表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/98

40.雪の告白、迫る刃

「……そうして、私は――」


 一瞬だけ、言葉が途切れる。


 泣きそうな表情で、床に崩れ落ちるアリス。


「アドルフ先生を。この手で……」

「なるほどね」


 一拍。


「――心臓を、凍らせた」


 ハクの言葉に、アリスは動揺する。


「っ……なぜ、それを」

「それは、私がよく使う方法だからですよ」


 静かに、ハクは告げる。


「……だからこそ、あのバカも。

――ノワも、気づいたのでしょうね」

「ノワ、って」

「ああ、ここでは『マオ』でしたか。

なんともまあ、ひねりのない名前ですね」


 そう言って、ため息をつくハク。


「そうして、あなたは……レオの言われるままに」


 入学試験の出来事を受け、魔道具の調査を行おうとしたアドルフと。


「その死の秘密に気づいた、アインと」


……そして、ノワまで」


 その手に、かけようとした。


「――愚かなことを」


 呟いてから、彼は静かに思う。

 

(……それでも)


 少しだけ、その必死さが。


(……お嬢様)


 主の側に居たいと願う、強い気持ちが――わかる、気がした。


「困ったものですね、魔力の影響でしょうか」


 良くも悪くも、自分に良く似た白髪の少女。


「……まさか、あの時助けた小さな雪兎とこんな形で再会しようとは」

「っ……!

したことの罪は、身を以て償います」


 深く深く、頭を下げる。


――それでも。


「本当に……本当に、あなたが生きていて」


――良かった。


 ぽろぽろと、大粒の涙を流すアリス。


「生きていて、良かった……ね」


 自分に向けられたその言葉に、呆れたように返答する。


「何でしたっけ、私があのバカに殺された――でしたか?」


 少しイラッとした表情で、ハクは問いかける。


「は、はい。

数日経ってからレオ様に再び呼び出されて――」


『調査をした結果だよ。

……残念だが、君の言っていた白の魔族は』


――とある黒の魔族に、すでに殺されていた。


『……え?』


 衝撃から呆然とするアリスに、レオは心底痛ましいと言った顔で告げる。


『本当に、優秀な方だったようでね。惜しい人材を失ったものだ。

……でも、不幸中の幸いと言ったところかな』


 少し周囲を気にするような素振りを見せたあと、レオは囁く。


『その犯人は……

学園の、中にいる』

『っ!?』

『……マオ先生、だよ』



「さては、マオが魔道具の調査に乗り出したことを受け排除を企んだのでしょうね。

……おかしいとは、思わなかったのですか?」


 呆れたように、ハクは問いかける。


「……っ」


 その言葉に、アリスは思い出す。


『身分が、職がなんだというのだ』


 マオの――ノワの言葉。


『努力で、お前たちと同じ土俵に上がる者たちに。

苦しい中でも、強く耐え生きる彼らに。


俺は、心の底から敬意を払おう』


 自信を持って、そう言い切った彼。


(どうしても、彼が。

そんなに悪い人には、見えなかった)


 あのお方を殺したとするなら、何か理由があったのではないか。


 いや、そもそも――本当に、彼は殺しているのか。


「……迷って、いたのです」


(信じきれなかった)


 だからこそ、すぐには動けなかった。


 今日まで彼を――マオを、殺そうとはできなかった。


「でも。

……もう、引き返せませんでした」


 夜ごとに重なる、レオからの呼び出し。


 まるで監視しているかのように、老夫婦の現状を伝える彼。


(それきっと。

暗に――『いつでも殺せる』と)


 そう、彼女に伝えていたのだろう。


「……では、なぜ今日あなたはノワを殺そうとしたのです?」

「レオ様に、言われたのです。

今日……いえ、武闘大会の日に――必ず、マオ先生を殺すようにと」

「そうですか。

では、やはり」


(レオの真意はおそらく、アリスとノワを同時に。

闘技場から――自身とお嬢様から、遠ざけることでしょう)


 窓の外を、軽く見やる。


「アリス。

……あなたが手にかけた者たちは、リーナ様を――お嬢様を、殺そうとはしていない」

「っ。

……わかって、おります」


 唇を噛み、アリスは深くうなだれる。


 そんな彼女に、ハクは冷徹に告げた。


「あなたの罪どうこうは、このあとです。

現状の問題は――」


 白い手袋をはめたその指で、窓の外を指差す。


 そこには――大きな、闘技場。


「……お嬢様を」


 一瞬、その顔に怒りが浮かぶ。


「レオが――


殺そうとしていることです」





◇◇




「ゆ、ゆびわ……が」


 レオの矢に、砕け散る赤。


「ははっ、これで君は――何も出来ない!」


 彼は嗤う。


「さあ、その偽りに塗り固められた無様な姿を晒し――

僕の前に、膝を折るが良い!」


 ざわめく会場。


「っレオ選手!

その矢は、まさか本物では――!」

「ああ、本物だけど。

――それが、どうかしたのかい?」


 勝ちを確信したレオは、もはやその狂気を隠そうともしない。


「な……!?

と、取り押さえなさい!!」

「きゃぁぁぁぁ!!!」

「な、なんで本物が……!

死にたくない!!」


 逃げる生徒たちと、レオに向けて魔法を放つ教師達。


「……チッ」


 煩わしげに魔法を避けながら、レオは舌打ちする。


(わ、私も今のうちに逃げ――)


 そう思い、出口を目指そうとするも。


「おっと、そうはさせないよ。


僕はこいつらを相手する、だから――」


ドスッ!


「――え」


 出口を塞ぐ、小さな影。


(なん、で)


 俯くその表情は、見えないけれど。


「おい、そいつの相手をしておけ。



――フェリス」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