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第107話 扉の声が初めて「嫌です」と書く

呼称選択権という言葉が、相談室の壁に貼られてから一日が経った。


 たった一日。


 けれど、学園の空気は少しだけ変わっていた。


 劇的に、ではない。


 誰もが急に優しくなったわけでもない。

 呼び名で傷つくことが一晩でなくなったわけでもない。

 教師たち全員が、完璧に制度を理解したわけでもない。


 それでも、変化はあった。


 廊下で、友人同士が名前の呼び方について話している声が聞こえるようになった。


「それ、嫌だったら言っていいらしいぞ」


「でも今さら言いにくいよ」


「じゃあ未定にしとけばいいんじゃない?」


「未定って、便利すぎない?」


 そんな会話が、当たり前のように漂っている。


 少し前なら、呼び名が嫌だと口にするだけでも、面倒な人間だと思われたかもしれない。


 でも今は、「嫌なら言っていい」という言葉が、ほんの少しだけ学園内に根を下ろし始めている。


 そのこと自体は、良いことだ。


 良いことなのだが。


「……相談件数、増えましたね」


 俺は机の上に積まれた保護印申請用紙を見て、思わず呟いた。


 リリアが苦笑する。


「はい。呼称選択権の掲示を見て、確認したいという生徒が増えました」


 セリカさんが用紙を一枚つまみ上げる。


「通常呼称、避けたい呼称、休ませたい呼称、緊急時呼称……これ、ちゃんと書こうとするとけっこう考えるわね」


「だからこそ、部分記入も可にしています」


 ユリアナ先輩が答えた。


「全部を決めなくても提出できます。むしろ、全部決めなければ提出できない形式にすると、未定のまま相談したい人が使えなくなります」


「なるほどね」


 セリカさんは用紙を見ながら、少しだけ口元を緩めた。


「この欄、いいじゃない。“今は決められない呼称”ってやつ」


「リリアさんの提案です」


「リリアらしい」


 リリアは少し照れたように笑った。


「決められないことも、書ける場所があった方がいいと思ったので」


 ノエルは記録板の上で、申請用紙の分類を整理している。


「現在の傾向。避けたい呼称だけ記入する生徒が多い。通常呼称は未定のまま」


「普通は逆かと思いました」


 俺が言うと、ノエルは首を横に振った。


「嫌なものの方が先に分かることがある」


 それは、妙に納得できる言葉だった。


 好きな呼び方は分からない。


 でも、これだけは嫌だ、というものは分かる。


 人は、自分の輪郭を好きなもので描くより先に、傷ついた場所で知ることがあるのかもしれない。


 アイリスが窓際で、静かに氷盾を浮かべていた。


「私も、最初に分かったのは嫌な呼び名でした」


 彼女の声に、みんなが少しだけ視線を向ける。


 アイリスは淡々と続けた。


「冷血魔女と呼ばれたくない。それは分かっていました。でも、何と呼ばれたいかは、すぐには分かりませんでした」


「今は?」


 セリカさんが聞く。


 アイリスは、少しだけ目を伏せた。


「……相手によります」


「いいじゃない」


 セリカさんは即答した。


「それが呼称選択権ってやつでしょ」


 アイリスは小さく頷いた。


「はい。相手によって、距離が違いますから」


 その言葉が、今日の相談室にはよく合っていた。


 呼び名とは、距離だ。


 近づきすぎれば痛い。

 遠すぎれば届かない。

 だから、誰に、どこで、どんなふうに呼ばれるかを選ぶ必要がある。


 それを、扉の声にも伝えようとしている。


 そして、その扉の声は昨日、こう書いた。


 ――盾を持つ。

 ――未定のまま。


 呼称選択権という盾。


 未定のまま持つ盾。


 今日は、その盾が本当に使えるかどうかが問われる日になる。


 そんな予感がしていた。


     ◇


