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私は頑張るあなたの味方!  作者: #N/A
第1章 『救済の桜』
9/22

第9話 キューティクル・ユニバース

 会社を出ると十八時十五分だった。こんなに早く会社を出たのはいつぶりだっただろうか?誇張抜きで一年くらいぶりではなかろうかと思う。確かな感動を覚えつつ、遅い帰りに慣れ過ぎてこの時間に会社を出て家に帰ってもさしてやる事がないのだという事実に叩きのめされた。


 その時、ポケットの中が震えた。スマートホンを取り出して見てみると通知があり、渚からライヌが送られてきていた。


『ごめん。予定がかなり長引いてて、今日は抜けられないかも(泣)』

『まじか。頑張れ。明日肩揉んでやるから』

『えっ本当?絶対ね!?』

『おう』


 そこで返信は途絶えた。いつ、何を返信しても一分以内に何かしらの返信を寄越す渚が、既読にすらならない。


 今日は渚と一緒に街中をぶらつく予定だったが、どうせ俺の残業時間が長引くと思って合流は二十一時にしていたのだ。そしてその予定も、渚の今日の状況から無理そうだなと思った。


 俺は久しぶりに遊んで僅かな自由を謳歌しようと思い、ゲームセンターに行って『超時空波動砲Ⅴ』という格闘ゲームに五コイン程入れてオンラインマッチングをした。


 しかし俺のゲームの腕は訛りきっていた。何試合マッチングしてもどれだけキャラクターを変えても勝つ事が出来なかった。俺はキレ散らかして台パンしてゲームセンターを出た後そのままマックに入り、タルタル油淋鶏風チキンタツタを食べてかんきつヨーグルト味のフロートを飲んだ。食事を終えて商業施設の本屋に入り、雑誌の立ち読みをした。


 やがて雑誌を読むのにもすぐに飽きてしまった。本屋を出て自販機でカフェオレを買い、ストローを刺して飲んだ。カフェオレと鞄と手に持って、何ともなく世の中というものを彷徨い歩いていた。そして、俺はたった一人だ、と思った。その小さく湧き上がる感情が、前触れなく肌に出来た炎症のような痛みを発する異物に思えた。一体何故だろう。渚と再会するまで、一人の夜なんて幾度も越えてきたはずだったのに。


 施設の壁を見てみるとポスターが貼られていた。それを見て俺は思わず息を呑んだ。ここから十分くらい歩いたところに、二週間くらい前にグランドオープンしたばかりの超大型家電量販店があるというのだ。


 俺は行かない訳にはいかないと思い、その超大型家電量販店に足を運んだ。時刻は十九時半になろうとしていた。


 無尽蔵のワクワクが込み上げて、視界が冴えわたるのを感じていた。店内はとてつもなく広く、欲しい家電や電化製品が何でも手に入る。手に入らないのはせいぜい中古品くらいのものだ。


 三階に行くと、日本最大級を謳うアニメグッズ・漫画販売コーナーを発見した。漫画。アニメ。ゲームソフト。フィギュア。劇場版から長編、短編まで。何でもかんでも全部揃っている。もう日が暮れているにもかかわらず、大勢の人間が店内を見て回っていた。


 これ程の規模だと、県外や海外の観光客も相当数集まる事だろう。高校生の頃はよく、渚と家電量販店やアニメグッズ店を見て回ったものだったが、今まで回った中で一番大きなお店である事は間違いなかった。


 ゲームコーナーを見て、俺は感動を露わにせざるを得なかった。入手しづらさマックスの最新作『出来損ないと罵られパーティを脱退させられムカついたので地球侵略に来た宇宙人と手を組んで地球侵略始めました。元パーティのリーダーが土下座してきたけど許しません』が堂々と置かれていた。


 ラノベコーナーを見ると、『てめぇは頑張らない俺の敵!』の最新巻が出ていた。あまりにも欲しいものがありすぎて、俺はどれを買うべきか選ぶことが出来なかった。


 そんな気持ちで色々と物色しながら店の中を回っていると、店の奥の方から今人気絶頂の美少女ハーレム系アニメ『甘目まどかの照り照り魔法少女記』のヒロインの名シーンのセリフを誰かが叫んでいるのが聞こえた。


