3 麗奈
香織は小児科医になった。幼い外見の香織には適任だろう。麗奈という名前の女性が外来にやってきた。重症のアレルギーマーチの既往者だ。
3 麗奈
小児科勤務も当然外来と入院患者の対応がある。少子化の流れの中確かに外来患者は減ったようだ。小児科外来が空いているという噂があるのか小児というには年齢の高めの外来患者がいる。そういった患者は小児科医師となった香織を珍しい物を見付けたように見る。大学病院だ。幾ら空いているとは言っても時間がかかるだろう。単なる風邪で来たりはしない。この麗奈という患者も小さな時からアレルギーマーチの重症患者だ。若い女性なのに顔が酷くかぶれている。化粧で隠しても隠し切れていない。毎回ステロイドが処方されている。塗り薬だけでなく飲み薬もだ。特に飲み薬のステロイドは一般的には開業医でも処方する事を控える医師増えている。彼女も開業医にステロイドの飲み薬の処方を断われたのだろう。ステロイドの飲み薬は喘息患者やリュウマチ、膠原病の患者だけに使われるのが原則である。ステロイドは塗り薬でさえ副作用の恐れがある。飲み薬は更に副作用の恐れが高い。一時的な症状の緩和ならともかく長期な使用は絶対に避けるべきだ。香織は、
「ステロイドの内服薬は止めるべきですね。非ステロイド系のいい薬が沢山出ていますよ。ステロイドの内服薬は副作用があり、様々な病気を起こします。長期の服用はできません。もう既にこの病院で4回延べ56回分のステロイドの内服薬が処方されています。もうこれ以上の処方はできません。」
麗奈の表情が厳しくなった。
「非ステロイド系の内服薬と言われて飲んで効果の有ったためしがないわ。副作用というけどそんな事判っているわ。副作用が出ても自分で責任はとるわ。飲まずに掻きむしったらもっと悪いでしょう。いいから処方箋書いて。なんなら副作用が出ても責任は問いませんと書いてもいいわ。ステロイドの内服薬のない苦しさはあなたでは判らないでしょう。」
臨床経験の短い香織には麗奈の苦しみが判って上げられない。ただステロイド内服薬は簡単には上げられない。制約が必要だ。代理の物試してみよう。もしも代理の物が正解ならばステロイドは要らない。
結局ステロイド内服薬は7回分、非ステロイド系の内服薬が14回分、非ステロイド系の内服薬を飲んでどうしても駄目ならステロイド内服薬をという事にした。カルタにもそう記入した。
香織は僕に相談しに来た。
「前にステロイド内服薬を処方した先生方に聞いたわ。麗奈という人は、子どもの頃から強力なアレルギーマーチの既往者でステロイドなしでは生きていけないと思っている。身体的にはステロイド内服薬がなくてもやっていけるはずだが実際やってみるとアレルギーが起こる。精神的な問題だろうがステロイド内服薬がないとアレルギーが起こるならステロイド内服薬を処方しないわけにはいかないだろうという事よ。どう思う? 」
重いアレルギーマーチ既往者にはステロイド信仰者がたまにいる。麗奈という人もその一人だろう。嵌った人救い出すのは至難の技だ。僕は返事に窮した。
ステロイド内服薬を処方されている。ステロイド内服薬は副作用が強く一時的な使用なら認めるが長期間の使用は認められないと告げた。




