28話 それ、ドラゴンです!
ミズナさんがエミリの指導の下、
闘気の練習を始めた。
「私と同じように呼吸して」
エミリが大きく深呼吸してから、呼吸をゆっくりと静かに整えていった。
「こ、こうですね」
ミズナさんも同じように呼吸を整えていく。
もちろん僕も強制参加だ。
続いてイメージトレーニングを行う。
なんでも、自分の中にある物を引き出すためだとか。
「私はこの修行で、自分の闘気を見つけたんだよ」
「確か強い自分を考えてたの」
エミリは自分の体験したことをミズナさんに伝えた。
「強い自分……」
「私が強くなる……守る……カレンちゃん……うへ」
目を閉じながら変な事考えてないですか?
「守る……強く……守る……」
なんかミズナさんから、ぞわっとした変な感じの気配が漂ってきた。
「エミリ、エミリ。なんかミズナさんから変なもの感じるんですが……」
「うん、ぞわっと感じるね」
エミリはミズナさんをじっと見ている。
「私と違うのを感じるよ……なんだろう」
「はぁー……ふー……なんでしょうか、凄く疲れました」
ミズナさんが息を吐き出してから、目を開けた。
「お疲れ様、ミズナさん」
エミリが水袋を渡す。
「どうでしたか?」
「初めてにしては良いと思うよ」
「マルクは出来ないんだよ」
エミリは僕を指さして言う。
「できる物なの?」
「ミズナさんはもう少し鍛錬すると出来そう! 筋が良いんだよ!」
エミリは嬉しそうにミズナさんを褒めた。
「そ、そうですか……自分ではよくわからないですから」
「でも、そうですね。続けてみます」
がんばれミズナさん。
「次はマルクの番だよ」
「へ?」
「へ? じゃない! 前と同じ」
そう言ってエミリは円を描きだした。
「この円の中に入って、私の攻撃をかわしてね」
「でも、今剣無いよ?」
エミリはアイテム袋から剣を取り出した。
「はい、これ使って」
「いいの? これエミリの剣じゃん」
「いいよ。今はマルクがくれたカタナがあるから」
やっぱやるのか……
諦めて円の中に入る。
「ミズナさんは、闘気の練習しててもいいよ」
「私もマルクさんの訓練気になりますから見学させてもらいます」
「わかった」
「じゃ、マルクいくよ!」
エミリの地獄の特訓が始まった。
「どんどん速度上げていくよ」
「いや……まって、速すぎる!」
キンキンキン!
なんとか攻撃を必死に受け止める。
「この二人はいつもこんなことしてるんですか?」
「まだまだ! 今度は斬撃も入れていくよ!」
キンキンザシュ!
「ひ……ひいい! あぶない!」
「マルクさん、よく避けられますね」
「よ……よくじゃないです! ひ、必死ですよ!」
「さらに速度上げるよー」
「私にはもう、エミリさんの動きがブレて見えるんですが」
「僕はお尻を叩かれてますよ! いたっ!」
こうして僕の修行は半日続いた。
「終わりー」
「……痛かった」
「エミリさんは身体強化してたんですよね?」
「してたよ」
肩で息をしながら答えたエミリ。
「マルクさんは使ってたんですか?」
「僕使えないですよ」
「この前で分かっていたはずなのに、マルクさんって本当に息が上がらないんですね」
本当に不思議そうに見ないで。
「そうなのかな? 他と比べたことないからわからないや」
「マルクってさ、体力ついた?」
「どうだろう、わからないよ」
「前、この特訓したら倒れてたよね」
「そんなことあったね」
特訓後の他愛もない会話をしながら村に戻る。
「カレンはどこかで遊んでるのかな?」
「そう言えば見てないね」
「それはいけません! 探さねば!」
「ミズナさん大丈夫だよ、きっとその辺で遊んでるんだよ」
エミリが、暴走しそうなミズナさんを止めた。
「一旦、ゲンさんの所に行ってみようか」
僕たちはゲンさんの所へ向かうのだった。
—— 鍛冶屋 ——
コン コンコン キン
ハンマーを台の上に置き、仕上がりを確認する。
「よし、こんなもんじゃろ」
「新たに施したこいつがうまくいけば良いがの」
そんなゲンさんの作業をテーブルの上に登って来たカレンが、興味深そうに見ていた。
「ん? なんじゃおまえか。ちっこいの」
ゲンさんがカレンに視線を向けると、
カレンは手を振って答えた。
「そうだ、お前さんにも作ってやると言ったんだな」
「どれ、そこに立ってろ」
「寸法取るからの」
ゲンさんは剣をテーブルの上に置き、カレンの寸法を測ろうとしたら、
カレンが自分で服を脱ごうとしだした。
「おいおい、脱がんでええぞ」
カレンが首を傾げて動きを止めた。
バンッ!
