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26話 カレン

 朝! さわやかな朝! こんな清々しい朝にはやっぱり吹き矢だよね!


 僕はベッドから飛び起きて、窓を見たら開いていた。


 枕のところで寝ていたはずのカレンは、どこにもいない。


「散歩かな?」

「ま、そのうち帰って来るでしょ」


 僕は庭に出て、家に居る頃は欠かさずやっていた日課をやり始めるのだった。


 いい感じの石や木片、布切れなど色々なものを的にするのだ!


「ふっふっふっ……この時を待っていた!」


 いくぞー!


 第一射!


 バキン!


 石粉砕


 第二射!


 ブワサッ!


 布切れ粉砕!


「ん~……! 気持ちいい!」


 僕は朝から天に向かって叫んでいた。


「マルクー! おはよー!」


「おはようございます」


「あ、エミリとミズナさん。おはよう!」


「マルクさんは朝からご機嫌なんですね」


「ミズナさん、マルクは吹き矢できるからご機嫌なんだよ?」


「そうなんですか?」


「そうなんです」


 僕は挨拶をしたらすぐさま第三射目に入った。


 バコッ!


 岩に穴が空いた!


 それを見ていたミズナさんが目を丸くしていた。


「エ、エミリさん? なんでいきなり岩に穴が空くんですか?」


「マルクの吹き矢だよ?」


「いや、いやいや! 確かに異常だとは聞いていましたが……これ、人の出せる威力じゃありませんよ!」


 なんか二人して失礼だな。こんなの普通だよ。


 今はそれどころじゃない! 吹き矢をやらなければ!


「フフフ……次の獲物は君だ! 木片二号君!」


 僕は木片二号君を指して宣言した!


 スバン!


 木片二号粉砕!


「あはー! 気持ちいい! やっぱりこれだよね! これ!」


「私は昨日から、何を見せられているのでしょうか……」


 昨日? 何かあったのかな?


「マルク、今日ゲンさんとこ行くよ」


「あ、そうか忘れる所だったよ」


「もう!」


 エミリが脹れてしまった。


「二人とも、こんなに早く来てご飯食べたの?」

 

「おかあさんが作ってくれたの持ってきたよ。マルクの分もあるよ」


「ほんと! 助かったよ! 昨日の晩御飯で家にあった食材無くなっちゃったんだよ」


「また、マルクの両親出かけてるの?」


「そうみたい」


「あの二人何やってんの? マルクの親でしょ?」


「僕も知らないな? ほんとなにやってるんだ?」


 僕たちは家の中に行こうとしたら、


「まって、マルクさん!」


「はい?」


「それ、私にもやらせてください」


 ミズナさんが僕の持っている吹き矢を指さした。


「やる?」


 僕はにやりと笑みを浮かべた。


 ふふふ……吹き矢好きを増やすチャンス!


 僕は吹き矢を一旦洗ってから、ミズナさんに渡した。


「……元Aランクの私が、マルクさんに負けるはずが無い」


 なんか言ってますよ?


 勝負じゃないんだから楽しもうよ。


 ミズナさんは近くの岩に向かって撃った。


 フッ!


 カン……


 岩に弾かれ、

 

「あれ? おかしいですね……もう一度」


 フッ!


 カチン……


 また弾かれた。

 

「これ、壊れてませんか?」


「そんなことないですよ」


 僕は吹き矢を受け取って洗い流し、


 構えた。


 ズバン!


 岩に穴が空いた。

 

「問題ないですよ?」


「……昨日エミリさんが言っていたことが理解できたような」


「それよりお腹空いたね、ご飯にしようよ!」


 エミリは僕の家に入り込み、その後を僕とミズナさんが続いた。


「そ、そう言えばカレンちゃんはどこですか?」


 ミズナさんは家に入るなりあちこち見回してカレンを探していた。


「カレン? 僕が起きたときにはもう居なかったよ? 散歩じゃないかな」


「……そうですか」


 ミズナさんがもの凄く落ち込んじゃった。


「二人とも用意できたよ」


「ミズナさんご飯食べよう」


「……はい」


 僕たちは食事を始めるのだった。



 —— 診療所 ——


 私は目を覚ました。


 ——ここは?


 辺りを見回し、どこかの部屋ということはわかった。


 窓から日差しが差し込み始めたのだろう。


 ——何かの視線を感じ取り、上半身を起こし、注意深く部屋を見渡した。


 それは居た——。


 天井に近い小窓に座り込んでこちらを見ている人形が。


 緑髪の毛、可愛らしい服を着て、後ろで束ねたであろう髪の毛の先には淡い赤のリボンが結ばれていた。


「びっくりさせないでよ……」


 私はもう一度人形を見上げた。


 可愛らしい人形は、まるで私を見ているような姿勢で座っている。


 その人形の首が——、


 ……コテン。


 首を横に倒した。


「ひっ!」


 私は小さな悲鳴を上げ布団を頭からかぶった。


「夢……これは夢よ」


 震えながら布団をずらして人形の居た場所をもう一度確認した。


 そこには何も居なかった。


「ほらやっぱり、幻覚よ……疲れてたのよ」


 布団から顔を出し、横になりながらテーブルの方を見る——。


 それは、そこに立っていた。


 私はそいつから目を離せないでいると、


 人形の首が、ゆっくりと向きを左へむき出し、


 やがて後ろへ、


 そのまま右後ろから前に——、


 こちらを向いた——、


 ……その時に、


 口が——


 ミシミシと音を立てながら、裂けた。


 ……目が開き、


 赤黒い光をはなっていた——。


 人形の顔が、


 ゆっくりと、こちらを向いて——。


 ——目が、合った。

 

