第33話 ラゼル教授、全部マルクス監察官のせいにしようとする
地下から戻る階段は、下りる時よりもずっと長く感じた。
炉心の暴走は止まった。
旧研究棟地下に隠されていた魔力炉も鎮静した。
聖力吸引は止まり、リリアもアリシア王女も無事だった。
それだけ見れば、成功と言っていい。
けれど、俺の身体は鉛みたいに重かった。
リリアとアリシア王女の聖力を一時的に繋ぎ、炉心への吸引を逃がした反動だろう。
頭の奥が熱く、足元が少し浮いているような感覚がある。
「レン、足」
セリカさんの声がした。
「あ、はい」
「返事だけじゃなくて、ちゃんと足を上げて」
「上げてるつもりなんですが」
「つもりになってるだけ」
セリカさんは俺の左腕を支えながら、少し呆れた声を出した。
反対側では、リリアが俺の右腕を支えている。
正直、かなり恥ずかしい。
王女殿下とノエルとミリア先生が見ている中で、両側から支えられながら階段を上がる男子。
格好良さはない。
まったくない。
ただし、歩けないのも事実なので抵抗できなかった。
「すみません。迷惑を」
「迷惑ではありません」
リリアがすぐに言った。
「レンはさっき、私と殿下を助けてくれました。今度は私たちが支えます」
「そうよ。こういう時くらい大人しく支えられなさい」
セリカさんも続ける。
「すみません」
「謝らない」
「はい」
完全に叱られている。
だが、その声があるおかげで、意識が遠のかずに済んでいた。
少し後ろを歩くノエルは、記録水晶と数枚の資料を大事そうに抱えている。
顔は青い。
だが、目は強かった。
「……あれは研究じゃない」
彼女がぽつりと言った。
「ノエル?」
「地下魔力炉。学生の聖力データ。封印石片の反応記録。王女殿下の略号まで入った候補表。あんなの、研究じゃない。人を材料にして、都合の悪いところを隠して、失敗したら燃やすつもりだった」
ノエルの声は、怒りで震えていた。
普段の彼女は、未知のものに対して危なっかしいくらい好奇心を見せる。
でも今は違う。
研究者だからこそ、許せないのだろう。
アリシア王女は静かに言った。
「ノエル様。あなたが記録を守ってくださったこと、感謝します」
「殿下、私は……」
「怖かったですか?」
王女の問いは、穏やかだった。
ノエルは少し黙った。
それから、小さく頷く。
「怖かったです。あれが学園の中にあったことも、私が少し違和感に気づいていたのに、深く踏み込まなかったことも」
「それでも、今日ここにいました」
アリシア王女は言う。
「証拠を燃やさせなかった。炉心を止めるために動いた。それは、なかったことにはなりません」
ノエルは目を伏せた。
「……殿下って、たまにすごく王女ですね」
アリシア王女は少しだけ目を丸くした。
それから、思わずというように笑った。
「たまに、ですか」
「はい。普段は普通に勉強熱心な同級生なので」
「それは嬉しいような、少し複雑なような」
その短いやり取りで、階段の重苦しさが少しだけ薄れた。
だが、上へ近づくにつれて空気はまた冷たくなる。
上にはラゼル教授がいる。
あの人が、素直にすべてを認めるとは思えない。
俺の視界には、さっきから赤い表示が出続けていた。
ラゼル教授
状態:追い詰められ、開き直り、逃亡試行
次行動:教会監察部への責任転嫁
注意:マルクス・グレイとの直接関係が露見します
次は言葉の戦いだ。
炉心は止めた。
でも、本当に面倒なのはここからだ。
◇
一階資料室へ戻ると、ラゼル教授は壁際に座らされていた。
ミリア先生が簡易拘束具を使ったらしく、両手には魔法封じの腕輪がはめられている。
それでも、彼はまだ穏やかな顔を作っていた。
ただ、目だけは違った。
