Leathal Fragrance 4
午後12時05分、東京都港区、青山一丁目の昼の静寂は一瞬にして砕け散った。
ホイールスモークと唸るようなエンジン音を撒き散らしながら、銀色のマセラティ3200GTが駐車場から勢いよく飛び出してきた。
不規則に列ぶ先行車を縫うようにマセラティは加速して行く。
メーターは96kph、6200rpm。クラッチを繋ぎながら乙鬼はとりあえず逃走のルートを考えた。勿論円城のこともあるが、それはひとまず後回しにすることにした。
「まぁ、大丈夫だろうな」
そう言うと乙鬼は更にアクセルを踏み込んだ。巧妙なターボシステムのおかげでマセラティは電光石火のレスポンスを見せる。そのおかげか、先行車を抜くのは意外にもたやすかった。タコメーターの針が再び6250rpmまで吹け上がり、乙鬼は力強くギアを3速に入れた。
乙鬼は青山一丁目の出口、赤坂見附の交差点に差し掛かった。突然、黒いメルセデスCクラスが反対車線から飛び出し、マセラティ3200GTのテールに左側から突っ込んだ。
激しい衝撃が走る。リアタイヤのグリップが失われ、マセラティはスピンした
高回転するリアタイヤが連続的にトラクションを回復しては失い、白い煙がリアタイヤのホイールハウスから吹き出る。あちこちから引っ張られるような圧迫感の中、乙鬼は瞬時にハンドルがロックするまでカウンターをあてながら、アクセルを強く踏んだ。
ヴァオヴァオヴァオヴァロオオオオオォウン!!
リアタイヤにパワーが入り、トラクションが回復した。そしてマセラティは大きくオーバーステアに入った後、振り子のように姿勢を戻した。その際、反動で外れかけていたリアバンパーがはずれ、破損したブーメランテールランプの破片と共にアスファルトに転げ堕ちた。
そして二台の車は赤坂見附を走り抜けて行った。
カーチェイスをうまい具合に書くのって意外と難しい(汗)