 俺はそのセリフに聞き覚えがあった。Foutubeの広告でよく流れてくるアニメだ。ポップでキュートなキャラクターが織りなす謎に深い哲学的なセリフのギャップが、子どもたちから『大きなおともだち』まで幅広く人気を呼んでいるとか。


 そこから更に歩みを進めていくと『コスプレコーナー』なるものが見えた。簡易なものではあるがカツラや衣装、キャラクターの所持する武器等グッズが用意され、写真撮影も楽しめるコーナーのようだ。


「お待たせッ!宇宙の端への入口を作ってあげたわよッ!四百六十五億光年先は流石に少し時間が掛かったわ。……え?何でって?決まってるじゃない!────今日からここがあんたの家だからよッッッッ!!!!」


 わ───っ!!きゃ───っ!!


 ギャラリーであろう、観客達の混乱を含む歓声が聞こえた。まるでコンサートにでも来たかのような空気感に、俺は自分が若干落ち着かなくなるのを感じていた。


 しかし先程から強烈に違和感を覚えている。それはその声の主が『男』ということだ。


 姿形こそ見てはいないが明らかに男の声であり、近づけば近づくほどその声には野太さと雄々しさがある。


 それが世間に需要があるのかは、俺の感性では分かりかねた。


 一瞬「帰る」という選択肢が頭に浮かんだ程度には圧倒されているが、俺は怖いもの見たさでアニメイラストの暖簾をくぐり、コスプレコーナーに入った。


 本格的な写真・動画のセッティングな撮影が出来るステージのようなところがあり、例のセリフはそこから聞こえていたようだ。


 景気づけにちょっと見て行くか。何の景気づけだよ。ははは。


 俺はギャラリーの一番後ろに立って、声の主がいるステージを観察した。もうすぐ二十時になろうとしているにも関わらず、ギャラリーは相当な人の数だった。軽く見積もって六十人以上はいる。


 大人から子供まで大勢がステージ上の人物に夢中になっていた。見ている限り、大半が六歳から十二歳くらいの子供が母親とペアで見に来ているようだった。特撮戦隊ものや女児向けアニメの劇場版の映画を見に来る層が多いと言えば分かりやすいのかもしれない。


 さて、あの人は誰かな?なんか随分と逞しい肉体の人だけど………。


 ん?


 俺はその面影に身に覚えがあった。正直に言って、信じられない気持ちになった。俺はステージ上の人物を見て何度か自分の頬をつねってみたが、紛れもなく現実であると身をもって思い知り鼻がひくついた。


「………………鳴上さん?」


 いやまさか、そんなはずは無いだろうと思った。夢を見ているに違いないと思い何度も目をこすって四度見、五度見と繰り返したが、ステージ上の人物も目の前の光景も変わらなかった。


 そこに居たのは鳴上そのものだった。全身筋肉ムキムキ、身長百七十八センチメートルの逞しい肉体が、ピンクと白にフリフリが強調されたドレスとミニ丈スカートに、星とハートで装飾されたプラスチックのステッキを持ち、魔法少女になり切っている(?)。


 衣装は明らかに女児や女性が着るサイズで大男には小さく、それがかえって鍛え上げられた胸筋を強調している。破れそうだけど大丈夫?


「宇宙とは虚無の象徴よッ!私達の生命なんてちっぽけに感じさせるその無限大は、自分が何者なのかすらも見失わせるわ。………何故私が今これを言ったか分かる?──────あんたの顔面見てて虚無になったからよッッッ!!!!死になさいッ!!!ラブリー・キューティクルユニバァァァァァァァァス!!!!!!」


 ワァァァァァァァァァァァァ!!!

 キャ──────ッ!!!