俺たちが戻ってきた瞬間、彼の視線はまずアリシア王女に向かい、次にリリアへ、そして最後に俺で止まった。
「……止めたのですか」
ラゼル教授が言った。
声は乾いていた。
「はい」
アリシア王女が答える。
「地下魔力炉は鎮静しました。記録水晶も確保しています」
ラゼル教授の頬が、ほんの少し引きつった。
「記録水晶……」
「聖女再現計画」
俺が言うと、彼の目が細くなった。
「王族系聖属性保持者への適用可能性調査。対象候補、A.L.V.」
アリシア王女の肩がわずかに強張る。
でも、彼女は目を逸らさなかった。
「私を、実験対象にするつもりだったのですね」
「違います」
ラゼル教授は即答した。
「違う?」
「殿下を害する意図などありませんでした。あれはあくまで適性調査です。王族の聖属性は、古くから王国を守る結界に関わっている。もし安全に増幅できれば、王国全体の守りを強化できる」
「安全に?」
ノエルが低く言った。
「さっきの地下炉、どこが安全だったんですか」
「未完成だったのです」
「未完成の炉で、学生から聖力を取ってましたよね」
「強制ではありません。協力者には補助具として」
「危険性を説明しましたか?」
ノエルの声が鋭くなる。
ラゼル教授は答えなかった。
それが答えだった。
リリアが静かに言う。
「知らされていなければ、同意とは呼べません」
ラゼル教授はリリアを見る。
「あなたは……」
彼はそこで言葉を止めた。
リリアの顔を、聖力を、白いケープの奥にある気配を見ている。
正体に気づきかけている。
俺は一歩前へ出ようとしたが、リリアが先に口を開いた。
「私は、あなたの聖具を見て、昔のことを思い出しました」
彼女は逃げなかった。
「痛みを説明されず、危険を知らされず、祈りが足りないからだと言われたことを」
ラゼル教授の視線が揺れる。
「……まさか」
「私の名前をここで確認する必要はありません」
リリアは静かに続けた。
「大切なのは、あなたが同じ構造のことを学園で行っていたという事実です」
ラゼル教授は、しばらく黙っていた。
やがて、低く笑った。
「同じ構造、ですか。なるほど。だからあなた方は、私を悪人にしたいのですね」
「違います」
アリシア王女が言った。
「あなたの行動が、あなたをそう見せているだけです」
ラゼル教授の顔から、穏やかな仮面が少しずつ剥がれていく。
「私は、教会の支配から治癒術を解放したかった」
その声には、怒りと疲労が滲んでいた。
「聖女という制度に頼らず、誰でも安定した治癒術を使えるようにする。聖力が弱い者でも、道具によって補えるようにする。何が悪いのですか」
言葉だけを聞けば、理想に聞こえる。
でも、その理想の下には、倒れた女子生徒がいる。
地下の拘束具がある。
燃やそうとした記録がある。
リリアが言った。
「弱い人を助けたいなら、まずその人の声を聞くべきです」
ラゼル教授は答えない。
「苦しいのか。怖いのか。やめたいのか。続けたいのか。力を得たいのか。それを聞かずに、あなたが正しいと思う形へ押し込めるなら、それは教会と変わりません」
その言葉は、静かだった。
だが、資料室にいる全員に届いた。
ラゼル教授の顔が歪む。
「教会と同じ……? 私が?」
「はい」
リリアは目を逸らさなかった。
「あなたは、鎖の形を変えただけです」
沈黙。
ラゼル教授は口を開きかけ、閉じた。
そして、突然笑った。
「……全部、私ひとりでできるはずがないでしょう」
来た。
責任転嫁。
俺の表示が赤く光る。
ラゼル教授
状態:責任転嫁開始
対象:教会監察部、マルクス・グレイ
アリシア王女が静かに問う。
「誰が関わっているのですか」
「白灯商会は資材を持ってきただけです。私は研究設備を提供した。ですが、計画の大枠を作ったのは教会監察部です」
