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27話 しかくはまるくない

「村の入り口から中心へ向かうところは……随分と賑やかですね」


 ミズナさんは周りを見渡しながら珍しそうに見ている。


「三年前までは何もなかったのにね……」

 

 エミリも昔を懐かしむように語った。


「三年前と言えば、この村の名前が変わった頃ですよね?」

 

 ミズナさんが僕に聞いてきた。


 思い出せない僕は、


「エミリ、何でだっけ?」


「確か、ドラゴンが町の近くで倒されていたんだけど、倒した人が見つからないとかで」


 エミリは考え込みながら、右手の人差し指を口に当てた。


「勿体ないからって、村で売り払った時からだったよね」


「あぁ、なんか思い出してきたよ」

「その頃から色々なお店とかギルドが出来たんだよね」


 僕も記憶が鮮明になってきた。

 

「うん、村長がドラボテとかいう変な名前にしちゃったんだよ」


「何ですかそのいい加減な名前の付け方は……」


 ミズナさんは呆れたようにため息をついた。


 僕は変わっ村を、もう一度見渡した。


 冒険者ギルド、


 いろいろな人が行き交う商店、


 物静かな教会、


 お年寄りが出入りする診療所。

 

 診療所の一室——。

 

 いつまでもここで寝ているわけにもいかない。


 そう思いながら窓の外を見ると、依頼対象人物が目に入った。


 「……仕事だ」


 さっきまでの腑抜けた自分を切り離し、仕事に集中するのだ。


 荷物をまとめて、


 周りに人がいないことを確認する……


 ——窓から静かに飛び出した。


 対象人物を確認……。


 いつものようにエミリとかいう娘も一緒だ。


 あいつは要注意だ。


 私はダンジョンでの出来事を思い出す。


 分厚い扉をいとも簡単に切り崩し、


 ゴーレム三体を瞬殺。


 あいつは——何者なんだ?


 そして、もう一人——。


 なぜ、アルナートの受付嬢がここに居る!


 事前調査では、あいつは見送りだけのはずだった。


 ——なのに、なぜここにいる……


 あの時、あいつは私の顔を見ている……


「……迂闊に近づけないな」


 今日の所は尾行だけにしておこう。


 私のモットーは仕事は完遂だ。


 対象からあまり離れずに、食料と……


 水袋を1つ、2つ……4つ……いや、5つ用意するのだった。


「ね……念には念をだな……うん」


 私はプロなのだから!


 (水……足りるよね)


 (あいつら、こっちへ来るのか……)


 私は急いで建物の間に身を隠す。

 

 水袋を大切に持ちながら。


 お……同じ過ちは繰り返さない主義だからな! これは大事なものだ!


「そういえばマルクさんはなぜ、吹き矢をメインに戦わないんですか?」


「ミズナさん! 違うよそれは! マルクは剣で戦うんだよ! 私が決めたんだもん!」


 そう、エミリが勝手に決めていくんです。


 吹き矢で遊んでいる時も。


 吹き矢を勉強してる時も。


 なんか知らないけど、エミリは剣に拘るんだよ。


「エミリは何で剣に拘るの?」


 僕も聞いてみた。


「決まってるじゃない! マルクには素質があるのよ!」


 ……いらないよ。


「なるほど、エミリさんはマルクさんの中に凄い素質を見出したと、そういう事ですね?」


「そうなんだよ、あの吹き矢の威力を剣に使えばきっと」


 愛しの吹き矢は手放しませんぞ!


 ミズナさん、なんでか知らないけど妙に頷いている。


「納得です。決闘もSランクを倒す実力もあったわけですよね」

 

「確かにマルクさんの剣術は、まだ完成されていなかった」

「しかも、Sランクのココイル、彼の攻撃を受け止め切っていたのですから」


 ミズナさんは僕を見ながら、


 「素質はあるのかもしれませんね」


 ……無いです、そんなもの。


 だって、あの人の攻撃、


 エミリより遅かったんだもん。


「それより、ミズナさんは他に行きたいところとか無いの?」

「こんな村じゃいける所なんてそんなにないけど」


 僕たちの話ばかりじゃ退屈でしょう?


「なら、エミリさんの特訓を受けてみたいです」


「……え?」


 まじですか?