 鳴上は会社でも見たことが無い程に迫真に満ちた表情でそう叫びながら、勢いよくプラスチック製のおもちゃのステッキを振り回していた。そしてそれを見て、ギャラリーから歓声が上がった。会社で俺を見つめていた時の理知的な双眸は、そこには塵芥程も無かった。ただただ、押し付けがまし過ぎる程の希望で満ちた瞳が煌めいているだけだった。


 身振り手振り。台詞のタイミングや声の出し方。何もかもがとてつもなく洗練されており、どれだけの練習を重ねたかは想像に難くない動きをしていた。


「────私は甘目まどか。私の照りつけ燃えゆく太陽で、全てを照らしてあげるわ。己の全てを、捨てなさい。初めてあなたは、魂の輝きを知るわ。そして………あなた達みーんな照り焼きにして、食べちゃうわよ。照らすだけにね。ムフ…」


 開いた口が塞がらない。どうやら見てはいけないものを見てしまったようだ。こちらにはまだ気づいていないようなのですぐに退散しよう。


 あと、このアニメ気になってたけど観るのやめよう。観る度にこの光景を鮮烈に思い出してしまいそうだ。


 俺はそう思ったが、あまりにも衝撃的で身体が動かなかった。迫真。洗練されていて、かつ鬼気迫る演技。パワフルと凄まじいインパクトを兼ね備えたその魔法少女(?)は、圧倒的なド迫力で完璧なポージングをして、有無を言わせず心臓目掛けて直撃して轟音を上げるようなウインクをした。そしてその度に、ギャラリーは歓声を上げた。


 ギャラリーで歓声を上げているのは主に子供達のようだ。親御さんは苦笑いする者から、ドン引きする者。深淵を覗いたような目で息を呑む者。本気で理解出来ず真顔になっている者もいる。


「『照り焼き』にしちゃうわよ……?そこのアナタ……」


 ファンサービス(?)が始まったのか、鳴上はセリフと共に歓声を上げる子ども達を次々と指さしながらステージ上を横移動し始めた。


 指をさされた子どもたちは益々盛り上がりを見せていた。子どもたちはたちどころに「僕も!」「私も!」と叫んで挙手し、次は自分が指をさされようと瞳を輝かせ、胸をときめかせて待っていた。しかしその傍に居る親の方は反比例し、鬼気迫る表情で子どもを庇う準備をしていた。完全に怯えられてんじゃん。


「アナタ……アナタも……」


 魔法少女(?)は次々とギャラリーの子どもたちへ指をさしながら、蟹みたいな動きでゆっくりと横移動していた。時折子どもの横にいる親御さんが指をさされ、深夜の仏壇で神隠しでも目の当たりにしたかのような悲鳴を上げた。めちゃくちゃ怖がられてるじゃねえかよ。ていうかやべぇ、どんどん俺に近づいてきてるんだけど。彼は間違いなく、一歩一歩移動するたびに俺との距離を縮めて迫ってきていた。しかし、俺は動く事が出来なかった。指先ひとつ動かす事すら叶わなかった。


 これ程までに違和感以外が共存していないステージを見たことがあっただろうか?まるで本当に地球から遠く離れた異界の星にでも攫われてきてしまったかのようだった。それはもはや、優雅な絶景でも見ているかのような錯覚すら起こさせた。巨大で暴力的な非現実が、俺の全身を捕まえて目を逸らす事を決して許さないかのようだった。


 や、やばい。考えてる場合じゃない。逃げないと。


 しかし、時はもう既に遅かった。


「そして………ッ!──────そこのアナタァァァァァァァッ!!!!!」


 不意打ちのつもりか、鳴上はエネルギーを内に溜めこむかのように身体をよじらせ、それを解き放つかのようにその巨大な体躯を勢いよく回して斜め向かいにいる俺を指さした。


 とうとう俺は鳴上と完全に目が合った。


「え?」


 指さした先にいる人間が俺である事に気づいた鳴上は驚きに目を見開き、演技を完全に忘れて普段の素で「え?」と言った。


 ワァァァァァァァァァァァァ!!!

