36話 命令書なんて知らないよ!
僕はギルドの受付まで来ていた。
「従魔用のリボン下さい」
「はい?」
受付のお姉さんは首を傾げた。
「だから、従魔用のリボンをですね……」
「従魔用とかいう以前に、その様なものは無いですよ?」
「え? だってミッチーが……」
そう言って僕はミッチーに視線を移した。
——視線を逸らすミッチー。
「ミッチー?」
「だ……だってあの頃のカレンちゃんですよ!?」
何を思い出しているのか、
ミッチーの顔がだらしなく崩れていく。
……この人、駄目だ!
「あ、あの~……何の話をされているんですか?」
受付のお姉さんは困惑していた。
「従魔の証とか、そういったものはあるんですか?」
受付のお姉さんは頬に指を当てて思い出していた。
「そうだ!これなんてどうですか?」
受付のお姉さんはポケットから赤いチョーカーを取り出して、
カレンの腰に巻いてみた。
「赤だから、ほかの色とも合いますね」
カレンはくるりと回ってみた。
「あら、かわいい」
気のせいだろうか……この人も……
いや、間違いない!
ミッチーと同じ目をしている!
「……やるわね」
ミッチーが鋭い眼差しを受付のお姉さんに向け、
「それほどでも」
涼しい顔でそれを流す、
受付のお姉さん。
お互い顔を見つめ合って、
固い握手を交わした。
僕は何を見ているんだろう……。
「……マルク、漫才終わった?」
「うん、終わるんじゃない? 知らないけど」
「マルク、さっきこの依頼受けたんだけど行くよね?」
僕はエミリとミッチーが受けていた依頼を見せてもらった。
" 畑を荒らす奴の正体と
できれば討伐
報酬 金500000
依頼主 トマトちゃん ”
「報酬凄いね」
「そうなんだよ」
お金も欲しいしな。
「いいよ、行こう」
「ミッチー!依頼に行こう」
エミリがミッチーに声をかけ。
受付のお姉さんと元受付嬢の、
良く分からない固い絆が生まれていた。
—— 畑 ——
ここが依頼の畑だね。
周りを見渡すと、結構荒らされている。
「凄いね……」
「この荒らし方は……ケムシですね」
ミッチーは知っているみたいだ。
さすが元受付嬢。
「今は日が高いから日陰に集まっているはずですよ」
「エミリ、どこに居そうか気配とかわかる?」
「わかるけど……畑にいっぱいだよ?」
「依頼内容に作物は傷をつけるなとかなかったよね?」
「マルク……まさか」
ミッチーがまさかみたいな顔をした——。
「エミリ!あの技でやっちゃえ!」
「そうだね!手っ取り早いね!」
僕は早々と畑を出た。
「ミッチーも出た方が良いよー」
ミッチーも慌てて出た。
「いくよー!」
≪ 極桜連斬 ≫
激しい連撃の嵐。
作物の裏に潜んでいたケムシたちが、
あっという間に倒されていく。
「エミリ、また威力上がっているな」
「エミリは何時特訓をしていたんですか?」
「ほとんど一緒に居たのに……」
ミッチーが不思議そうにエミリを見ていた。
斬撃の嵐が収まっていく。
「ふー……範囲広がったよ!やったね!」
「エミリ、他は大丈夫そう?」
「うん、大丈夫そうだね」
「なら、依頼達成ですね。ギルドへ戻りましょう」
ギルドに戻った僕たちは受付で依頼達成報告を行った。
なにやら掲示板の方に人だかりが出来ていた。
「マルク、何かあったのかな?」
「うん、気になるね」
「行ってみよう」
僕はエミリの後に着いていき、
掲示板を見た。
“ 剣術大会開催のお知らせ
今から一か月後に王都で
剣術大会を執り行います。
ふるってご参加ください。
賞金金額 優勝者には
金10,000,000—
剣術大会実行委員会 ”
「こ!これは!」
思わず声を出していた。
「マルク、どうしたの?」
「剣の代金払える額だ!」
「あー……あの剣のね」
「エミリもでる?」
「私はまだ修行の身、師匠の教えもあるから駄目だよ」
「僕は?」
「出れば? 応援はしてあげるよ」
なんとも冷たいですね。
「マルクも出場するのですか?」
ミッチーが聞いてきた。
「剣の代金と同じ金額なので、是非出場しようかと」
「そうでしたか」
「ミッチーは出ないの?」
「私ですか? もちろんカレンちゃんと一緒に観戦ですよ」
カレンが驚いている。
「お、なんだ? お前も出場するのか?」
「サイクロプスをやったんだ! 俺はこいつに賭けるぜ!」
「俺もだ! お前で一攫千金だぜ! わははは!」
「そりゃあいい! 俺もお前に賭けるぜ!」
「負けたら俺らの負け分お前もちな! わははは!」
そ!それはないだろ!