ミリア先生が息を呑む。
「教会監察部……」
「ええ。聖務監察官マルクス・グレイ。彼が言ったのです。聖女制度は揺らいでいる。次の時代には、個人の聖女ではなく、再現可能な聖力装置が必要になると」
マルクス。
やはり、直接出てきた。
俺は拳を握った。
ラゼル教授は続ける。
「私は協力しただけです。封印石片も、聖具の基本術式も、白灯商会を通じて提供されたもの。教会監察部の承認がなければ、学園内でここまでの設備は動かせない」
ノエルが低く言う。
「だから自分は悪くないって?」
「そうは言っていません」
「言ってるよ」
ノエルの声が冷たい。
「自分の研究室で、自分の学生を使って、自分の地下炉を動かしておいて、最後は監察官のせい? 研究者としても大人としても最悪」
ラゼル教授はノエルを睨んだ。
「若い君には分からない。研究には後ろ盾が必要なのです。理想だけでは何も変えられない」
「理想を言い訳にして人を壊したら、変わる前に終わりです」
ノエルは一歩も退かなかった。
アリシア王女が、記録水晶を手に取る。
「今の発言は記録されています。マルクス・グレイの関与について、正式に学園長および王国へ報告します」
ラゼル教授の顔色が変わった。
「殿下、それは」
「あなたは今、ご自分で証言しました」
「待ってください。私の証言だけでは」
「だから、資料も確認します。地下炉の記録、契約紙、封印箱の中身。すべて」
アリシア王女の声は震えていなかった。
「学園内で、学生を材料にする研究が行われていた。その対象候補に私自身の略号もあった。これは、王族としても、学園生としても、見過ごせません」
ラゼル教授は、とうとう黙った。
その沈黙は、敗北の沈黙ではない。
まだ何かを考えている。
俺の表示が再び赤く光る。
ラゼル教授
状態:逃亡試行
方法:旧研究棟緊急転移陣
起動条件:床下の残存魔力線
起動まで:短
「逃げます!」
俺が叫ぶと同時に、ラゼル教授の足元に赤い魔法陣が浮かんだ。
拘束具をつけているのに、床下の残存魔力線を使っている。
セリカさんが即座に踏み込んだ。
「させない!」
剣の鞘で魔法陣を叩く。
だが、魔法陣は一瞬揺らいだだけで消えない。
緊急転移陣
弱点:北側の赤点、三箇所同時遮断
必要:剣撃、聖力、魔力糸
「三箇所同時です! 北側の赤点!」
セリカさんが右の赤点を斬る。
リリアが白い光で左の赤点を包む。
ノエルの魔力糸が中央の赤点を貫く。
魔法陣が砕けた。
ラゼル教授の身体が半分ほど光に沈みかけていたが、強制的に引き戻される。
「ぐっ……!」
彼は床に倒れ込んだ。
セリカさんが今度こそ剣を抜き、喉元に突きつける。
「もう動かないで」
声は低い。
完全に戦場の声だった。
ラゼル教授は荒い息を吐きながら、俺を睨んだ。
「また君か……」
「はい」
俺は杖を握りながら答えた。
「また俺です」
自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。
怖い。
もちろん怖い。
でも、この人に逃げられたら、倒れた女子生徒も、地下で記録されていた名前の人たちも、アリシア王女も、リリアも、全部なかったことにされる。
それだけは嫌だった。
ミリア先生が通信魔道具を再起動し、学園長室へ緊急連絡を入れた。
今度は魔力ノイズが収まっている。
「学園長、旧研究棟地下にて重大証拠を発見。ラゼル教授を拘束しました。至急、警備隊と記録官の派遣をお願いします」
通信先から、低い声が返ってくる。
内容までは聞こえなかったが、ミリア先生の顔が引き締まった。
「はい。現場を保全します」
通信が切れる。
アリシア王女はゆっくり息を吐いた。
