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38話 ミッチーはこうです!

「あれを持った冒険者は……間違いなくドラボテ村にいるのだな?」


「はっ! 間違いありません! ギルドによる確かな情報です!」


「ふむ、もしもの場合にも備えよう」

「偵察を……王都と、ドラボテ村に送ってくれ」


「は!」

 

 騎士の一人が部屋から早足で出ていった。

 

 窓の外を眺めていた男は振り返った。

 

 そこに立つのは、


 他の騎士とは違い、金色の鎧を身にまとった男——


 この国の王子だ。

 

「あれは、愚王に渡してはいけない!」


「なんとしてもこちらの手に置いておかなければ……」


「イルタ王子……本当によろしいのですか?」


「何がだ?」


「王と敵対する事になるかと……」


「君の言うことはわかる。 団長」


「なら」


「君は戦争をしたいのかい?」


「滅相もありません!」


「愚王は、あれで戦争を起こすつもりだ——」


「……くっ」


「だから君たちにも協力してほしい——いや、力を貸してほしい、頼む」


「王子!頭をお上げください!」


「あの愚王を止められるのならこの頭……いくらでも下げてやろう」


「わかりました! われら第四騎士団! 王子に仕えます!」


「すまない……そして、ありがとう」


 早く来てくれ、進化するゴーレムを連れた冒険者よ。


 できる事ならこの国から逃がしてあげたい。


 愚王は必ず君を亡き者にする……。


 ……冒険者マルク。


 王子は再び窓から夜空を見上げた。


 ……本当に存在したのか。


 文献も眉唾だと思っていたが。


 アルナートの街は静かに夜を迎えるのだった。

 


 


 王都の宿屋《小麦亭》の食堂で、


「マルク、明日はどうするの?」


「明後日から試合だから、集中して吹き矢かな」


「マルク、王都内でむやみに吹かないでくださいよ」


 ミッチーが目を細めながら言ってきた。


「ど、どうして?」


「あなたの吹き矢の威力は人外です! 街中で使えば騒ぎになりますよ」


「ひどくない?」


「ひどくないです」


 ミッチーの顔がいつになく真剣だった。


「ならさ、街の外で特訓は?」


「出入りの多い王都です。時間がかかりますよ」


「マルク、諦めようね」


「あぁ……僕の生き甲斐が……」


 うなだれる僕をカレンが僕の頭をぽんぽん叩いて慰めてくれる。


「ありがとう、カレン」


 その様子を羨ましそうに眺めているミッチーがいた。


「おや?ミズナじゃねーか!」


「ほんとだ! ミズナだ、どうして王都に?」


 僕はミッチーに声をかけてきた二人を見た。


 一人は鎧越しでも分かるほどの巨躯のお兄さん。


 もう一人は、エミリを思わせる鋭い目をした女の人だ。


「二人とも! お久しぶりです!」

「懐かしいですね」

 

「ミッチー、知り合い?」


 エミリがたずねた。


「はい。 二年前まで一緒にパーティーを組んでいた仲間たちです」


 僕は二人をテーブルに招いて、座ってもらった。


「お、すまんな。 俺はディンだ」


「ありがとね。 私はライラ、よろしくね」


「僕はマルク。彼女はエミリです。よろしくお願いします」


「……お願いします」


 エミリは少しうつむきながら言った。

 

「私は今、この二人とパーティーを組んでいます」


 ミッチーが言うと、


「え?ミズナ、アルナートで受付嬢になったじゃん?」


「やめました」


「なんだって?」


「受付嬢はやめました」


「はぁ? 何考えてるの?」


「この二人がお前のお眼鏡に叶ったのか?」

「兄ちゃんよ、お前たちのランクは?」


「僕と彼女はDランクです」


「Dだ!?」

 

「ほんとに?」


「いやまて……ミズナ、お前Aランクだよな? 組めないんじゃないか?」


「何を言ってますか! 今の私は、れっきとしたCランクです!」


 力いっぱいCランクを主張して、二人にギルドカードを見せつけた。


「……は?」


「意味わかんないんだけど……」


 そうだよね、


 わかんないよね……


 僕もわかんないんだよ……。


「当時、最速でSランクになれるとも言われたお前が……」

 