 受付箱が光ったのは、昼の鐘が鳴る少し前だった。


 灰色ではなく、白に近い淡い光。


 箱の中には、いつもの相談票が入っている。


 保護印、扉。


 呼称、発話不可。


 状態、未定。


 前回記録。


 盾を持つ。

 未定のまま。

 次は、入る。


 そして、今日の相談内容欄には、短くこう書かれていた。


 ――盾を持っている。

 ――だが、いつ使う。


 ユリアナ先輩が紙を机の中央に置いた。


「呼称選択権の実践確認ですね」


 ノエルが測定具をかざす。


「反応、相談型。攻撃性なし。ただし緊張反応あり」


「緊張してるんですね」


 リリアがそっと言った。


「盾を持ったけれど、使い方が分からないのかもしれません」


 セリカさんが腕を組む。


「盾って持ってるだけなら安心するけど、実際に構えるのは怖いからね。構えたら、相手に“防ぐつもりか”って思われる」


 ミュレアの通信水晶が光る。


『その通りじゃ。盾を持つ者は、攻撃を疑っておると見なされることもある。だから、優しい顔をした支配者ほど、盾を持つこと自体を嫌がる』


「嫌な話ですね」


『嫌な話じゃ。だが、よくある話でもある』


 アリシア様の声も静かに続いた。


『王宮でも、防御の意思を見せること自体が不敬と取られる場合があります。だからこそ、境界線を示す言葉は慎重に守らなければなりません』


 嫌です。


 その言葉が、まだ出ていないのに、相談室の中に浮かんだ気がした。


 リリアがペンを取った。


 ――盾は、攻撃された時だけ使うものではありません。

 ――苦しくなりそうな時、近づきすぎた時、まだ話したくない時にも使えます。

 ――使う合図の一つが、「嫌です」です。

 ――嫌ですは、相手を全部拒絶する言葉ではありません。

 ――ここから先は苦しい、と知らせる言葉です。


 紙が光った。


 少し長い沈黙。


 やがて文字が浮かぶ。


 ――嫌です。


 ただし、それは相談内容ではなく、言葉をなぞっただけのように見えた。


 続いて、次の行。


 ――書けば、終わる。


 リリアはすぐには返事を書かなかった。


 彼女は紙を見つめたまま、静かに息を整えた。


「やはり、嫌ですは“終わりの言葉”になっているのですね」


 ユリアナ先輩が頷く。


「以前も、嫌と言えば捨てられると反応していました」


 セリカさんが低く言う。


「嫌って言ったら終わる関係しか知らなかったのかもね」


 それは重い言葉だった。


 嫌だと言う。

 それだけで、相手が去る。

 怒る。

 罰する。

 捨てる。

 無視する。


 そんな経験を重ねれば、「嫌です」は自分を守る盾ではなく、自分を孤立させる刃に見えるだろう。


 俺はペンを取った。


 ――ここでは、「嫌です」と書いても相談は終わりません。

 ――止まるだけです。

 ――嫌だと分かったところで、一度止まります。

 ――続けるか、休むか、別の話にするかは、その後で決められます。


 紙が光る。


 返答は遅かった。


 そして、浮かんだ文字は短い。


 ――止まるだけ。


 その言葉には、少しだけ驚きが混ざっているように見えた。


 リリアが静かに微笑んだ。


「はい。終わるのではなく、止まるだけです」


     ◇


 相談はそこから慎重に進んだ。


 ユリアナ先輩が、過去に触れすぎないよう分類を確認する。


 ――今、嫌ですを使う練習をするなら、対象は本当の名前ではなく、呼ばれたくない分類から選べます。

 ――不要。

 ――機能。

 ――危険。

 ――役割。

 ――失敗。

 ――罪。

 ――期待。


 紙が光る。


 扉の声は、しばらく沈黙した。


 やがて、文字が浮かぶ。


 ――不要は、嫌です。


 セリカさんが小さく息を吐いた。


「よし」


 リリアがすぐに返す。


 ――分かりました。

 ――不要とは呼びません。

 ――不要という呼称は拒否として記録します。


