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plus/minus=0  作者: ISOyA
The Double Agent
26/31

The Double Agent 2

3月4日。香港、カオルーンの某マンション。

午後11時53分。


20階の廊下を5人の男達が早歩きで歩いていた。全員黒尽くめで、手袋をしていた。


5人は「Room 2005」の前で歩を止めた。五人の内の一人がカードキーを取り出し、ドア上部に付いているスロットに差し込んだ。ピーという電子音が鳴り、ロックが解除された。


「3」


「2」


「1」


バァアン!!


ドアが勢い良く開かれ、男達は勢い良く部屋の中へ入っていった。全員、コートの中から拳銃を取り出し、一斉に構えた。

男達は20秒程リビング内を見渡した後5方向に分かれた。その後部屋中のあちこちでドアを蹴り飛ばす音が響いた。



「いたか?」


「いや居ない」


「こっちも居ない!」


「パスポートが焼かれてる、もう逃げたかもしれない!!」


リーダー格らしき男が黒炭になったパスポートを拾い上げた。パスポートは男の手に触れた途端粉々に砕けた。


「アレクセイ・・・・・・」男は静かに、息を殺すかのように呟いた。その表情は金属のような冷たさと、僅かな怒りのが混じったような表情だった。


男は右手に握っていたシグ・ザウエルP226をホルスターに戻すと、胸ポケットからマルボロを一本取り出し、口にくわえた。




アレクセイは紫煙けむりを吐きながら窓際にゆっくりと座った。中指と人差し指に挟まれた煙草が窓に反射し、オレンジ色に光っていた。燃え尽きた灰を落としながら、アレクセイは外を眺めた。時刻は午前2時半。朝はあれ程溢れ返っていた通りも、今は嘘のように一人も歩いていない。たまに車やスクーターが通っていくのみで、それらが通った後はまた静かになった。


タバコのフィルターをくわえ大きく紫煙を吸った。オレンジ色の火が勢いよく燃え、煙草を煙に変える。

ベッドの上に置いてある携帯は、まだ鳴る気配もない。

アレクセイはフィルターを加え、紫煙を吸い込んだ。甘いメンソールの味が口に広がった。




*

*




同時刻、トヨタ・クラウンハイブリッドは首都高速湾岸線を巡航していた。ブラックメタリックの塗装は汚れひとつ無く磨かれており、街灯の下を通過する度、艶やかに反射した。


「どこに連れて行くつもりだ円城・・・・・・いい加減僕は眠いんだけど」後部座席で目を半開きにしながら、乙鬼は苛立ち混じりに顔中に付着した返り血を拭いていた。数分前は身体のあちこちにベットリと染まっていた返り血は、ほとんど消えていた。乙鬼は袖に付いた血を爪でこそぎ落とすと、タオルをシートに置いた。乙鬼は大きなあくびをすると、うとうとし始めた。片目はすでに閉じかかっており、放って置いたら今にも寝そうだった。

 

「おっと!まだ寝ないでくださいよ乙鬼」そう言うと円城はオーディオシステムの電源を入れ、音量を高めに捻った。CDプレーヤーが起動され、車内後ろに設置されたBOSEのスピーカーからBLOC PARTY, "PIONEERS M83 REMIX"が流れた。せっかくの睡眠を思い切りに妨害された乙鬼は円城を睨み付けた。


「もう少しだけ神経を尖らせて下さい、これで最後の仕事です」そう言うと円城は助手席のブリーフケースからファイルを取り出し、乙鬼に渡した。

乙鬼はファイルを受け取ると、止め金を外した。中には5枚の顔写真が入っていた。写真は解像度はあまり高く無かったが、顔の特徴を掴むには充分だった。乙鬼は写真を手にとり一枚づつ目を通し始めた。



「全員諜報員上がりです。アレクセイを嗅ぎ付けて来たみたいですね」

5枚目の写真に目を通した乙鬼はそれをファイルにほうり込んだ。

乙鬼は何も言わなかったが円城はそのまま続けた。

「4時間前、彼らはデルタ航空のチャーター便に乗り込みました。予定ではあと45分で羽田空港に到着します」


「どいつもこいつもどうしていつも面倒臭いんだ・・・」唸るように乙鬼は呟いた。


「面倒くさいことにですね、今回の任務にはこういう邪魔な奴らがやたらめったらいましてね」


「だったらそいつらに始末させれば良いじゃないか!」


「アハハハッ確かに!」そう言うと円城はケラケラと笑った。


「確かにそうですね、連中に任せればいいのかも知れません、でも"今"は都合が悪い。彼にはまだ生き延びてもらいます」


円城はボリュームのつまみを押した。スピーカーから音が消え、車内は静寂に戻り、僅かなロードノイズと風切り音だけが車内に残った。時刻は午前1時。羽田まであと15分は掛からない。乙鬼はゆっくりと目を閉じた。









それまで睡眠と覚醒の境目まで墜ちていたアレクセイの意識は、携帯電話の着信音で強制的に引き戻された。半開きだった眼がぎょろりと見開き、忙しく辺りを目まぐるしいスピードでぐるぐる回った。血圧が急激に上がり、心臓が忙しく動き出した。

数時間動くのを辞めていた筋肉にシナプス信号が伝わり、強制的にその身体を起こした。まだ視点も定まらないまま、アレクセイは携帯電話を手に取り、ゆっくりと通話ボタンを押した。



解説コーナー:

Bloc Party, "Pioneers M83 Remix":ロックバンド、Bloc Partyの曲、Pioneersをヨーロッパなどで大人気を誇るDJ、M83がリミックスした曲。オリジナルはロックだが、これはずいぶんとエレクトロニカルに仕上がっている。因みにこの曲はこの小説のテーマ曲の一つでもある。


曲のURL:http://www.youtube.com/watch?v=pzaAHRhr5EY

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