第三百六十二章〜蘭馬と夏美
書かせていただきます。久しぶりに蘭馬君と夏美君の登場に御座います。話が深刻なようです。明日どうなりますことやら…、。
「やっぱりそろそろあたし、体を元に戻させて欲しいわ」
一条 蘭馬の形をした白鳥 夏美の顔は少し暗かった。蘭馬に対して引け目を感じているのかもしれなかった。「どうして急に?」
蘭馬が訊いた。すると、
「急なわけではないわ。もっと始めのほうから。最初はすぐに戻れると思っていたから、気にならなかっただけなの。ねえ……」
蘭馬は耳を塞ぎたくなった。
「それはそうかも知れないな」
それでも耳障りの良さそうな言葉を選んでいた。いまだに誤魔化し誤魔化し、でなんとかこれを続けさせてもらえるのだと信じていたのだ。
「本当のこと言うとね。あたし……」
彼女は言いにくそうであった。蘭馬は、ふと彼女の眼を見上げる仕草をした。気持ちを読み取ろうとしたのだ。が、それは簡単に読み取れるようなものではなかった。
「あのね……。あたし、そろそろ子供産みたいのよ。母胎としての適齢期を過ぎたくないしさ。カレシすらまだいないし。ね?いいでしょう?元々あたしの体なんだからさ」
彼女が、言葉を厳密に選びながら話しているのはよくわかった。
しかし、蘭馬は、
「え!それは……。も、もうちょっと待ってくれまいか?」
蘭馬ほ慌てた。だが、夏美は続けた。
「あなたがその身体で何をしているかは知らないわ。でも、万が一ってことだってあるの。もし…、例えばあなたがわたしの体で妊娠したとしましょう。そうすると、それで生まれた子供は誰の子供ってことになるの?わかるかな?」
追求は、止まらない。
「……そ…。それは、本来、君の体から産まれたのだから君の、かな?いや、でも。周囲はそれを納得しないかも…」
夏美は応えた。
「周囲なんでどうでもいいのよ。誰がなんと言ったって関係ない。でもあなたはそれに納得する?自分のお腹を痛めて、自分の好きな男の子供を産むのよ。それを私にくれるの?」
「ああ……」
蘭馬は絶望した。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。楽しみいただけたならば幸いです。




