表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
plus/minus=0  作者: ISOyA
Leathal Fragrance
15/31

Leathal Fragrance 3

駐車場は3階建て、2階と3階は突抜けになっていて、壁側に車を止めた人は、そこから外を見渡すことが出来るようになっている。しかし、そんなものは現在の乙鬼にとっては迷惑も良いところだった。


「っ・・・・・・。」


突き抜けを見るなり乙鬼は落胆の表情を見せた。先ほど、狙撃手が傾斜を構い無しにフルオートで発砲してきたことを見る限り、彼等が居る場所としたら一つしかなかった。傾斜など関係無しに、楽に撃てる場所、それは隣のビルの駐車場以外有り得なかった。


「・・・・・スーッ」

「・・・フゥッ」


呼吸を整えた後、乙鬼は一気に駐車場をダッシュした。


ドガガガガガガガガガガガガガッ!!!!


案の定、容赦なく撃ってきた。乙鬼の数センチ斜め後ろの車のボディや窓ガラスが音を立てて割れ始めた。黒い放物線のすぐ後ろを弾丸の嵐が追いかける。穴だらけになった車の警報装置が鳴り響いた。


乙鬼は体を捻り、左わき腹を使い床にスライドした。その真上を7発の銃弾が横切った。隣の駐車場の屋上から数回マズルフラッシュが光るのが見えた。


「やっぱり・・・・・。」乙鬼はマズルフラッシュの方へ5発撃ち込んだ。


5発の5.56mm弾は車と車の間を縫い、狙撃者目掛けて飛翔して行った。



マズルフラッシュが見えたとき、香織は静かな声で呟いた。

「無理よ、ARX160じゃ。」


乙鬼のいるビルと香織のいるビルまでの距離は約300メートル弱。乙鬼は更にそこから7・8メートル内側にいるのだ。この距離と、角度が加わり、相手に当てるにはほぼ射程外に近い。


5発とも、緩いアーチを描きながら壁や下の階に止まっていた車の窓ガラスに着弾した。


程なくして再び弾丸の雨が降り注んだ。

弾が車体に当たるガン、ガンッと言う音、窓ガラスが粉々に砕け散る音、鳴り止まない警報装置の音、全てが混ざり合いとてつもなく耳障りだった。



穴だらけのオデッセイの後ろにうずくまりながら、乙鬼は裏口を捜したが、見つけても無駄なので止めた。


逃げ道はおろか銃も使えない今、この状況を打開する方向は一つしかなかった。


乙鬼は携帯電話を取り出し、円城に電話をかけた。


プルルルルルル、プルルルルルル。


『乙鬼、大丈夫ですか!?』5秒の沈黙の後、円城は電話に出た。乙鬼の表情が少し緩んだ。


「一応大丈夫。それより円城、僕が駐車場内にいるのはわかっているよね」

『はい』

「車のイグニッションシステムにハッキングして動かしてくれ」


『わかりました、車種とナンバープレートの番号を言って下さい。』


意外にもあっさりと承知してくれた円城に、乙鬼は少々驚きの表情を見せたが、すぐに真剣な表情に戻った。


取りあえず、乙鬼は目の前にあるシルバーのスポーツカーにすることにした。


「マセラティ3200GT、ナンバーは×××-×××。」


『了解、少々待ってて下さい。』


程なくして、マセラティのエンジンがかかり、ロックが解除された。


キュキュキュキュッ ウ゛ォオーーンッ


「ありがとう円城」

運転席に乗り込みながら円城に礼を言った。


「あと円城、もうひとりいるから気をつけて。」


『えっ?』直後、ワインレッドのメルセデスCLSがクラウンの右側に止まった。

運転手は腰の右脇のホルスターから回転式拳銃(リボルバー)、スタームルガー・SP101を取り出し、円城の側頭部に向けた。ダァアアアン!!


インターカムからはっきりとした発砲音が聞こえた。


「円城!!」乙鬼は思わず叫んだ。


しかし、乙鬼もうかうかして入られなかった。また撃って来るのは時間の問題。立ち止まっている暇は無い。

「クウッ・・・!!」


乙鬼はギアをリバースに入れ、アクセルを踏み込んだ。


ホイールスモークを撒き散らしながら、

銀色のマセラティは猛スピードで逆走した。


3階から2階に降りるスロープにさしかかった。

乙鬼はニュートラルに入れ、ハンドブレーキを引いた。

リアタイヤがロックした。同時に乙鬼は

ハンドルを思い切り切り、Jターンに入れた。


マセラティは180度回転し、車体が前に向いた。乙鬼はハンドルを戻し、ギアを一速に入れた。そして再びアクセルを踏み込んだ。

2基のターボチャージャーが一気に酸素を吸い込み、370馬力すべてがリヤタイヤに送り込まれる。


ウ゛ァロアアアアォン!!


ホイールスピンをしながらマセラティは駐車場を爆走した。



同時に香織は下の階に降りていた。


何か早い車は無いかと辺りを見渡し、黒のメルセデスベンツ C55AMGを見つけた。


5.4リッターV型8気筒SOHCを搭載し、360馬力を発揮するこの車は、少年のマセラティを追い回すには十分だった。


香織は助手席の方に周り、XM110のストックで窓を叩き割った。硝子が音を立てて割れ落ちると同時に警報装置が鳴り響いた。香織は硝子の破片で腕を切らないよう慎重に腕を入れ、ロックを解除した。


運転席に乗り込み、香織はハンドルの根元の右斜めにあるプラスチック製のカバーを両手で無理矢理こじ開けた。次にその中から二本の配線を引っ張り出し、先端部分のカバーを剥ぎ取り、露出した針金同士を接触させた。


キュキュキュキュ・・・キュキュキュウ゛ォオーーン


数回火花が散った後、エンジンに火が入る。


ギアをSモードに入れ、メルセデスは発進した。


解説コーナー:

マセラティ 3200GT:イタリアの高級スポーツカーブランド、マセラティが1998年に発表した2ドアクーペである。デザインを担当したのはベレッタ90-Twoをデザインしたジョルジェット・ジュジャーロ。特筆すべき特徴は、そのテールランプ。ブーメラン型にリアのシルエットにそって形を成している。エンジンは90度3.2リッターV8ツインターボで370ps/6250rpmを発揮する。2001年にフェラーリ製の4.2リッターを搭載する4200GTにバトンタッチ。マセラティ至上最後のツインターボモデルである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