94.水の泡に、帰す 〇★
泡の中は、妙に静かだった。
底から湧き続ける水の勢いを、この泡の周りだけ抑えているから、水音は遠い。
俺は息をしていない。だから、聞こえるのはアイオリスの呼吸だけだ。
それも、すぐ近くで。
そう、俺はアイオリスを抱えたまま、水を押しのけて作った泡の中に浮いている。
こいつがまだふらついているのもあるし、抱えていないと泡の縁から転げ落ちて、そのまま沈みかねないからだ。
別に、好き好んで抱えてるわけじゃない。
腕にかかる重み。胸元からじわじわ伝わってくる体温。咳をこらえるたびに震える背中。
息を取り戻したばかりの荒い呼吸と、早すぎる心臓の鼓動まで、振動になってこっちへ伝わってくる。
男の身体って、こんなに硬かったんだっけ――とか。
そんな余計なことまで、嫌でも意識させられる。
(いやいやいや、違う、違う。鬱陶しいだけだ)
そもそも、なんで俺がこんなに落ち着かないかって言えば、全部こいつが悪いんだ。
――一滴も、零したくない。
あんな台詞を吐いた上に、事もあろうに俺の涙――じゃない、“水”を飲みやがったのだ。
俺の身体から零れた“水”を、俺の目の前で口に入れた。
何だそれ。ありえねぇだろ。距離感がぶっ壊れてんだろ。
紳士ぶったツラして、この変態野郎が!
「お、お前っ……今度、勝手にやったら、水飲むの禁止だからな!」
怒鳴り返した声が、泡の内側でやたら大きく跳ねた。
『わたしはアイオリスになら、いつでも、いくらでも飲んでほしいわ』
イカれたバカ女が何か言ったが、聞こえなかったことにする。
アイオリスは咳の残る喉で浅く息を継ぎ、ほんの少しだけ眉尻を下げた。
「……分かった。次は、言ってからにする。すまなかった」
「そこじゃねぇ!」
そこでもあるが、そこじゃねぇんだよ!
次ってなんだ、次って。そういうのをやめろって言ってんだよ!
腕の中で身じろがれると、余計に密着する。
抱え直そうとして、さらに肩と胸が触れる。
やめろ。やめろって。
いや、やめたら落ちる。くそ。
『もっとしっかり抱きしめましょう。この人の音をもっと感じたい』
『何があっても離してはいけませんよ』
(うるっせぇーーーっ!)
頭の中の奴らも騒がしい。
“わたし”はさっきから浮かれきってるし、“私”は正論みたいな顔で余計なことしか言わない。
なぜかどっちの意見も理解できてしまうのが、何よりも腹立たしい。
俺はわざとらしく顔をしかめて、アイオリスから少しだけ視線を逸らした。
すると、アイオリスがまだ浅い呼吸のまま訊ねてきた。
「君は、大丈夫なのか? 水門は……外は、どうなっている」
まあ、お前ならそれを先に聞くよな。
俺は小さく息を吐く素振りをして、意識を外へ伸ばした。
魔樹が完全に消えたからだろう。
さっきまで胸の奥に食い込んでいた、あの嫌な痛みはもうない。
源流から流れ込んでくる水は相変わらず馬鹿みたいな量だ。
けど、そこに黒禍が混ざってこないだけで、だいぶマシだった。
その代わり、今度は源流に溶けそうになる時の、あの眠気みたいな感覚が強くなっている。
だから、できるだけ別のことに意識を向けていないと危ない。
今ここで寝落ちしたら、たぶん俺終了だ。
だから仕方なく木こり野郎に意識を向けてるだけだ。
……そう、必要だからそうしてるだけだ。緊急避難だ。
『貴女の仰ることは、やはり時々、理解に苦しみます』
『素直に喜べばいいのに……ねえ、また口づけをしましょうよ』
黙れ、問題社員ども。社長の方針にケチをつけるな。
あと、キスとかそういうんじゃねえ、医療行為だ!