そんなこんなで出場を決めた僕はギルドを出ようとした。
「おや? マルクさんじゃないか」
「オクタムさん、どうしたんですか?ギルド用でも?」
「そうじゃ、護衛を頼もうと思ってな」
「護衛ですか、見つかるといいですね」
「ああ、王都までの護衛だからな」
「受けます!」
「は?」
「受けますその依頼!」
「いいのか?」
「問題ありません! 全くないです! さあ! 受付に行きましょう!」
「いつになく強引だな」
「目的があるって素晴らしい!」
有頂天になっている僕だった。
「どうでもいいですが、速く依頼の手続きしてくださいね」
受付のお姉さんに注意された。
「じゃぁ、次は王都だね!私も楽しみだよ!」
僕もエミリも王都は初めてだ。
「そうですね、私も楽しみです! カレンちゃんとのラブラブデートが待っています!」
ミッチーは変な妄想をしている。
カレンは恐ろしくなったみたいで、エミリの後頭部にしがみ付いていた。
「マルクさんよ書類にサインを頼めるか?」
オクタムさんが受付で僕のサインを求めて来た。
いいよ! サインでもなんでも! いっぱい書いてあげるよ!
あぁ! 夢の一攫千金! 掴むぜ夢を!
「では、今から向かうがいいのか?」
「もちろんです!」
「わかった、では急ぐとしようか」
僕たちはオクタムさんに着いていき、ギルドを出ていった。
「儂の方はいつでもいいぞ」
「私も!いつでも出れるように準備終わってるよ」
「カレンちゃんがいれば問題ありません」
それだけじゃ問題だらけだよ!
ミッチー!
「僕も問題ありません」
「よし、みんな乗ってくれ」
馬車が動き出し、
王都へ向けて出発するのであった。
僕は賞金のことだけしか考えていなかった——
この後とんでもない事に巻き込まれるとも知らずに。
—— ギルド受付 ——
「あぁ~、行っちゃたな~」
受付でぼやいていた受付のお姉さん。
後ろかギルドマスターが現れた。
「なにぼやいてんだ?」
「ギルマス! なんでもありません」
「それより、マルクたちが来たら俺の所に来てもらってくれ」
ギルマスが伝えることを伝えて、部屋に戻ろうとしたが、
「マルクさんたちはたった今、護衛依頼を受けて王都に向かいましたよ?」
それを聞いたギルドマスターが大声を上げた。
「なんだって!? なんでタイミングが悪いんだよ……」
ただならぬ気配に受付のお姉さんはギルドマスターに聞いてみた。
「な、なにかあったんですか?」
「あいつらに、たった今アルナートギルドに来いと命令書が出された」
「ギルドなら問題ないのでは?」
「命令書に王家の紋章が刻まれていたんだよ」
「王家の命令書だ、無視できないぞ」
受付のお姉さんも驚いていた。
「早馬を出して追わせるか」
「追いつけますかね?」
「追いつくだろ」
「依頼主はオクタムさんですよ?」
「……は?」
ギルドマスターの顔色が変わった。
よりにもよってスピード狂のオクタムとは……。
「本当か?」
「本当です」
「ダメじゃん……」
「あいつら無事だといいがな……」
空は晴天——
心の中はどんよりなギルドマスターであった。




