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34話 しかくがけずれてまるくなる!

 僕とカレンは家に戻って来た。


「おつかれ、カレン」


 カレンはテーブルの上に降り立ち、装備を外し始めた。


「今、お湯を沸かすからね。カレン凄く汚れちゃったもんね」


 僕は桶から水をすくって火にくべた。


「お待たせ」


 お湯をカレンの近くに置き、タオルでカレンの体を洗ってあげた。

 

「うん、綺麗になったよ」


 あとで、装備品も洗っておくよ。


 僕は、カレン用の着替え鞄を渡してあげた。


 カレンはパジャマではなく、普段着ている可愛い服に着替えだした。


「パジャマじゃないんだ」


 カレンは頷いた。


 着替え終わるとカレンは家の探索にでも向かうかのように、部屋から出ていった。


 僕も寝るかな。


 部屋に戻ってベッドへ横になったらすぐに眠りに落ちた。


 

 ギシッ……


 ギシシッ……

 

 どれくらいの時間がたったのだろうか、何かの気配を感じて僕は目を覚ました。


 ネズミでもいるのかな?


 僕は寝ぼけ眼で天井を眺めていた。


(この位置なら、奴に毒矢を吹き付けられるな)

(まさか天井裏に私のような奴がいるとは思うまい)


 私は勝利を確信した。


 邪魔する奴はいない。


 天井に、あらかじめ開けといた穴に筒を通そうとした時、


 気配を感じた。


(何者だ!)


 辺りを見回しても何も見えない。


 だが、気配は感じる。


 筒を静かに置き、ナイフを手にする。


(どこだ……)


 そして……そいつは離れた場所にいた。


(どこかで見たことあるような……)

 

 そいつは顔を上げて、


 ゆっくりと目を開いた——。


 私は一瞬で恐怖に支配されてしまった。


(あ……あいつだ! あの化け物だ!)


 震える体をなんとか落ち着かせてナイフを構える。


 一筋の汗が頬を伝い、落ちた。


 ズバンッ!


 凄まじい音がしたと思ったら、下から何かが頬を掠めた。


 今度は汗ではなく、血が頬を伝った……。


(な! 何が起きた!)


 焦る私。


 前には化け物。


 下からは意味不明な攻撃。


(くっ!)


『なんか上にいるな……ねずみかな?』


 下から声が聞こえた。


 ズバンッ!


 再び訳の分からない攻撃が、足を掠めた。


(ひいいいいい……)


(なんだ今のは! 魔力を感じない……なんの攻撃だ!?)


(矢か!? だが矢なんてどこにも刺さっていないぞ!?)

 

『次こそ当ててやるぞー』


 呑気な声とは裏腹に、えぐい攻撃が再び襲いかかる。


 前からも化け物がゆっくりと歩いてくる。


 奴の口が開いて、


 なんか光が集まってきた。


 バシュッ!


(危ない!)


 間一髪でかわしたが、下からも攻撃が襲ってくる。


「にゃああ!」


『ん? 猫がいるのか?』


(思わず声が出てしまった)


『また近所の野良猫が入り込んだのか』

『とっちめてやる!』

『連射いくぞー』


(な、なにを言っている! 私は猫じゃにいぞ!)


 ズバンッ! ズバンッ! ズバンッ!

 

 更に焦る私に、容赦なく襲いかかる攻撃。


 下からは休む間もなく襲ってくる攻撃に、もはや成す術は無かった。


 私は天井の壁を蹴破り、飛び降りた!


「にゃあああああああああ!」


 ドサッ!


 背中から落ち、痛む背中を気にする余裕もなく退散する。


「大きい猫だな! 威嚇しとけばこなくなるかな?」

 

 家からとんでもない攻撃が続いて、私を襲ってくる。


 もう、ダメだ!


 この依頼は失敗だ!


 関わるんじゃなかった!


 私はがむしゃらに逃げた——。

 

 いつの間にか、私は村の中心へと向かっていた……。

 


 

 暗闇の中にいるような感覚——。


 なんでしょう。


 体の奥から溢れてくるような物が……。


 私は、気づいたらエミリの家から出ていた。


 意識はあります……が、体が勝手に動いているような感覚です。


 あぁ、カレンちゃんに会いたい……。


 遠くから何か音が聞こえます。


 私はふらふらしながら音のする方へと歩いてきます。


 近くまで来ました。


 目の前を必死に逃げる女性がいました。


 あとから、小さい人形が追いかけていきます。


(カレンちゃん?)