「今んとこは平気だ。けど……水は止まってねぇ。むしろ増えてる」
アイオリスの眉が、わずかに寄る。
「増えて、いる……?」
魔樹が消えたあたりで水の勢いは収まるどころか激増した。
外にも黒禍まみれの奴とか、魔樹の根っこみたいなもんとか、色々いるんだが――そいつらも当たり前に洪水に巻き込まれて、女神様ぶった“私”に片っ端から浄化されてる。
で、黒禍を消すと、なぜか水量が増してる気がする。
俺、あいつらを倒すと経験値的なもんが入ってレベルアップするのかもしれない。
「まあ、元々勢いヤバかったからな。森はもうみんな沈んじまった。
そんで、そこにちょいちょい、魔樹とかもいてな……?」
「なっ――……っ」
そこで、アイオリスが目を見開いた。
身を起こそうとして、肩の痛みがぶり返したのか顔を顰める。
それでも止まらない。こちらを覗き込んでくる。
「お、おい、馬鹿っ、動くなっての! あ、あと、近い! 近い!」
「イズミールっ、君は、無事なのか! 痛みはっ!?」
ああ、くそ。説明の順番を間違えた。
「だーかーらー! 聞けって! 全部まとめて浄化してるから平気だっての!」
勢いで言い返したが、アイオリスの顔は険しいままだった。
「だが、黒禍に触れているのだろう?」
「触れてるっていうか、勝手に流れ込んでくるんだからしょうがねぇだろ……!
ちょっと痛くても、すぐ溶けるから、さっきの魔樹よりはマシなんだよ」
アイオリスが、唖然としたように目を瞬かせた。
「……ちょっと、だと……? すぐ消える……?」
なんだその顔。
何言ってんだこいつ、みたいに思ってるのか。
お前、さては俺のこと、いまいち信じてねぇな。
あんまり心配かけるのもなんだし、ここはひとつ理解らせてやるか――
俺は気持ち顎を持ち上げて、見下ろすみたいに言ってやった。
「へっ、手ぇ届くとこにいるなら、魔樹なんかどうってことねぇんだよ。
レベルを上げて物理で殴ればいい――ってな」
わざと胸を張って言ってやったら、アイオリスが完全に無言になった。
青い目が、真顔のままこちらを見ている。
「……れ、べる?」
「…………」
「ぶつり、とは……?」
「っ、い、いいんだよ、こまけぇことは!」
顔が熱くなった気がした。
馬鹿か俺! なんであの説明にした!? 通じるわけないだろ!
くそったれ、滑った。最悪だ。
『アイオリス……かわいい……』
『説明は、伝わる言葉でしましょう』
「だ、黙れ!!」
小うるさい社員どもに思わず叫び返したせいで、当然、こいつらの声が聞こえていないアイオリスは目を丸くした。
もう嫌だ。
今の無し。今の無しだ。
俺は勢いのまま、話題を殴ってひっくり返すことにした。
「そ、それよりお前だよ! お前! なんで瓶を手放した! 俺がどれだけ――」
※※※※※
アイオリスが、わずかに目を瞬かせた。
「……ああ」
「ああ、じゃねぇ! 瓶だけ戻ってきた時、こっちがどんな気分だったと思ってんだよ!
絶対離すなって言っただろうが! 斧まで落としやがって!
