16.アラブの春とエネルギー問題、莫大な日本の海底資源
もう1つ、アラブの春が私たちの生活に直結する問題があります。1973年、イスラエルとアラブ諸国は4度目の第四次中東戦争を行いました。そして、イスラエル寄りの西側諸国、日本やヨーロッパに対する石油の輸出制限をアラブ諸国が行いました。第一次オイルショックです。日本は貿易立国です。海外から輸入した原料を加工して、輸出する世界の工場です。円高や人件費の高騰で、海外に日本企業の工場が移転しているとはいえ、資源を輸入して加工貿易する国です。ですから、国際紛争で資源の輸入が途絶えることは死活問題になります。1973年、高度経済成長を経て経済大国入りした日本にとって、オイルショックは大きな衝撃でした。東京電力の福島原発事故から、脱原発に世論は傾いていくことになりますが、オイルショックによって、中東等の国際紛争が起これば、無制限に石油が輸入できない状況が起こりうるということで、石油の使用量を減らす省エネ化、石油以外の原子力発電所の活用や石油の備蓄、分散輸入によるリスクヘッジという現在の日本のエネルギー政策の方向性が決定されたのです。
資源の禁輸は、日本に大きなダメージを与えます。太平洋戦争もアメリカを中心としたABCD包囲網と、アメリカからの鉄鋼の原料にするくず鉄の輸出と石油の輸出禁止で2年以内に大日本帝国の石油が枯渇して海軍の軍艦等の軍隊そのものを動かせなくなるという理由で、最後はアメリカとの開戦に踏み切ったのです。
太平洋戦争前は、アメリカから輸入していた石油を、戦後は安く購入できる中東に切り替えたのです。アメリカは現在でも世界3位の産油国であり、世界2位の天然ガスの産出国です。ちなみに、産油国の大まかな順位は、ロシア1位、サウジアラビア2位、アメリカ3位、イラン4位、中国5位です。(ロシアとサウジアラビアで世界の産油量の4分の1を超えます。そして、天然ガスは、ロシア1位、アメリカ2位、カナダ3位となります。
尖閣諸島には石油がイラク並みに、日本の排他的経済水域にはメタンハイドレートという形で天然ガスが日本の天然ガス使用量換算で約40年分、埋蔵されています。そこで、後述する日本と近隣諸国の領土紛争に発展しているのです。もう1つは、日本の領海と九州、沖縄、尖閣諸島、小笠原諸島等に海底熱水鉱床と呼ばれる埋蔵資源が発見されています。金4千トンをはじめ、銀、亜鉛、銅等の資源埋蔵量はおおそよ80兆円程度と推計されています。海底熱水鉱床は、海底火山の活動で海底に形成された海洋鉱山です。現在、埋蔵されている7.5億トンのうち4.5億トン程度は採掘可能と考えられています。もちろん、技術が進歩すればさらに多くの採掘が可能になります。日本は、領土よりも領海と排他的経済水域に莫大な海洋資源が埋蔵されている資源大国なのです。中国が、狙っているのは尖閣諸島そのものではなく、埋蔵されている数百兆円規模の石油、メタンハイドレート、金や銀、銅亜鉛等の海底熱水鉱床の海洋資源でしょう。漁業権や島そのものよりも、島や領土の領海、排他的経済水域に埋蔵されている海洋資源が新しい領土問題の火種になっています。




