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20話 欲望ぱわー!

 ドタバタしながらアルナートの街を出発した僕たち。


 受付嬢のミズナさんが、己の欲のままにカレンに頬ずりしまくっていた。


「ミ、ミズナさん? ギルドの方は問題ないんですか? いや、あるように見えてたんですが……」


「かまいません! これほど可愛いゴーレムが居るんですよ! 私に再び冒険者として活動しろと天が言っているに違いありません!」


 言い切るミズナさん。


「エミリ、ミズナさんてこんな人だったっけ?」


「すごく真面目な人だと思ってたよ……」

 

 僕とエミリと御者のおっちゃんは、カレンが嫌そうに、頬ずりしてくるミズナのだらしない顔を押し返していた。


「おまえさんたち面白いな」

 オクタムさんが愉快に笑っている。

 

 ――――――――――――――――――


 私はミズナ。アルナートの街でギルドの受付嬢をやっていました。


 ある日、ギルドに噂の最強剣士が来ました。


 見た目はぱっとしないちょっと変な感じの男の子。名前はマルクさん。

 

 もう一人は付き添いの女の子でしょうか。


 噂にも上がらない子ですが、かなりかわいい子ですね。彼女はエミリさん。


 マルクさんの噂はSランクの槍使いを倒したことがあると言われていました。


 私もそんな彼の功績を耳にしていたので思わず大声で聞いてしまいました。

 

 そんな彼は否定することなく謙遜で、少し変わった人でしたが——。


 ゴブリン200匹討伐やダークスネイク討伐。

 

 Sランクとの決闘と勝利——。

 

 本当に凄い人でした。

 

 付き添いのエミリさんも、とんでもない実力の持ち主でした。


 新人研修での最後の部屋にて、イレギュラーなゴーレム出現。


 私も含め新人六人は成す術もなく立ち尽くしていたのですが、エミリさんがあっという間に討伐してしまいました。


 そのあとも、ダンジョン調査で未知の階層にてエミリさんの凄さが浮き彫りになりました。

 

 でも、やはりマルクさんは別格です。

 

 山のようなゴーレムに一人で挑んでそれに勝利してしまいました。


 まさに英雄。


 ——しかし、私の衝撃はそこではありませんでした。

 

 後日、マルクさんがギルドに来た時のことです。


 まるで人形のようなかわいい女の子型ゴーレムを肩に乗せてやってきたのです。

 

 その子が動いて挨拶をした瞬間——


 私は虜になってしまいました。


 名前はカレンだそうです。

 

 ——できる事なら

 

 攫って帰りたい。

 

 しかし、私はギルドの受付嬢でそんなことはできません。

 

 この想いを表に出さないように振る舞い、必死に気持ちを殺していました。

 

 そして今日。


 マルクさんたちが護衛で街を出ていく。


 私は最後にもう一目カレンちゃんを見るために街の西口で待っていました。

 

 そこに現れたのは、私の知っているカレンちゃんではありませんでした。


 もはや無機質なゴーレムの肌ではない。


 ぷるんとした柔らかな肌。


 もはや妖精と見間違えるほど可憐。

 

 この瞬間、私の中で何かが弾け飛びました。

 

 ——こうしてはいられない。

 ——離れたくない。

 

 私はギルドに急いで戻り、ギルマスに急遽お休みをもぎ取ろうとしました。


 しかし答えは


「NO」


 仕方ありません。


 強行突破です!


 私は急いで装備を身につけ、ギルドを飛び出しました。


 後ろからギルマスと職員たちが追いかけてきます。


 しかし、私も元Aランク。


 そう簡単には捕まりません。


 ギルマスは、このまま行けば私を首にすると叫んでいました。


 上等です!


 冒険者に戻るだけです!


 そして私は——

 

 強引にマルクさんたちのパーティに合流しました。


 ——かつての私の夢、可愛いものを求める冒険が再び始まるのです!