 紙が光る。


 ――終わらない。


 俺は短く書いた。


 ――終わりません。


 次に、ノエルが分類を進めた。


 ――機能という呼ばれ方はどうですか。

 ――嫌なら、嫌ですと書けます。

 ――未定でも構いません。


 紙が光る。


 返答。


 ――機能は、嫌です。


 ノエルは少しだけ目を細めた。


 そして、いつもより丁寧に書いた。


 ――分かりました。

 ――機能とは呼びません。

 ――あなたは相談者です。機能ではありません。


 紙が光る。


 ――相談者。


 その文字は、前より少し安定していた。


 リリアが小さく頷く。


 ユリアナ先輩は記録を進める。


 拒否呼称:不要、機能。

 呼称拒否確認済み。

 相談継続。


 ここまでは、静かだった。


 だが、次の分類に入った時、空気が変わった。


 ユリアナ先輩が慎重に書いた。


 ――危険という呼ばれ方はどうですか。

 ――嫌なら、嫌ですと書けます。

 ――未定でも構いません。


 紙が光った。


 すぐに、文字が浮かんだ。


 ――危険は、事実。


 相談室の空気が少し重くなる。


 危険。


 それは、不要や機能とは違う。


 扉の声は実際に危険な干渉を起こしてきた。


 俺の名前も、才能名も、何度も揺らした。


 人を傷つける可能性もあった。


 だから「危険」が完全な嘘だとは言えない。


 ここで簡単に「危険ではありません」と返すのは、違う。


 リリアも同じことを感じたのだろう。


 すぐには書かなかった。


 アイリスが静かに言った。


「危険な力を持つことと、危険という名前だけで扱われることは違います」


 俺は胸に刺さるものを感じた。


 俺の力もそうだ。


 好感度限界突破。

 才能覚醒リンク。

 好意支配。


 危険な要素がないとは言えない。


 でも、危険という名前だけで俺自身を固定されたくはない。


 ユリアナ先輩が、慎重に返答を書く。


 ――危険な反応があったことは記録しています。

 ――それをなかったことにはしません。

 ――しかし、「危険」という呼称だけであなた全体を固定することはしません。

 ――危険な反応と、相談者であるあなたを分けて記録できます。

 ――「危険」と呼ばれることが嫌かどうかは、あなたが選べます。


 紙が光る。


 沈黙。


 かなり長い。


 ノエルの測定具が淡く揺れる。


「反応、不安定。自己否定、上昇」


 リリアが机の端をそっと握る。


 セリカさんは木剣に手を伸ばさない。


 待っている。


 アイリスの氷結界が、部屋全体を柔らかく包む。


 やがて、文字が浮かんだ。


 ――危険な反応は、ある。


 もう一行。


 ――危険という名は、嫌です。


 相談室全体が、静かに息を吸った。


 初めてだった。


 扉の声が、自分からはっきりと「嫌です」と書いた。


 不要は嫌です。

 機能は嫌です。


 それも大事だった。


 でも、危険という一番複雑な呼称に対して、自分の中の事実と呼ばれ方を分けた上で「嫌です」と書いた。


 それは、大きな一歩だった。


 リリアの目が潤む。


 セリカさんは小さく拳を握った。


 ノエルが記録板に素早く書く。


「嫌です、自発使用。複合呼称への境界線提示」


 ユリアナ先輩は、慎重に返答を書いた。


 ――分かりました。

 ――危険な反応は記録します。

 ――しかし、あなたを「危険」とは呼びません。

 ――その呼称は拒否として記録します。

 ――ここで止まります。


 紙が光った。


 返答。


 ――止まる。


 もう一行。


 ――終わらない。


 俺はすぐに書いた。


 ――終わりません。


     ◇


 だが、ここで止まるべきだった。


 今思えば、全員がその空気を感じていた。


 扉の声は「嫌です」と書けた。