「ぎゃああああああああ!!!」


 私は恐ろしくなり、悲鳴を上げてしまった。


 暗殺者として、闇の中で生きる私が……だ。


 走る足音が近づいてくる。

 

 バンッ!


「今の悲鳴! どうしましたか!?」


 部屋に白い服を着た診療所の女性が駆け込んできた。


「あ……あそこ……あそこの人形が!」


 私は布団から手だけを出してテーブルを指さした。


「人形? 何もありませんよ?」


 女性は部屋を見渡して異常がない事を私に伝えてくれた。


「夜中に運び込まれたせいですかね、まだ疲れているんですよ」

 

「ほんと……本当にいませんか?」


「はい、大丈夫ですよ」


 私は布団から顔を出して見回した。


 そこには年配の女性が立っているだけだった。


 誰かが近くに居るだけで気分が楽になる。


 「ありがとうございます」


 私は女性にお礼の言葉を言った。


 「いいんですよ。今はゆっくりと休んでください」


 そう言い残し、女性は部屋を出ていった。


 部屋の外から男性との会話が微かに聞こえた。


(彼女、何か大変な目にあったのかしらね)


(そうだな、脱水症状まで起こして辛かっただろうな……それで幻覚でも見たんだろう。もう少し休ませてあげなさい)


(わかりました)


 二人の会話は遠ざかって行った。


 果たして本当に幻覚だったのだろうか……。


 私は再び眠りに落ちていった——。

 ・

 ・

 ・

 


 —— 鍛冶屋のゲンさんの店 ——


 店に入り、エミリが大声で挨拶をした。

「おじさーん! 帰って来たよー!」


 ゲンさんが奥から出て来て、

「おお! エミリの嬢ちゃんか、よー帰って来たな」

「なんだ、マル坊も一緒か……」

「ん?そっちの別嬪さんはどなたじゃな?」


 ミズナさんを見て目を丸くしていた。


「初めまして。マルクさんのパーティメンバになったミズナと申します」


 ミズナさんは姿勢を正し、丁寧なお辞儀をした。


「こ、こんな汚い所ですまんな。ささ、この椅子に座ってなさい」


 鼻の下が伸びてるぞ……ゲンさん。


 何故かハンマーが僕の方に飛んで来た!


「あぶな!」


 間一髪でかわした僕。


「……チッ」


「舌打ち!? ひどくない?」


「なに、冗談じゃよ」


「なんだ、冗談か。ははは」


「それよりお前のその剣。どうじゃ?」


「最初はびっくりしました。なんで、エミリとこんなもの作ったんですか?」


「ん? エミリの嬢ちゃんが頼み込んできたからじゃよ」


 なんでだ? と思いながらエミリを見たら説明をし始めた。


「だって、マルクってば、いつも吹き矢ばかりだったんだも」

「で、考えたんだよ私」

「吹き矢もできて剣の修行もできれば最高じゃない!」

「で、ゲンさんに相談して、出来たのがその剣なんだよ」


 そんなことで、作ったんだ。


 嬉しいけどね。


 ……ギィ……バタン


 後ろから音がした。


 振り返ると誰もいない。


 みんなも扉を見たけど、誰もいなかった。


 その時僕の肩に何かが飛び乗って来た。


「あ、カレン。おかえり」


 カレンが可愛く両手をフリフリしている。


 椅子に座っていたミズナさんの呼吸が荒くなり始めていた。


「なんじゃ? そのちっこいのは」


「この子、従魔のカレンです」


 カレンはゲンさんに向かってお辞儀をした。


「ほう、よくできた人形じゃな」


「違うよゲンさん。カレンはゴーレムなんだよ」

 エミリが訂正した。


「ほう、ゴーレムか……そうじゃ、余ってる素材があるからそいつでちっこいのに何か作ってやるかの」


「いいんですか?」


「なに、お代はお前が払え。マル坊」


「……は、はぁ」


「どれ、剣をよこせ。メンテナンスしてやる」


「はい」


 僕は剣をゲンさんに渡した。


「しばらく時間かかる。お前たちは村でも散歩してこい」


「そういや、夜中に誰かが診療所に担ぎかまれたらしいぞ」

「村の入り口で倒れたそうだとかって話だ」


「おめーらも気を付けろよ」


「さ、作業の邪魔だ行った行った」

 

 そう言ってゲンさんは俺たちを追い出しメンテナンス作業に入った。


 僕たちは村の中心へと向かう。


 ——カレンが後ろを振り向き。

 口が三日月形に裂け、

 目をうっすらと開けて赤黒い光を漏らしていた——

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