Leathal Fragrance Epilogue
1月4日、午前0時40分、東京都港区、三田の某道路沿い。
昼間はかなりの数の車が行き来するこの道路も、この時間帯になるとまるで別の道路の如く静まり返る。現在、時刻は0時41分。一台も車は通っていない。
ただ、道路のエスケープゾーンに一台、黒いトヨタ・クラウンハイブリットが止まっていた。まだ収納したての新車らしく、塗装は見事に艶がかっていた。
「何か見えましたか?乙鬼」
「いや、まだ動いてはいない。明かりは付いてるけどね」
クラウンの後部座席で、霧島乙鬼は双眼鏡を覗いていた。
双眼鏡の向けられた方向から150m坂の下に、一件の中型ガレージが在った。窓が光っており、誰かが中に居ることが確認出来る。
乙鬼は双眼鏡をさらに数ミリ調整した。
先日の騒動直後、意外なまでに穏やかでいた乙鬼だったが、翌日になってこの仕事が入り、トータルで休暇を丸2日間潰された事を知るや否や、乙鬼の機嫌は急激に悪くなってしまい、朝から円城とまともに取り合ってくれなかったのだった。
「・・・昨日はとんだ災難でしたね、乙鬼」やけに静かな空気に痺れを切らしたのか、唐突に円城が口を開く。
「うん、でもこうなったのは“連中”が国内に“マネージャー”を置いてた事に気付かなかった公安調査庁(PSIA)のせいだよね」
双眼鏡を見続けながら、乙鬼は皮肉たっぷりに返した。どうやら逆鱗に触れたようだ。
円城はそれ以上何も言えなかった。
15分が経過した。
「・・・・・・動いた!」
双眼鏡越しに、二人の男性が外に出て来るのが見えた。二人とも、長身の白人で黒いセーターを着ていた。双眼鏡越しに、二人の男性が外に出て来るのが見えた。二人とも、長身の白人で黒いセーターを着ていた。外に出ると一人はガレージを開け、もう一人は中に入り、車を出した。
最後に電気が消され、車は走り去って行った。
「乙鬼、車種を」
「車種はマツダのミレーニア、ボディカラーは白、ナンバーは×××-×××」
「目標補足、白のマツダ・ミレーニア、ナンバー×××-×××、目標への出動を開始して下さい」
円城が出動宣言を下すと同時に遠くから車のヘッドランプが光った。
円城はクラウンのイグニッションボタンを押した。青白い光りがヘッドランプから放たれる。そしてクラウンは猛スピードで発進した。
漆黒のクラウンは深夜の東関東自動車道を巡航していた。ダッシュボードのデジタルクロックは0時58分を表示している。
「乙鬼、先日貴方が始末した殺し屋、身元が割れました」
「・・・・・・」
「彼女の名はカオリ・ナナオ、日系イタリア人。経歴は不明ですが、恐らくカモッラ出身だと思われます。
もう一人はアレッサンドロ・グリソゴノ、元ベリサリエリ陸軍兵。知ってますか?ヘルメットの横に黒い羽根を・・」
「もう良いよ、ありがと・・・一応」
少しの沈黙の後、円城はハイ、どう致しまして、と言い、再び口を閉じた。
マツダ・ミレーニアは成田空港付近のサンクスの駐車場で止まった。エンジンが切られ、ドアが開いた。
「しばらくは会わないほうがいい」そういうとジェフは携帯電話を差し出した。
「こいつを使うのは半年経ってからにしろ」
「・・・あぁ、わかってる」携帯電話を受け取るとアルフレッドはトランクから黒いスーツケースを引っ張り出した。
アルフレッドはセーターの裾を捲り上げ、腕時計を見た。CASIO G-SHOCKの液晶は1時半を示していた。
空港まで200メートル、二人は成田国際空港へ歩いて行った。
「目標を確認、車を棄てて成田の方へ歩いてる」
開かれたヘリコプターのドアに腰掛け、乙鬼は狙撃銃、レミントンM700を構えた。銃口の先には大きな消音器が付いていた。
『スナイプ1、目標が射線に入ります。準備が整い次第、発砲せよ』
「了解」
乙鬼は安全装置を解除した。ボルトを引き、弾を装填し、人差し指をトリガーに掛けた。
スコープのレティクルに二つ重なった人影が写った。
「フーッ、スッ」乙鬼は息を止めた。
十字が人影の胸と重なる
バシュッッ!!
素早くボルトを引き、次弾を装填、トリガーを引いた。
バシュンッッ!!
スコープ越しに人影が二つ倒れるのが見えた。
乙鬼はボルトを引き、空薬莢を排出した。
「スナイプ1、目標A、B、クリア、任務完了」
『了解スナイプ1。ナイスショットです。早急に帰還してください。ヘリポートで待ってます』
これでLeathal Flegance編は完結します。
長かったぁー!
実に8ヶ月も続いたのは正直、想定外でした。
本来は5話程度で終了する短編のつもりだったんですが、まさかの10話以上の長編になるとは
次編にこうご期待!