金の斧から落とす木こりって何なんだよ! 何の斧を出せって話だよ!」
怒鳴りながら、あの時の気持ちがぶり返してきて、胸の奥がまたぐちゃぐちゃになる。
また通じるわけのない話が混ざったが、勢いで押し切る。
アイオリスは叱られた犬みたいに一瞬だけ目を伏せ、それから素直に答えた。
「魔樹は伐った。だが……矢から、浸蝕が回った。身体の内側へ」
今度は、聞かされたこっちが言葉を失う番だった。
それ、刺さった矢を掴んで引っ掻き回されたようなもんだろ。
考えただけでぞっとする。
浄化と泡だけじゃ、全然守り切れてなかったってことじゃないか。
「君の声が届いて、浄化されて助けられた。魔樹の残りもそれで消えた。
だが、そこで限界が来た。意識を失って……手放してしまったのだと思う」
“思う”なんて曖昧な言い方をするのは、本当にその前後の記憶が飛んでるんだろう。
改めて、とんでもなく過酷な現場だったことを痛感する。
行かせてしまったことを後悔したが、同時に別の苛立ちも湧いてくる。
「だ、だったら、もっと早く呼べよ!」
『あなた、待てって言ったじゃない』
『最後まで信じると言ったのも貴女です』
ああ、もう、うるせぇ。
「……すまない」
「お前、そればっかじゃねえか……」
吐き捨てたけど、もう最初みたいな勢いは保てなかった。
少し黙ってから、俺は低く訊いた。
「……じゃあ、なんで戻ってこられたんだ……」
その問いに、アイオリスの目の色が少しだけ変わった。
痛みとも申し訳なさとも違う、もっと静かなものを思い出す顔だ。
「……水音が、聞こえた」
「水音?」
そりゃ水の中なんだから当たり前だろ、と言いかけて、俺はやめた。
「私は、あの音を知っている」
アイオリスは首を傾けて、泡の外の暗い水を振り返る。
「誰かに、背中を押された気がした……」
その横顔は、寂しそうでもあり、懐かしんでいるようでもあった。
「なぜだか、分かるんだ。私は……また、救われたのだと……」
俺には、こいつの言葉の意味はよく分からない。
誰が、なんで、どうやって。見当もつかない。
でも、こいつが雑に言ってるわけじゃないことだけは分かった。
俺はしばらく黙ったまま、泡の外の暗い水を見た。
俺の水の中だから暗がりの向こうまで見通せるが、そこには誰もいない。
見えるのは底に沈む黄金ばかりだ。
それでも、あの時、水門の向こう側に確かに何かいた気がしたことだけを思い出す。
あれが、こいつを押し戻してくれたのか。
だったら――感謝、しなきゃいけないんだろうな。
こいつを返してくれたんだから。
「……そっか」
それだけしか言えなかったけれど、アイオリスは小さく頷き返した。
※※※※※
その直後、アイオリスが小さく息を呑んだ。
顔をしかめたのを見て、俺ははっとする。
矢だ。
黒禍が消えても、刺さったままの矢と傷は残っている。
助かったのと会話に気を取られて忘れかけていたけど、こいつは普通に怪我人だった。
「お、おい、大丈夫か」
「大丈夫、と言ったら、怒るのだろう……?」
「当たり前だ!」
反射的に噛みつく。
改めて見ると、傷の周囲はひどかった。
浄化で黒い侵蝕そのものは消えても、矢が刺さったままなら肉が裂けたままなのは当たり前だった。
血だって、さっきまでかなり流れていたはずだ。
俺は傷口へ浄化をかけてみた。
けど――傷そのものは、塞がらない。
「ああ、くそ……なんで俺、こういうの分かんねぇんだよ……」
浄化は何でもできるわけじゃない。 そんなこと、分かってたはずなのに。
黒いのは消せる。
でも、刺さった矢をどうにかできるわけじゃない。
裂けた肉を元通りにできるわけでもない。
俺は思わず矢柄へ手を伸ばしかけて、止めた。
抜く? 今ここで?
