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49話 君の声に応えて——

 光と衝撃がこの場を支配した。


 ドオオオオオン!


 誰もが、この戦いが終わったと思った。


 衝撃が収まり、煙が晴れていく中——


 マルクの攻撃を耐えた化け物がそこにいた。


『嘘だろ……マルクの、あの攻撃を耐えたというのか……』


 実況のハナシダの、絶望的な声に、


 冒険者たちは武器を落とした。


 煙が晴れていく、


 巨人の化け物も無傷とはいかなかった。


 人の皮膚のようなものは消し飛んで、


 胸にはコアが剥き出していた。


『あの胸に見えるのは……コアか?』


 ハナシダの声に、


 冒険者たちも顔を上げて胸を見た。 


 そこには赤く鈍い光を放つコアがある。


『コアが剥き出しになっている! これはチャンスなのでは!?』


 僕はもう一度構えた。


『マルク! まだいけるのか!?』


 僕は低空飛行をしてきたハナシダに頷き返した。


 『喜べみんな! マルクがまたやるぞ!!』


 戦意を失い始めていた冒険者たちも、


 ハナシダの話を聞き、


 再起し始めた。


『マルクが再び構えに入ったああああ!!』


『巨人の化け物は……なんだ? 赤く燃え始めたぞ……』


『まるでマルクの攻撃を防ぐかのように更に燃え出していく!』


 迫り来る化け物。


 そのコアは燃えずにいた。


 その中に——


 カレンの付けていたチョーカーが目に入った——


 (カレン……そこにいるのか!)


 わずかな時間で気持ちを落ち着け、


「いくぞおおおお!」

 

 ——もう一度!


 吹き放った!


 辺りに光と衝撃波が巻き起こり——


『私、この技を見るのは三回目ですが! 凄まじすぎる! 凄すぎます!』


 ハナシダの実況に熱が入る。


 冒険者たちも期待の眼差しで見ている。


 煙が晴れていく中、


 赤く燃えている巨人の化け物がひざまずきながら、


 攻撃に耐えていた。


 化け物はゆっくりと立ち上がり、


 吠えた——


 グオオオオオオ!


 化け物はマルクを見据えた。


 危険な敵と認識したのだろう。


 巨体を揺るがし、


 マルクへ向けて走り出した。


「こっちに来た!」


(接近戦は——僕には不利だ!)


 しかし、逃げ出そうにも逃げ出せない。


 相手が速すぎるのだ。


 化け物の拳がマルクに迫る。


 拳が当たる寸前、


 ゴーレムの動きが、確かに鈍った。


 威力は落ちたが、


 拳は止まらず、


 マルクは吹き飛ばされた。

 

 「……ぐはっ!」


 (息が出来ない……視界が揺れる……音が遠ざかる……体が麻痺しているみたいだ……)


 マルクはその場にうずくまった。


 マルクに迫る化け物。


 その背中に魔法攻撃が降り注いだ。


 グオオオオオオ!!


 化け物が吠えながらよろめき膝を着いた。


『どこからの攻撃だ!?』


 ハナシダが周りを見渡すと、


『城門から騎士団が駆けつけてきたぞ!』


『しかもあの旗は! イルタ王子の率いている第四騎士団だああああ!』


 ハナシダの実況により、冒険者たちも歓喜の声を上げた。


「魔法兵は引き続き巨大な敵に攻撃を続けろ! 他の者はケガ人にポーションを!」


「素早く行動しろ!」


「はっ!」


 騎士団の行動は素早く、


 最悪の戦況は、わずかにだが持ち直し始めた。


『これは頼もしい援軍の登場だ! しかし、あの化け物はいまだ健在だ!』


 この援軍により、


 エミリやミズナは回復することが出来た。


 エミリの傷は完全には癒されてはいないが、


 マルクを探した。


 ミズナも立ち上がり、


 化け物の近くで倒れているマルクを見つけた。


 二人はマルクの元へ駆け出した。


『騎士団の攻撃が化け物に襲いかかる! 休む暇も与えない攻撃だ!』


 騎士団長はゴーレムの集団に襲われた事を思い出しながら、


 (我ら第四騎士団は、あの時の失態を繰り返す訳にいかん!)


