表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/50

39話 やりすぎました!

 剣術大会当日——。


 周りは屈強な剣士、


 素早さで勝負する者、


 明らかに魔法使いな見た目の者、


 そんな猛者たちが七、八十人はいるだろう。

 

 そんな強豪が集まる広間の隅に、僕は突っ立っていた。


「ここは、僕の居場所じゃない……」


 場違い感と緊張で泣きそう……


「マルクじゃないか! どうしたこんな隅っこで!」


 現れたのはディンさんだった。


 隣にはライラさんもいた。


 ディンさんは鎧に身を包み、大剣を背にしている。


 ライラさんは軽装で二本の剣を左右の腰に下げていた。


「ディンさんとライラさん」


「マルク君……もしかして緊張してる?」


「はい……なんか僕、場違い感が凄くて……」


 ディンさんは笑いながら僕の背中を叩く。


「もっとしっかりしろ! そんなんじゃ、周りの奴らに舐められるぞ」


「そうそう、周りなんか気にしない事だよ」


 ガガガ……


 ピー……


『あ、あ……』


『腕に自信のある強者達よ! よくぞ集まってくれた!』


 放送が流れ始めた。


「いよいよ始まるみたいだな」


「楽しみよね!」


「……胃が痛い」


『まもなく本年度の剣術大会を開催する!』


『諸君の健闘を祈る!』


 ピー……ガガ……


『さて、出場者の皆様は予選を行います』


『手持ちの参加証に書かれている番号を確認して』


『指定されたブロックへ移動を開始してください』


『本戦出場は上位8名となります』


『皆様のご健闘をお祈りします』


 ピー……


 アナウンスが終わった。


「俺のブロックは、向こうだな……マルクがんばれよ!」


 ディンさんは自分のブロックへ向かった。


「私はディンと同じだわ! マルク君は?」


「えと……僕は二人と反対側、第二ブロックのようです」


「そっか!頑張ってね!」


「はい」


 ライラさんも手を振りながら移動していった。


 僕も行こう。


 こうして剣術大会が始まった。


 


 城の薄暗い部屋では……


「まだ見つからんのか!」


「申し訳ありません」


「謝罪をしている暇があるなら捜索に力を注げ……」


「しかし、見つかるのも時間の問題かと……」


「ほう……」


「あの村からここまでは三日はかかります」


「門で捕らえられる……と言う事だな?」


「……はい」


 二人は黒い笑みを浮かべ、


 グラスを交わすのだった。


 

 

 コロシアムではすでに予選が行われていた。


 予選は集団でおこなわれ、各ブロックから四人が本戦へ出られるというものだった。


 これは、時間短縮も兼ねた行いだった。


 第二ブロック。


 三十人を越える人数で行われていたが……

 

 マルクは絶体絶命のピンチに陥っていた。


「悪いな兄ちゃん! こういう戦いは、まず弱いやつからってな!」


「そうそう、腰が引けてるお前が最初の脱落者なんだよ!」


 周りをみながら思う。


 ふ、普通は強い奴からだろ!

 

 周りにいる猛者たちはニタニタ笑っていた。


 まじかよー!!


 出るんじゃなかったー!!

 

 僕は剣を抱きながら震えていた。


 何人かが僕を切り付けて来た。


 それを必死でかわす。


 剣で防ぐ、


 走って逃げる。


「ちょこまかと!」


「さっさと負けちまえ!」


 僕はとっさに腰に付けていた吹き矢を、


 正面から切りかかって来た悪人面した剣士に向かって吹いた。


 バンッ!


 矢は男の胸にあるプレートに当たり、


 宙を舞い、後方へ飛んでいった。


 「な……なんだ、今のは……」


 見ていた他の人たちの動きが止まった。


 い、今だ!僕はすぐに新たな矢を込めて吹きだしていった。


 一人、


 また一人と、吹き飛ばされていく。


 僕に近づいてくる人はいなくなった。

 

「お、おい……あいつやばいぞ……」


「あ、あれは吹き矢か?」


「ばかな! あんな威力の吹き矢なんて聞いたことないぞ!」


「冷静になれ! きっと魔道具に違いない!」


 マルクは追い詰められて、


 極限状態の中で吹き続けていた。


 その速度と連射性、

 途切れることのない矢、

 威力が衰えない。


「あんなの相手にできるか!」


「防いでも後ろに弾き飛ばされるってなんなんだよ!」


「おかしいだろ!?」

 

 第二ブロックは次第に悲鳴が上がり始めていた。

 

 僕を取り囲んでいた三十人ほどの人たちは、


 かなりの人数を吹き飛ばしていた。


 その中で一人の剣士が動き出した。


「あれを相手にするより、君たちを相手にした方が楽そうだ!」


 剣士の青年は標的を近くの剣士たちに切り替えた。


 この剣士もまた、人に傷を付けずに相手を倒していく。


 ザンッ!