馬鹿か。そんなの、絶対まずいだろ。
人間だった頃の半端な知識でも分かる。
刺さったもんは、下手に抜いたら余計に血が出る。もっとまずいことになる。
その時、アイオリスがぽつりと口を開いた。
「ひとつ、君に試してほしいことがある」
なぜだか、嫌な予感がした。
「……なんだよ」
「私の傷口を、黄金で固めてくれないか」
「……はぁ!? な、何言ってんだお前」
アイオリスは苦しげな呼吸の合間にも、言葉だけは崩さなかった。
「ここでは縫えないし、焼けない。薬も無い。
抜くのは危険だ。だが、動けば、また鏃が肉を裂いて血が流れる。
なら、まず動かないようにすべきだ。矢を、傷ごと固めてほしい」
言ってる意味は分かる。
分かるけど、分かりたくねぇ。
「以前、君が木彫りの花を黄金に変えた時、変わったのはすべてではなく、芯だけだった」
あまり思い出したくない話を掘り返されて、胸がちくりとした。
「……そ、それがなんだよ?」
「あれと同じだ。傷口の周囲だけを変えることができるはずだ」
身体の一部を黄金にするなんて発想に、俺は本気で顔をしかめた。
「お、お前! 正気か!? 自分の身体なんだぞ!?」
「正気だ」
「いや狂ってるだろ! 傷口ごと矢を黄金で固めろとかおかしいだろ!」
「今は、抜く方が危ない」
それを言われると、黙るしかない。
くそ。
正しい。たぶん正しい。
だから余計に腹が立つ。
こいつは弱ってるくせに、こういう時だけ妙に冷静だ。
こっちは見てるだけでぞわぞわして、今すぐ矢なんか消してやりたいのに。
人の気も知らないで、アイオリスは真っ直ぐ俺を見て言ってくる。
「君なら出来る」
「なん、だよ……それ、そんな信頼、いらねぇんだよ!」
強く言い返した瞬間、ふと思い出してしまう。
――全身、金ピカにして、水の底に沈めて置物にしてやる。
送り出す前に、俺が吐いた脅しの言葉だ。
あんなの勢いで言っただけで、本気でそうするつもりなんてなかった。
むしろ、こいつだけは黄金になんかしたくない。
『それでアイオリスが苦しまずに済むなら、やるべきだわ』
“わたし”が割り込んできた。
こいつなら絶対に止めると思ったのに。
『“俺はやる時はやる”んでしょ?』
「っ……」
自分の言葉を返されて、詰まる。
『危険はあります。ですが、このままにも出来ません』
“私”まで続く。
『それに、元に戻す手掛かりにもなり得ます』
今、外で何もかもを黄金に変えているのは主にこいつの仕事だ。
だからこそ、その物言いにカチンときて叫んだ。
「おい! 実験台にしろって言うのか!?」
『私たちでは駄目なのです。私たちは人間の身体を知りません。
人間の鼓動も、人間の痛みも。それを知る貴女だからこそ、届き得る』
静かな声だった。
納得なんかしたくない。
けど、理解はできてしまう。
人間だった頃の記憶がある俺と、肉の身体を知らないこいつら。
元に戻すにしたって、肉体そのものの感覚を知らなきゃ届かない――そう言われたら、その通りだった。
でも、そのために俺がアイオリスを黄金にしろって?
最悪だ。
なんで誰も引いてくれないんだよ。
アイオリスは弱ったまま、それでも真っ直ぐ俺を見る。
「犠牲になるつもりで言ったわけじゃない。
“何をどうするつもりなんだ”――君はそう言っていたな」
「あぁ!?」
お前まで蒸し返すのか。
「君が背負いきれずにいるものを、私が分かち合うには、これだと思っている。
それに……もし“金ピカ”になったら、水の底に君の傍へ置いてくれるのだろう?」
あいつはそう言って笑いやがった。
いつもの真面目ぶった顔じゃなく、うまいこと言ったみたいなツラで。
全然うまくねぇんだよ!
「……誰がお前なんか、傍に置くか」
「君は水だ。なら、水の底は君の傍だろう」
くそ、弱ってるくせに何でぐいぐい押しにきてんだよ。
その熱っぽい目やめろ! ちょっとは退けよ、こっちはドン引きだっての!
