9話 ダンジョン奥にはお宝です!
俺の名前はキース。
今俺たち六人は冒険者になる為の最終試験を受けている。
仲間はみんな、幼馴染だ。
いつか俺たちもSランク冒険者になる事を夢見て。
試験官に受付嬢のミズナさん。
美人で他の冒険者達からも人気が高い人だ。
俺も内心ドキドキしている。
もう一人は護衛のDランク冒険者のエミリ。
彼女は噂のSランクを倒したマルクさんのパーティーの人だ。
見た目はかわいい。
でも、なんかちょっとおどおどしていて頼りない感じがするが、
ギルドの打合せ室での出来事が引っかかる。
あれは故意なのか事故なのかわからない。
俺は後方にいる二人をちらりと見て仲間に声をかけた。
「ここから慎重にいこう。探索されつくしたダンジョンだからってモンスターがいないわけじゃないんだからな」
「わかってるよ……慎重にな」
俺は一度、隊列を確認する。
一番前に盾持ちの剣士である俺、キース。
右に剣士のアラン。
左に双剣使いのダリア。
中央に回復役のリリア。
後ろに魔法使いのミシェッド。
その後ろには遊撃役のカイ。
さらに後ろには試験官のミズナさんと、Dランクのエミリがいる。
俺たちは慎重に一階を進む。
リリアが地図を見ながら皆に言った。
「もう少し進んだら広い部屋があるわ」
「わかった」
・
・
・
広間に着いた。
中央にゴブリンが五匹いた。
俺たちが戦闘体制をとったら、ゴブリンがこちらに気がついたらしく一斉に——、
逃げ出した……。
俺たちは何が起きたのかわからず、でも気を許さずに広間の中央まで来た。
「なんでゴブリン逃げたんだ?」
「わからないな」
「罠なんじゃないか?」
「よくわからないけど……リリア、階段までは?」
「後少し、広間を抜けて右に進んだところ、そこにあるみたいよ」
俺は辺りを見回した。
特に変わった様子もない感じだ。
後ろには静かに立っているミズナさんと、
おどおどしているエミリだけだった。
あれで護衛が務まるのか?
エミリに不信感が出始めてきた。
「カイ、すまないが通路の確認をして来てもらっていいか?」
「了解」
カイが通路を確認している間俺たちも地図を確認しておく。
移動の際はリリアが見てくれているが、
いざという時は皆が地図を見ておけば助かる確率が上がるからだ。
昔から皆でやっていたことだ。
いたずらした時の脱出経路確認とか皆でよくやったもんだ。
今はその延長みたいなもんだ。
カイが戻ってきた。
「ゴブリン達、いなくなってた。」
「そうか、なら進もうか」
言って皆が移動を開始する。
試験官のミズナさんはこちらを採点している。
エミリは左の壁に向かって剣を一振り。
薙ぎ払いの練習か?
微かにズンッと音が聞こえた———気のせいかな?
さっきのゴブリン達かな?
気をつけて移動しよう。
—— 地下二階 ——
「この階層は基本一本道だ。挟まれたら厄介だぞ」
俺は仲間に指示を出す。
「行こう」
地図通りならそろそろ分かれ道があるはずだ。
俺は後方の確認もしておく。
ミズナさんは相変わらず採点をしている。
わからないのはエミリだ。
ときどき関係ない方に向かって剣を振るっている。
何をしてるんだ?
ミズナさんも時々エミリの方を確認しているが何も言わない。
分かれ道についた。
「リリア、もう一度地図を確認してくれ」
「うん……ここは、左です」
「よし、慎重に行こう」
しばらく進むと……両側の壁の影から、
ゴブリンとウルフが飛び出してきた。
「モンスター!横から出てきやがった!」
「戦闘開始だ!」
全員が返事をし、戦闘を開始した。
ゴブリン五匹、ウルフ八匹。
状況は厳しい。
試験官のミズナさんやエミリにかまってはいられない。
ミシェッドの魔法がウルフに放たれ、
そこへカイが素早さを生かして切り込む。
ゴブリンにはアランとダリアが切りかかっていく。
アランとダリアがなんとかゴブリンを捌き、二人はカイの援護に向かう。
俺はリリアとミシェッドの盾としてこの場にとどまる。
「キース!ウルフが三匹そっちに向かった!」
「わかった!」
ウルフが三匹こちらに向かって来ると同時に、
ダリア———彼女がこちらに向かって走り出した。
「ミシェッド!魔法いけるか!?」
「ファイヤーボール!!」
一匹はミシェッドがやった。
しかし後二匹……一匹はいけるが、
もう一匹は無理だ!
リリアかミシェッドに襲いかかる!!
ダリアは間に合いそうにない!
考えてる暇はない!
せまるウルフ二匹に俺は剣を振るった!
一匹のウルフを切りつけたが、もう一匹が……綺麗に半分になっていた。
ゴブリンとウルフに対応していた三人も無事に戻ってきた。
「キース!怪我は?」
「え?あ……ないよ」
ダリアが焦りを落ち着かせながら、
「二匹のウルフにお前が挑んだ時に後ろの二人が襲われるかと思ったぞ」
アランがほっとしながら言った。
「うん、驚いたね。アランが剣を振るったら二匹とも切られてるんだから」
「いつの間にそんな技を?」
リリアも目を大きく開けて驚いていた。
俺じゃない。あれは絶対に俺じゃない!