勢いよく扉が開かれた。
「ゲンさんただい……まああああああ!!」
「ゲンさんがカレン脱がしてるううう!!」
「ここにも変態がいたあああ!!」
「んな!」
慌てるゲンさん。
「なんですって! カレンちゃんの危機ですか!?」
ミズナさんまで加わってしまった。
「おおお! 落ち着け二人とも! 儂はそんな事しとらん!」
「成敗しますか? 成敗しますか? 成敗しますか?」
「ちょ! ミズナさんが壊れた! ゲンさん逃げて!」
「なんじゃ? マル坊、なぜ逃げないと……」
ゲンさんの近くにミズナさんのレイピアが通過する。
「うひゃ! なにすんじゃ!」
「ストップ! ミズナさん! ストップ!」
僕はテーブルの上のカレンを見た。
服がはだけそうな、きわどい恰好だった。
「カレンも服着て! 服!」
僕の声が届いたのか、カレンが服を正した。
「あぁ、カレンちゃん! 無事でしたか!」
「お、おいマル坊、なんじゃこの物騒な嬢ちゃんは……」
「朝も言ったけど、僕たちにパーティに入ったミズナさんです」
「それは聞いたわい」
「元Aランク冒険者ですよ」
「ほんとか? 物騒じゃな」
「カレンの事となると、こうなるのが最近よくわかりました」
感情が収まって来たのか、ミズナさんは謝罪してきた。
「大変申し訳ありませんでした。少々取り乱しましたね」
「あれが少々か……お前たちにお似合いじゃの」
「ちっこいの、また後で寸法はかってやるわい」
「寸法?」
「こいつの装備作ってやるって、朝言ったろ」
「あぁ、それで」
「エミリの嬢ちゃんも剣を出せ、見てやる」
「後これも見てもらえる?」
そう言ってエミリはカタナをゲンさんに渡した。
「お前、これカタナじゃねーか! どうしたこんなもん」
「マルクから貰ったの」
「マル坊……ついにやっちまったのか?」
「なにを!?」
ゲンさんはカタナをまじまじと眺めた。
「おい、そっちの物騒なねーちゃんも武器だしな」
「迷惑かけたのにそこまでしてもらうわけには」
「ごちゃごちゃうるさいの、いいから出しな」
ミズナさんは申し訳なさそうにレイピアを渡した。
受け取ったゲンさんは、レイピアを眺めて、
「ほう……手入れはなってるようだな。わるくない」
「よし、お前ら明日またこい。それまでにメンテしておいてやる」
「あ、お代は」
ミズナさんがお伺いを立てた。
「いらんいらん」
「お代なら3年前に貰い過ぎているからな」
「また3年前ですか……一体3年前にこの村で何が起きたんですか?」
「私はドラゴンの素材を売って名前が変わったことくらいしか」
「なんじゃお前ら、話してないのか?」
「3年前にこいつらが言うトビトカゲの材料が結構あるんじゃよ」
「持ち込んだのがこの二人というわけじゃ」
「トビトカゲですか?……聞いたことないですね」
「ミズナさん、トビトカゲは大きかったんだよ! 赤くて、口から火も出したんだよ! ね、マルク」
「あれは驚いたね。口からぶわっと火を噴くんだもんね」
ミズナさんは額に手を当てて……またかという感じになっていた。
「ちなみに聞いておきたいんですが、そのトビトカゲはどうなりました?」
「私とマルクでやっつけたよ」
「僕は怯えていただけじゃん」
「マルクのしびれ薬塗った矢が効いたからだよ」
「でも、とどめはエミリだったよね」
「とどめはどのように?」
「あの時持ってたのは木の枝だったよね」
「そうそう! エミリ、道に落ちていた手ごろな枝に聖剣だ! といって振り回してたよね」
「そうそう聖剣、木剣カリバー!」
「トビトカゲ全部運べないから手だけ、ゲンさんの所に持って来たんだよ」
ミズナさんがゲンさんへ視線を移した。
ゲンさんはただ頷いただけだった。
(エミリさんとマルクさんが言うトビトカゲ……間違いなくドラゴンですね)
「ん? 待ってください? 3年前ということは、二人とも13才じゃないですか!」
「そうですね」
「そうだよ」
(これは……国に知られたら二人が大変なことになりますね……)
「二人とも、この話はもうしない方が良いですよ」
「元ギルド職員として忠告しておきます」
「ミズナさんがそういうなら……」
「うん……わかった」
「はぁ? 元ギルド職員だ? この嬢ちゃんが? こりゃ驚いたわい」
目を見開いて驚いているゲンさんだった。




