11話 穴に落ちたり滑ったり!
時間は少し遡り、夜明け前の宿屋。
「行きたくないけどな……」
僕は子供たちの勝負に負けたのでダンジョンから木の札という物を取りに行くこととなった。
「エミリ来ても困らないように置き手紙を書いていこう」
“ 子供たちが僕の罰ゲームとして、ダンジョンに行くことになりました。怖いですけど、早く帰るから探さないでください。 ”
これを簡単に書いておけば大丈夫だよね?
後は名前だね。
よし、行くか。
ダンジョンに近付いたとき、草むらからゴブリンが二匹現れた。
辺りはまだ薄暗く、人も馬車も通っていない。
僕は腰に付けた吹き矢を取り出し、しびれ薬を塗った矢を——、
舐めてしまった。
「にゅお! しまっは!!」
たちまち痺れて倒れた。
そんな僕を見てゴブリンは、僕の足を持って草むらに引きずり込んだ。
僕はこの時初めて……、
ゴブリンの鼻歌を聞いたよ。
しばらく引きずられていたら、ゴブリンが僕を持ち上げて地面に空いた穴へと投げ入れた。
「うひやぁぁぁぁ!!!」
・
・
・
ドサッ
下には枯れ草が沢山敷き詰められていた。
草の上に仰向けになり、痺れが取れるのを待ちながら、天井に空いた穴を見続けた。
「あー、やっと痺れが取れてきたよ、……ところでここ、どの辺りなんだろ?」
周りを見回し、奥の方に灯りが見えたので移動し始めた。
灯りは綺麗に横一直線、僕のお腹の辺りくらいの位置から漏れていた。
僕は壁を押していった。
少し動いた所があったので、頑張って押してみたら壁が崩れた。
崩れた所から中に入ると、そこは広い部屋だった。
モンスターは居なかった。
部屋には入り口が2つある。
「ど、どっちに行こうかな」
よし、決めた!右利きだから左に行こう。
左の入り口の方へ歩いていく。
「よ、よし、モンスターいないな……」
腰に手を当て、吹き矢を取ろうとしたが——
「ゴブリンに引きずられた時には落としちゃったかな」
吹き矢がない、これほど不安な事はない。
剣はあるけど、やはり使い慣れたのが一番なんだけどね。無くなったのは諦めるか——
道なりに進んできたら降りる階段があった。
「上り階段じゃなかったな」
まぁ、降りてみよう。
ひょっとしたらここが目的のダンジョンかも知れないしね。
少し考えた。
「階段を降りて来たらなんか長い通路なんですけど……」
少し進むと別れ道になっていた。
さっきは左だから、今度は右だ!
僕は勘を信じる!
カチッ。
なんか踏んだよ?
ダダダダダダダダ……
左右の壁から矢が大量に飛び出してきたよ!恐っ!
え?
これ、いつまで出続けるの?
止まらない矢の嵐。
引き返そう……。
さっきの分かれ道まで戻ってきた。
さっきとは逆の方へ進む。
どのくらい進んだのか分からないけど、
「本当にモンスター出ないな。みんな寝てるのかな?」
また少し進むと降りる階段がを見つけた。
階段を降りると目の前に扉があり、
扉をそっと——、
開けたかったが重くて開かない。
僕は頑張って、んぎぎぎと力を込めながら押した。
ズゴゴゴゴゴゴゴ……
「ひ、開いたよ。立て付け悪いんじゃないの?」
文句を言いながら中に入ると、そこは大広間のようだ。
中央に石像が切り刻まれたように転がっていた。
奥には台座らしき物と、壁に穴が空いていた。
「凄いなこの石像、粉々だね」
巨大な石像の残骸を見ながら、台座に向かう途中に足が何かを蹴飛ばした。
「なんだこれ?」
見たら手足がバラバラになった石の人形が転がっていた。
僕は気になったのでバラバラになっていた部品を集めて、皮袋にしまい込んだ。
再び歩き出し、台座の所まで来たが、特に何かが置いてあるとかはなかった。
今度は穴の中を覗いてみた。
中には横が切り取られた宝箱が転がっているだけであった。
僕は宝箱を手に取り、調べてみる。
「どうしてここから中を?もしかしてこれが正解の開け方なの?まさかね」
宝箱の蓋を開けた——。
カチッ。
「ん?」
ドンッという音と共に凄い勢いで床が傾き、僕は穴の中に滑り落ちていった——。
滑る滑るすーべーるー……。
下の方から灯りが見えた……。
このままいったら僕どうなるの?地面に激突!?