では誰が?
俺は、ある出来事を思い出した。
その張本人は後ろでおどおどしていた。
まさか……本当に……?
いや、今はよそう。
試験が終わったら確認してみよう。
俺たちは、三階への階段にたどり着いた。
あれから戦闘は一切なかった。
「ここまでお疲れ様です。あと少しです最後まで気を抜かずに頑張ってください」
ここでミズナさんが口を開いた。
そうだよ、あと少しで試験も終わる。
合格できれば晴れて冒険者の仲間入りだ!
「みんな、あと少しだ。今まで通り気を抜かずに頑張ろう!」
一同「おう!」
三階は目の前の扉をくぐると大広間になっているだけだ。
かつてはボス部屋とか言われていた場所らしいが、今は存在していない。
「やっとここまで来たんだね」
リリアが言う。
「あぁ、もう少しだよ」
ダリアも言う。
「行こう」
俺が言って、扉を開く。
ゴゴゴ……
—— 大広間 ——
「……ひろい」
誰かが言った。
「奥のあれが台座かしら」
リリアが指をさした方を見る、確かに台座があった。
俺たちは扉を抜けて台座をみて気が緩んでいた。
全員が部屋に入ると後方の扉が閉まってしまった。
「これも試験なんですか!?」
俺はミズナさんに大声で聞いてみた。
「いえ……こんなことは試験内容にありません……なんで?」
ミズナさんも狼狽えながらもレイピアを手にしていた。
しかし、視線は鋭くなって辺りを見回していた。
エミリは――少し楽しそうな顔をしていた。
「くそっ!」
台座付近の壁が崩れ去り、巨大な石像が二体姿を現した。
「今の俺たちじゃ勝ち目ないぞ……」
アランが絶望の声を上げた……
「……おかあさん」
リリアも恐怖に支配された。
ダリアの双剣も震えて構えがなっていない。
ミシェッド、カイも同様だった。
俺も同じだ、怖くて足が動かない……
ズシン……
ズシン……
石像が二体、
こちらにゆっくりと、
迫ってくる……
ズシン……
ズシン……
俺たちの後ろから歩いてくる音が聞こえる。
軽やかな足取り。
その姿が俺たちの前に止まる。
エミリだ。
死ぬ気か?
華奢な女の子が勝てる相手じゃない。
そんなキースの思いなどお構いなしでエミリは腰を落とし、抜刀の構えをとった。
≪ 乱舞 ≫
一瞬の声に、一瞬の出来事……
二体の石像が、
ゆっくりと、
音を立てながら、
崩れ去っていく。
俺は、俺たちは理解が出来なかった。
「護衛ってこんなのでいいのかな?」
この場に似つかわしくない、かわいらしい声でミズナに確認した。
「は……はい。もんだいありま……せん」
ミズナさんの声が裏返っていた。
「みんな、大丈夫?大きい石ころもう、動かないよ?」
巨大な動く石像が石ころ呼ばわり……
もう、笑うしかなかった。
俺の笑い声を皮切りに、他のみんなも笑い出した。
当の本人だけが、なぜ笑ってるのみたいな顔をしている。
思い切り笑い飛ばしてから俺は立ち上がり、みんなを立ち上がらせた。
ミズナさんは呆然としていた。
エミリさんは石像が出てきた場所まで行っていた。
俺たちは台座の木の札を手に入れた。
俺は、エミリさんが何をしているのか気になって後ろから穴を覗いてみた。
そこには宝箱が置いてあった。
「エ、エミリさん、それは?」
俺は聞いてみた。
「大きい石ころたちが出て来た所に在ったんだよ。何が入っているのかな?」
「下手に開けないほうが、罠があるかもしれないよ?」
「そっかー……なら」
と言いながら宝箱の横の部分を切り飛ばした。
何だ、この無茶苦茶な人……俺が不信感の次に抱いた感情だった……
エミリさんは蓋を開けずに横から中身を取り出している。
もう、わけがわからない。
宝箱の中身は、何かの鍵のようだった。
他には何も入っていなかったようだ。
エミリさんは鍵をミズナさんに渡していた。
「ミズナさんこれ、私じゃ何に使うかわからないからあげます」
ミズナさんは未だに何が起きていたのか分かっていないようだ。
一通りの事は済ませたが、肝心の部屋から出られない。
そんな時部屋の床が光りだした。
俺たちは光に包まれた。
——次に目を開けた時は、ダンジョンの入口の近くだった。
入口を警備していた兵士が俺たちの所まで来た。
「お前たち、どこから来た?それに、今の光は?」
正気に戻ったミズナさんが説明をした。
「そんなことがここで起きたんですか?」
兵士は半信半疑だったが、
ミズナさんがギルドの試験官である証を見せたら信じてもらえた。
ミズナさんが、ギルドに戻ったら今日の出来事を報告しないといけないので、
全員ギルドの打合せ室に来てくれと言われた。
——僕たちは試験を終えて、街へ戻るのだった。




