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18話 みんな普通だよね!

 今日は、明日からの護衛依頼の準備をするため、街に出てきた。もちろんカレンは当たり前のように僕の肩に座っている。


「にーちゃん、あたしもあれほしい!」


 小さな女の子がカレンを指していた。


「どれだい?」とお兄ちゃんは、女の子が指すカレンではなく、僕を見た——。


「あ!水虫剣士だ!」


 通りにいた人がどよめく。


「いいか、妹よ! あれは、ダメだ!」


 お兄ちゃん、その子、カレンを見てませんでしたか?なんか勘違いしていませんか?


「この前用事でギルドに行ったらな、水虫剣士は最強変態になったって聞いたんだぞ!」


「へんたい?」


「関わらない方がいいんだ! いくぞ!妹よ」


「へんたい、やだー! まってにーちゃん!」


 へんたい、へんたいと言って走って行っちゃったよ。

 気のせいかな、周りの人たちが僕たちから距離をとったような気がした。



 人の賑わい、立ち並ぶ出店。

 僕たちは店の商品を覗きながら、通りを歩いていた。


 母親に背負われている小さい子が、カレンに気がつき、手を伸ばしてくる。

 それを見たカレンが、小さい手を振って応えていた。

 エミリも果物屋を見つけると、果実を買いあさっていた。


 そして僕は見つけてしまった。僕のすべてと言ってもいい存在!


 吹き矢の店だ!


 ゴブリンとの戦闘時に、無くしてしまっていたから。腰の辺りが寂しかったのだ。


「おっちゃん、見せてもらうよ!」


 僕は目を輝かせながら色々な吹き矢の筒を手にとり、吟味しだした。


 それを見ていたエミリが、やって来た。


「なに?また吹き矢なの?」


「そうなんだよ! 僕といえば、やっぱり吹き矢だよね!」


 その中で僕の手にしっくりくる筒を見つけた。


「あ、にいちゃん。そいつを試してみるかい?」


「いいの?」


「おうよ! ただな矢はあぶねーから紙を丸めた玉だけとな」


「十分です!」


「ほらよ、そこで的をねらってみな!」


 僕はワクワクしながら店の中で、試し撃ちができる場所で吹き矢を構えた。


 嬉しさの余り、ちょっとだけ力が入ってしまった。


 ボッ!


 紙の玉で的が粉砕した——。

 

「おいおい! あんちゃん! 駄目だよ、的壊しちゃ!」


「え、僕、紙の玉で撃ちましたよ?」


「嬢ちゃん、ホントか?」


 おっちゃんが、エミリに確認している。


「うん、おじさんに渡された玉を使ってたよ」


「そ、そうか?的がな古くなってたのか?」


 おっちゃんは首を傾げながら的を新しいのに交換していた。


「おっちゃん、これ、セットで頂戴」


「おう、良いの選んだな。合わせて金10000だ」

 

 僕はこの筒と矢をセットで購入した。


 カレンを見ると、売り物の筒に顔を付けて覗いていた。

 気になっているのかな?

 

 買い物を済ませ、僕たちは街をぶらつきながらこの街の噴水がある場所で休憩をした。


「ねえマルク、ちょっと試したい技が出来たから街の外にいかない?」


「技?」


「師匠の教えの一つだよ」


「あぁ、師匠ね……」


 エミリの師匠は一切喋ったりはしない……



 エミリに連れられて僕たちは街の外、いつもの森の中へ来ていた。


「で、エミリはどんな技を試すの?」


「それはね、この前貰ったカタナあるでしょ?今までできなかった技が、師匠も使っているこのカタナなら!」


「そうなんだ、エミリでも出来なかったことあったんだね」


「それはそうよ! 師匠の教えを理解するのは大変なんだから!」


「でも、今ならわかる気がするの……」


 そう言って、カタナを掲げながら空を見上げるエミリ。


「危ないかもしれないから離れててね」


「わかったよ。カレン少し離れておこう」


 僕はカレンと少し離れた場所で、エミリを眺める。


 エミリはカタナを構えて集中する……

 

 エミリを中心に風が巻き起こり始めた。

 前に聞いたことがあるが、これは闘気というものらしい。

 闘気を纏い、なんでも切れるという物騒なものらしい。

 

 もちろん僕はできませんよ? 無理ですから!


 エミリの周りから発する風の威力が上がり始めて、僕のところまで風が届いてきた。


 エミリは息を吐き、技名を言った——


 ≪ 極桜連斬ごくおうれんざん


 風が舞い、綺麗な桃色の花びらが無数に舞い踊る。


 その綺麗な光景に僕は見とれていた。


 ビシッ!


 バシッ!


 バシッ! バキキッ!

