23話 二人を知るもの!
遂に帰ってきましたドラボテ村!
「お! オクタムさんかいらっしゃい!」
「今回も色々持ってきたぞ」
「そりゃ、楽しみだ……ん?あれ、お前」
「お久しぶりですおっちゃん」
ヘロヘロになりながらも荷台から這い出て挨拶をする。
「お前! マル坊か! 久しぶりだな!」
「うん、久しぶり。エミリも居るよ」
「おじさん久しぶり!」
「おお! よく帰って来たな! お前の父ちゃんずっと泣いてたぞ」
「えー」
「マル坊、気をつけろよ」
「なんで?」
遠くから誰かが勢いよく走ってくる音が聞こえてきた。
「来たぜマル坊」
「ええええみいいいいりいいい!!」
「あれ? おとうさんだ!」
「おとうさん! 帰ってきたよー」
馬車から降りて父親を出迎えるエミリ。
父親は、
「てめーが可愛いエミリをさらった奴かああ!!」
「え? なに?」
胸倉を掴まれ、
ドゴォッ!
僕は理解する間も無く、問答無用でエミリの父親にぶん殴られた——。
「マ、マルクさん!?」
ミズナは吹き飛んだマルクを見て、何が起きているのかさっぱりわからなかった。
「おとうさん! なんでマルク殴るかなー……」
膨れるエミリを見た父親がエミリに抱き着いて頬ずりをする。
「ちょ、ちょっとおとうさん!?」
さすがのエミリも父親には敵わないようだった。
「あの、エミリさん? マルクさんはいいのかな?」
ミズナさんはマルクを担いで来た。
「そんな人さらいほっとけばいい!!」
「マルクは人さらいじゃないよー」
脹れるエミリ。
カレンも、エミリの頭の上で脹れている。
「あらあら、エミリちゃんおかえりなさい」
ほわんとした女性が突然現れた。
「おかあさん!」
エミリは父親を弾き飛ばし母親に抱き着いた。
「エミリさんも親の前ではかわいい子供なんですね」
ミズナが優しい目をしながらつぶやいた。
「あら、こちらの女性は?」
母親がミズナを見て首を傾げた。
「今度私とマルクのパーティーに入ってくれた人だよ! 凄いんだよミズナさんは!」
母親がミズナに挨拶をしようとしたが、
ミズナが担いでいるマルクを見た。
「あら? マルちゃんじゃない。どうしたの?」
「おとうさんに殴られたんだよ」
「あらあら、またやったのねこの人」
そういって目を細めて父親を見るエミリの母親。
ミズナの背筋が凍った瞬間だった。
「あの、儂もう行ってもいいかの?」
「ああ、そうでした! 私たちもオクタムさんからサインを貰ってギルドに行かなくてはいけません!」
オクタムさんの一言である種の金縛りが解けたミズナは、オクタムさんからサインを貰いギルドへ行きますとエミリの母親と父親に告げて行くのだった。
「あ、待ってミズナさーん!」
慌ててミズナを追うエミリ。
マルク?
マルクはエミリが引きずっていきましたよ。
—— ドラボテ村ギルド ——
「依頼完了の書類をお持ちしました」
ミズナさんが依頼完了の報告をしていく。
「アルナートからの護衛依頼……ですか、また随分と早く着きましたね」
受付嬢が驚いていた。
「それではこちらが報酬になります」
「報酬!?」
その言葉を聞いたエミリは、ギルドの入り口辺りにマルクを置いてミズナの所へ走ってきた。
「あ、はいこちらになります」
「むふー、報酬だ!」
ニコニコ顔のエミリ。
僕はうっすらと意識が戻って来た。
「あ、あれれ? ここはどこだ? いたたた」
僕は頬の痛みと、体に伝わる痛みで目を覚ました。
どうやらここは何処かの床の上だ。
ドカッ
ドカッ
ゲシッ
なんか踏まれてるんですけど!
「おっと、なんだ兄ちゃん、こんな所で寝てるなんて、踏まれて気持ちいいのか?」
「い、いいわけ……ありません」
「だったら家かえって寝な」
「僕はなんでこんな所で寝てたんだ?」
ここはギルドの入り口だった。
僕は身を起こし、周りを見渡す。
ミズナさんとエミリが受付にいるのを見つけた。
僕は二人に近づいて口を開いた。
「エミリ、ミズナさん、僕はどうしてギルドの入り口で寝てたのかな……」
「はい? わかりませんが」
ミズナさんは知らないようだ。
エミリを見ると——目を逸らした。
「エミリ?」
なんかばつが悪そうに
「知らない……」
と言った。
ま、いいか……。
「あと、パーティ申請をお願いします」
ミズナさんが受付嬢に申請用紙をもらいます、記入していく。
「では、みなさんのギルドカードの提出をお願いいたします」
僕とエミリ、それとミズナさんがギルドカードを出す。
ギルドカードを見た受付譲が困った顔をしてミズナさんに語った。
「申し訳ないのですが、こちらの方はランクが高いのでお二人とはパーティは組めないのですが……」
申し訳無さそうに言う受付嬢に対してミズナさんは、台を叩いた。
バンッ!
「下げてください!」
鬼気迫る顔をして、受付嬢に迫る。
「このままだと、マルクさんとエミリさんと組めないじゃないですか! 私はもう決めているんです!」
「……はい?」
少しビクついた受付嬢。
「だ・か・ら! 下げなさい! ランクを!」
「え?……下げる?……ランクを、ですか?」
「そう言ってます! さあ! 今すぐ下げなさい!」
ミズナさんが更に受付嬢に迫る。
あれ? ミズナさん、この人——元受付嬢でしたよね? そんなことしていいの? 特権とかあるの?
