Leathal Fragrance ‐Prologue‐
新編スタートです。
12月26日、午後5時30分。東京、成田空港。二人の男がアリタリア航空のアライバルゾーンに立っていた。二人は白人、高身長で、体格も良かった。二人とも黒いウィンタースーツを身にまとい、首にはマフラーを掛けていた。
「Are you Alfred and Geoff?」(あなたがアルフレッドとジェフかしら?)二人の横から女の声がした。彼らが振り向くと、そこには一人の美少女がいた。年は18~19ほど。白い肌に栗色のロングヘアーを肩まで下げている。服装は年相応の女の子らしく、スカートにファーのコートを着ていた。だがその目は明らかに少女の物ではなかった。獣のような、鋭く、鋭利な眼差しをしていた。
「ああ、あなたがカオリか、長いフライト、ご苦労だった。」二人は香織という名の少女と軽い握手をした。すると、後ろから20代中盤ほどの男性が大きなスーツケースを担いで遣って来た。
「ああ、ありがとサンドロ、紹介するわね、私のビジネスパートナー、アレッサンドロです。」
アレッサンドロは優雅にお辞儀をした。
午後6時46分。東京都港区、三田の某ガレージ。今香織ら4人の目の前には、黒のサーブ9-5が静かに止まっていた。フロントはひどく損傷しており、とても走りそうには無かった。
「二週間ほど前、我々の組織の武器密輸グループ11名が、追跡者によって全滅されたのはもうご存知ですよね。」アルフレッドが静かに話し始めた。香織は短くええ、と答えた。
「色々と難しかったですが、何とかして手に入れました。」
香織は運転席のドアを開けた。まだバッテリーは生きているようで、室内のランプが付き、警告ビープがなった。そのまま香織はサーブの中へ入っていった。
「フフフ・・・アッハハハハハハァ!!」突然香織は大声で笑い始めた。ケタケタと、耳に付く笑い方だった。
唖然とした顔で見る二人に、ゆっくりと香織は顔を上げた。笑いすぎて涎が垂れている。
「・・・・ジョルジオ・アルマーニ・プールオム」
「・・・・・?」二人は香織の言っていることを理解できなかった。
「存在感の強い香り、これでガンオイルと硝煙の匂いを消している、殺し屋らしい香水だわぁ。」
はしゃぎながら香織は答えた。そこにはまるで新しいドレスを買ってもらった小さい女の子のような無邪気さと、獲物を目の前に、興奮している獣のような獰猛さと殺気が混ざり合っていた。少なくとも、アルフレッドとジェフの目にはそう映っていた。
「香織、仕留められそうか?」ここでアレッサンドロが初めて口を開く。イタリア訛りが混じった日本語だった。
「勿論、たのしみ・・・・。」彼女の頬はまるで酔っ払ったように赤くなっていた。
「ところで、お二人さん、標的の情報はあるのかい?」アレッサンドロは二人の方に振り向く。
「・・・・・ん?、あ、ああもちろん。」香織の異常たる行動を目の間にしたジェフは一瞬反応が遅れた。そして急ぎ足でテーブルの上においてあったファイルを持ってきた。
アレッサンドロはファイルを開け、中の書類に目を通し始めた。
「彼が何者なのかは解っているのか?」
「現時点ではまだ何者かは解らない。いずれ解るだろう」アルフレッドは少々申し訳なさそうに返した。
アレッサンドロはそうかと言うと、書類から写真を剥ぎ取った。
「香織、持っとけ」アレッサンドロは写真を香織に渡した。写真に写っていたのは、少年だった。年は16~17才ほど。黒い顔に精悍な顔付き、氷のような目を持っていた。
解説コーナー:
ジョルジオ・アルマーニ・プールオム:イタリアの高級ファッションブランド、ジョルジオアルマーニの男性用香。作中で述べたように非常に存在感のある香りが特徴。とてもスパイシーな柑橘系の香り。