 私はカレンちゃんを追いかけます。


 時折、人とすれ違いますが、みなさん異様に怖がっています。


 どうしたのでしょうか。


 村から少し離れた場所に出ました。


 なんとなく、ここに気配を感じます。


「カレンちゃん? いるんですか? かれんちゃん?」


 私は暗闇の中、カレンちゃんの名前を呼び続けました——。


 ——暗闇に潜みながら私は怪異から身を潜めている。


 なんなんだ!あの化け物は!


 呼吸も落ち着いてきたころだ……そいつは現れた。


 低く、おぞましい声で何かを言っている。


「がべんじゃん……ぢるんでじゅが……がべんじゃん」


 薄暗くて分からないが、多分女性だろう……


 私は落ち着いてきたので、ナイフを構えた。


 草むらから、かさかさという音が聞こえる。


 目の前には女性らしい人影……。


 息を潜めて様子をうかがっていると、


 女性の姿が、いつの間にか消えていた。


 私の心臓が、一瞬跳ね上がった……。


 背後から気配がした……。


 私はゆっくり振り返ってみると……、


 髪が乱れ、目玉を大きく剥き出しにしている化け物が、背後に立っていて、


 私を見つめていた……。


「ひぃぃ!」


 思わず悲鳴を上げてしまった。


 私はなるべく音を立てないように……逃げ出した。


 人形の化け物……不気味な女の怪異……


 気が狂いそうだった。


 心の底から助けを求めた……。


 何かに対して謝っていた自分がいた。


 やがて、私は疲弊してどこに逃げているのか分からなくなっていた。


 ——一体どのくらいの時間が過ぎたのだろうか……、


 辺りは明るくなり始めて来た。


 私は遂に倒れこんでしまった。


 喉がカラカラだ……


 水が欲しい……


 誰か助けてください……


 意識が途切れそうになった時、私に声をかけてくれた人がいた。


「大丈夫ですか?」


「私の声が聞こえますか?」


 私はもうろうとした意識の中、声の主に向かって頷いていた。


 声の主は何処かへ行ってしまった。


 見捨てられたのだろう……


 今までの行いを清算する時が来たのだと思った。


「これを……飲めますか?」


 声の主から、何か口の中に流し込まれた。


 水だ!


 水が飲める!


 私は声の主の手を掴みながら、コップの水を勢いよく飲み干した。


 そして、涙した。


「もう少しおやすみなさい」


 私は首を振った。


「そうですか……」

「あなた、お名前は?」


 声の主は何か言っていた。


 私は優しい、柔らかな水に感動していた……


 言葉にしていた。


「……なんすい」


「……はい? あ、ナンシーさんですか」


 声の主は何かを言っていたが、


 そのまま意識を失っていた——。

 

 翌日から、


 教会に、新しい見習いシスターが働きだしたことが村中に知れ渡った。




 とある病室に、一通の手紙が届いた。

 

 ——拝啓 依頼主様


 任務は完遂できませんでした。


 失敗です。


 でも、それで良かったのかもしれません。


 人を殺めていても救われないと、


 今回の依頼で、それが良くわかりました。


 依頼主様も、どうかそこの所を良く考えてみてはいかがでしょうか?


 依頼を失敗した私が言うのもあれですが。


 生きると言う事は、大変なのです。


 それでは、依頼主様のこれからの人生が


 素晴らしい物でありますように。


 元暗殺者から、頭のおかしい依頼主様へ。


 追伸


 先払いしてもらったお金は、全額教会へ寄付させていただきました。


 もう会うことはないでしょう。


 さようなら。

 

 ・

 ・

 ・


 読み終えた男は、手紙を握りつぶした。


「ふざけるな! 大金払って雇ったのに、失敗だと!」


「この私の想いと気持ちをどうしてくれるのだ!」


「あぁ! エミリさん! こうしている間にもあの男があなたを狙っているかもしれない!」


「早くあなたを解放してあげたい!」


「それが出来るのは僕だけなんだ!」


「今に見ていろ! マルク!」


「必ずエミリさんを貴様の手から救い出して見せる!」


 額にたんこぶのあるココイルが打倒マルクを高らかに宣言した。

 

 病室から変な笑い声が響き、近隣住民の批判を浴びるのであった。


「院長……また、あの患者です」


「近所迷惑だし、辺境の施設に入れるか」


「すぐに手配致します」

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