第二百六十四章〜夫よりのお話
書かせていただきます。日常の会話も広がります。息子の将来も 平井は考えなければなりません。それが女になるということなのかもしれません。お楽しみに。
「おい、翔子」
キッチンで洗い物をしていたところ、リヴィングから太い声が飛んできた。
「はい?」
翔子は手を止めて、振り向いた。リヴィングには、克典一人だけがいて、2人掛けソファにふんぞり返っていた。
彼はテレビの音量を少し落としてから重々しく言った。
「翔子、ちょっとこっちに来て座りなさい」
この物言い、男尊女卑思想、家父長制的な物言いは歳が離れているから、というのもありそうだった。
そんなことを思いながらも、平井聡=翔子は、大人しく彼の向かいに正座した。
「はい?」
克典が話し始めた。
「幸司な…」
幸司とは、一人息子の名前だ。
「来年、高校受験だろう?」
「はい。その通りで御座います。それが……。」
彼はひと呼吸おいた。そして、
「幸司は将来、少しはレヴェルの高い大学に行かせにゃならんだろう」
「ええ。まあ……」
平井はどちらこというと、大学など行こうが行くまいが本人の好きな道で生きさせてあげたい、と思う派であったが、反論するのも怖くて、
「ええ。まあ……」
などと曖昧な返事をしただけだった。
でも、子供の将来を真剣に考えるのは、確かに親の仕事かもしれなかった。
「あの子は何をしたいのかしら?何かしたいことがあるのなら…」
それとなく言ってみた。
「そんなものは二の次もいいところだ。世間はそんなに甘くない。何と言っても学歴によって入れる会社も給与もかわるんだ。真剣に考えたまえ!」
彼は声を荒げた。そういう克典はどの大学の出なのだろう?平井はまだ知らなかった。平井は探りを入れてみた。
「確か貴方は……」
「早稲田の法学部だと何回も言ってるだろう。」
成る程。━━そういうことね。平井は学歴コンプレックスとかはまったくないが、少し感心することではあった。
お読みになっていただきまして誠にありがとうございました。