 キャ──────ッ!!!


 ヒロインの確定ロックオン演出で、子どもたちのこれまでになかった程の大歓声が響き渡った。しかし俺が口を開いて固まっているのを見たまま、鳴上も静止してしまった。


 ステージを熱気とともに包み込むような歓声が響き渡る中で、俺と鳴上はお互い固まり、気まずい沈黙の時間が流れる。


「鳴上さん………」

「…………」


 鳴上はずっと、信じられないという目で俺を見つめていた。船で航海している最中何ともなく海を見渡したら沖合でキリンが溺れているのを見たみたいな目だった。多分、俺もこの時彼と同じような目をしていたのではないかと思う。


 コスプレ衣装で硬直したまま微動だにしない鳴上に、俺は何と言葉をかければいいのか分からなかった。


 キャ───ッ!キャ───ッ!

 もう一回!もう一回!


 ギャラリーの盛り上がりは最高潮に達している。


 しかし俺を目の前にした今、鳴上は完全に言葉に詰まっている様子だった。俺を指さしたまま硬直して、何も言葉を発さない。


 しばらくの心地悪い沈黙が続き、やがて鳴上は意を決したように息を吐き出して俺の元へ歩み寄った。厳かな立ち振る舞いで俺の目の前に立った魔法少女衣装の鳴上は、普段のようなクールで理知的な眼差しで静かに俺を射抜いた。


 そして、おもちゃのステッキをすっと差し出してきた。


「時枝さんもやります?」

「やらん」



 ……………………………………………………



 人がいなくなったコスプレコーナーから移動して、俺がアニメグッズコーナーに入った時には既に二十時三十分だった。話を聞くに、鳴上は昨日から演技を披露し始めていたらしく、今日が二日目の演技だったという事だ。


 コスプレからスーツに着替え終えた鳴上は、本日発売の新作のブルーレイとフィギュアを物色し始めた。


 俺が気づいた時には、鳴上はオタク仲間らしき人物数名と一緒に行動しており、こいつらはいつどこから出てきたんだろうと不思議に思った。


「ウッヒョ〜!!!遂にこの時が来たでござるッ!!しかも4K対応!!アァ…アァ〜〜〜〜〜〜ッ!(感激の叫び声) 神運営に感謝w 生きる活力、ゲッチュw 記念のフィギュアは特に意味は無いが十個程購入しておこう………。そうだッ!!いい事を考えたッ!!!二つは常に持ち歩くでござる。お守り用に1つと、そして──────″″″″″使用″″″″″出来るようにもう1つだッ!w ヌッフフフフフフフwwww」


 普段の鳴上からはどう考えても想像できない話し方をしており、そこに荘厳たるオーラも理知も欠片も存在しなかった。ただ目の前を己の楽園と認識し、少年に戻ったかのように目を輝かせてはしゃぎ倒す男がいるだけだった。


「ん~~~~~~~~~~ッwwww やはり信用出来るのは二次元だけでござるなw」


 オタク達は鳴上を筆頭とし、熱狂的な盛り上がりを見せていた。フィギュアを本当に十個購入して紙袋を四つ程腕にぶらさけた鳴上は、武骨で逞しい顔をにへらと綻ばせていた。


「なんか今日、羨ましく思ったよ。鳴上の事」

「ぬ?時枝殿も共にやるか?”””魂”””のステージを」

「ごめん。やっぱり羨ましくはないわ」


 鳴上は更に新作ブルーレイとタペストリー、アクリルスタンドやポスターも購入して計七つになった紙袋を抱きかかえるようにして歩いており、俺はその横を歩いていた。


「やるというのなら”いつでも”歓迎するでござるよ」

「それは絶対にやらないんだけど、熱中する出来る趣味があるっていいなって思ったんだよ。昨日の俺の話に納得してくれた意味も分かったし、鳴上の目を見てて思ったんだ。会社に居る時なんかより、よっぽど楽しそうだなって」


