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16話 小さな巨人だよ!

 ドラボテ村に行くまであと二日。


 昨日の夜、部屋に入ったとき、


 カレンの顔のあたりが赤く光ってたような気がした。

 

 エミリとカレンの関係は変わらずだけど、


 エミリとカレンを連れてギルドにやって来た。


 カレンは僕の肩に座っている。


「お!水虫が来た……って、おい待て、なんだありゃ?」


 冒険者の一人が皆を呼んだ。


「おい! お前ら水虫見てみろよ! やべーぞ!」


「なんだなんだ?うおっ!なんだありゃ」


「水虫……遂に目覚めたのか……」


 なにがですか?僕は起きてますよ?


「水虫……俺らはな、Sランクを倒せるおまえさんは認めているがな……それは、そいつだけはいただけないぞ」


 そう言って、僕の肩に座っているカレンを指差した。


「この子、カレンがどうかしましたか?」


 周りがどよめいた。


「こいつ……名前まで付けてるぞ……」


「最強水虫剣士様が、最強変態になりやがった……」


 ざわざわざわ……


「肩に乗せて歩いてくるなんてお前……かなりの上級者だぞ」


「Sランクキラーが人形に目覚めたか」


「ちょ! 待って! みんな何か勘違いしてない!?」

 

「勘違いもなにも、いま目の前で起きていることを言ってるだけだぞ、俺ら」


 そうだそうだと周りからも言われる。


「なにやら楽しそうですね?」


 後ろから声をかけられた。


「あ! ミズナさん、助けて!」


「あら、可愛らしいお人形さんですね。ご趣味ですか?」


「違いますよ! この子ゴーレムなんですよ!」


 一同「は?なに言ってんの?」


「おいおい! そんな可愛らしいゴーレムなんか居るわけないだろ?」


「照れ隠しすんなよ! はっはっはっ」


 僕はカレンをテーブルの上に置いた。


「見ててくださいよ?カレン、挨拶して」


 僕がカレンに挨拶をお願いすると、その場で立ち上がり、


 みんなに向かって挨拶をした。


 ——ペコリ。


「……まじかよ」


「かわいい……」


 そんな声が聞こえてきた。


「ほら、ちゃんと挨拶できる子だよ?」


「マルクさんには毎度ながら驚かされますね」


 ミズナさんもカレンの可愛らしさを知ったようだ。


「はじめまして、私はミズナと申します。よろしくね」


 挨拶をしながらカレンに向かって手を出した。

 カレンもミズナさんが差し出した指を両手で掴み、上下に軽く振った。


「あらかわいい」


 その光景を見ていたエミリが


「何で!」


 と叫んで、カレンに手を出すと——


 ペチンッ!


 手を弾かれた。


「何で私だけ! ずるいよ!」


「マルクさん、この子どこで手に入れたんですか?」


「ダンジョンの中ですよ」


 ダンジョンという単語が出た瞬間、ミズナさんはしまったという顔で僕をみて、


「マルクさん、申し訳ないのですが奥で聞かせてもらえますか?」


 焦るように言ってきた。


 「はい」


 僕はエミリとカレンに声をかける。


「私いかない!」


 エミリはへそを曲げた。

 カレンは僕のところにきて、僕の肩にぴょんと飛び乗った。

 ミズナさんに連れられてギルドの会議室へ。


「マルクさん、まずは今回のダンジョンの件は口外しないでください。私もうっかりしてました。申し訳ありません」


 ダンジョンで口外出来ないことがあったのかな?


 「あ、だ、大丈夫です。頭をあげてください」


 その言葉を聞くと、ミズナさんはにこりと微笑んだ。


「でも、何か問題とかあったんですか?」


「あったといえばあったのですが、まだまだ調査が入りますので今の段階では、こちらからお伝えできることはありません」

 

「はぁ」


「確認したいのは、先ほども言いましたが、その子はどこで手に入れられたのですか?」

 

 僕は当時のことを思い出しながら話した。


「あれは、台座のある部屋でした。あの部屋の中央辺りでこの子を蹴り飛ばしたんです。その時は、手足がバラバラだったんですよ」


 ミズナさんは資料をめくりながら話を聞いていて、とあるページで手を止めた。


「もしかしたら、その子はエミリさんが切り飛ばした子かも知れませんね」


 カレンを見るとプンスコと頷いている。


 カレンの行動に何かを察したのか、ミズナさんが言う。

「でも、こういうとカレンさんには悪いんですけど、あれは仕方のないことです。エミリさんは仕事をしてくれただけですから」


 カレンは少し考えるように腕を組み、了解したのか頷いた。


 ミズナさんはカレンを観察して口を開いた。


「この子、凄いですよね。こんなにはっきりとした意思表示するゴーレムなんて知りませんよ。それに凄く精密に出来てますよね」


「僕もそれは思いました。ただ、目は開かないみたいですけど」


 ミズナさんがカレンの顔を覗き込んで


「そうなんですか?確かに開くような感じはしますね」

 