「いいよ。なら、村の外へ行こうか」


「エミリさんの言う闘気というものを是非、習得してみたいです」


「あぁ、あれですか……僕には無理でした」


(奴らは村の外へ行くのか)


 建物の間から身を出して、後をつけていく。


 その様子を屋根の上から見ているカレンが居た。

 

「ままー、おにんぎょうさん」

 少女が屋根の上に向かって指さした。


「お人形さん?」

 母親も少女の指さした屋根の上を見るがなにも居なかった。


「いないわね」


「うん……いなくなっちゃった」


「おなかすいたからお家に帰ったんでしょ」


「おなかすいたー」


「帰ったらたーくさん食べましょうね」


「うん!」

 


 村外れの草原にやって来た僕たち。


 周りは少し開けているので、エミリの特訓によく使われていた場所だ。


「では、ミズナさんの特訓始めたいと思います」


「よろしくお願いします、先生」


「マルク! 聞いた? 先生だよ! 私、先生だよ!」


「うん、聞いたよ。頑張ってね、先生」


「ぶー……言い方!」


「先生! ミズナさんが待っていますよ!」


「そうだ、マルクなんかに構ってられないよ」


 エミリがミズナさんの所で何やら説明をしている。


 僕は邪魔にならないように少し離れた所の木で、吹き矢の練習だ!


 吹き矢道に、休息は無いのである!


 楽しみだな~。


 とりあえず二発!


 バキッ! バキッ!


 メキメキメキ……


 ズドーン……!


 木が倒れて砂煙をまき散らした。


「マルク、うるさーい」

「エミリさん! そこですか!? 今吹き矢二発で木を倒してましたよ!?」

 

(なんだ? 何が起きたんだ? いきなり木が倒れたぞ!? 遠くて分からない!)

(危険だが、もう少し近くから確認しないと……)

 

「そうだ! ミズナさんにはこの技を見せておきますね」


「どんな技ですか?」


「新しく会得した技なんだよ! 師匠の7冊目の技!」


「あ、はい……師匠のですか」


「危ないから近寄らないでね」


「ミズナさーん、もっと離れた方が良いよー」

 

 僕も一言忠告しておいた。


「わ、わかりました」


 ミズナさんも言われた通りに距離を取ってエミリを見た。


(もう少し近寄れば……)

 腹ばいになりながら近づいていく。


「いきます!」

 

 ≪ 極桜連斬 ≫


 剣を振るう衝撃。


 エミリの周りに、桃色の花びらの結界が発生した。


 エミリの足元の草や石が、勢いよく刈り取られていく。


 「ミズナさん、見てて」


 僕はミズナさんの隣で、


 さっき拾った木の棒をエミリに向かって投げた。


 バシッバシッバシッ……


 激しい音を立てながら木の棒が削れていった。


(ここまでくれば奴らの反対側だ、大丈夫だろう)

 

 そう思っていたのだが、突然目の前の草が刈り取られていく。

(なっ! あぶな!)

 

 急いで後ろに引き返した。


 (なんだ? 何が起きた?)

 

 また距離を取って、遠見の筒で確認するが——、

 

 分からなかった。


(ここで仕掛ける理由がない……機は巡てくるさ)


(……ここは退くか、勝つために)


(必ずやり遂げてやる、見ていろ)


 近くの木の上で、カレンがじっと見ていた。

 


「マルクさん! エミリさんのこれ、何なんですか!?」


「なんでも闘気の斬撃を自分の周りに発生させるとかなんとかでした」


「ごめんなさい、理解が追いつけません」


「僕の吹き矢の方が安全だよね」


「ごめんなさい、あなたの吹き矢も理解できません」


「なんで!?」


 吹き矢が理解できないなんて……僕には理解できない!


 僕が落ち込んでいると、


「ミズナさん、これが私の新しい技なんだよ」


「理解は出来なかったけど、凄い技だというのは分かりました」


「闘気を会得できればすぐだよ、ミズナさん素質あるみたいだし」


「わかりますか?」


「うん、何となくなんだけど…………見えるの」

「こう……もやっとしたのが」


「もし、エミリさんが言うようにそれが闘気というものなら、凄いですよ」


「そうなの? ランク高い人も斬撃放てるじゃん」

「私なんてまだまだだよ」


「あの、私も元Aランクなんですが……」


「ミズナさんはこれからだよ! 頑張ろう!」


「そうで……そうですよね! がんばりますとも!」


 力を高め合う存在、いいですよね……


 エミリは人外だと思うけど。


「ふんっ!」


「ごはっ!」

 エミリの肘が僕のおなかに……。


 理不尽だ……。


「ふんっ!」


 エミリは腕を組みながらそっぽ向いた。

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