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第5話「美月のカフェ、ひなたの涙」



そこは、東京の片隅にある小さなカフェ。

外観は白壁に青い木枠の窓、店の名は**「mizu-cafe」**――オーナーは、Lumi:Voice6のメンバーである椎名美月の姉。

店名の由来も“美月”から来ているというのは、知る人ぞ知る裏話だった。


この日、そのカフェにはLumi:Voice6のメンバー6人のうち5人が揃っていた。

如月天音だけは、午前中の個人撮影のあと少し遅れて合流する予定だ。


「……久しぶりに全員そろうかと思ったのにね。天音、相変わらず多忙だな」


葉山玲奈は、カップのコーヒーをひと口含んでつぶやく。


「撮影のあとの私服姿って、逆に一番バレやすいんだよね~。

ね、美月、なんか対策してあげなよ」


まひるが冗談混じりに笑うと、美月は小さく首をすくめた。


「うちはカフェだよ? スタイリストじゃないし」


「でもこのお店、めっちゃ落ち着く~。天音ちゃん、ここ来たら泣いちゃうかもね」


そう言ったのは、香坂紗良。いつもは少し突き放したような物言いをする彼女だが、この日はなんとなく表情が柔らかい。


その時だった。

入口のドアが開き、小柄な姿がそっと入ってきた。


「……お待たせ」


如月天音。

キャップにコート姿でも、彼女の放つ気配は変わらない。


「おぉ〜ついに全員集合!」


「リーダー、今日ちょっと顔赤い? 彼氏と会ってた?」


「……ちがう。会ってない。メッセージだけ」


答える天音の声は照れていて、どこか“女の子”だった。


「ねぇ天音」


と、ひなたがぽつりと口を開く。


「ほんとはさ、すごく羨ましいんだよ。私たち、夢に向かってずっと走ってきたじゃない?

誰かを好きになる時間も、立ち止まる余裕もなくて……」


天音が静かにひなたを見つめる。


「でも、天音は“好きになっていい人”に出会えた。

それを信じて、歩こうとしてる。……すごく、すごく素敵だと思うの」


ひなたの目がじわりと潤む。


「もし私がファンだったら……たぶん嫉妬する。悲しくなる。

でも今は、メンバーとして、ただの女の子として――

“おめでとう”って言いたい。そう思えるくらい、天音は綺麗だった」


その言葉に、店内の空気が一瞬止まる。


まひるが、そっとひなたの手を取る。


「泣くの、ずるいよ……こっちまで泣きそうになるし」


「うん。もうさ……このグループ、絶対に壊れない気がする」


美月が穏やかに言い、玲奈が最後にぽつりと告げる。


「好きになるってこと、きっと弱くなることじゃないんだよね。

むしろ、“守りたい”って思えるようになったとき、人は初めて強くなれる。

……天音、あなた今すごく強いよ」


天音は、目を伏せながら頷いた。


「ありがとう。ほんとに……ありがとう」


彼女の目にも、涙がにじんでいた。


カフェの窓から差し込む春の光が、テーブルの上のカップと、5人の手元をやさしく照らしていた。


恋するリーダー。

支える仲間たち。

静かで、確かな絆が、そこにはあった。




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