を危険な異能者に仕立て上げようとしている。


 なら、こちらも言うしかない。


 リリアは物ではない。

 俺の力は、誰かを縛るためではなく助けるために使う。

 そして、教会監察部こそが、聖女再現計画に関わっていたのだと。


 夜はまだ深い。


 だが、次の戦いはもう始まっていた。

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