 危険という呼称を拒否できた。


 それで十分だった。


 だが、分類表の上には、まだいくつかの項目が残っていた。


 役割。

 失敗。

 罪。

 期待。


 ユリアナ先輩は慎重だった。


 いつもなら、ここで「今日はここまで」と判断したかもしれない。


 けれど、扉の声の反応が安定していたため、もう一つだけ確認できると考えたのだと思う。


 その判断が完全に間違いだったとは言えない。


 相談は、いつも境界線の近くを歩く。


 近づかなければ分からないこともある。


 しかし、この日はその境界が、思ったより近かった。


 ユリアナ先輩が書いた。


 ――失敗という呼ばれ方については、今日は未定にしますか。


 丁寧な文だった。


 強制していない。


 未定という逃げ道も置いている。


 それでも、紙の反応は一変した。


 灰色の光が黒く濁る。


 アイリスの氷結界が、ぴしりと小さく鳴った。


 ノエルがすぐに測定具を見る。


「反応急上昇。自己否定、高。攻撃性はまだ低いけど不安定」


 相談票の文字が乱れる。


 何かが書かれかける。


 失敗。

 失敗。

 失敗。


 何度も同じ文字が滲み、重なり、黒く潰れていく。


 リリアが即座に言った。


「止まりましょう」


 セリカさんも強く頷く。


「ここで止める」


 ユリアナ先輩の顔がわずかに青くなる。


「……はい」


 彼女はすぐにペンを取った。


 謝罪を書こうとしたのかもしれない。


 だが、リリアがそっと止めた。


「今は、謝るより先に止まることを伝えましょう」


 その声は優しい。


 でも、はっきりしていた。


 以前、扉の声は「ごめんなさい」を自己消去に結びつけていた。


 ここでいきなり謝れば、扉の声はまた「失敗した者は消える」という方向へ行くかもしれない。


 ユリアナ先輩は一瞬目を閉じ、すぐに頷いた。


 そして書いた。


 ――止まります。

 ――失敗については、今日は扱いません。

 ――あなたが嫌なら、ここで止まります。

 ――続きを求めません。


 紙が黒く光る。


 だが、すぐには安定しない。


 失敗という文字がまだ滲んでいる。


 俺は胸元の学生証に触れた。


 レン・クロフォード。


 才能名は未定。


 そして、ペンを取った。


 ――嫌です、と書いても大丈夫です。

 ――言葉にならなくても、反応が苦しいなら止まります。

 ――ここで止まります。

 ――終わりません。


 紙が強く震えた。


 そして、黒い滲みの中から、ゆっくり文字が浮かんだ。


 ――嫌です。


 今度の文字は、はっきりしていた。


 強く、震えながらも、確かにそこにあった。


 嫌です。


 失敗という呼称に触れようとしたことに対して。


 扉の声が、自分で境界線を出した。


 相談室の全員が、同時に止まった。


 誰も続きを書かない。


 誰も質問しない。


 誰も理由を聞かない。


 ただ、リリアが静かに返答した。


 ――分かりました。

 ――止まります。

 ――失敗については、今日は扱いません。

 ――嫌ですを書いてくれて、受け取りました。


 紙が光る。


 黒い滲みが、少しずつ薄くなる。


 返答が浮かんだ。


 ――嫌です、と書いても。


 しばらく空白。


 ――終わらない。


 リリアは、涙をこらえるように微笑んだ。


 そして書いた。


 ――終わりません。

 ――止まるだけです。

 ――あなたが嫌だと示した場所を、今日は越えません。

 ――相談は継続します。


 紙が淡く光る。


 灰色が戻ってくる。


 黒い滲みは完全には消えない。


 だが、暴れるような反応は収まった。


 相談票に、最後の文字が浮かんだ。


 ――止まった。


 もう一行。


 ――まだ、いる。


 リリアが小さく息を吐いた。


「はい。まだ、います」


 セリカさんが少し鼻をすすったように見えた。