 ――――――――――――――――――


 ミズナさんがカレンを抱きながら眠りについていた。


 僕とエミリは御者のおじさんを挟んで座っている。


 馬車の荷台には沢山の品物が積まれている。


 ——アルナートの街を出てから二日。


 いい天気だな。


 ここは見晴らしが良く、のどかな風景が続いていく。


 そして前には、のどかではない人たちが陣取っていた。


「おっと! ここを通りたければ荷物を置いていきな!」

「お頭! 女がいますぜ!」

 盗賊たちは、げへへと笑っていた。

 

 現れたのは盗賊。

 

 その数は十人ほど。


 剣、斧、弓。

 

 武器を構えながら

 ゆっくり馬車を囲い始めた。

 

 馬車が止まりオクタムさんが「あんちゃんたち頼む」と言って荷台に隠れる。


 僕は怖かった。


 だってさ、盗賊だよ? 十人だよ?僕、やられちゃうよ!


 震える体、喉がからからになっていく。


 盗賊の一人が矢を放った。


 矢は僕の頬を掠めて馬車に刺さる。


 僕は震え上がり、馬車から転げ落ちた。


 エミリは馬車から飛び降りた。


 エミリはやる気だ。


 僕は震えている。


 馬車の荷台からカレンが這い出てきた。


 まさに盗賊との戦闘が始まろうという時——


 荷台から悲鳴が響いた。


「カレンちゃんがいません!!」


 場違いな声が荷台から聞こえた。


 僕らや盗賊たちが荷台を見ると——


 そこには——


 鬼がいた。


 抱えていたカレンがいないことに気づいたミズナさんが、怒りに震えていた。


「なんですかあなた達は? まさか! あなた達が私のかわいいカレンちゃんを取ったのですか!?」


 盗賊たちは「この人、何言ってるの?」といった顔をした。


「許せません! 成敗です!」


 ミズナさんは問答無用で盗賊たちに襲いかかった。


 最初に犠牲になったのは弓使い。


「一人!」

 

 弓使いが地面に倒れる。

 

 続いて近くで仲間を助けようとした斧使い二人が犠牲に。


「二人! 三人!」

 

 斧使いが立て続けに吹き飛んだ。


 ミズナさんはレイピアを巧みに使い、時には足技で相手を倒していく。


 こちらに向かってきた盗賊は、エミリが武器破壊で鎮圧していった。


 (ミズナさん、強くないですか?)


 僕?


 完全にいらない子だったよ……。

 

 僕の周り、どうしてこんなに強い人が集まるの? 勘弁してください……。


 ミズナさんとエミリが、わずかな時間で盗賊を無力化し、縄で縛りあげた。


 エミリはミズナさんの戦闘力に驚いていた。


「ミズナさん強いね! 私ももっと頑張るよ!」


 なんてことを言っていた。


 肝心のカレンはいつの間にか僕の肩に座っていた。


「ミズナさん、この盗賊どうします?」


 僕はミズナさんに聞いてみた。


 ミズナさんは僕の肩にいるカレンを見て、少し悲しそうな顔をしていた。


「本来なら盗賊はその場で打ち首にしてもかまわないんですが――、もう少し行くとトリナノの街がありますから、寄って盗賊を衛兵に渡すのもありですね。賞金が掛けられているかもしれませんしね」


 オクタムさんに確認するとそれでもかまわないらしい。


 依頼主に確認を取ってから、僕たちはトリナノへ行くことにした。


 もちろん盗賊は馬車の後ろにロープで繋がれて


 引きずられるように歩かされていた。


 カレンは馬車の後ろの盗賊たちが気になるみたいで、見に行った。

 

 盗賊たちがカレンに向かって「なんだこの人形は!」「とっ捕まえて売り飛ばしてやろうか」など、縛られながら叫んでいたが、いつしか悲鳴に変わっていた。


 僕たちから見えないけど——


 カレン、何してんの?

 

 日も傾き始めてきたころ、トリナノの街に着いた。


 ミズナさんが街の入り口で盗賊の受け渡しを行っている。


 さすが元受付嬢、仕事が速いね。


 ミズナさんが戻って来た。


「今日はこの街で泊まりますか?」


 オクタムさんに確認をするミズナさん。


「いんや、もう少し行くと行商人が集まる休憩場所みたいな所があるんだ。そこまで行くぞ」


「わかりました。では出発しましょう」


 僕たちは再びドラボテ村へ向かって移動を開始した。


 オクタムさんが言っていた休憩所には暗くなってから着いた。


 

 ——遠くから、馬に乗ってこちを見ている人物がいた。


 遠見の筒に映る、その先の人物は――


 マルク。

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