10話 マルクをさがせ!
護衛依頼を終えてギルドにみんなで帰ってきたよー。
報酬が楽しみだよ。
でも、面倒くさいことが残ってるんだよね。
はい、ギルドの打合せ室に到着です。
「本日の初心者試験みなさまお疲れさまでした」
ミズナさんの挨拶で始まったよ。
「それで、本日のダンジョン最下層での出来事ですがギルドマスターを交えて情報を整理いたします。ではマスターご挨拶を」
道理で知らないおじさんがいると思ったよ。
「諸君、初心者試験ご苦労であった。まずは君たちは試験に合格だ。おめでとうと言っておこう」
おじさんが初心者さんに合格を言い渡したよ。
よかったねみんな。
「さて、本題はここからだな……」
資料を見ながらおじさんが唸る。
「ミズナ、ここに書いてあることに間違いは無いのかね?」
「はい。間違いありません」
「初心者ダンジョンの最後のフロアに動く石像……か」
おじさんは初心者冒険者たちを見渡し、
「お前たち、この動く石像を前にしてどう感じた?」
リーダー格のキース君が、
「はい、正直なところ僕たちは死を覚悟しました……」
ちらりとこっちを見たよ。なんで?
「エミリさんが居なかったらと思うと今でも震えが止まりません」
そうなの?
あれって石ころでしょ?
「そうか……初心者の感じた事は十分参考になる。下手に慣れている者ほど虚勢を張ったりするからな」
おじさんすごいね。
「では、エミリ。君にも確認しておきたいがいいかな?」
「うん、いいよ」
「君は、その動く石像を二体同時に倒したと記録にあるが間違いはないかね?」
「ちょっと違うかな?」
「違う?それはどういうことかね?」
「二体じゃなくて三体いたよ?大きいの二体と小さいの一体が」
「ミズナ、これはどういうことかな?」
ミズナさんは驚いている。
私は見たままを言う。
「あの、小さいと言ったけどたぶん気が付かなかったんじゃないのかな」
「どういうことかね?」
「小さいのってこのくらいだったよ」
私は拳を重ねて見せた。
みんなそんなの居たの?みんなが驚いていた。
「ん?床を素早く走っていたよ?」
私は不思議そうに首を傾げた。
「さすがマルクさんのパーティーの人ですね……凄いですね」
ミズナさんがため息交じりで言った。
おじさんもびっくりしてるよ?
「なに!マルクのパーティーの人だと!?彼女が?」
「ああ、マスターは知りませんでしたか」
「知らん!初耳だ!そうか最強剣士のパーティーメンバーか」
おお!マルク最強剣士で広まったね!やったね!
「はい、それはもう凄いの一言では言い表せないほどに」
「そんなにか……お前たちはどう感じた?」
おじさん、また新人君たちに聞いてるよ。
「僕らも同じ感想です」
「そうだね、あの光景が目に焼き付いて今でも思い出されます」
「ぜひ、剣の指導をしてほしい」
前衛三人組が感想を言ってるよ。そんなに凄いことなの?普通でしょ?
「しかしマスター、問題は何故動く石像が現れたかです。違いますか?」
「そうだな……何か見つかったものとかは無いのか?」
「そういえばエミリさんから鍵を貰いました。こちらです」
ミズナさんがおじさんに鍵を渡した。
「ふむ……動く石像、鍵、初心者ダンジョン……」
ため息をついたおじさんが悩んだ……。
おじさんの顔つきが変わった。
目つきを鋭くして口を開く。
「調査の為、初心者ダンジョンを一時的に封鎖する。ミズナ、今すぐCランク以上の冒険者、特にレンジャー系の職を多めに手配してくれ。この鍵も気になるからな」
「かしこまりました」
「あと、この件は今しばらく口外禁止とする、いいな?」
私たちに口止めが来た。まあ、いいけどね。
「わかりました」
みんなが返事をした。
「よし、遅くまでご苦労であった。今日はゆっくりと休むがいい。」
「新人は明日、Fランクのカードを発行する。忘れず取りに来い。以上だ、解散」
おわったああああ。
暇つぶしが大変なことになったよ。楽しかったからいいけどね。
帰ろうとしたら新人君たちにお礼を言われたよ。
「ありがとうございました」
てね。
まだ何か言いたげだったけど眠いから帰ってきちゃったよ。
—— 宿屋・マルクの部屋 ——
バンッ!
「ただいまー!!」
返事がない。
ぼろ雑巾のようになっていたマルクが転がっていた。
「マルク?どうしたの?」
「エ……エミリ……ぼ、ぼくは……今日ほど、子供が怖いと思ったことが……ないよ」
がくりっ。
マルクが動かなくなった。
マルクがここまでになるなんて……。
どんな楽しいことをしたんだろう!
気になるよ!!
—— 次の日 ——
バンッ!
「マルク!おはよう!」
「マルク?」
机の上に紙が置いてあるよ……
なになに?
“ 子供が怖いです
探さないでください
マルク ”
「ふっ……」
「新しい遊びね!!」
「そうとなれば聞き込みね!」
—— ギルド ——
バンッ!