「これで、学園として正式に動けます」
ノエルが床に座り込む。
「……疲れた」
「ノエルも?」
「私、頭使うのは平気だけど、命の危険がある現場作業は専門外」
「さっきは結構前に出てましたよ」
「好奇心が勝った」
「危ないですね」
「うん。自覚はある」
自覚はあるらしい。
セリカさんが俺を見る。
「レンも同じよ」
「今、ノエルの話では?」
「あなたも同じ」
「はい」
また叱られた。
リリアが少し笑う。
「でも、今日は一人で行きませんでした」
「進歩ですね」
「はい。大きな進歩です」
そう言われると、少しだけ救われた気がした。
◇
学園警備隊と学園長が旧研究棟に到着したのは、それから十分ほど後だった。
エルドリッジ学園長は、資料室に入るなり、状況を一目で理解したようだった。
地下扉。
封印箱。
拘束されたラゼル教授。
青ざめたミリア先生。
記録水晶を抱えるノエル。
そして、アリシア王女。
学園長は静かに深く息を吸った。
「……ここまで入り込まれていましたか」
その声には、怒りよりも悔しさがあった。
アリシア王女が言う。
「学園長。地下魔力炉、封印石片、聖女再現計画の記録を確認しました。私自身も対象候補に入っていました」
学園長の顔が一瞬で険しくなる。
「殿下が?」
「はい」
「記録を」
ノエルが記録水晶と研究帳を差し出す。
学園長はページを確認し、閉じた。
手が少し震えていた。
「ラゼル教授」
彼は拘束された教授を見る。
「あなたを、王立学園研究倫理規定違反、学生への無許可実験、旧研究棟設備の不正使用、さらに王族への危害計画関与の疑いで拘束します」
ラゼル教授は力なく笑った。
「私は、学園のために」
「学園のためと言うなら、なぜ学園に隠した」
学園長の声が重く響いた。
「学生のためと言うなら、なぜ学生に危険を伝えなかった」
ラゼル教授は答えなかった。
今度こそ、本当に答えられないようだった。
学園警備隊が彼を連れていく。
すれ違う瞬間、教授は俺を見た。
「レン・クロフォード……君の力は、いつか君自身を焼く」
嫌な言葉だった。
呪いのようだった。
胸の奥が少し冷える。
だが、リリアが俺の手をそっと握った。
「焼かれないように、私たちがいます」
セリカさんも言う。
「その前に引っ張って止めるわ」
ノエルも手を上げる。
「必要なら能力制御用の補助具、作るよ。安全なやつ」
「安全なやつでお願いします」
アリシア王女も静かに言った。
「レン様は、今日この学園を救ってくださいました。少なくとも私は、その力を恐れる前に感謝します」
俺は言葉に詰まった。
ラゼル教授の言葉で冷えた場所に、少しずつ温かいものが戻ってくる。
「……ありがとうございます」
それしか言えなかった。
学園長は俺たちを見回した。
「本日の件は、学園内だけで処理できる問題ではありません。王国、ギルド、そして教会に関わります。ダリウス殿にも即刻連絡します」
「教会にも?」
セリカさんが眉をひそめる。
「ええ。ただし、教会へ知らせる内容は慎重に選びます。監察部が関わっている可能性がある以上、相手に証拠隠滅の時間を与えてはならない」
学園長はアリシア王女へ向き直った。
「殿下。この件、王宮への第一報は私から」
「私も同席します」
「危険です」
「私が対象候補だったのです。外れるわけにはいきません」
王女の声は静かだった。
学園長は少しだけ目を閉じ、やがて頷いた。
「分かりました」
そのやり取りを見ながら、俺は思った。
アリシア王女もまた、自分の立場から逃げない人なのだと。
リリアやセリカさんと同じように。
◇
旧研究棟を出る頃には、外はすっかり夕闇に包まれていた。
学園警備隊が建物を封鎖し、資料や記録水晶は封印箱に入れられて運び出される。