「第四騎士団の意地を見せよ!」


「おおお!!」


 騎士団は連携のとれた動きで化け物を翻弄している。


 化け物は体の炎を操り出した。


 炎が鞭のように、騎士団に襲いかかった。


『なんという事だ! 化け物が、炎を操りだした! あれは鞭だ! 炎の鞭だ!』


 ハナシダも実況しながら怯えだしていた。


 騎士団も、徐々に戦力をそぎ落とされていく。


 エミリとミズナがマルクの元にたどり着いた。


 エミリはマルクにポーションを飲ませた。


「がはっ……」


「マルク、大丈夫?」


 エミリがマルクの顔を不安そうに見ている。


「エミリ……ごほっ! なんとか大丈夫だよ」


「二人とも、あの化け物はどんどん進化しています」


 ミズナの言葉にエミリも、


「私でも倒しきれるか分からないよ」


 あのエミリですら弱音を吐き始めた。


 僕にもどうしようもない——


 手に持った剣を、


 僕は眺めた。


 ——その時、


 村の鍛冶屋での言葉を思い出した。


 " どうしようもなくなったらダイヤルのカバーを外せ…… ”


 ゲンさんの言葉だ。


 僕は慌てて剣のダイヤルの上に付いているカバーを外した。


 そこには——


 もう一つの選択肢があった。


 強の次、そこに書いてある文字。


 “ 狂 ”の文字が。


 僕はこれに賭けることにした。


 怖いし、不安もある。


 だが、この状況を変えられるのはこれしかない。


「二人とも、僕はこれに賭けるよ」


 二人に剣を見せた。


「これは?」


「なんですか?」


「この剣に秘められた、もう一つの力らしいんだ」


「もう一つの力?」


「それに賭けると言うんですね?」


「もう、これしかないんだ」


「……それ、危ないやつでしょ?」

 

 エミリは不安な顔をした。


「でも、やるんだね?」


 僕は頷く。


 「……注意を引けと」


 ミズナもわかってくれたらしい。


 僕は無言で頷いた。


 ミズナは騎士団と化け物が戦っている所を見て、

 

「あの状態では、長くは持ちませんよ?」


 エミリもミズナと同じように騎士団の方を見て言った。


「そうだね」


 僕は二人から目を逸らさずに言った。

 

「少しでいいんだ。 隙さえできれば」


 二人は少し黙り込んでから、

 

「わかった。 マルクを信じるよ」


「必ず倒してくださいね」


 それだけを言って、化け物に駆けていった。

 

「騎士団のみなさん! 一旦離れてください!」


 ミズナが叫びながら化け物に挑んでいった。


 続けてエミリも切りかかっていく。


「なにを言っている! 君たちこそ危ないぞ!」


「巻き込まれたくなかったら言う事を聞け!」


 エミリは感情を爆発させた。


「あの子は!」


 騎士団はエミリを知っている。


 ゴーレムに襲われた時、駆けつけてくれた少女を。


「何かあるんだな?」


「あります! マルクがやってくれます!」


 エミリが叫ぶ!


 騎士団長はマルクという名前をイルタ王子から聞かされていた。


 しかも、先ほどまで街で実況されていた時も名前が挙がっていた人物だ。


 騎士団長は二人が来た方を見ると、


 一人の少年が剣を構えていた。


「……わかった、君たちの判断に任せよう」


「団長!」


「騎士団に告ぐ! 我々は一旦この場を離れる! 彼らの邪魔になる! 急げ!」


『騎士団が離れていくぞ! どうしたんだ? 残されたのは女性が二人だけだ!』


『なにか作戦でもあるのか!?』


 ハナシダの実況が響き渡る。


 騎士団が離れ、エミリとミズナが押さえて隙を作る。

 

「マルク!」


「いまよ!」


 二人の叫び声が聞こえた。


 僕はダイヤルを狂に合わせる。


 剣が震えだした——


 その剣を化け物に向ける。


 ——カレン。


 一瞬カレンの姿が脳裏をよぎって、躊躇ってしまった。


 化け物は僕に気がついたらしく、飛び上がって僕の方に向かってきた。


「マルク!」


 エミリが僕の名前を叫ぶ。


 化け物が僕の近くに着地し、


 地面が弾けた。


 化け物はコアから触手を出しながら迫ってくる。


 ——失敗か。


 近づかれた恐怖と後悔が僕の中に溢れてきたその時、


 僕の中に声が聞こえた。


(……マルク……)


「……声?」


 化け物が近づいてくる。


(マルク……撃って)


 確かにそう聞こえた。


(……大丈夫……)

 

 化け物の動きが一瞬止まった。


 ——君なのか……


 カレン!?


 知らない声なのに、知っている感情だった。


 声を聴いた時、僕は今一度奮起した。

 

 君の作ってくれたこの瞬間、


 無駄にはしない——


 時が止まったような静寂の中、

 

 僕は剣をコアに向けて、


 吹き放った——


 剣の先に光が集約され、


 一筋の光がコアを撃ち抜いた。


 パキン……


 この瞬間、


 剣は役目を終えたかのように、


 静かに砕け散っていった。


 コアを無くした化け物は動きを止め、


 ゆっくりと膝を付きながら、


 その場で崩れ去っていった。


 その光景を見ながら——


 僕は涙を流していた——。

次の話で最後になります。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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