勢いよく入ったはいいもの、いきなりおどおどしだすエミリに周りが困惑した。
エミリは受付に座るミズナに気が付き駆け寄った。
ミズナさんの格好はいつもと違うが、それどころじゃない。
「ミズナさん!」
「あらエミリさん、おはようございます」
丁寧に挨拶をするミズナにエミリも、
「お、おはようございます」
丁寧に挨拶を返した。
「本日はどのような用件で?」
「そうだ!マルク来てませんか?」
「マルクさんですか?今日はまだ見ていませんね。どうかされましたか?」
「マルクが消えたの」
そうしてエミリは残された紙をミズナに見せる。
軽く目まいを起こしそうになり、眉間に指を当てるミズナ。
「なんですか?子供が怖いって……」
「わかんない……」
「んー……子供といえば昨日、馬車の中から見た場所、あの辺りの子供ならわかるんじゃないでしょうか」
「そ、そうね!いってみるよ!」
エミリは駆け出した。
「あ、エミリさん!おはよう――」
新人君たちに目もくれず、ギルドを飛び出していくのであった。
受付に来たキース達はミズナに訊ねてみた。
「エミリさんどうしたんですか?」
「なんでもマルクさんが居なくなったとかで」
「内輪もめですか!?」
「いえ、そういう訳ではないですね……」
・
・
・
エミリは昨日マルクを見た場所までやってきた。
「昨日見かけた子供は……いた!」
昨日マルクと遊んでいた子供たちだ。
「ねえ、君たち昨日マルクと遊んでいたよね?」
「なんだねーちゃん?」はなたれ一号。
「ねーちゃんもおれたちとあそびたいのか?」はなたれ二号。
「ねーちゃん、おれたちといいことしようぜ」はなたれ三号。
落ち着け私。私はおねーちゃん。この子たちより年上なのよ!
ゴンッ!
ベシッ!
バシッ!
「おねーちゃん、優しいから“足”は出さないよ?」
「それを言うなら“手”だろ!」
はなたれ小僧どもは頭を抱えてうずくまっていた。
「で、マルクのことは知ってるの」
やさしい笑顔で、軽く威圧を飛ばす。
怯える子供たち。
「あのにいちゃんなら俺たちの賭けに負けたから罰ゲームをしてもらうんだ」
「そうだそうだ」
「ばつげーむ!」
「で、なにしたの?」
ゲーム内容はこうだった。
特定の床に立って三人の攻撃をかわすだけだった。これならマルク、負けるはずないのになぜ負けたのかな?
「あのにいちゃんほんと騙されやすいのな」
「なっ」
「なっ」
「床に接着剤塗ってあったの気が付かないんだもんな」
「なっ」
「なっ」
スパパパン!
「足は出してないよ?」
「叩くなよ!」
「いたいよ」
「なっ」
「で、罰ゲームでなにやってもらうの?」
「初心者ダンジョンのおくで木の札を取ってきてもらうんだ」
「うん」
「うん」
木の札?あれ初心者の試験で、取って来る奴だよね?
「それをどうするの?」
「もちろん冒険者になるためさ!」
「そうなんだ、じゃあおねーちゃんがギルドの人に伝えておくね。三人組の子が冒険者になりたいって」
ミズナさんに言っておくだけだからね。後はしらないよ?
はなたれ三人組は嬉しそうだ。
「初心者ダンジョン……あれ?今、たしか……」
とにかく行ってみよう。
走れば大丈夫だよね?
・
・
・
「ハァ、着いた」
何台かの馬車を追い抜いてきたよ。昨日の馬車より早く着いたかな。
息を整えてから入り口まで行ってみよう。
入り口には警備の兵士さんがいっぱいだ。
とりあえず聞いてみよう。
「あ、あのー……」
「おや?君は昨日の護衛の冒険者か」
「は、はい……あの、それで聞きたいことが」
「どうした?」
「ここにマルク来なかったですか?」
「マルクってあのマルクか?最強剣士とか言われた」
「はい……そ、そのマルクです」
「見ていないな……おーい!誰か最強剣士のマルク見た奴いるか?」
「いや、見ていないな」
「俺たちさっき来たばかりだから、その前じゃないか?」
「あの、中に入って探してもいいですか?」
「かまわないと言いたいが、ギルドからの通達で立ち入り禁止になったんだよな」
「ダメでしょうか……」
「すまんな、俺たちじゃどうしようもできない」
「そうですか……」
帰ろうとした時に、
数台の馬車がダンジョン入り口に止まった。
中から何人もの冒険者と、
ミズナさん他数名のギルド職員が出て来た。
ミズナさんがこちらに気が付いた。
「あらエミリさん。どうしてここに?」
「あ、ミズナさん。えと、マルクがこの中にいるかもしれないんで」
「え?マルクさんがここに?」
「はい」
「なら、エミリさん。あなたも探索に協力してもらえますか?」
「いいんですか?」
「エミリさんなら問題ありません」
にこりと微笑むミズナさん。
「ところでエミリさんの乗ってきた馬車はどこですか?見当たりませんが……」
「えと、走ってきたので馬車ありません……」
「……はい?」
ミズナさんは私の足元を見て、
固まって動かなかった。