「残りは! ……うわっ!」


 僕の放った矢が青年の胸当てを掠めた。


「あの威力は危険だね……っと!」


 近くに居た盾持ちの戦士に、矢を躱しながら切り付けた。


 ガキンッ!


 ドサ……

 

 盾持ちが倒れる。


「私も呆けていられないわね!」


 杖を振りかざした女の人が、


 僕の方を向いている剣士を、


 後ろから殴り倒している。


「あの子ばかりに気を取られてるから、楽だわ~」


「はっ! いかん! 自分も戦わないと!」


 また一人、我を取り戻した戦士が動き出した。


 他の人達は動くのが遅れたため、


 動き出した三人により、


 呆気なく倒されていった。

 

『第二ブロック、四名決定しました』


 アナウンスが流れた。


 それでも僕は吹き続けていた。


『はい! そこの僕! 終わりましたよー』


 アナウンスで言われるまで、


 気がつかなかった僕であった。

 

 予選敗退した人たちはみな、


 なんの言葉も発せず、


 ただ、僕を見ていた。

 

 僕は本戦に行けるみたいだ。


「おつかれさん! 君凄いね!」


 剣士のお兄さんは僕に握手を求めて来た。


「無我夢中で、よく覚えていないです」


「ははは! 君はもう少し落ち着いた方がいい」

 

 笑いながら剣士のお兄さんは立ち去って行った。


「君のおかげで楽ができたわ! ありがとうね」


 ウィンクをして去っていったお姉さん。


「君とは、正々堂々と戦ってみたいな!」


 戦士風のおじさん?も、


 僕に声をかけて、去っていった。


 ……疲れた。


「おう! マルク! 見てたぜ、お前凄いな」


「マルク君! それ魔道具なの?」


 ディンさんとライラさんが僕のそばに来ていた。


「違いますよ? 露店で買った、普通の吹き矢です」


「……っ」


「……まじ?」


 ディンさんとライラさんが変な顔で僕を見た。


 なんでそんな顔で見るかな……失礼な。


「お二人はどうでしたか?」


「おう! 俺たち二人は通過だ」


「さすがですね!」


「それほどでもー?」


 にししと笑うライラさん。


「明日からの本戦が本番だな」


「そうね、組み合わせも明日発表だしね」


「今日は明日に備えてたらふく食って英気を養うぞ」


「ディンは食べてばかりじゃない」


「ははは! マルクも一緒にどうだ?」


「いいんですか?」


「かまわん! 行こうぜ」


 大会から勝者に対して説明があった後で、僕たちは食堂へ向かった。



 街の中でエミリとミッチー、それとカレンが散策をしていた。


「マルクは大丈夫でしょうか……」


 私は少し心配していた。


「大丈夫だよ、マルクなら」


 エミリが言い切った。


「根拠は?」


「マルクだし!」


 根拠は無かったようだ……。


「エミリは大会には出場しなかったんですね」


「私はおいしいものの方が大事だよ!」


「……そうですか」


「そうだよ」

 

「それより早く、美味しい物探そうよ!」

 

 カレンもエミリの頭の上で頷いている。


 エミリは鼻をくんくんと鳴らして匂いを嗅いでいた。


 犬ですか。


 カレンも、エミリの上で真似をしていた。


「いい匂い発見! あっちだ!」


 エミリが突然走り出した。


「ちょ、エミリ!?」


 慌てて私も追いかけた。


 街はいつも通りに人で溢れかえっている。


 何かを感じたのか、


 エミリは後ろを振り返った。


「エミリ、どうしましたか?」


「……気のせいかな?」


「なにがですか?」


 エミリは目を閉じてしまった。


「……」


 再び目を開けた時には、


 いつもの、のほほんとした顔はなく、


 引き締まった顔をしていた。


 エミリは先ほど見ていた場所を、再びにらみつけていた。


 そこはこの国の象徴でもある、


 城がそびえ立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