「二人とも、ミズナどうしちゃったの?」

「昔とは雰囲気が違う感じがするんだけど……」


「それなんですが……」


 僕は膝の上に座っているカレンをテーブルの上に乗せた。


「なんだこの人形は?」


「可愛い人形ね。でも、瞳がトカゲみたいね……」


 カレンはすくっと立ち上がり二人にお辞儀をした。


「うお!動いた!」


「なにこれ!凄い!」


「カレンて言うんです。僕たちのもう一人の仲間で、ゴーレムです」


「は? ゴーレムだ?」


 ディンさんは、腕を組みながら低い声で唸った。


「嘘でしょ? これ、どう見ても普通の人形……いやもっと精巧に作られたものだよ!」


 ライラさんも、細部を観察するように見ていた。


「どうですか! カレンちゃんは凄いんです!」


 何故かドヤるミッチー。


 そんなミッチーを見た二人が、何かを納得した。


「前から思っていたが、ミズナは凄い生真面目だが……」


「こう、かわいい物とか見ると顔が緩んでいたからな」


「そうそう、それたずねた時も “そんな事ありません!” とか言うしね」


 二人声を揃えて、


「「納得だわ」」


 ドヤ顔のまま、顔を真っ赤にしていたミッチーだった。


「そういえばさ、ミズナってミッチーて呼ばれてるの?」


「ぶほっ……! なんだそりゃ」


「だってエミリって子が、ミッチーって言ってたのが気になってさ」


「それは、仲間になったから……」


 エミリがぼそりと言った。

 

 ……そういえば、あのあだ名はエミリが付けたんだっけ。


「いつまでもミズナさんは違うと思って、あだ名を付けて呼んでます」


「へー……あの堅物のミズナがね」


「変われば変わるもんだね!」


 にししと笑うライラさん。


「そ、そんな事より二人はどうしてここに?」


 ミッチーが話を変えてきた。


「ん? 剣術大会に出場するためさ」


「腕試しもかねて、私とディンが出場するんだよ」


「僕も出場します!」


 僕も声を上げた。


「そうか! もし当たったら手加減はしないぞ? マルク」


「……少しはしてくれてもいいですよ?」


「ははは! 面白いやつだ!」


「それよりお腹すいたよ、食べようよみんな」


 いつの間にかライラさんが注文をしていたらしい。


 僕たちは食事を始めた。


 ディンさんとライラさんは食事の手を止めて驚愕していた。


 カレンの食事風景を目の当たりにして——。


「食事……するのか?」


「ゴーレムって……言ってたよね?」


「ねえ、マルク君この子……どうなってるの?」


「僕にもわからないんです」


「カレンちゃんはこれでいいんです!可愛いから!」


「ミズナ……」


 ディンさんが何か可哀そうな物を見る目でミッチーを見た。


「ねえねえ、マルク君! この子ちょうだい!」


 興味津々のライラさん。


 でも、それは……


 バキッ!


 フォークをへし折る音がミッチーから聞こえた。


「ライラ……それは何を意味するか、わかっていますか?」


 鬼の形相へと変わっていくミッチーがいた。


「じょ……冗談だってば! ミッチー!」


 顔を引きつらせたライラさん。


 ついでにミッチー呼びしていた。


 ディンさんもこの変貌は知らなかったらしい。


 顔が引きつってるもん。


「マルク、お前たちはこいつがこんなのだって知っていたのか!?」


「仲間になった時からこうでしたよ?」


 エミリも喋らないが頷いていた。


 ディンさんは腕を組み、深く息を吐いた。


「……まあいい」


 腕組みを解いて僕に向き直り、


「なんにせよ、明後日からの大会お互い頑張ろうじゃないか」


 ミッチーの事、無かったことにしたのかな?


「そうですね! 頑張ります!」


「その意気だマルク」


 ディンさんの乾いた笑いが、食堂の賑やかな空間に響いた。

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