 

 変な音が聞こえるな……

 僕は注意しながら目を凝らしてよく見ると……


 舞い上がった枯草や小石が、無残に切り刻まれていく。


 こわ!


 見た目と違って、かなり物騒な技だった。


「マルク! どう? 出来たと思うけど」


「ごくどうれんざんだっけ? よくわからないけど、危険な技だということは理解したよ」


「“ごくおうれんざん”だよ!」

「これはね、闘気の斬撃を自分の周りに発生させるんだよ」

 

「でも、師匠の威力に比べればまだまだだよ! 精進あるのみだよ!」


 技が出来て、エミリは嬉しそうにしていた。


 僕は、岩の上に立って何かをしているカレンに視線がいった。


「カレンは何をやっているんだい?」


 見ると、カレンは僕がお店でやっていた吹き矢の動作をしていた。

 こちらに気が付いたカレンは、僕に吹き矢をやって見せてくれと、ゼスチャーをした。

 「ふっ……カレンも吹き矢の魅力に取りつかれたかな。仕方がないね、見せてあげるよ! 吹き矢の魅力を!」


 僕は離れた場所の木に向かって、買ったばかりの吹き矢を取りだし、準備をする。


「カレン、あそこの木に向かってやるから見ててね」


 カレンがコクンと頷く。


 僕は吹き矢を構えて、吹く。


 ボンッ!


 矢は木を貫通した。さすが新品だね。


「……マルク、なんか威力上がっていない?」


 エミリが変な顔して言ってきたよ。


「いつもと同じだよ? 変なこと言わないでくれる?」


「そうかなー……」


「カレン見た? これが吹き矢さ!」


 僕はドヤった。


 カレンが手を叩きながらぴょんぴょん飛び跳ねている。

 カレンは頷き何かを悟ったように大きく頷き、木の方へ体を向けて僕の吹き矢の動作をまねてから、手をおろすと――


 口が裂けた——


 僕とエミリは、カレンの顔に驚きながらも見守った。


「あの顔はなれないよ……」


 エミリが呟く。


 カレンの口の辺りに光が集まりだして——


 その光が放たれた!


 ボヒュッ!


 僕が矢を放った木に、もう一つ小さな穴が空いた。

 

「おおお! 凄いねカレン!」


 僕はカレンを褒めた。

 嬉しそうにその場をくるくると回るカレン。


 エミリは僕とカレンを見ながら言った。


「二人とも変だよね」



 夜、宿屋にて。


 いつものように僕とエミリが食事をしていると、またカレンが欲しそうにじっと見ている。


「カレン欲しいの?」


 聞くと頷くカレン。

 僕は肉を切り分けてあげようとしたら、カレンが皿ごと引っ張っていき、肉を貪りだした。


 ぐちゃ

 べちゃ

 むちゃむちゃ


 この光景は昨日の夜も見たけど、やっぱり怖いね。

 しかし、ゴーレムも食事するんだね。


 仕方ないので僕は肉をもう一皿たのんだ。


「カレンて、本当になんなの? かわいいからいいけどさ」


 エミリも気になっているようだ。


「考えても仕方ないよ。カレンはこうなんだよ」


「それもそうね」


 僕たちは気にすることをやめた。


 カレンはいつの間にか肉を平らげていた。肉は一体どこに入ったんだろう?

 

 食後、カレンとエミリは一緒に浴場へと向かって入っていった。


 カレンのエミリに対する態度は、まだ完全じゃないけど良くはなっているかな?


 僕は部屋でカレンの寝巻を作ることにした。


 ちく

 ちく

 ちく


 「できた! うんうんかわいいね!」


 エミリとカレンが戻って来た。

 ゴーレムって水とか平気なのかな?


 まぁ、お風呂入るし平気なのかな?


「カレン、こっち来て」


 カレンを呼ぶと僕の所までトテテテーと寄ってきた。


 僕はカレンを手の上に乗せて、テーブルの上まで上げた。


「はいこれ。カレンの寝巻ね」


 カレンが嬉しそうに寝巻を受け取り、掲げてくるくる回りだした。


「僕も入ってくるから、エミリと待っててね」


 僕は部屋を出ていった。


 入浴後、部屋に戻った僕は、着替えたカレンの頭を撫でまわしているエミリを見た。


「随分仲良くなれたね、エミリ」


「うん! もう仲良し!」


 僕とエミリは少し話をしたりカレンと遊んだ。


 そろそろ眠いといいエミリは自分の部屋に戻った。


 僕も寝よとベッドへ潜り込むと、カレンも枕の上に横になる。


「カレン、お休み」


 喋らないゴーレムに挨拶をして、僕は眠りについた。

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