「なんだよその理屈。勝手なこと言ってんな!」
「最悪で面倒臭い人間ですまない」
「開き直んな!!」
畜生。
なんでこっちが言い負かされてるみたいな感じになってるんだ。
こんなの絶対おかしいだろ。
……ああ、もう、知るか。
「……失敗しても、文句言うなよ」
「言わない」
「あと、変な感じになっても知らねぇからな」
「君の“知らないからな”は、あまり信用できないな……」
「喧嘩売ってんのかてめぇ?!」
やけくそ気味に吐き捨ててから、俺は傷へ意識を向けた。
人間相手に、意識して黄金化を試すのは初めてだ。
上手くいくのか分からない。
失敗したらどうなるのかも分からない。
そんなことばかり思い浮かぶのに、当の本人は――ひどく優しい顔でこっちを見ていた。
こいつ、まさか全身固まった時のためにキメ顔してるんじゃないだろうな。
そんな「大丈夫だ」「君を信じている」みたいな顔をするな。
……嫌だ。
こんな顔で固まった金ぴかのこいつを、水底で眺めるなんて。
――そんなの、絶対に御免だ。
はっきりしたイメージなんて描けたわけじゃない。
ただ、全部を黄金になんかするものかと、それだけを願った。
肉を変えるんじゃない。人間を変えるんじゃない。
傷を塞ぐ。血が出ていかないようにする。
それだけだ。
それ以上、広がるな。
心臓、止まるな。血は出てくんな。
液体なら俺の言うことを聞け。
お前は居なくなるな。
青白い光が集まり、それが静かな金へ変わっていく。
矢柄そのものを全部変えるわけじゃない。
傷口の周囲。矢が刺さっている、その部分だけ。
裂けた肉の縁に、薄い金が這う。
血の滲む部分を押さえつけるように。
矢を抱え込んで、揺れないように。抜けないように。
金属の艶が、静かに、じわじわと傷の周囲へ広がっていく。
肌が丸ごと変わるんじゃない。
裂けたところだけを縫い留めるように、金が噛み合っていく。
俺とアイオリスが、同時に息を呑んだ。
「……どうだ」
「……痛みが、ない」
その一言で、俺の肩から一気に力が抜けた。
けど、そこから金色が広がっていかないか気が気じゃない。
齧りつくみたいに傷口を見つめる。
アイオリスは息を詰め、左手の指先だけをゆっくり曲げた。
「重く、硬い……力が上手く入らないが、指は動くようだ。
肩は……あまり動かさない方がいいな」
「当たり前だろ!? 馬鹿か! 動かすなっての! アホ、ボケ、カス!」
反射的に怒鳴る。
心の限り罵ったのに、なぜかあいつは少しだけ嬉しそうな顔をした。
お前はマゾか。
クソが。心配して損した……!
俺はそっぽを向きながら、意識の端で外を見張った。
※※※※※
――広い広い水面に、空だけが映っている。
――その真ん中から、天を突くように水柱が立ち昇っている。
――雲ひとつない青空から、雨だけが降っている。
――その波紋の下、水の底にはたくさんのものが沈んでいる。
――森。山。土。草。家。街。人。動物。
――水の底で、すべてが黄金になって静止している。
水は、どこまでも広がっているように見えた。
浅い場所は山や高地か。なら、深い場所は盆地や海か。
何もかも水に沈めて、今ならどこにだって行けるのかもしれない。
俺を閉じ込める牢屋は、もうどこにもない。
やっと自由になれる。
でも――俺がどこへ行こうとしたって、今この水の中にいる、あのクソ重たい野郎は、どこまでだって追いかけてくるんだろうな。
そう思ったら、なんだかいろいろと馬鹿らしくなった。
俺は広すぎる水の景色から目を逸らして、また泡の中へ意識を戻した。
暗くて、狭くて、うるさくて。
でも、その中には確かに、あいつの熱と重みがある。
陰キャの俺には、こういう薄暗い場所の方がお似合いだ。
……ぼっちじゃ、なくなっちまったが。