 鳴上は驚いたような目で俺を見たが、やがて温かみのある顔で笑ってみせた。


「ハッハッハ。そんな大層なものでもないでござるよ。それに、これは時枝殿のおかげでござる」

「?」

「拙者はただ、『甘目まどか』が人生の全てと、そう考えて生きているだけでござる。先ほどの観客には喜ぶ者もいたが、明らかに拙者を不気味なものを見る目や無理解の目で見る者もいた。だが、それで構わないのだッ!理解しない者が居るなど、拙者にとって枷でも何でも無い!人を馬鹿にしたり、迷惑を掛けたり貶めたりして楽しむような生き方よりも余程美しくて崇高で、素晴らしいとは思わぬか?他人からどのような目で見られるかよりも、己が何を好きで、己が何をしたいのかが重要なのであり、それこそが”誇り”だ。それを見失った者がやがて人を馬鹿にしたり、貶めたりする世界へゆくのだと拙者は思っている。そういった者に限って被害者ヅラばかりしているような世の中でござるからな」

「…………」

「有難う。昨日の問いに対して、時枝殿が『自分を好きになれる』と言ってくれて嬉しかった。貴殿の言葉のおかげで拙者は、ずっとなりたかった魔法少女に成る決意が出来たのだ。貴殿であれば、この話を笑わずに聞いてくれると思った。そして拙者は『甘目まどか』と共に生きてゆくと決めた。ただそれだけの道化でござるよ」


 照れくさそうに頭を掻き、それでいて真っ直ぐに前を見据えて歩く鳴上の話を俺は黙って聞いていた。この男は想像していたよりも遥かに強い男だ、と俺は思った。先ほどまで抱いていた異物のような孤独が、とっくに俺の中から消え失せているのを感じた。


 そしてそこまで言い終えたところで、鳴上の正面をお菓子を手に持った子供が満面の笑顔で勢いよく走り過ぎようとした。


 鳴上は自分の巨体で子供を轢き潰さないよう咄嗟に身を回したが、バランスを崩して「アァ─────ッ!」と叫んですっ転んだ。


 それによって広々とした一階正面出入口前の往来のある場所で、紙袋に入っていた大量の甘目まどかグッズを全てぶちまけていた。


 盛大にガオって焦燥に満ちた鳴上は、普段の厳かで知的なベールなど全て引っぺがされて抜け落ちたようにきょどり散らかしていた。そして慌てて四つん這いになり、ぶちまけられたグッズを急いで拾い始めた。俺もそれを手伝ったが、落ちて散らばった大量の甘目まどかグッズを拾い上げるところを大勢の人々にじろじろと見られていた。それに気づいた鳴上はたちまち顔を真っ赤にし、「は、はずかちィ──ッ!」と叫び、紙袋を勢いよく拾って突風のようなスピードで家電量販店を走り出て行った。強さと弱さは表裏一体なのだと俺は思った。


 置き去りにされて一人になった俺は十分くらい歩いて駅に辿り着いた。ホームに座って月額課金アプリを開き、漫画を読んで帰りの電車を待っていると、スマートホンに通知があった。見ると渚からの連絡だった。


『おっきな家電量販店が出来たんだって!気になるから、明日夜一緒に行こー』


 …………。


 コスプレコーナーは避けよう。絶対に。


 絶対。絶対に、避けよう。


 恐らく鳴上は明日も居るだろう。他のどこに足を運んでも、コスプレコーナーという名の異界だけは絶対覗かないと俺は心に誓った。そして渚に『いいよ』とだけ返信を送って電車に乗り、アパートに帰り着いた。


 風呂に入って歯を磨き、布団に入った。何故か寝付けなかったのでスマートホンを開き、月額課金アプリで貯まっていたポイントを使って『甘目まどかの照り照り魔法少女記』を観た。五人いる美少女ヒロイン達が皆揃って高圧的で毒舌家という、独創的な設定のアニメだった。第二話の半分くらいまで観たあたりで眠くなり、俺は充電ケーブルをスマートホンに挿して眠った。



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