「いやだあああああああ!!」
最後は緩やかに滑って僕は地面に、
ズザザザザザ……
擦り付けられた。
「いたたたた」
体を起こし、周りを見渡す。
「どこ?ここ……」
凄い大きな広間、というより大空洞といった方がしっくりくる広さだ。
上なんて、はるか先だよ。
僕が落ちてきた穴を見たが、届きそうにもない。
周りを見渡し、僕は扉を見つけ駆け寄る。
押しても引いても開きそうにない。
僕は振り向き、途方に暮れる。
「どうやって帰ろう……」
ズンッ……
微かに響く音と地響き。
「な、なに?」
ドンッ……
更に大きくなる音と揺れ。
「こ、怖いんですけど!?」
ドドンッ……。
音のする方をじっと、目を凝らして見る。
壁が崩れ落ち、静寂が辺りを包み込む。
砂煙の中から動き出すそれは——。
僕の身長の二十倍くらいありそうな巨大なゴーレムだった。
はい!回れ右!
扉を叩いて泣き叫んだ!
「いやだあああああああ!あけてくれええええ!」
無情にも扉はびくともしない。
振り返ったら奴がいる!
こっちに向かって歩き始めたよ!
僕は右を向いたり、左を向いたりして逃げ道を探す。
「あ、あれは!上に逃げられるか!?」
僕は左に見えた坂道らしき場所へ全力で走り出した。
「よ……よし、上がれるぞ!」
とにかくがむしゃらに走って上までたどり着いた。
巨大なゴーレムの頭をこちらに向けた。
ゴーレムが壁に向かって歩き出し、壁の前で拳を叩きつけだした。
ドゴン!ズガン!ドゴン!
激しい揺れが僕のところまで伝わってくる。
「やばいやばいやばい!ここも安全じゃない!他に逃げる場所は……」
僕はゴーレムの頭上、天井を見上げた。
「あ、あそこなら……い、いけるかな……こえぇぇぇ」
ゴーレムが壁を叩く振動に怯えながら、僕は天井を目指した。
「これ、落ちたら終わりだ人生終了だ!」
壁をよじ登っていたら、太くて丈夫そうな蔦を発見した。
蔦は目的の場所まで伸びている。
僕は蔦にしがみつきながら目的地までたどり着いた。
たどり着いた場所は窪みがあり、腰を下ろすことが出来そうだ。
「やった!ここでやり過ごすことできるかな……」
腰を下ろした時に、天井に付いていた蔦が下に落ちていった。
下ではゴーレムが、僕を見失ったせいで暴れ出していた。
何か良い案がないか考える。
そういえば昔、エミリに見せてもらった本にゴーレムの倒し方が載ってたような……。
思い出せ!僕!
剣を取り出し、剣を眺め
柄頭の蓋を外し、剣を構えゴーレムに狙いを定める。
フッ……パチン。
駄目だ……距離が……離れすぎている。
もっと近づかないと——。
ゴーレムがこちらを振り向いたときに、僕は額に光る物を見た。そして、思い出した。
ゴーレムの弱点となる場所を。
ゴーレムの弱点、それは額の宝石だ!
エミリに見せてもらった本!
“ 剣神伝説 ” !
“ 三才からのたのしいえほん ” だ!
一か八かだ!
ゴーレムが真下にきた時、僕は飛び降りた——。
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マルクが宝箱の罠にはまった頃、地下一階の広間にて——。
レンジャーの一人が壁に手を当て異変に気がついた。
「ここの壁、おかしいぞ。横に一直線の切れ目が入っている。それとそこを見ろ」
レンジャーが示した所は、壁の裏から押し崩されたようだ。
近くに寄ったミズナが穴を見た。
「お!これはそうかもな。靴の足跡がある。ゴブリンどもは裸足だからな」
「エミリさん、マルクさんはここにいる可能性が高くなりましたね」
「うん、そうだね」
エミリもそう感じたのだろう。
斥候の一人が穴の奥から戻ってきた。
「穴の奥の天井に穴が空いてましたぜ」
「どのような経緯かは、後で本人に会えたら聞くとしましょう」
「わかったわ。何名か残して残りは下へ急ぎましょう。残った人は引き続きこのフロアの調査をお願いします」
ミズナが指示を出し、地下二階へと進んでいく——。