「なんだ騒がしいな」
奥から知っている人が出てきた。
「あ、マスター!」
受付嬢がホッとしたようにマスターといわれた人を見る。
「こちらの方かランクを下げろと言ってきまして……」
「なんだそりゃ? 普通は上げろと騒ぐ奴ばかりだろうに」
そう言ってマスターは、ミズナさんの顔を眺めた。
「ん? こいつ……いや、この方はアルナートギルドのミズナさんか?」
え? なに? この方? ミズナさんってやっぱりえらい人なの?
僕とエミリは顔を見合わせてからミズナさんへと視線を戻した。
「えと、マスター? こちらの方をご存知なのですか?」
「あぁ、こいつは若くしてAランクまで上り詰めた奴でな、Sランクに最速でなるんじゃないかと噂させれていたんだがな」
「凄いですね!」
「二年前に突然冒険者を辞めてな、アルナートの街でギルドの受付嬢をやり出してたんだよ」
「しかもな、アルナートギルドマスターの懐刀とまで言われるようになったんだ。わかるか? たった二年でそこまでのし上がってきた奴なんだよ。……それがなんで」
ギルドマスターはミズナさんを見てから僕とエミリをみた。
「うおっ! マルクとエミリじゃねーか!」
「お知り合いなんですか?」
受付嬢はギルドマスターと僕たちを交互にみながら首を傾げた。
「お前は去年からここ来たから知らないか」
「こいつら、ヤバいぞ」
「そう……何ですか?」
「ああ! 俺がこいつらの試験官したからな」
ギルドマスターは当時を思い出したのか、笑っていた。
僕は、当時を思い出した。
――二年前――
僕とエミリが十四歳になった。
「マルクー! 早くいこうよ!」
「え?どこに? 僕まだ眠いんだけど……」
「前に約束したじゃーん」
「約束?」
「そう! 冒険者になる約束!」
僕は必死に思い出そうとするが、思い出せない。
「……本当にした?」
「した! もういい!」
エミリは怒って僕の襟首を掴み、引きずりながらギルドへと向かった。
「ぼうけんしゃになりたいです!」
受付でエミリが冒険者になりたいと言ったら、
「なんだ、ここは遊び馬場じゃないぞ?」
「ぼうけんしゃになりたいです!」
さすがのエミリも泣き出しそうになり、周りにいた職員が、受付にいたおじさんに冷たい視線を向けていた。
「わ、わかったわかった。取りあえず俺がお前たちを試験してやるからこっちこい!」
「ありがとう! おじさん!」
エミリがにこやかな顔でそう告げると、周りこらクスクスと笑い声が聞こえだしてきた。
「それじゃ、ここで簡単な試験をするぞ。 獲物はその後樽の中から選べ」
樽の中には色々な武器が入れられていた。
エミリは迷いなく剣を手にした。
「私からー!」
(この嬢ちゃんからか、適当にあしらっておくか)
「よし! なら始めるぞ。いいか?」
「うん! いいよ!」
「初め!」
この合図がおじさんの地獄の始まりだった。
「やー!」
エミリの可愛い掛け声とは裏腹に、強打、斬撃、打ち払い、突きと目にも留まらぬ速度でおじさんを滅多うちにしていく。
「や……やめ! と、とま……って」
おじさんの鳴き声が試験場に虚しく響いた。
周りで見ていた人達がざわめき出す。
「お、おい! ギルマスがボコボコにされているぞ!」
「なんだ、あのちびっ子」
「有り得ない動きだろ!」
それを聞いていた僕は、
(なにいってんの? 普通でしょ? エミリもいつも言ってたし)
いつの間にかギルマスが倒れていて試験が終了していた。
他の職員がギルマスといわれたおじさんにポーションを掛けていた。
「な、なんだよありゃ……」
おじさんはエミリを見て震え上がった。
「次はマルクのばんだよ!」
「え? 僕もやるの?」
「そのために着いてきたんでしょ?」
いや、引きずられて来たんだけど……。
「はぁ、しかたない受けますよ……トホホ」
「ぼ、坊主もやるのか?」
おじさんは身構えながら僕を見た。
「は、はい。でも僕剣使えないですから」
「そ、そうか! ならなんだ? 拳か?」
おじさんは少し元気を取り戻したようだ。
「あ、僕はこれです」
そう言って僕は吹き矢を取り出した。
「僕、これしか取り柄ないんで……」
「それは辛いな。そんなんじや角うさぎも倒せないだろうに」
「でも、試験は試験だ! 全力でこい!」
「は、はい! 全力で行きます」
おじさん二度目の地獄を見る事になる。
「よし、先ずは俺にそいつを当ててみろ」
見物人が集まりだしてきた。
「は、はい!」
息を吸い込み、
――吹く。
バンッ!
僕は少し力みすぎて狙いを外した。
おじさんの後ろにあった皮の鎧の胸の部分に当たって弾け飛んだ。
おじさんは後ろを振り返り、弾け飛んだ皮の鎧を見て立ち尽くしているよ。
「す、すみません! 緊張で狙いが……次こそ当てます」
「ちょ……ちょっと……」
僕が構えると、おじさんはけんを前にして、身構えた。
次の矢を吹き出した。
ガキンッ!
おじさんが、矢を剣で防いだ音だった。
当てないと合格貰えないのかな。
そう思いながら、次々と矢を吹き出していく。
ガンッ!
「うわっ!」
ギンッ!
「ちょっ……!」
ズバッ!
「ひぃ!」
ズボッ!
「あ、あぶな!」
僕は矢がつきるまで吹き続けた。
しかし、矢はおじさんには一発も当たらなかった。
おじさんはその場で四つん這いになって、息を荒げていた。
——一発も、当たってないのに。




