46話 エミリ、参戦
街の状況を確認しているディンとライラ。
「本当にゴーレムたちは見当たらないな」
「マルク君が引き連れて外に出たらしいからね」
走りながら街の様子を確認していく。
「俺たちも向かうか?」
「そうね、マルク君だけじゃあの数は無理よ」
「距離はあるが……急ごう」
ディンとライラは王都の外へと向かっていった。
他の冒険者のたちも、ゴーレムは見つからなかったらしい。
皆の意識は王都の外へと向き、
マルクを追うように移動を始めた。
そこで実況が入ってきた。
『マルクが王都の外にある巨木にたどり着いたぞ! ここからどうするつもりだ!?』
「まじか! もうあんな所まで行ったのかよ!」
「あの子走るの速いわね!」
ディンとライラも門へと急いだ。
『マルクが巨木の周りを走り出したぞ! それを追ってゴーレムも回り出したあああ!』
『これは凄い光景だ! マルクを先頭にゴーレムが列をなして走っている!』
『おっと! ここでマルクが輪から外れたぞ! ゴーレムは……気がついていないのか、まだ回っているぞ!』
『ここでマルク……何かやるつもりだぞ!?』
『おっとおおおお! ここで剣を抜いた! どうするつもりだ!?』
「無茶するなよ……マルク!」
「私たちが行くまで持ちこたえて!」
ディンとライラは実況を聞いて焦りだした。
マルクが無茶をするのでは……と。
門にたどり着いた二人は更に加速し門をくぐった。
「いい加減にしろよおおおおお!」
「こうなったら一気に吹き飛ばしてやるぞ!」
剣のダイヤルを強に合わせて、
「目いっぱい息を吸い込んで……」
剣に仕込まれた吹き矢……というか、とんでも兵器になった物に、
息を吹き込んだ。
『マルクが剣を構えたぞ! なんだ? 剣……なのか? 剣に何かが集まっていくようだ!』
『か……風が止んだ?』
次の瞬間、
光の塊がマルクの前方へ放たれた。
凄まじい衝撃が大気を震わせ、
ドゴオオオオオオン!
大地を揺らし、
巨木を、
地面をえぐり取りながら、
ゴーレムの半数以上を消し飛ばした。
『な! なにが起きたあああ! 巨木が! 地面が! ゴーレムが消し飛んだぞおおお!』
『これはまるで……ドラゴンブレスだあああ!』
『まだ、かなりのゴーレムが残っているが! これは凄い光景だ!』
『こんなの試合で使われていたら、試合にすらならないぞ! 凄いぞマルク!』
街では実況を聞いていた人々が喝采を上げていた。
ディンとライラもマルクの後ろ姿を確認したところで、
その威力を、目の当たりにしていた。
「……なっ!」
「……うそ、でしょ?」
『しかし! 大変なことをしたぞ! マルク!』
『みんなの憩いの場が消し飛んだぞ!』
『おっと! 残りのゴーレムが動き出したぞ!』
『マルクがまた走り出したあああ!』
『あの変な動きがゴーレムに刺激を与えているのか!?』
『あれも考えの内なのか!』
『再びゴーレムがマルクを追いかけ始めたあああ!』
ウゴオオオオオオ!!
