第二百九十九章〜刑事一課取調室
書かせていただきます。再び高梨恵子の取り調べです。と言っても見た目は平井聡なのですけれど。彼女は物語 にどのように関わってくるのでしょうか。私もお楽しみいただけましたなら幸いです。
「ですから、ずっと申しておりますように、あたしは違いますって。あたしは高梨恵子であって、平井聡なんてひとは知りもしないって、何十回も言ってるでしょう。第一、あたしは女ですよ」
「そうですねえ……」
東村山光三郎警視正は、つくづく困ったという顔をしていた。
「まったく仰る事を信じていないというわけではないのですがね」
彼は最後の『ね』にアクセントをつけた。そして続けた。
「そういった前例はあるのですよ。特に最近に限ってね」
また『ね』が強い。
「流行りの入れ替わりが起きた、それで平井聡に変身してしまった、と仰りたいのでしょう?」
「ま…、まぁ。そ…そうですけど」
やっと納得してもらえたのかと高梨恵子は言葉を緩くした。
「あたし…、とてもではないけど人を殺すなんて出来事ないと思うんです。いえ、殺さなくたって 刃物を人に向けることすらできないのです。信じてくださいますよね?」
「まあでも、証拠といいますか、それを証明出来る根拠でもあればねえ。今は捜査の都合であらゆる選択肢を考えて置かなければならないんですわ」
東村山の傍らにいた 巡査部長が代弁した。
「決して、疑ってるというわけではございません。冷遇しようとも思っておりません。ですが、しばらくは留置所に入っていておくんなさい」
と東村山。
「どのみちその姿で外には出られないでしょ?平井聡は命狙われてるようなのですよ」
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。次も書かせていただきます。よろしくお願い申し上げます。