学生には「旧設備の魔力異常」とだけ説明されるらしい。
さすがに、聖女再現計画などとそのまま広めるわけにはいかない。
俺たちは本校舎へ戻る途中で、レオン・バルツァーと鉢合わせた。
彼は警備隊の動きを見て、何かを察したようだった。
「何があった」
その口調は、昨日までより少し硬い。
俺は答えるべきか迷った。
するとアリシア王女が前に出た。
「学園内の設備異常です。詳しいことは後日、正式に説明されます」
「殿下。旧研究棟で?」
「今はそれ以上お話しできません」
レオンは不満そうだったが、王女相手に食い下がることはできなかった。
ただ、彼の視線が俺へ向く。
レオン・バルツァー
状態:疑念、焦り、疎外感
備考:自分だけが情報から外されていることに苛立っています
厄介な感情だ。
レオンは敵ではないかもしれない。
だが、こういう疎外感は後で面倒な動きにつながりやすい。
俺は一応、軽く頭を下げた。
レオンは少し驚いたように眉を動かす。
「……君は、また何か見つけたのか」
「見つけたというか、巻き込まれたというか」
「君はいつもその調子なのか?」
「最近は、はい」
正直に答えると、レオンは何とも言えない顔をした。
「変な男だな」
「よく言われます」
「褒めてはいない」
「でしょうね」
少しだけ、空気が緩んだ。
レオンは何か言いたげだったが、結局何も言わずに去っていった。
セリカさんが小声で言う。
「少し角が取れた?」
「どうでしょう」
リリアが言う。
「まだ警戒は必要だと思います」
「ですね」
俺も同意した。
◇
ギルドへ戻ったのは、夜になってからだった。
学園長からの連絡はすでに届いていたらしく、ダリウスさんは会議室で待っていた。
資料を広げる前から、顔が険しい。
「説明しろ」
短い。
俺たちは順番に、今日起きたことを報告した。
食堂での試作聖具暴走。
ラゼル教授との対峙。
旧研究棟の隠し地下。
封印箱の証拠。
地下魔力炉。
聖女再現計画。
アリシア王女が対象候補だったこと。
そして、ラゼル教授がマルクス・グレイの名を出したこと。
報告が終わる頃には、ダリウスさんの表情は氷のようになっていた。
「マルクスに繋がったか」
「はい」
「証拠は?」
「記録水晶、契約紙、研究帳、炉心記録があります。ノエルと学園側が保全しています」
「よし」
ダリウスさんは低く言った。
「これで教会監察部に踏み込める」
いよいよだ。
白灯商会。
ラゼル教授。
旧研究棟。
そしてマルクス・グレイ。
線は繋がった。
だが、相手も黙っていないだろう。
俺の視界に、赤い表示が浮かぶ。
マルクス・グレイ
状態:証拠露見を察知
次行動:切り捨て、反撃準備
注意:リリア奪還計画を前倒し
胸が冷えた。
「ギルド長」
「何だ」
「マルクスが、リリア奪還計画を前倒しにします」
会議室の空気が、一瞬で変わった。
リリアの顔が白くなる。
セリカさんが剣の柄に手を置く。
ダリウスさんが低く命じた。
「今夜から警戒を上げる。リアを単独にするな。レン、お前もだ」
「はい」
リリアは少し震えながらも、前を向いた。
「私は、戻りません」
その声は小さかった。
でも、はっきりしていた。
俺は頷いた。
「戻させません」
セリカさんも言う。
「誰が来ても、通さない」
頭の奥で、ミュレアの声が響いた。
『妾も忘れるな。白き娘を鎖に戻す者など、妾も気に入らぬ』
「ミュレア」
『レン。次は教会の番じゃな』
その声は、どこか楽しそうで、同時に冷たかった。
俺は深く息を吸った。
旧研究棟の地下で見つけた真実は、次の戦いを呼び込んだ。
教会監察官マルクス・グレイ。
彼との正面衝突は、もう避けられそうになかった。