 ミズナさんはカレンを指でつついている。


「マルクさん、この子と一緒にいるのなら、従魔登録する事をお勧めします」


「従魔登録ですか。どうするかな……カレンどうする?」


 カレンは頷いている。


「いいみたいです。登録お願いします」


「では、少々お待ちください」


 ミズナさんは一旦部屋を出て行った。


 カレンが近づいて来て、僕の鞄を指差した。


「荷物を出してほしいの?」


 頷くカレン。

 カレン用の荷物を出して渡してあげると、中から戦闘服を取り出し着替えを始めた。

 僕がなんとなくカレンの着替えを眺めていると、いつの間にか部屋に入ってきていたミズナさんが——


 ゴミを見るような目で


 僕を見ていた……。


 僕は誤解を解くために説明するんだけど、問題の中心の子が普通に着替えを進めているんだよ。

 僕は「カレン何やってんの」と思いながらチラチラ見ていたんだ。


「説得力がありませんね……誤解を解くといいながら着替え中の子をチラチラ見ているなんて……」


 ますます目つきが、ゴミ以下のものを見る目に変わってきましたよ……


 誰か助けて……


 ミズナさんはため息をついてから


「仕方ありませんよね……マルクさんも男の子ですからね……ある一線だけは超えないでくださいね」


「なんですか!? それ!? 誤解ですよ!!」


 ミズナさんの顔が普段の顔に戻り、噴き出した。


「ごめんなさい、つい面白くて」


「ひどいや……」


「お詫びに私がカレンちゃんに従魔の証のリボンをつけてあげますよ。カレンちゃんこっち来てくれますか?」


 ミズナさんがカレンを呼ぶと、テテテーっと小走りに近づいてきた。


「では失礼して」


 ミズナさん、なんか凄く嬉しそうにカレンを見つめている。


 ミズナさんはカレンの三つ編みの先に、淡い赤色のリボンを結んだ。


「ミズナさん、そこだと落ちたりするんじゃないですか?」


「大丈夫ですよ。これは特殊な処理を施されていますから、絶対に取れません。洗うときなどは普通にほどけますよ」


「そうなんですか」


 カレンをみると、三つ編みの先端に取り付けられたリボンを、ぷらんぷらんさせて遊んでいる。


「あ、目的を忘れるところだった!」


「なんでしょうか?」


「ドラボテ村に行く護衛の話です。二日前に来てくれと前に言われてたので」


「あ、そうでしたね。色々ありすぎて私も忘れていました。すぐに確認してご用意いたします」


 再びミズナさんは部屋を出ていった。


 「カレン、話し終わったらエミリ連れてどこか行く?」


 カレンは頷いて答えた。そして手足を使って何か格闘技っぽい動きをしだした。


「凄いね、これならモンスターとやりあえるんじゃない?」


 と冗談のつもりで言ったんだけどね、本気にしたみたいだ。


 さらに動きが激しくなってきた。


「え?ちょ、止まって、すとっぷ!ストップ!!」


 なんかね、カレンを中心に凄い風が舞い上がり、部屋のカーテンが揺れ出したよ——


 ガチャ


「お待たせいたしました」


 ミズナさんが戻って来た。

 

「どうされましたか?」


「ど、どうもされませんです」


 ミズナさんは首を傾げながらテーブルに依頼表を置いて説明をしだした。


「明後日の朝、街の西口に集合です。マルクさんとエミリさんの二人だけの護衛となります」


「二人だけですか」


「はい。依頼はドラボテ村へ荷物を運搬するだけですので乗客はいないそうです」


「わかりました」


「では、先方にはこちらからお伝えてしおきますので」


 依頼表を受け取り僕たちは会議室を後にした。


 ギルドのロビーにあるテーブルでふて寝しているエミリを発見。


「エミリ、エミリ」


「うう……マルクぅ」


「あのさ、カレンがエミリを拒んだ理由が分かったかもしれないんだ」


 がばっと起き上がるエミリ。


「ほんと?」


「う、うん」


「教えて教えて」


「私が説明しますね」


 後ろにいたミズナさんがエミリに説明をする。


「初心者の護衛を頼んだ時のことですよ。覚えていますね?」


「護衛の時ですか……」


「はい、その時エミリさん、三体のうち一体が小さいのが居たと言っていましたよね?」


「うん、言った」


「それがカレンちゃんだったんですよ」


 エミリが大きく目を見開いてカレンを見つめた。


 「そうだったの?ごめんなさい!」


 エミリがカレンに向かって頭を下げる。

 カレンは首を横に向けてツーンとする。

 あれ? 許すんじゃないの?


 カレンがテーブルの上に降りて、エミリの前に立つ。微かに開いた両目から赤黒い光が揺れ——

 そして、人差し指を地面に向けて


 ちょん

 ちょん

 ちょん


 と指し示す。


 エミリの体が小刻みに震えだし、頬が膨らみ顔が赤くなっていく——。

 

「ミズナさん?」


「なんですかマルクさん?」


「これ、まずくないですか?エミリが暴れそうなんですが」


「かもしれませんね……」


「どうします?」


「どうしましょう」


「エミリ、カレン、一言っておくね“ なかよくしてね ”」


「カレンちゃんの恨みは相当なのかしらねー」


「自分をばらばらにした相手ですからねー」


 エミリがしゃがみこみ、


 床に頭をつけて謝った。


「ごべんなざい」


 それを満足そうに見たカレンが、


 腕を腰に当てて満足そうに頷き、


 三つ編みの淡い赤のリボンが、


 ふわりと揺れた。


 カレンの姿を怪しく見つめる者が居るとは、


 その時は気づきもしなかった。

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