Leathal Fragrance 5
マセラティとメルセデスC55は日比谷、国道一号線を激走していた。時刻は午後12時38分。かれこれ30分以上が経過している。両台とも、レンズやフロントバンパーなどの部品は全て折れ曲がったり、紛失していた。
香織は一向に仕事が終わらないことに苛立ちを覚え始めていた。もちろん彼女は仕事を楽しむタイプだが。こうも長引くのは、まったく持って想定外だった。とっとと終わらしたい。その衝動が香織を強く掻き立てた。
そして香織は行動に出た。
ギアをオートマチックモードに戻し、香織は助手席に置いてあったXM110を手に取った。そしてマセラティのサイドに狙いを定め、引き金を引いた。
シュカカカカカカカカカカカッ!!!!
眩いマズルフラッシュと共にくぐもった連射音が響く。マセラティのドアから火花が走り、見る見るうちに穴だらけになっていく。
更に香織は銃口をサイドウィンドーの方に向けトリガーを引いた。
乙鬼は瞬時にギアをニュートラルに入れ、ブレーキとクラッチを踏み込んだ。4輪がロックし、すさまじいスキールと共にマセラティ3200GTはXM110の射程内から消えた。香織は反応しきれず数発虚空に発砲したが、すぐにトリガーから指を離した。
一瞬生じた隙を、乙鬼は逃さなかった。そのまま乙鬼はギアを2速に入れ、アクセルを踏み込んだ。
マセラティはメルセデスに左から回り込み。加速した。
ガシャッ
ノーズとリアバンパーが激しく接触する。
乙鬼はギアを2速上の4速に入れた。助手席に置いてあったARX160を手に取り、バレルの先端をダッシュボードの上に載せた。標準を合わせ、フルオートで撃ちこんだ。
バラララララララララララララッ!!!!
無数の空薬莢が車内を跳ねる。5.56mm弾はマセラティのフロントウィンドーを突き破り、運転手に襲い掛かる。
リアウィンドーが粉々に砕け落ち、弾丸が車内に進入した。レザーシートやナビゲーションの液晶が火花を散らしながら破壊され、焦げ付いたダッシュボードの破片が飛び散った。
「うわわっ!!!」
あわてて香織はギアを左に引き、Sモードに入れた。
ヴォロオーーーーン
V8エンジンが唸るようにブリッピングし、ギアに入る。ステアリングの裏のパドルシフトを引き、3速に上げる。タコメータが一激しく動き、4500rpmの表示の位置で止まる。
そしてアクセルを限界まで踏み込んだ。
低い、バリトンのエンジン音が轟き、360bhpが解き放たれる。
リアバンパーとマセラティのノーズが離れた。メルセデスは右のレーンに強引に変え、アクセルを開いた。メルセデスはマセラティとほぼ真横の位置に積めた。
香織は手をクロスするように右手でXM110を構えた。獣のような瞳が乙鬼の頭部を捕らえた。「Arrive Delci」(バイバイ)
「っ・・・・・!!!」乙鬼はそれに気づきアクセルを踏み込んだ、が遅すぎた。くぐもった発砲音と同時ににXM110の7.62弾がサイドウィンドーをぶち破り、車内に無数のクレーターを作っていった。乙鬼はとっさにシートのレバーを引き、シートを倒した。次の瞬間、乙鬼の頭部があった場所に無数の銃弾が食い込む。ダッシュボードのラジオやウッドトリムが吹き飛び、乙鬼に降りかかった。
顔に降り懸かったドアトリムの破片を払落としいながら、乙鬼は少し体を起き上げる。ARX160を左手に持ち替えハンドルを握っている右腕の上に乗せる。
そして、指をトリガーに添えた。
突然、メルセデスが急突進してきた。
反応する時間もなかった。鉄がたわむ音が響き、身体に鈍い衝撃が走る。遠心力に突き飛ばされ、背中をドアに強打した。
「がっ……!!」
マセラティはまるでピンボール球のように弾き飛ばされ、隣にいた軽自動車に斜めから突っ込んだ。衝撃でフロントバンパーが外れ、ラジエーターやエンジンの一部が剥き出しになった。
痛みに顔をしかめながら乙鬼は咄嗟にカウンターステアを当てた。フロントタイヤがグリップを回復した。アクセルをコントロールし、ヨーの発散をかろうじて抑えつける。1.5トンの負荷を背負い、タイヤスモークが巻き上がる。パンパンパンと、V8ツインターボがミスファイアを繰り返す。
そのまま乙鬼はドリフトを利用し、左コーナーをクリアした。
・・・・・難しい(汗)カーチェイスって