「いるわよ。ちゃんと」


 ノエルが記録板に書く手を止め、少しだけ目を伏せた。


 ユリアナ先輩は、ペンを握ったまま静かに言った。


「……記録します」


 声は少し震えていた。


 けれど、彼女は丁寧に書いた。


 保護印:扉。

 第七回筆談相談。

 主題:呼称選択権の実践。

 拒否呼称:不要、機能、危険。

 危険反応と本人呼称を分離。

 「危険という名は、嫌です」と自発記入。

 失敗分類に触れた際、強い自己否定反応。

 相談者、「嫌です」と明確に境界線提示。

 相談窓口、即時停止。

 相談者、「嫌です、と書いても、終わらない」と確認。

 相談継続。


     ◇


 相談票を封印箱に収めたあと、ユリアナ先輩はしばらく黙っていた。


 いつもなら、すぐに次の手順を整理する。


 だが今日は、少しだけ手が止まっている。


 リリアがそっと声をかけた。


「ユリアナさん」


「はい」


「止まれました」


 ユリアナ先輩は、目を伏せたまま頷いた。


「……失敗に触れるのが早すぎました」


 その言葉に、相談室の空気が少し揺れる。


 だが、セリカさんがすぐに言った。


「そこで自分を失敗名で呼ばない」


 ユリアナ先輩が顔を上げる。


 セリカさんはまっすぐ続けた。


「判断が早かったかもしれない。でも、すぐ止まった。リリアの言葉も聞いた。レンも止めた。みんなで止まった。それでいいでしょ」


 ノエルも頷いた。


「行為の検討は必要。でも、ユリアナを失敗で固定しない」


 リリアが静かに言う。


「ごめんなさいを急がず、止まりますと返せたことは、大切でした」


 ユリアナ先輩は、少しだけ目を閉じた。


「……ありがとうございます」


 その言葉は、借りではなく、届いたことを伝える言葉だった。


 扉の声に教えたばかりの、ありがとう。


 俺はそれを聞いて、胸の奥が温かくなった。


 ミュレアが通信越しに言う。


『よい相談だった。痛みはあったが、境界が機能した』


「境界が機能した」


『そうじゃ。嫌です、と書いて、止まった。止まっても終わらなかった。これは大きい』


 アリシア様も続けた。


『王宮結界側でも、最後の反応は安定していました。強い自己否定から、境界線提示へ移った形です』


 アイリスが静かに氷結界を解除する。


「盾が、初めて使われたのですね」


「はい」


 俺は頷いた。


「呼称選択権という盾が」


 扉の声は、嫌ですと書いた。


 それは拒絶ではない。


 終わりでもない。


 境界線だった。


 そして俺たちは、止まった。


 そこに踏み込まなかった。


 だから相談は終わらなかった。


 扉の声は、まだいる。


 未定のまま。


 盾を持ったまま。


 嫌です、と書けたまま。


     ◇


 夕方、受付箱が一度だけ淡く光った。


 中には、保護印「扉」の相談票が入っていた。


 今日の最後の返答らしい。


 文字は短かった。


 ――嫌です。

 ――止まった。

 ――終わらなかった。

 ――盾。


 リリアが静かに微笑んだ。


「はい。盾です」


 俺は返答を書いた。


 ――届きました。

 ――嫌ですは、使えました。

 ――今日は、ここで休みましょう。


 紙が光る。


 返答。


 ――休む。


 それだけだった。


 でも、それで十分だった。


 相談票を閉じる。


 今日はここまで。


 止まることも、休むことも、相談の一部だ。


 俺は胸元の学生証に触れた。


 レン・クロフォード。


 才能名は未定。


 扉の声も、未定。


 でも今日、ひとつの盾がちゃんと使われた。


 嫌です。


 その言葉で、関係は壊れなかった。


 ただ、止まった。


 そして、続いた。

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