第三百四十七章〜また逢い。しかし……
書かせていただきます。いよいよ平井聡=高木翔子は、男にのめり込んでいってしまいそうです。俺がどちらの人格によるものなのか分かりませんが。お楽しみいただけましたら幸いです
副島は、携帯の電話番号だけは教えてくれた。また遭いたくなったら電話して欲しい、と呟くように言っていた。翔子は、すぐにでも電話してしまいそうな自分自身に驚いた。
━━こんなにのめり込むようなものなのか?のめり込んでしまうのか。夢中になってしまうのはまずいという危機も感じながら。これがバレたら克典や幸司との関係もどうなることかわからない。いや、破局するに違いなかった。
翔子は普通を装った。夫の前でも息子の前でも平静でいられるよう心がけた。
ただ、生活費を可能な限り 節約して、衣服を買い揃えるのに夢中になった。少しでも副島から好かれたかった。
脅迫者から命じられた金銭の返済も、もしかしたら克典の側につくよりも、副島についた方が手っ取り早く完済できるのではないか?そうとさえ思えた。
だが、とはいえそれだけは心理的なハードルが高くて実現できなさそうなプランに思えた。夫と息子は流石に簡単には裏切れないという思いがあった。
幸司の個別指導進学塾が本格的に始まり、彼も帰宅が遅くなるようになってきた。それは、翔子にとって、
都合のよいことであった。少しでも帰宅を急がなければならない理由が消えたのだから。
流石に1週間はなんとか間を空けた。副島に遇う約束のことだ。
ある日、克典が出勤する時に玄関で言った。
「なんかお前、最近お洒落になったな」
と。
翔子=平井聡はどきりとしたが、「あらそうかしら。嬉しいわ」
などとさりげなく返答しておいたのである。 確かにその時着ていたのは、トレンドフェミニンの少し歳を考慮したワンピースだったのだ。副島とまた遇う日の為に買ったものを……。
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