「うわあああ! なんか怒っていませんかあああ!?」
逃げ惑いながらチラリと門の方へ目をやると、
そこには大勢の冒険者が集まっていた。
僕は両腕を振りながら、
「見てないで助けてええええ!」
そんな僕の叫びは、
後ろから追いかけてくるゴーレムの足音に、
かき消されていくのだ。
「あいつが手を振っているぞ!」
「余裕なのか?」
「俺たちも手を振って応えよう!」
「「「おーい!」」」
門に集まった冒険者たちは、
その場で手を振っていた。
別室に転移してきた王とガスリィ。
「あの冒険者を捕らえるところを見せれば、全てがこちらに動きます」
ガスリィは部屋の水晶をいじり、
ゴーレムに新たな命令を下した。
水晶盤には、ゴーレムに追われている男が映し出された。
「王よ、後は待つだけとなりました」
「当たり前だ、この計画は一部の上級貴族等も関わっておる」
映し出された水晶盤を見つめながら、
「失敗は許さんぞ」
「兵士が兵器になる……実に楽しみだ」
水晶盤に映る男を見つめていた……
その時、
男が剣を抜き、構えた。
その直後、
映し出されていた映像が乱れた。
「何事か!」
王が怒鳴る。
ガスリィが焦りながら水晶を操作する。
暫くすると映像が戻り始めた。
「い、一時的なノイズかと……」
言い訳をしようとしたが、
映像には、無数に倒されているゴーレムの山が築かれていた。
「なにが起こったのだ……」
王は震えながらガスリィを睨んだ。
「わ、私にも何が起きたか……」
慌てながら水晶をいじって、
現場の確認をするが、
原因は掴めずにいた。
映し出された男は、
走り出し、
再びゴーレムをまとめ上げてしまった。
門に集まって手を振っている者たちに、
両腕を振りながら走って応えている。
「あの小僧……! 舐めているんですか!?」
頭をかきむしりながらガスリィが叫んだ。
その時、ドアのない壁が突然崩れ去った。
「ミッチー、みつけたよ!」
まるで似つかわしくない少女の声が、
煙の中から聞こえた。
「父上! それにガスリィ! もう諦めろ!」
煙の中の、少女の後ろから声を上げ、
部屋へと踏み入れた王子の姿が現れた。
「何を言うか、我が国こそ最強! 我が国こそが世界を治めるに相応しい! それこそが民のため! 何故それがわからぬ!」
王が叫んだ。
「愚かなり父上! そのようなことをして何になる!」
イルタ王子も、負けじと反論する。
「争わない豊かな国作りこそ民のためではないのか!」
「綺麗事を!」
「父上こそ世迷い言を!」
マグノーテ王とイルタ王子が剣を抜き、対峙した。
王子が王に斬りかかる。
王は微動だにせずそれを受ける。
ギンッ!
「それだけか?」
「まだまだ!」
王子の連続切り。
それを涼しい顔で、
全て受け流す。
ドッ!
隙をみていた王は、
王子の腹に蹴りを食い込ませた。
「ぐほっ!」
ドサッ……
吹き飛ばされた王子。
「貴様は所詮その程度だ」
王子は王を睨みつける。
(確かに私はまだ未熟だ……だが、このままでいいはずがない!)
再び立ち上がり、斬りかかる……が、
「……つまらん」
王はその一言だけ言い、
王子の首を跳ねた——はずが、
キンッ!
一人の少女に防がれていた。
「小娘……勝負の邪魔をするか」
エミリは低い声で言った。
「勝負ならついたでしょ……」
「平民風情が……王族に楯突くな!」
王は怒りを露わにし、
エミリに斬りかかった。
キンッ!
ギンッ!
しかし、その剣戟はエミリには届かない。
「小娘……その力は一体」
「師匠の教えの賜物!」
エミリの攻撃に、
初めて揺らぐマグノーテ王。
「……まさか、小娘相手にここまでやられるとはな」
マントを外し身軽になる王。
「少しは本気で相手をしてやる……こいっ!小娘!」
マグノーテ王の気配が一段と重くなる。
エミリもそれに気づき、
呼吸を整え闘気を練る。
両者の間合いが一瞬で詰まる。
拮抗する力と力。
ぶつかり合う気と気。
地下の涼しい空間なのに、
二人の熱気が辺りを包む。
「これがあの、エミリの力なのか……」
イルタ王子は二人の戦いから目を離さずに、
「エミリの力はまだこんなものではありませんよ」
ミッチーこと、ミズナが語る。
騎士三人も二人の剣戟に、
ただただ息をのんで、
見ている事しか出来なかった。




